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肉体労働や頭脳労働に加えて、感情労働という労働のカテゴリーがあることを知っていますか?保育士は感情労働にも属する職業です。この記事では、感情労働とは何か、感情労働でのストレス対策、感情労働が向いている人や向いていない人の特徴について解説していきます。保育士の感情労働の側面に疲れてしまった方や、ストレスと上手に付き合う方法を探している方は、是非この記事を読んで参考にしてみてくださいね!
感情労働とは?
感情のコントロールが求められる労働のこと
感情労働とは、自分の感情をコントロールして相手の精神状態を安定させ、報酬を得る労働のことです。仕事中は適切な感情だけを表に出し、不適切な感情を表に出さないように、自分の気持ちを抑え込むことが求められますよ。相手のために自分の気持ちを抑え込みながら仕事をすることは、大きなストレスに繋がります。近年では、介護士や販売員など様々な職業で感情労働が求められています。
保育士は感情労働?
保育士は感情労働の代表格

保育士は感情労働の職業の代表格と言えるでしょう。保育士のほかに教師や看護師など、相手の心に寄り添うことが求められる職業は、感情労働に当てはまります。つまり、感情労働は他者とのコミュニケーションが必要な職業において、必須と言える働き方なのです。保育士の場合、感情労働を実感する瞬間は子供や保護者と話す場面ですね。例えば、子供が良いことをしたときはオーバーに褒めたり、子供が悪いことをしたときは感情を抑えて落ち着いて叱ったり、常に自分の感情をコントロールすることになります。
感情労働をする際の心の働き
①表層演技

感情労働の際の心の動きの1つが、表層演技です。表層演技とは、本当に思っていることとは違う行動をとることです。例えば、いたずらをしている子供に対して、本当は感情的に怒りたい気持ちを抑えて、落ち着いた態度で対応することなどが該当しますよ。表層演技をすることの問題点は、心の中で思っていることと表に出す態度との乖離です。自分の気持ちを抑え込んで演技をすることが、ストレスに繋がることがあります。
②深層演技
深層演技とは、求められていることに合わせて自分の感情をコントロールし、心の内側から演技をすることです。例えば、保育士が保護者からのクレーム対応をする場面で、保護者が怒っている理由や気持ちを理解しようとする思考が、深層演技に該当します。表層演技の問題点が心の中で思っていることと表に出す態度の乖離であることに対して、深層演技の問題点は、心の底から自分の感情を抑制することにあります。感情を隠すのではなく、感情を持たないように自制することでストレスを軽減する一方、感情を自制することに対して無意識のうちにストレスが溜まっていってしまうことがありますよ。
感情労働が向いている人の特徴
オンとオフの切り替えができる
仕事とプライベートのオンとオフの切り替えがしっかりとできる人は、感情労働に向いていると言われています。感情労働はストレスが溜まりやすいので、プライベートな時間まで仕事を引きずってしまう人は、心の疲れが取れない可能性が非常に高いです。一方、オンとオフの切り替えができる人は、プライベートな時間でリフレッシュして心の疲れを取り、ストレスを蓄積せず長く感情労働を続けることができると言えるでしょう。全力で仕事に取り組んだ後は全力で休み、メリハリをつけた働き方を心がけましょう。
感情労働が向いていない人の特徴
共感力が高すぎる

共感力が高すぎる人は、感情労働に向いていないかもしれません。感情労働では、相手の気持ちに寄り添う姿勢が大切になります。しかし、共感力が高すぎる人の場合、相手の気持ちに寄り添うときに感情移入しすぎてしまい、過度に疲れてしまうことが考えられます。感情労働に適度な共感力は必要ですが、あくまでも仕事は仕事と割り切ることが健全に働く上で大切です。自分は自分、人は人という線引きをしっかりすることで仕事中も客観性を保てるため、心が疲れにくくなりますよ。
感情労働のストレスで引き起こされる心の病
バーンアウト(燃え尽き症候群)
バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、それまであった物事への熱量や、やる気が失われてしまう病気のことです。一般的に、ストレスが原因で引き起こされると言われています。ストレスが多い感情労働では、蓄積されたストレスが爆発しバーンアウトを発症してしまうことがありますよ。バーンアウトの主な症状は次の3つです。
①情緒的消耗感
仕事に対する情熱が消えること
②脱人格化
周囲に対する思いやりが消え、攻撃的になること
③個人的達成感の低下
仕事をしても達成感が得られなくなる
うつ病
うつ病とは、気分の落ち込みが続き精神的な不調が現れるほか、不眠や疲れやすくなるなど身体的な症状が現れ、日常生活に大きな支障をきたす病気です。うつ病の明確な原因はわかっていませんが、つらい出来事などが引き金になると言われています。そのため、感情労働によるストレスも、うつ病の原因になり得るでしょう。うつ病の症状は多岐にわたり、精神的なものから身体的なものがあります。
うつ病の主な精神的症状
・1日中気分が落ち込む
・何事にも興味が持てず、楽しめない
・死にたいと思う
うつ病の主な身体的症状
・話し方や動作がゆっくりになる
・疲れやすくなる
・過呼吸
保育士が抱える感情労働のストレス原因例3選
①保護者からのクレーム対応

保育士は、保護者からのクレームに対応する業務にストレスを感じることが多いです。保育士の仕事内容は、基本的に子供たちのお世話をすることですが、保護者の支援をすることも重要な仕事の1つです。保護者からの悩みや相談事の中には、理不尽なクレームが混じっていることもあります。特に、保護者が感情的に怒っていたり、理不尽な意見を一方的に訴えてくる場合は、心が疲れてしまいますよね。こうした保護者の対応は、保育士が抱えるストレスの原因になってしまうでしょう。
②子供への接し方
子供への接し方の悩みが、ストレスの原因になってしまうことがあります。保育園に通う子供たちは、年齢によって適切な接し方が異なります。また、それぞれの個性によっても適切な接し方は違いますよ。それぞれの年齢や個性に合った接し方を一生懸命に模索するうちに、いつの間にか疲れてしまうこともあるでしょう。子供との接し方の基本は、まずは一緒に遊ぶことです。悩んだ時は、子供と一緒に遊んで楽しむよう心掛けてみてくださいね。
③職員同士の人間関係

職員同士の人間関係がストレスの原因になることがあります。保育士が感情労働と言われる理由の1つは、子供たちの前だけでなく職場の大人とのやり取りでも、本心とは異なる言動を取らざるを得ない場合が多いからです。人間関係を潤滑にするためには、やむを得ないことがありますよね。特に保育士は女性が多く、必然的に女性が多い職場環境になってしまいます。今まで女性ばかりの環境にいたことが無い人は、非常に気疲れするかもしれません。
保育士ができるストレス対策は?
どの業務にストレスを感じやすいか自覚する
保育士ができるストレス対策の1つは、自分がどの業務のときにストレスを感じやすいのかを自覚しておくことです。例えば、保護者対応の後は非常に気疲れしてしまうと感じる人は、保護者対応を重ねる度に、無意識のうちにストレスが蓄積されているかもしれません。無意識のストレスが蓄積し続けると、気付かぬうちに家から出るのも怖くなるほど心が疲弊して、長期療養が必要になってしまう可能性があります。そうならないためのストレス対策例として、苦手な業務の前に「もしこうなったらこうしよう」と、ストレスの原因になるであろう場面を予測して解決策を考えたり、合間に得意な業務を入れるのも、気持ちを切り替える手段としておすすめですよ。余裕があれば休憩を取り、一旦仕事から離れてリフレッシュするなど、自分のペースでストレスの蓄積を防ぎましょう。
仕事のやりがいを増やす

仕事でつらいと感じることが多いと、ストレスが蓄積しやすくなります。仕事のやりがいを増やすことで、仕事で溜まったストレスを仕事で解消することができますよ。特に、保育士など感情労働の職業においては、相手への接し方次第で、周りからの評価が好転しやすいです。また、相手から直接感謝の気持ちを伝えてもられる機会も多いですよ。保育士が仕事のやりがいを増やすためには、保護者や子供たちと接するなかで受け取る、ささやかな感謝の言葉や笑顔1つ1つを大きなご褒美として受け止めることが大切です。自分の仕事が誰かの役に立っていることが感情労働の最大のやりがいであり、そのやりがいに気付くことがストレス対策になるでしょう。
感情労働である保育士が大切にすべきことは?
ポジティブ思考
感情労働の代表的な職業である保育士は、ポジティブ思考でいることが大切です。子供たちとの関わりのなかで生活の指導をしたり情緒を育てることは、重要な仕事です。保育士は、子供たちの幼少期の感性を作る大切な時期に関わるため、子供の健全な成長をポジティブな思考でサポートする必要があります。保育士という仕事が感情労働である以上、職員同士の人間関係や保護者対応などが原因でネガティブな気持ちになってしまったとしても、子供たちの前ではポジティブに振る舞う必要がありますが、自分の心を尊重することは忘れないようにしましょう。
感情労働だからこその楽しさに目を向ける
感情労働は他の仕事にはない楽しさがあることも事実です。例えば保育士であれば、自分が楽しそうに振る舞うことで、子供たちを笑顔にしたり泣き止ませることができます。また、悩みを抱える保護者にしっかりと向き合うことで、保護者の笑顔を取り戻すこともできます。これは感情労働ならではの楽しみですよね。感情労働の大変さは、裏を返せば楽しさでもあります。仕事をするときは、つらいことよりも楽しいことに注目するように心がけましょう。
考えが合わないことも受け入れる

感情労働をする上で、相手と自分の考えが合わないことで思い悩む人は多いです。相手と自分の考えが合わない場合は、ひとまず相手の言葉に耳を傾け「あなたの考えはそうなのね」と、受け入れている姿勢を見せましょう。この時、相手の考えに心から同意する必要はありません。また、反発する必要もありません。相手と自分は違う人間であり価値観が違うのも当然だからです。相手と考えが合っても合わなくても、自分軸をしっかり持って対応しましょうね。ただ、子供たちの安全に関わる内容の認識に違いがあると、子供たちを危険にさらす可能性があります。この危機管理の認識は必ず関係者全員と共有し、同じ目線で子供たちを守れるように徹底しましょう。
どうしても感情労働に疲れた時は
職場環境を変えてみることも一つの手
感情労働に疲れてしまった時は、職場環境を変えてみることも一つの手です。例えば、職場の人間関係に悩んでいる場合は、別の保育園への転職を考えてみるのもおすすめですよ。大人数の子供との接し方に悩んでいる場合は少人数保育の保育園に異動するなど、自分に合った働き方ができる職場を探してみましょう。また、保育士免許があれば保育園だけでなく、乳児院や放課後等デイサービス、福祉施設等でも働くことができます。保育士免許を活かしながら、保育園以外の職場を経験してみるのも良いかもしれませんね。
まとめ
感情労働の特徴を理解して自分に合った対策をしよう
感情労働の特徴は、表層演技と深層演技という2種類の演技を使い分けて感情をコントロールしながら働くことです。感情をコントロールしながら働くなかで、自分の考えと行動の乖離が原因となるストレスが蓄積してしまい、疲弊する人も多い傾向です。自分がどんな時にストレスを感じやすいのかを自己分析しながら、仕事に対して自分なりのやりがいを見つけることで、ストレス対策ができますよ。この記事を参考にして、前向きな気持ちで感情労働の楽しさに目を向けてみましょう!