保育の5領域とは?【3つの柱・10の姿・ねらい・健康・人間関係・環境・言葉・表現・遊び】

保育の現場に関わる人なら聞いたことがあるであろう、保育の5領域。なんとなくは知っているけれど詳しくは知らない、過去に勉強したけれど忘れてしまった、そのような人たちもいるのではないでしょうか?この記事では、保育の5領域について解説し、5領域の要素を取り入れたおすすめの遊びを紹介します。保育の5領域について詳しく知りたい保育学生さんや新米保育士さんはもちろん、遊びの内容を考えるのに困っているベテラン保育士さんもぜひ参考にしてみてくださいね。

保育の5領域とは?

子供の成長のための保育所の目標

保育の5領域とは、 子供の心身の総合的な成長のための保育所の目標を健康、人間関係、環境、言葉、表現の5つに分類したもので、乳幼児の成長を支えるのに重要な指標です。保育所保育指針の保育に関するねらい及び内容の部分に、それぞれの領域ごとに1歳以上3歳未満児と3歳以上児に分けて示されています。保育の5領域を参考にすることで、子供たちの成長に効果的な保育活動をすることができるでしょう。

保育士くらぶ

3つの柱・10の姿との違いは?

育みたい資質・能力を示すのが3つの柱

保育の5領域に関連した言葉として、3つの柱というものがあります。3つの柱では、育みたい資質・能力が示されています。具体的には以下の3つです。

  • 豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及び技能の基礎」
  • 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」
  • 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」
保育所保育指針より)
この3つの柱は、5領域に基づき、保育活動全体によって育むものとされています。

幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を示すのが10の姿

また、10の姿というものもあります。10の姿では、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿が示されています。具体的には以下の10個です。

  • 健康な心と体
  • 自立心
  • 協同性
  • 道徳性・規範意識の芽生え
  • 社会生活との関わり
  • 思考力の芽生え
  • 自然との関わり・生命尊重
  • 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
  • 言葉による伝え合い
  • 豊かな感性と表現
保育所保育指針より)
この10の姿は、5領域に基づいて3つの柱を育んだ結果、小学校就学時になっていたい具体的な姿とされています。

5領域それぞれのねらいと内容【年齢別】

健康

1歳以上3歳未満児

健康においては、健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養うことを目的としています。1歳以上3歳未満児の具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①明るく伸び伸びと生活し、自分から体を動かすことを楽しむ。
②自分の体を十分に動かし、様々な動きをしようとする。
③健康、安全な生活に必要な習慣に気付き、自分でしてみようとする気持ちが育つ。
内容 ①保育士等の愛情豊かな受容の下で、安定感をもって生活をする。
②食事や午睡、遊びと休息など、保育所における生活のリズムが形成される。
③走る、跳ぶ、登る、押す、引っ張るなど全身を使う遊びを楽しむ。
④様々な食品や調理形態に慣れ、ゆったりとした雰囲気の中で食事や間食を楽しむ。
⑤身の回りを清潔に保つ心地よさを感じ、その習慣が少しずつ身に付く。
⑥保育士等の助けを借りながら、衣類の着脱を自分でしようとする。
⑦便器での排泄に慣れ、自分で排泄ができるようになる。
保育所保育指針より)

3歳以上児

3歳以上児の健康における具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
②自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
③健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。
内容 ①保育士等や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。
②いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。
③進んで戸外で遊ぶ。
④様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む。
⑤保育士等や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ。
⑥健康な生活のリズムを身に付ける。
⑦身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする。
⑧保育所における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する。
⑨自分の健康に関心をもち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。
⑩危険な場所、危険な遊び方、災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気を付けて行動する。
保育所保育指針より)

人間関係

1歳以上3歳未満児

人間関係においては、他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養うことを目的としています。1歳以上3歳未満児の具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①保育所での生活を楽しみ、身近な人と関わる心地よさを感じる。
②周囲の子ども等への興味や関心が高まり、関わりをもとうとする。
③保育所の生活の仕方に慣れ、きまりの大切さに気付く。
内容 ①保育士等や周囲の子ども等との安定した関係の中で、共に過ごす心地よさを感じる。
②保育士等の受容的・応答的な関わりの中で、欲求を適切に満たし、安定感をもって過ごす。
③身の回りに様々な人がいることに気付き、徐々に他の子どもと関わりをもって遊ぶ。
④保育士等の仲立ちにより、他の子どもとの関わり方を少しずつ身につける。
⑤保育所の生活の仕方に慣れ、きまりがあることや、その大切さに気付く。
⑥生活や遊びの中で、年長児や保育士等の真似をしたり、ごっこ遊びを楽しんだりする。
保育所保育指針より)

3歳以上児

3歳以上児の人間関係における具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①保育所の生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。
②身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり、協力したりして一緒に活動する楽しさを味わい、愛情や信頼感をもつ。
③社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
内容 ①保育士等や友達と共に過ごすことの喜びを味わう。
②自分で考え、自分で行動する。
③自分でできることは自分でする。
④いろいろな遊びを楽しみながら物事をやり遂げようとする気持ちをもつ。
⑤友達と積極的に関わりながら喜びや悲しみを共感し合う。
⑥自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。
⑦友達のよさに気付き、一緒に活動する楽しさを味わう。
⑧友達と楽しく活動する中で、共通の目的を見いだし、工夫したり、協力したりなどする。
⑨よいことや悪いことがあることに気付き、考えながら行動する。
⑩友達との関わりを深め、思いやりをもつ。
⑪友達と楽しく生活する中できまりの大切さに気付き、守ろうとする。
⑫共同の遊具や用具を大切にし、皆で使う。
⑬高齢者をはじめ地域の人々などの自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみをもつ。
保育所保育指針より)

環境

1歳以上3歳未満児

環境においては、周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養うことを目的としています。1歳以上3歳未満児の具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①身近な環境に親しみ、触れ合う中で、様々なものに興味や関心をもつ。
②様々なものに関わる中で、発見を楽しんだり、考えたりしようとする。
③見る、聞く、触るなどの経験を通して、感覚の働きを豊かにする。
内容 ①安全で活動しやすい環境での探索活動等を通して、見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わうなどの感覚の働きを豊かにする。
②玩具、絵本、遊具などに興味をもち、それらを使った遊びを楽しむ。
③身の回りの物に触れる中で、形、色、大きさ、量などの物の性質や仕組みに気付く。
④自分の物と人の物の区別や、場所的感覚など、環境を捉える感覚が育つ。
⑤身近な生き物に気付き、親しみをもつ。
⑥近隣の生活や季節の行事などに興味や関心をもつ。
保育所保育指針より)

3歳以上児

3歳以上児の環境における具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心をもつ。
②身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れようとする。
③身近な事象を見たり、考えたり、扱ったりする中で、物の性質や数量、文字などに対する感覚を豊かにする。
内容 ①自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く。
②生活の中で、様々な物に触れ、その性質や仕組みに興味や関心をもつ。
③季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。
④自然などの身近な事象に関心をもち、取り入れて遊ぶ。
⑤身近な動植物に親しみをもって接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたりする。
⑥日常生活の中で、我が国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむ。
⑦身近な物を大切にする。
⑧身近な物や遊具に興味をもって関わり、自分なりに比べたり、関連付けたりしながら考えたり、試したりして工夫して遊ぶ。
⑨日常生活の中で数量や図形などに関心をもつ。
⑩日常生活の中で簡単な標識や文字などに関心をもつ。
⑪生活に関係の深い情報や施設などに興味や関心をもつ。
⑫保育所内外の行事において国旗に親しむ。
保育所保育指針より)

言葉

1歳以上3歳未満児

言葉においては、経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養うことを目的としています。1歳以上3歳未満児の具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①言葉遊びや言葉で表現する楽しさを感じる。
②人の言葉や話などを聞き、自分でも思ったことを伝えようとする。
③絵本や物語等に親しむとともに、言葉のやり取りを通じて身近な人と気持ちを通わせる。
内容 ①保育士等の応答的な関わりや話しかけにより、自ら言葉を使おうとする。
②生活に必要な簡単な言葉に気付き、聞き分ける。
③親しみをもって日常の挨拶に応じる。
④絵本や紙芝居を楽しみ、簡単な言葉を繰り返したり、模倣をしたりして遊ぶ。
⑤保育士等とごっこ遊びをする中で、言葉のやり取りを楽しむ。
⑥保育士等を仲立ちとして、生活や遊びの中で友達との言葉のやり取りを楽しむ。
⑦保育士等や友達の言葉や話に興味や関心をもって、聞いたり、話したりする。
保育所保育指針より)

3歳以上児

3歳以上児の言葉における具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
②人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。
③日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、言葉に対する感覚を豊かにし、保育士等や友達と心を通わせる。
内容 ①保育士等や友達の言葉や話に興味や関心をもち、親しみをもって聞いたり、話したりする。
②したり、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現する。
③したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、分からないことを尋ねたりする。
④人の話を注意して聞き、相手に分かるように話す。
⑤生活の中で必要な言葉が分かり、使う。
⑥親しみをもって日常の挨拶をする。
⑦生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。
⑧いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。
⑨絵本や物語などに親しみ、興味をもって聞き、想像をする楽しさを味わう。
⑩日常生活の中で、文字などで伝える楽しさを味わう。
保育所保育指針より)

表現

1歳以上3歳未満児

表現においては、感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにすることを目的としています。1歳以上3歳未満児の具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①身体の諸感覚の経験を豊かにし、様々な感覚を味わう。
②感じたことや考えたことなどを自分なりに表現しようとする。
③生活や遊びの様々な体験を通して、イメージや感性が豊かになる。
内容 ①水、砂、土、紙、粘土など様々な素材に触れて楽しむ。
②音楽、リズムやそれに合わせた体の動きを楽しむ。
③生活の中で様々な音、形、色、手触り、動き、味、香りなどに気付いたり、感じたりして楽しむ。
④歌を歌ったり、簡単な手遊びや全身を使う遊びを楽しんだりする。
⑤保育士等からの話や、生活や遊びの中での出来事を通して、イメージを豊かにする。
⑥生活や遊びの中で、興味のあることや経験したことなどを自分なりに表現する。
保育所保育指針より)

3歳以上児

3歳以上児の表現における具体的なねらいと内容は以下の通りです。

ねらい ①いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。
②感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
③生活の中でイメージを豊かにし、様々な表現を楽しむ。
内容 ①生活の中で様々な音、形、色、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして楽しむ。
②生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。
③様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。
④感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりなどする。
⑤いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。
⑥音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わう。
⑦かいたり、つくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり、飾ったりなどする。
⑧自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりするなどの楽しさを味わう。
保育所保育指針より)

5領域の要素を取り入れた遊び

お店屋さんごっこ

ここからは、5領域の要素を取り入れた遊びを紹介します。一つ目は、お店屋さんごっこです。商品や装飾を作るときに道具を安全に使ったり、お金を使って社会のルールを学んだり、「いらっしゃいませ」「これをください」などのコミュニケーションを取ったりします。以上のようなことを通して、5領域に基づいた成長をすることができるでしょう。また、友達と協力してお店を作ったり、お店の人やお客さんを演じることも子供たちの成長に繋がります。

鬼ごっこ

二つ目は鬼ごっこです。日ごろから鬼ごっこを活動に取り入れている保育士さんも多いのではないでしょうか。しかし、通常の鬼ごっこではなく、氷鬼や色鬼、手つなぎ鬼など、ルールを追加することで、より5領域の要素を取り入れた遊びにすることができるでしょう。走って逃げる動きを実行したり、協力して逃げたり、周囲にある色を活用したりすることを通して、5領域に基づいた子供たちの成長を促すことができます。

フルーツバスケット

子供たちに人気の遊び、フルーツバスケットも子供たちの成長に繋がる遊びとなります。フルーツバスケットとは、参加者を果物のグループに分け、鬼が指定した果物の人たちのみが移動し、席を取り合うゲームです。席の数を参加者の数より1つ少なくし、座れなかった人が次の鬼となります。すばやく移動したり、鬼の言葉を自分の行動に移したり、自分が鬼となって指示を伝えたりすることを通して5領域の要素を取り入れることができるでしょう。果物のグループ分けを行うのではなく、「○○色の服を着ている人」などと鬼が指示をする、なんでもバスケットにするのもおすすめです。

保育活動で取り入れる機会の多い歌でも5領域の要素を取り入れることが可能です。音楽に合わせた振りをつけることで、子供たちのリズム感や表現力を養い、より効果を得ることができます。また、歌を通してみんなで一体感を感じることができたり、歌詞の意味を考えることで言葉の発達を促したりすることもできるでしょう。「こいのぼり」や「おしょうがつ」などの歌で、子供たちが季節や行事に触れる機会を作るのもおすすめです。

まとめ

5領域の要素を取り入れた保育を目指そう!

いかがでしたか?この記事では、保育の5領域について詳しく説明し、5領域の要素を取り入れた遊びについても紹介しました。保育園で行われている遊びの大半には5領域の要素が多く含まれています。普段なんとなく遊びの内容を決めていた人も、今後は意識的に5領域の要素を取り込めるようになると良いですね。5領域の要素を多く含んだ保育を行うことで、子供たちの大きな成長を目指しましょう!

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保育士くらぶは保育士の転職キャリアサポートを行うアスカが運営しています。保育士くらぶ編集部のメンバーは元保育士や幼稚園教諭出身のメンバーを中心に「保育業界をもっと良くしたい!」という思いがあるメンバーが在籍し、日々執筆しています。保育士くらぶでは現役保育士さんが職場で活かすことが出来る、保育のノウハウやネタ、保育学生にとって必要な知識などを発信しています。 アスカは保育士の就職支援を行う会社です。1994年創業。全国で約10万名の保育士、幼稚園教諭の皆さまが登録しています。年間約1万名がアスカを通じて保育園や幼稚園、学童などの施設への就職を決めています。 保育士の求人情報は 【保育求人ガイド】 https://hoikukyuujin.com/ プロフィール入力で園からスカウトを受ける 【保育士スカウト】 https://www.hoikushiscout.com/