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保育をしていると「この言葉は使ってよかった?」「この言葉は避けるべきだったかも」と感じることがあるかもしれません。保育士が使う言葉は子どもに対して大きな影響を与えます。そのため、保育を行う上で言葉遣いには十分注意する必要があります。また、保護者に対しても相手に配慮した言葉を使うことが重要。今回の記事では、保育士が子どもに言ってはいけない言葉、保育士が保護者に言ってはいけない言葉やポイントなどを解説しています。ぜひ今後の保育の参考にしてみてください。
保育士が子どもと保護者に言ってはいけない言葉とは
相手の心を傷つけたり自信を低下させるような言葉

保育施設で働く保育士は、子どもや保護者と信頼関係を築く重要な役割を担っています。そのため、相手の心を傷つけたり、自信を低下させるような言葉を使うことは避けなければなりません。例えば「◯◯ちゃんにはできないかぁ」や「そんなことする子は先生好きじゃない」などの言葉は、子どもの心を傷つけ、人格を否定されたような気持ちにさせます。保育のプロである保育士の言葉には、良くも悪くも影響力があるのです。子どもたちに限らず保護者に対しても前向きで優しい言葉と雰囲気を心がけ、相手が安心して話せるような環境を作ることが大切です。子どもと保護者の気持ちに寄り添いながら、共感や励ましの言葉を通じて信頼関係を築くことで、より良い保育につなげられますよ。
保育士が子どもに言ってはいけない言葉
頭ごなしに叱る言葉
「何やってるの!」「もういい加減にしなさい!」などの頭ごなしに叱る言葉は、子どもの心に深い傷を残す可能性があります。頭ごなしに叱る言葉は、子どもの行動を改善するどころか不安や恐怖心を与えるので、信頼関係を損なう原因になりかねません。特に幼い子どもは、なぜ叱られているのか理解できないまま自己肯定感を失ってしまうことがあります。言い換え例としては「どうしてそうしたのかな?」「~だからしてはいけないんだよ」など、子どもでも理解しやすい具体的な言葉で伝えて、子ども自身に考えてもらう機会を与えましょう。
決めつける言葉
「あなたはいつもそうだね」「どうせできないんでしょ」など、子どもの行動を一方的に決めつける言葉も避けるべきです。このような発言は、子どもの自己肯定感を低下させ、「どうせ自分はダメだ」と思わせる原因になります。言い換えとして「どうしてそうなったのかな?一緒に考えようか?」「こうしてみたら、次はうまくいくかも!」といった前向きな言葉を使いましょう。子どもの行動に理解を示しながら励ましの言葉を加えることで、子どもに安心感を与えられます。
命令する言葉

「我慢しなさい」「早くやりなさい」といった命令する言葉は、子どもの自主性や意欲を奪う可能性があります。命令された内容が今やるべき行動だったとしても、行動すべき理由が理解できていないと子どもは不満や反発を感じることがあります。そして、理解も納得もできていない命令を強制されることで、子どもの自主性や意欲の低下につながる可能性があるのです。言い換えとして「どっちが早くできるかな?」といった、子どもが楽しく行動できるような声掛けをしてみましょう。また、「我慢しなさい」「泣き止みなさい」の言い換えとして「大丈夫?」「そうなんだね」と、子どもの気持ちに共感する言葉かけをすることも大切ですよ。
脅す言葉
「~するなら置いていくよ」「~するなら取り上げるよ」など、脅すような言葉をかけて子どもを従わせるのはやめましょう。こうした言葉を保育士が使い続けると、子どもたちも真似をして友達や年下の子どもを脅すようになる可能性があります。言い換えとして「これが終わったらみんなで楽しいことをしよう」などのポジティブな言葉や、「〇〇ちゃんはこうしたかったんだね」と共感する言葉を使いましょう。恐怖心ではなく、安心感や信頼感を与えられるような言葉を用いることで、子どもたちはポジティブな感情のまま気持ちの切り替えができるようになりますよ。
否定する言葉
「そんなこともできないの?」「全然ダメだね」といった否定する言葉は、子どもの自信を奪い、自己肯定感を低下させる原因になります。こうした言葉を言われた子どもは、「自分には価値がない」「どうせ失敗する」といった否定的な自己評価をしてしまいます。言い換えとして「ここは難しかったね。でも、ここは頑張っていたよね。次はこうしてみる?」など、努力していたことを具体的に伝えて子ども自身を認めながら、改善方法の提案をする言葉をかけることが大切ですよ。
比較する言葉

「〇〇ちゃんは〇〇ちゃんより小さいね」「お友達はできるのに〇〇ちゃんはできないね」といった他者と比較する言葉は、子どもに劣等感を与える原因になります。特に、兄弟や友達との比較は子どもの心に深い傷を残し、成長と共に変化する人間関係においても悪影響を及ぼす可能性があります。言い換えとして、「一生懸命頑張ったね」「少しずつ上手になっているよ」など、その子自身の成長や努力を認める言葉をかけることが望ましいです。また、もし子どもが自分と他者との違いを気にしているようであれば、「あなたのままでいいんだよ」と子ども自身を認める言葉をかけてあげましょう。
保育士が保護者に言ってはいけない言葉
保護者の意見を否定するような言葉
「そんなはずはないです」「それは違います」と、保護者の意見を否定するような言葉は保護者に不快感を与えてしまいます。また、保護者は自分の意見を尊重されていないと感じると、不安や不信感を抱くことがあります。言い換えとして「そのように感じられたんですね」「そのようなことがあったんですね」というような、共感を示す言葉かけがおすすめですよ。保護者の意見に納得がいかない場合でも否定から入るのではなく、まずは保護者の気持ちを受け止めた上で穏やかに対応しましょう。
保護者の育児を否定するような言葉

「愛情不足ではないですか」「子どもがかわいそう」というような、保護者の育児を否定する言葉は避けましょう。保護者が懸命に取り組む育児を否定することで、保護者は子育てに対する意欲を喪失してしまうかもしれません。また、保育士から見て愛情不足だと感じたとしても、実際は保護者なりに子どもへ愛情を注いでいる可能性も考えられます。それでも保護者に伝えたいときは、「かわいそう」といった保育士の主観でしかない言葉を使うのではなく、子どもの気持ちに焦点をあてて「今日は頑張ったのでたくさん褒めてあげてくださいね」というような言葉をかけしましょう。子どもの視点をイメージして話をすることが望ましいですね。
問い詰めるような言葉
保護者に対して「なぜ~なんですか」「どうして~できないんですか」と問い詰めるような言葉は避けましょう。保護者は責められているように感じ、ひどく落ち込んでしまう可能性があります。例えば「~が原因だったのではないでしょうか」「こうなった理由に心当たりはありますか?」というような、原因に焦点をあてて質問するようにしましょう。また、「私たちも原因について考えてみますね」というように、原因について一緒に考えている姿勢を伝えることも大切です。こうした言葉の配慮は、保護者に安心感を与えることができますよ。
高圧的な言葉
「ちゃんと~してください」というような高圧的な言い方は、保護者に過度なプレッシャーや威圧感を与えてしまう可能性があります。また、保護者の反感を買ったり不信感を与えてしまうかもしれません。保護者に何かしてもらいたいことがある場合は「~してもらえると助かります」というように、丁寧に依頼する形で頼みましょう。命令のような言い方ではなく、お願いする言い方で伝えると保護者も協力しやすくなります。
子どもを比較する言葉
「他の子はできているのに〇〇ちゃんはできないんですね」と、子どもを他の子と比較する言葉は保護者の不安を煽ることになります。このように比較する言葉を保育士から言われると、保護者は不安と焦りから、他の子どもに追いつかせようとして子どもに無理をさせてしまうかもしれません。子どもの発達や成長には個人差があります。保護者が自分の子どもと他の子どもを比較して心配している場合は、子どもの日々の成長を伝えていきましょう。そうすることで、保護者に安心感を与えて、信頼関係を築いていくことができますよ。
決めつける言葉

「〇〇くんには発達の遅れがあります」という発達に関して決めつけるような言葉は、保護者に強いショックを与えてしまう可能性があります。特に、専門的な診断がないにも関わらず保育士が断言することは、保護者が不必要な不安を引き起こす原因になります。子どもの発達に心配がある場合は、まずは他の保育士や専門医に相談して、状況を客観的に把握することが大切ですよ。保護者に伝える際は、面談などで落ち着いた雰囲気を作り、まずは「最近〇〇くんのことで気になることはありますか?」と尋ねるようにしましょう。
保育士が子どもに言葉をかけるときのポイント
子どもの立場に立って考える
保育士が子どもたちに言葉をかけるときは、子どもの立場に立って考えることが大切です。「どうしてこんなことをしたの?」と責めるような言葉よりも、「こうしたかったんだね」「困った気持ちだったのかな?」と子どもの気持ちに寄り添うような言葉をかけましょう。子どもたちは、伝えたい言葉や感情の整理がまだ十分ではないため、保育士が子どもたちの言葉の意図を汲み取って代弁したり共感を示したりする必要があります。こうした対応により子どもたちは安心感を得られますよ。日頃から子どもの気持ちを理解する姿勢を持つことで、信頼関係を築いていくことができますね。
具体的に伝える
「ちゃんとしなさい」や「いい子にしてね」といった抽象的な言葉は、子どもにとって理解しづらい表現です。例えば「~だからしてはいけないよ」と理由を具体的に伝えることで、子どもも納得してくれるようになります。また、注意するときは「走らないで!」よりも「ゆっくり歩こうね!」と、してほしい行動を柔らかい表現で伝えるようにしましょう。具体的な言葉かけは、子どもの行動の理解や改善を促し、結果として成長をサポートすることにつながります。
保育士が保護者に言葉をかけるときのポイント
保護者の立場に立って考える

保護者に言葉をかける際には、まず保護者の立場や気持ちに寄り添うことが大切です。例えば、子どもの行動や成長に関する指摘をする場合、保護者が日々の子育てで抱えている不安やプレッシャーを理解して共感する姿勢を示しましょう。「〇〇くんは~を頑張っていますよ」とポジティブな点をまず伝えた上で、「~な部分も一緒に見守りたいですね」と、改善点をやんわりと提案するとよいでしょう。保護者に安心感を与える言葉かけは、強い信頼関係を築いていくことにつながります。
保護者に配慮した言葉遣いを意識する
保護者に対する言葉遣いは、慎重に選ぶ必要があります。例えば、「~するべきです」といった断定的な表現や、「〇〇は間違っています」と否定する言葉は避けましょう。その代わりに、「こういった方法も試してみるといいかもしれません」と、選択肢を提示する形で柔らかく伝えることで、保護者の気持ちに配慮した対応ができますよ。また、専門用語を多用せず、分かりやすく具体的な言葉を選ぶことも重要です。保護者が安心して前向きな気持ちで子育てに向き合えるように、丁寧で思いやりのあるコミュニケーションを心がけましょう。
まとめ
相手に配慮した言葉遣いを心がけよう

いかがでしたか。保育士の言葉遣いは、子どもや保護者との信頼関係を築く上で非常に重要です。一方的に指摘したり、感情的な言葉を使ったりすると、相手を傷つけてしまい不信感を与えることがあります。そのため、相手の立場や気持ちを考えた配慮のある言葉選びを心がけましょう。子どもには、具体的でポジティブな言葉を使い、安心感を与えることが大切です。また、保護者には、共感を示しつつ柔らかい表現や選択肢を提示する形で伝えていきましょう。保育士自身も、冷静で思いやりのある対応を意識することで、子どもや保護者にとって信頼できる存在になることができます。相手に寄り添った言葉遣いを徹底し、より良い保育環境を築いていきましょう。