保育園の運営上の理由で、自宅で園児と一緒に過ごすことを保護者にお願いする協力日。保護者と子どもが一緒にいられる時間が取れると評価する意見がある一方で、家庭の事情により自宅での育児が困難な場合もあり、問題点として挙げられることもあります。この記事では、協力日の目的やその過ごし方、保育士が協力保育を保護者に頼むときのポイントなどを紹介していきます。協力日を控えている保育士の方はもちろん、協力保育をお願いされたことがある保護者の方も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
協力保育とは?
園児を家庭で保育してもらうようにお願いすること

協力保育とは、園児を自宅で保育してもらうように保護者にお願いをすることです。一般的には、園側の事情によって一時的に保育施設で保育を行うことが難しい場合に活用されますよ。このとき、自宅での過ごし方について具体的なアドバイスを保育士が保護者に提供することがあります。協力保育は保育士の働き方改革にも良い影響を与えるだけでなく、保護者と保育施設の連携を深める効果もあります。また、家庭内での教育やコミュニケーションがより充実し、親子の絆が深まる機会にもなるでしょう。
協力保育の目的
保育士の負担軽減

ここからは、協力保育の目的について説明していきます。1つ目に挙げられるのは、保育士が抱える業務の負担軽減になるということです。保育士の仕事は、長時間労働や休みの取りにくさから、その負担が度々指摘されています。協力保育が導入されることで、保育士間のシフト調整がしやすくなり、有休が取得しやすくなるかもしれません。また、事務作業だけに集中できる時間を設けられるため、日々の業務を減らせるうえに残業減少にもつながるでしょう。
親子との絆を深める機会を提供する

協力保育の目的としては、親子の絆を深める機会を提供するということも挙げられます。保育園を利用している家庭の子どもたちは、朝から夕方まで保育園で過ごしています。そのため家庭によっては、子どもの発達具合や好きな遊びなどの認識が不足している保護者もいるかもしれません。協力保育を取り入れることで、保護者が子どもについての理解を深められる機会が作れます。また、親子のコミュニケーションを促進するきっかけにもなりますよ。
運営や施設管理の調整

保育施設の運営や施設管理の調整により保育ができない場合にも、協力保育が行われることがあります。例えば、保育園の施設の一部を改修する必要があるときや、イベント運営の準備などで保育士の負担が増加する時期などが挙げられます。保育園は普段、朝から夕方まで子どもたちを預かりながら、同時に様々な業務を行っています。そのため、大きなイベントの前日や年度末など、子どもを保育する以外の業務量が増える時期に協力日をお願いすることが多いと言えるでしょう。
協力日はいつ設けられることが多い?
保育園の大きな行事の前
協力日は、保育園の大きな行事の前に設けられることが多々あります。例えば、運動会や夏祭りなどでは、園庭の整備や飾りつけ、子どもたちの衣装や保護者に配布するプログラムの準備など、様々な業務を行う必要がありますよね。普段の保育業務に加えて、行事の準備を全て行うのはとても大変です。そのため園によっては、大きな行事の前日に協力日をお願いする場合もあるそうです。丸一日の協力保育ではなくても、早めのお迎えをお願いするなど、柔軟に活用している園もありますよ。
お盆休みや年末年始

お盆休や年末年始に協力日を設けている園も多い傾向です。お盆や年末年始は、一般的な企業も休みになるため、保護者も自宅にいることが多いのではないでしょうか。そのため、自宅での保育に取り組みやすい期間とも言えます。この期間に協力日をお願いすることで、家庭の負担も軽減しつつ、保育士も十分な休暇を取ることができます。家族や親戚との交流も生まれやすい時期であるため、子どもにとっても良いタイミングだと言えるでしょう。
年度末

年度末に協力日を設けている園もありますよ。年度末は、保育士が最も忙しい時期といっても過言ではありません。子どもの年度評価や記録の整理、進級や卒園準備の他、翌年に向けての書類の更新など、様々な業務を行う必要があります。協力日を設けることで、これらの業務を効率的に進めるのがねらいです。3月31日を協力日にして、その日に一斉に園児の名前の張替えやクラス替えの準備などを行う園も多いですよ。
協力日が設けられる具体的な理由
保育士が研修を受けるから

ここからは、協力日が設けられる具体的な理由について紹介していきます。1つ目に挙げられるのが、保育士が研修を受けるからということです。保育園の方針や地域の規定にもよりますが、多くの保育園では保育士に向けた研修を設けています。保育士の年次に関わらず定期的に研修を実施することで、保育士のスキルや知識の向上が期待できますよね。また、最新の保育方法や保育に関連する法令の変更に対応するための勉強会を開催することもありますよ。これらの研修や勉強会は、半日または丸一日使って行われることもあり、その場合に協力保育をお願いすることがあります。
施設のメンテナンスが必要だから

施設のメンテナンスが必要であるという理由で、協力日が設けられることもあります。子どもたちが安全で快適に過ごすためには、保育施設の定期的なメンテナンスは欠かせません。例えば設備や遊具が破損していないか、床や壁に危険な部分がないか、空調設備やトイレの衛生面などを確認したりすることも必要でしょう。設備のメンテナンスや修繕が大掛かりになる場合は、園児を預かるスペースが十分に確保できないこともあります。そこで一時的に協力日を設け、メンテナンス作業を効率的に進められるようにするということです。
保育士が休暇を取る必要があるから

保育士が休暇を取るために協力日が設けられていることがあります。特に、保育士は常に人手不足が問題視されており、休暇が取りにくいという現状があります。また、休暇を取ることで他の保育士の負担が増えてしまうという問題もあります。保育園が人手不足では安全な環境で保育を行えないため、急な欠勤や休暇も取りにくくなってしまうのです。そこで、定期的に協力日を設けることで、保育士の休暇取得を促す園が増えてきています。保護者の負担も考慮しながら、保育士の働く環境の改善につなげていきたいですね。
行事や年度前の準備をするから

行事や新年度前の準備に集中したいという理由で、協力日を設けている保育施設もあります。保育園では年間を通して様々な行事がありますよね。入園式から遠足や夏祭り、運動会やクリスマス会、卒園式などが代表的な行事です。どれも多くの準備を必要とする行事ですが、特に園内の飾りつけが必要な入園式や夏祭り、書類作成や整理が沢山ある年度末や新年度などは、保育士が最も忙しい時期と言われています。こうした時期に協力日を設け、集中的に準備を進めるやり方も効率的と考えられていますよ。
協力保育の問題点
保護者の負担が増える

協力保育には様々な目的や効果がありますが、一方で問題点もあります。その中の1つが、保護者の負担が増えるという点です。協力日は、普段であれば保育園に預けられる日に自宅での保育をお願いすることです。そのため、普段自宅で子どもを見れない保護者は会社を休まなければなりません。例えば、年度末の忙しい時期に協力日が設けられた場合や休みが取りにくい職場で勤務する保護者の場合、仕事を休んで自宅で子どもを見ることに負担を感じることも少なくはないでしょう。
家庭環境による過ごし方の差が生まれる
家庭環境によって過ごし方の差が生まれるという問題もあります。保育園に通う子どもたちは、お友達と遊んでみんなで給食を食べて、同じ時間にお昼寝をして…と決められた環境とスケジュールで1日を過ごすのが一般的です。一方で、自宅での保育では、その日1日の過ごし方は完全に各家庭に委ねられることになります。絵本やおもちゃが沢山あり保護者と一緒に遊べる家庭であれば、子どもは退屈しないかもしれません。しかし、保護者と子どもが一緒に遊ぶ時間が少なく遊ぶ環境も整っていない家庭だと、自宅保育が難しいと感じる保護者も出てくるかもしれませんね。
保護者間で不公平感が生まれる

保護者の間で不公平感が生まれるというのも問題点の1つです。協力保育は、あくまでも自宅保育を“お願い”する日なので、子どもを保育園に預けられない日ではありません。自宅での保育が可能なご家庭は、保育園に子どもを預けるのを控えてください、という日です。なので、どうしても自宅で子どもを見ることができない家庭は保育園に預けることが可能です。そのため、頑張って仕事を休んで協力保育に協力する保護者と、それができない保護者がいることで、保護者の間で不公平感が生まれてしまうという懸念があるのです。
協力保育を保護者にお願いする時のポイント
協力保育を行う目的と理由を丁寧に説明する

ここからは、協力保育を保護者にお願いするときのポイントについて解説していきます。上記で説明した通り、協力保育は保育園にとって必要でも、保護者の負担が増えてしまう可能性があります。そのため、まずは協力保育を行う目的と理由を丁寧に保護者へ説明するようにしましょう。保育士の研修や保育施設のメンテナンスのためなのか、または休暇を取るためなのか、理由を丁寧に説明することで、保護者も納得した上で協力保育に協力することができますよ。
家庭でできる簡単な遊びや過ごし方を共有する

協力保育をお願いするときに、自宅でできる簡単な遊びや過ごし方を共有することも、おすすめのポイントです。子どもを保育園に預けている保護者の中には、1日子どもを自宅で見てくださいと言われても、どのように過ごせば良いのかわからない人もいます。特別なおもちゃや広いスペースが無くても、自宅で簡単にできる遊びのアイデアを共有することで、自宅保育のハードルをぐっと下げることができますよ。
協力保育の受け入れに感謝を示す

協力保育をお願いして承諾を得られた場合には、協力保育の受け入れに対する感謝の気持ちをしっかりと保護者に伝えましょう。子どもの健やかな成長のためには、保育士と保護者の協力が欠かせません。保護者の協力によって園児が楽しみにしている行事が滞りなく開催できることや、施設の安全性を維持できること、保育サービスを健全に維持できることの感謝を伝えることで、お互いに気持ちよく協力保育を活用することができますよ。
まとめ
協力保育の活用で保育士と保護者の負担を軽減しよう
ここまで、協力保育の目的や行われる時期、問題点などについて説明してきました。協力保育とは、普段は子どもを預けられる日に自宅での保育をお願いすることです。それによって保育士の休暇や研修、年度末の準備などを効率的に進められるようになります。保育園の円滑な運営のために必要な制度ではありますが、保護者の負担や各家庭間での不公平感など、課題はあります。保護者に快く協力保育に協力してもらうためにも、協力保育を行う目的の説明や自宅保育に役立つアイデアを共有しましょう。協力保育を上手く活用して、保育現場がより働きやすくなると良いですね。