下の子が産まれて育休を取ったことで、上の子が保育園を退園させられてしまう育休退園。育休退園を経験した保護者の中には、突然2人の子供の育児を自宅で行わなければいけなくなり、大変な思いをした方もいるのではないでしょうか。一方で、育休を取って在宅しているのであれば、上の子を自宅で見るのは当たり前だとする意見もあります。この記事では、育休退園について、その制度が必要とされる理由やその問題点、最近の自治体の動きなどを説明していきます。育休退園の制度について保育士が意識すべきことも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
育休退園とは
下の子の育休中に上の子が保育園を退園させられること
育休退園とは、下の子の育児休業を取得中に、上の子が通っている保育園や幼稚園などの施設を退園させられることを指します。保育園を利用するためには、保護者が就労中であることや明確な保育の必要性があることなど、様々な条件があります。一方で、育休中の保護者はその要件を満たさないことが多いため、保育園側から退園をお願いされるケースが発生します。また、施設の方針や自治体の決定によって退園を求められることも多く、急な退園に戸惑う保護者も多いようですよ。
育休退園制度が必要とされる理由
保育士の人材不足
育児環境の変化に戸惑う保護者が多々発生する育休退園制度ですが、施設側や自治体は育休退園を保護者に求めざるを得ない理由があります。その1つが、保育園における保育士の人材不足です。保育士の人材不足は、保育園の運営に大きな影響を与えています。特に待機児童が多い地域では、定員を超える子どもを受け入れることが難しいため、育休中の家庭の子どもに対し保育の必要性が認められない場合が少なくありません。こうした背景から、施設側は限られた人員で効率的に運営を行うために、育休中の家庭に退園を促す傾向があるのです。
待機児童問題
育休退園制度が必要とされる理由に、保育園の定員に限りがある中で、待機児童問題を解消するための措置であるという点も挙げられます。待機児童問題のニュースを見聞きしたことがある方も多いかもしれませんね。まず育休退園制度は、保護者が育児休業中の子どもに対し、一時的に保育園から退園してもらう制度です。育休退園したことにより保育園の受け入れ枠が空くので、入園待機中の他の家庭がその枠を利用できます。特に、都市部では保育施設の不足と待機児童問題が深刻です。そのため、こうした育休退園制度がなければ受け入れ枠が圧迫され続け、いつまでも待機児童問題が解決できないと考えられている場合もあるのです。
家庭で行う育児の必要性
育休退園制度が必要とされる理由の1つとして、家庭で行う育児の必要性も挙げられるでしょう。育休中の保護者は、自宅で下の子を育児しているため、上の子も家庭内での育児が可能であると考えられている場合があります。そのため、保育園に子どもを通わせるために必要な要件である、保育の必要性を満たしていないと判断されることもあるでしょう。また、保護者がフルタイムで共働きの家庭にも関わらず、待機児童になってしまう場合もあるため、こうした家庭に保育園の枠を譲るべきという意見もあるようです。
育休退園のルール
一般的に育休中は保育園を利用できない
ここからは育休退園のルールについて説明します。まず育休退園制度は、育児休業を取得している保護者が不必要に保育園を利用し続けることを防ぎ、他の家庭の待機児童が入園できるようにするための制度です。一般的に保育園は、家庭で育児ができない保護者の子どもを預かる施設ですよね。そのため保護者が育休中の場合は、家庭での育児が可能であるとみなされるため、基本的に保育園を利用することができません。しかし、育児休業が終了して復職するタイミングであれば、再び保育園の利用を申請することができます。
特定の保育要件を満たせば保育園の継続利用が可能
一般的に育休中は保育園を利用できませんが、育休中でも保育園の継続利用が認められる場合があります。基本的に保育園を利用するためには、保育の必要性を明確に証明する必要がありますよね。内閣府が定める保育の必要性の項目には、「育児休業取得時に、すでに保育を利用している子どもがいて継続利用が必要であること」と書かれているのです。したがって、育休に入る前に上の子が保育園を利用している場合は、その項目に沿って継続利用が認められる可能性がありますよ。例えば、子どもまたは保護者に障害がある場合や、保護者の健康状態に問題がある場合なども、継続利用が認められるケースとして挙げられます。
継続利用の判断は自治体に任せられている
基本的に育休中は保育園の利用ができません。しかし、上の子が既に保育園に通っていて子どもや保護者に障害などがある場合、継続利用が認められる可能性があります。このような、下の子の育休中に上の子が保育園を継続利用できるかどうかの可否は、居住地の自治体によって判断が変わってきます。なぜなら、育休退園に関するルールは、法律で厳密に定められているわけではないからです。そのため、各自治体が自らの判断で運用方針や基準を定めているのが現状です。国は基本的な指針を示していますが、細かい適用については地方自治体に委ねられているため、地域ごとに対応が異なることを理解しておきましょう。
育休退園が問題視されている理由
保護者が上の子と乳児の面倒を同時に見る必要がある
育休退園が問題視されている理由の1つは、上の子と生まれたばかりの下の子の育児を、産後すぐの保護者が同時に行う必要があるという点です。育休退園制度により上の子を保育園に預けられなくなると、保護者は2人以上の子どもを同時に自宅で育児しなければいけません。産後の保護者にとって、その負担は想像以上に重いものです。また、仕事復帰を目指している保護者であれば、復職日の決定や会社との連絡、復職届の提出など復職前にやることが多々あります。子どもたちの保育園探しも行いながら職場復帰への準備をすることは簡単ではないでしょう。
保護者が職場復帰のときに子どもが全員入園できるか不確定
育休退園が問題視されている理由として、保護者が職場復帰のタイミングで、子どもたち全員が入園できない可能性があるという点も挙げられるでしょう。育休退園制度により育休中の家庭が退園することで、空いた枠を他の家庭が利用できるようになります。一方で、育休中の保護者が職場復帰をする際に入園申請をしても、希望する園に全て空きがなく、子どもを再入園させることができないという状況が発生しています。この場合、待機児童の増加につながるだけでなく、育休を取っていた保護者の職場復帰が困難になってしまいます。こうした経済的な観点からも、育休退園が問題視されているのです。
上の子の保育環境が突然変わる
上の子の保育環境が変わるということも、育休退園が問題視されている理由の1つです。保育園に通う子どもは、日々のルーチンや友達との交流を通じて社会性や自立心を育んでいます。保育園を退園するということは、その環境を突然変えることになるので、子どもが強い不安やストレスを抱えるかもしれません。また、自宅保育中にお友達との関りが減り、集団生活への適応が難しくなることもありますよ。さらに、保護者が復職時に再び保育園に通わせる場合、上の子が保育園のペースや環境に慣れ直す必要があります。こうした環境の変化は、子どもの心理的な負担となる可能性があるでしょう。
育休退園についての様々な意見
育休退園制度は当たり前だとする声
育休退園制度について、様々な意見があります。まずは、育休退園は当たり前だとする声です。こうした意見は、育休中の保護者が保育園を利用し続けることに対して、本来の育休制度の目的に反しているとの考えから生まれています。そもそも育児休業は、保護者が自宅で子どもを育てることを支援する制度です。そのため、育休中に保育園を利用すること自体が、育児の責任を果たしていないと見なされる場合があります。こうした理由から、育休中に保育園の利用を停止することは、育休制度の趣旨を守るためにも必要だという意見につながるのです。
育休退園制度は現代に合わないとする声
一方で、育休退園制度は現代に合っていないという声もあります。なぜなら、育休退園制度があることで、復職後に利用したい保育園を再び確保することが困難になる場合が多いからです。復職したい保護者にとって保育園を利用できないということは、育児と仕事の両立を困難にし、子どもを育てながら自身のキャリアアップを目指すことができない要因になると指摘されていますよ。さらに、育休中の家庭の子どもを保育園に預けることを一概に否定することは、現代を生きる保護者の多様な生活環境やニーズに配慮していないという意見もあります。
育休退園に関する自治体の動き
育休終了後に優先的に入園させる
育休退園については、それぞれの自治体が地域の実情に合わせて様々な対応を取っていますが、近年は下の子の育休終了後に優先的に保育園に入園できるようにする自治体の動きが広がっています。こうした取り組みの広がりにより、育児休業を取得している保護者が、復職後にスムーズに保育園を利用できる家庭が増えてきています。また、多くの自治体では、育休終了後の保育園入園を優先的に扱う育休明け優先枠を設けており、復職を控える家庭に対して、入園審査で優遇措置を取っていますよ。
育休中でも保育園の短時間利用を定める
また、育休中の家庭でも保育園の短時間利用を定める自治体の動きもあります。これは、育児休業を取得している保護者に、保育園の短時間利用を一定期間与える取り組みです。具体的には、育休中の利用制限を設けて、月に数日や週に数時間だけ保育園に通うことを認める形が一般的です。この取り組みは、保護者が育休を利用しつつ、徐々に仕事に復帰する準備ができるように支援することを目的としていますよ。育児と仕事の両立を支援し、保育園の空き状況にも配慮した柔軟な利用が可能となりますね。
育休制度を廃止する
一部の自治体では、育休退園制度を廃止する動きも見られます。育休退園制度を廃止する動きは、育児休業中でも保育園の利用を続けられるようにするためです。特に、育休終了後にスムーズに復職をするために必要な支援を強化することができると言われていますよ。また、育休退園を廃止する自治体では、育児休業を取得している間でも保育園の利用を認めています。例えば、産後すぐの保護者でも上の子を保育園に預けることができるので、家族の負担が軽減されますね。このような取り組みは特に都市部で進んでおり、育児と仕事の両立支援の一環として、今後は他の自治体でも広がる可能性があるでしょう。
育休退園制度について保育士が意識すべきこと
自分の園が属する自治体のルールを把握しておく
育休退園制度について保育士が意識すべきことの1つは、勤務先の保育施設が属する自治体のルールを把握しておくことです。自治体ごとに育休中の保育園利用に関する規定や対応が異なるため、理解しておくことが重要でしょう。例えば、一部の自治体では、育休中でも短時間利用や一時保育を認める場合がありますが、他の自治体では育休中に保育園の利用を制限することもあります。保育園に通う子どもの保護者が育休から復職する際に、必要な手続きや準備をサポートするためにも、自治体の方針を理解しておくことが欠かせません。自治体の規定に基づく対応を適切に行うことで、保護者との信頼関係を築き、円滑な保育運営を支えることができますよ。
保護者によって様々な意見があることを理解する
育休退園制度に対し、保護者によって様々な意見があることを理解するのも、保育士が意識すべきことの1つです。育児休業を取得する保護者は、一人ひとり家庭の事情や価値観が異なるため、育休中も保育園を利用したいと考える方や、育休中は保育園を利用しなくても問題ないと考える方がいます。また、育休退園制度が適用された保護者によっては、その対応に対して強い不安や疑問を持つ方もいるため、保育士は柔軟で配慮のある対応が求められます。様々な背景から、育休退園制度に対する理解や要望は保護者ごとに異なるため、各家庭の状況に寄り添いながら丁寧な説明やサポートを行うことが大切でしょう。
まとめ
育休退園には様々な問題が関係している
ここまで育休退園について、制度の目的や問題点、自治体の動きなどを説明してきました。育休退園は、育児休業中の親が上の子を保育園に通わせられなくなる制度です。この制度に対しては、保育士不足や待機児童解消のために必要だとする声がある一方で、育休を取る保護者の育児負担や復職にも懸念があるとする声もあります。また、自治体によって育休退園の対応が異なるため、まずはご自身が所属する自治体の取り組み内容を把握するようにしましょう。