皆さんは、社会福祉士という仕事をご存知ですか?高齢者や障害を抱える人の増加により、今後ますます需要が高まっていくことが予想されている国家資格です。この記事では、需要が高まる社会福祉士になるためには、具体的にどうすればよいのかを解説します。社会福祉士の資格を取得するための方法は、いくつかあるようです。社会福祉士を目指す方はこの記事を参考にして、ご自身の状況に適したルートを見つけてみてくださいね。
社会福祉士とは?
生活支援が必要な人やその家族の相談を受ける
社会福祉士とは、身体的・精神的な障害や高齢、貧困などにより日常生活に困難を抱えている人を対象に、生活支援や医療サービスに関する相談を受ける職業です。困難を感じている本人だけでなく、その家族など周囲の人からの相談を受ける場合もありますよ。直接的に介護を行うのではなく、サービスを紹介したり援助計画を提案したりと、相談者のために間接的なサポートをするのが特徴です。そのため、多岐にわたる相談内容にも適切に対応できるように、複雑化している福祉制度のすべてを把握しておく必要があります。社会福祉士の仕事内容や働く場所など、詳しくは以下の記事を参考にしてみてくださいね。
社会福祉士になるには?
社会福祉士試験の受験資格を得る
社会福祉士になるためにまずすべきことは、社会福祉士国家試験の受験資格を得ることです。受験資格を得る方法は12通りあります。詳細については後ほど触れますが、福祉系の大学を卒業したり、短期養成施設を修了したりすることが必要ですよ。また、相談援助の実務経験を積むことも必要です。受験資格を得るまでの間、福祉全般についてしっかりと学び、資格取得後の実務に活かせるようにしましょう。
社会福祉士試験を受ける
国家試験の受験資格を得た後は、社会福祉士国家試験を受けましょう。社会福祉士国家試験は、年に1回、2月上旬ごろに毎年実施されています。試験の申込期間は9月上旬~10月上旬で、受験費用は19,370円です(いずれも第37回(2024年度)試験時点)。社会福祉士と精神保健福祉士を同時に受験したり、社会福祉士の共通科目免除で受験したりする場合は受験料が異なるため、自分がどれに当てはまるのかを確認するようにしましょう。社会福祉士の国家試験に関しては、後ほど詳しく解説します。
登録申請を行う
社会福祉士国家試験に合格したら、社会福祉士として登録申請を行います。登録手順は以下の通りです。
- 必要書類を簡易書留で試験センターに郵送する
- 書類受理後、試験センターで審査と登録手続きが行われる
- 登録証が交付される
社会福祉士の資格を取得する12のルート
福祉系大学や短大等で指定科目を履修するルート
次に、社会福祉士国家試験の受験資格を得るための12のルートについて解説します。この12のルートは、大きく3つに分けることができますよ。1つ目は、福祉系大学や短大等で指定科目を履修するルートです。具体的には以下のようなルートがあげられます。
- 福祉系大学等(4年)で指定科目を履修・卒業する
- 福祉系短大等(3年)で指定科目を履修・卒業し、相談援助実務を1年以上経験する
- 福祉系短大等(2年)で指定科目を履修・卒業し、相談援助実務を2年以上経験する
短期養成施設等を修学するルート
2つ目は、短期養成施設等を修学するルートです。具体的には以下のようなルートがあげられます。
- 福祉系大学等(4年)で基礎科目を履修・卒業し、短期養成施設等で6ヶ月以上必要な知識及び技能を修得する
- 福祉系短大等(3年)で基礎科目を履修・卒業し、相談支援実務を1年以上経験し、短期養成施設等で6ヶ月以上必要な知識及び技能を修得する
- 福祉系短大等(2年)で基礎科目を履修・卒業し、相談援助実務を2年以上経験し、短期養成施設等で6ヶ月以上必要な知識及び技能を修得する
- 社会福祉主事養成機関(2年以上)を修了した後、相談援助実務(2年以上)を経験し、短期養成施設等で6ヶ月以上必要な知識及び技能を修得する
- 指定資格の実務を4年以上経験し、短期養成施設等で6ヶ月以上必要な知識及び技能を修得する
一般養成施設等を修学するルート
3つ目は、一般養成施設等を修学するルートです。具体的には以下のようなルートがあげられます。
- 一般大学等(4年)を卒業し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
- 一般短大等(3年)を卒業し、相談援助実務を1年以上経験し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
- 一般短大等(2年)を卒業し、相談援助実務を2年以上経験し、一般養成施設等で必要な知識及び技能を修得する
- 相談援助実務を4年以上経験し、一般養成施設等で1年以上必要な知識及び技能を修得する
受験資格となる実務経験は?
児童分野での実務経験
前述した12のルートのうち、多くのルートで必要な相談援助実務は、実務経験として認められるものが決められています。その職種にはさまざまな分野のものがありますが、そのうちの1つは児童分野です。実務経験として認められる児童分野の就業施設や職のうち、代表的なものは以下の通りです。
施設名 | 職種 |
---|---|
児童相談所 | 児童福祉司・受付相談員・相談員・電話相談員・児童心理司・心理判定員・児童指導員・保育士 |
母子生活支援施設 | 母子支援員・母子指導員・少年指導員・個別対応職員 |
知的障害児施設 | 児童指導員・保育士 |
障害児通所支援事業 | 指導員・児童指導員・保育士・児童発達支援管理責任者・障害福祉サービス経験者 |
障害児相談支援事業 | 相談支援専門員 |
児童自立支援施設 | 児童自立支援専門員・児童生活支援員・個別対応職員・家庭支援専門相談員・職業指導員 |
高齢者分野での実務経験
実務経験として認められる職種のうち、2つ目は高齢者分野です。代表的なものは以下の通りです。
施設名 | 職種 |
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介護保険施設〈指定介護老人福祉施設・介護老人保健施設・指定介護療養型医療施設〉 | 生活相談員・支援相談員・相談指導員 |
地域包括支援センター | 包括船事業に係る業務を行う職員・保健師・主任介護支援専門員等 |
指定夜間対応型訪問介護を行う施設 | オペレーションセンター従事者 |
指定認知症対応型共同生活介護を行う施設 | 介護支援専門員 |
介護予防支援事業を行っている事業所 | 担当職員 |
障害者分野での実務経験
実務経験として認められる職種のうち、3つ目は障害者分野です。代表的なものは以下の通りです。
施設名 | 職種 |
---|---|
身体障害者更生相談所 | 身体障害者福祉司・心理判定員・ケースワーカー |
点字図書館 | 相談援助業務を行っている専任の職員 |
精神保健福祉センター | 精神保健福祉相談員・精神保健福祉士・精神科ソーシャルワーカー |
知的障害者更生相談所 | 知的障害者福祉司・心理判定員・職能判定員・ケースワーカー |
その他の分野での実務経験
上記3つ以外の分野の職種でも、実務経験として認められるものがあります。代表的なものは以下の通りです。
施設名 | 職種 |
---|---|
保健所 | 精神保健相談員・精神保健福祉士 |
婦人相談所 | 相談指導員・心理技能判定員・専任の婦人相談 |
更生保護施設 | 補導主任・補導員 |
授産施設 | 指導員 |
福祉事務所 | 査察指導員・家庭児童福祉主事・家庭相談員・面接相談員 |
刑事施設 | 刑務官・法務教官・法務技官・福祉専門官 |
受験資格として認められていない実務経験
受験資格として認められている職種や実務経験が多くある一方、認められていない職種や実務経験もあるため注意が必要です。認められていない場合は以下の通りです。
職種・事業 | 実務経験に該当しない場合 |
---|---|
指導員 | 「介護等の業務を行う指導員」として介護福祉士国家試験を受験した方 |
児童指導員 | 保育士から継続して児童指導員となり、「入所者の保護に直接従事する児童指導員」として介護福祉士国家試験を受験した方 |
保育士 | 「保育士」のうち、「入所者の保護に直接従事する保育士」として介護福祉士国家試験を受験した方 |
障害福祉サービス経験者 | 「障害福祉サービス経験者」のうち、「介護等の業務を行う障害福祉サービス経験者」として介護福祉士国家試験を受験した方 |
生活支援員・生活指導員・指導員 | 「介護等の業務を行う生活支援員・生活指導員・指導員」として介護福祉士国家試験を受験した方 |
第一号通所事業(高齢者分野) | 事業者指定を受けていないもの等 |
包括的支援事業(保健師・主任介護支援専門員等) | 一部の事業 |
社会福祉士の国家試験について
国家試験の科目
社会福祉士の国家試験では、福祉に関する知識全般が求められます。実際の試験で出題される範囲は以下の通りです。
- 医学概論
- 心理学と心理的支援
- 社会学と社会システム
- 社会福祉の原理と政策
- 社会保障
- 権利擁護を支える法制度
- 地域福祉と包括的支援体制
- 障害者福祉
- 刑事司法と福祉
- ソーシャルワークの基盤と専門職
- ソーシャルワークの理論と方法
- 社会福祉調査の基礎
- 高齢者福祉
- 児童・家庭福祉
- 貧困に対する支援
- 保健医療と福祉
- ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)
- ソーシャルワークの理論と方法(専門)
- 福祉サービスの組織と経営
合格基準や合格率
社会福祉士国家試験の合格基準は、総得点のうち60%以上獲得することかつ、指定の6科目群すべてにおいて得点することです。配点は1問1点の129点のため、78点以上が合格の基準となるでしょう(問題の難易度により点数の補正あり)。また、2024年2月に行われた第36回試験の合格率は、58.1%でした(34,539人が受験し20,050人が合格)。近年、合格率は年々上昇しています。試験の合格基準について詳しくは、試験センターのページを確認してみてくださいね。
2025年2月実施試験より新カリキュラムに
2025年2月に実施予定の第37回試験から、新カリキュラムが導入されます。2021年度以降、福祉系大学や短大などの教育機関では新カリキュラムにのっとった授業が行われているため、最近大学を卒業した人は安心して試験に臨むことができるでしょう。変更された点は、以下の通りです。
- 科目名「相談援助」が「ソーシャルワーク」に変更
- 新科目「地域福祉と包括的支援体制」が追加
- 実習の名称が「相談援助実習」から「ソーシャルワーク実習」に変更
- 実習時間が180時間から240時間以上に増加
- 実習場所が1か所以上から2か所以上に増加
社会福祉士資格取得に向けた勉強のポイントは?
最新のテキストを使う
社会福祉士の資格を取得するには、多くの勉強をする必要があります。勉強をするときのポイントとして、最新のテキストを使うことがあげられます。次回の試験から新カリキュラムが導入されるほか、頻繁に法改正が行われるため、常に新たな情報を得ることが大切でしょう。独学で学べることには限界があるほか、最新の情報も手に入れずらいため、通信講座などの受講がおすすめです。
模擬試験を受験する
また、模擬試験を受けてみるのも良いでしょう。自身の知識がどのくらい定着しているのか、定期的に確かめることが大切です。試験に合格するには、全科目群で得点することが必要なため、バランスよく得点が取れているかも確認してみましょう。試験問題は全部で150問あり、240分という長い時間をかけて行われるため、自分のペースを身に付けておくことも必要です。模擬試験や過去問で本番に向けて対策しておきましょう。
まとめ
社会福祉士の資格はさまざまな方法で取得可能
いかがでしたか?今回は、社会福祉士になるためにはどうしたら良いのかを解説し、国家試験の概要などについても紹介しました。社会福祉士になるための条件は多くあります。また、試験の難易度も高いため、社会福祉士の合格は狭き門と言えるでしょう。一方で、社会福祉士は今後需要が増していくことが考えられています。困っている人に寄り添える仕事に就きたいという方は、ぜひ社会福祉士を目指してみてくださいね。