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保育園では免疫力が未発達な乳幼児を預かるため、食中毒の予防は非常に重要です。調理や食事の提供、日常の保育活動において衛生管理を徹底し、食中毒を未然に防ぐための取り組みが欠かせません。今回の記事では、保育園での食中毒予防について、3原則や予防のポイント、食中毒になった際の応急処置などを詳しく解説します。また、食中毒の主な原因や症状も解説していますよ。食中毒についてより詳しく知り、子どもたちの健康を守っていきましょう。
食中毒の主な原因
細菌性食中毒

細菌性食中毒は、食品中で増殖した細菌や、その細菌が作り出す毒素が原因で起こる食中毒です。代表的な原因菌には、
・カンピロバクター
・腸管出血性大腸菌(O157など)
・黄色ブドウ球菌
などがあります。これらの菌は、加熱不足の食品や不適切な保存、または調理器具の衛生管理が不十分な場合に食品に付着します。そして、体内に入ることで嘔吐や下痢、腹痛などの症状を引き起こします。特に気温や湿度が高い夏場は、細菌が繁殖しやすいため注意が必要です。
ウィルス性食中毒
ウイルス性食中毒は、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスが原因で発生します。主に汚染された食品や水、あるいは感染者との接触を通じて感染し、少量のウイルスでも発症するのが特徴です。症状としては、嘔吐や下痢、腹痛、発熱などが見られ、特に冬季に流行しやすい傾向があります。感染力が非常に強いため、手洗いや調理器具の消毒など、日常的な衛生管理が食中毒予防において非常に重要と言えるでしょう。
寄生虫
食中毒の原因のひとつに寄生虫があり、特に魚介類に含まれるアニサキスが代表的です。アニサキスは加熱や冷凍処理が不十分な生魚を食べることで体内に侵入し、激しい腹痛や嘔吐を引き起こします。また、豚肉などに含まれる有鉤条虫や無鉤条虫なども、加熱不十分な肉を摂取することで感染しますよ。これらの寄生虫による食中毒は、適切な加熱処理や衛生的な調理によって予防することが可能です。
食中毒の主な症状
腹痛・下痢

食中毒の代表的な症状として腹痛と下痢があります。これらは体内に侵入した細菌やウイルス、毒素、寄生虫などに対する防御反応として現れます。腹痛は腸の炎症や収縮によって引き起こされ、差し込むような痛みや鈍痛を伴うことがあります。下痢は腸の水分吸収機能が低下したり、異物を体外に排出しようとする働きによって起こります。脱水症状を防ぐため、水分補給を十分に行うことが重要ですよ。
吐き気・嘔吐

食中毒の主な症状の1つに、吐き気や嘔吐があります。これは体内に侵入した有害な細菌やウイルス、毒素などを排出しようとする身体の防御反応の1つです。吐き気や嘔吐の多くは、有害な細菌やウイルスを摂取した後から数時間以内に発症します。特に、黄色ブドウ球菌やノロウイルスによる食中毒では、突然激しい嘔吐が起こることがありますよ。嘔吐が続くと脱水症状や電解質の異常を引き起こす危険があるため、水分補給や必要に応じた医療機関での処置が重要です。
食中毒予防の3原則
つけない

食中毒予防の3原則の1つであるつけないとは、病原菌を食材や調理器具に付着させないことを指します。調理前の手洗いや、肉・魚・野菜を切る際のまな板や包丁の使い分けが重要です。また、調理中は生肉などを扱った手で他の食材に触れないようにし、使い終わった器具やふきんはすぐに洗浄・消毒する必要があります。こうした食中毒予防対策により、交差汚染を防ぎ、食中毒のリスクを大きく下げることができるのです。
ふやさない
ふやさないも食中毒予防の3原則の1つです。ふやさないは、食品中に存在する細菌が増殖しないようにする対策を指しますよ。細菌は、温度が20〜50℃の範囲で活発に増殖するため、調理前後の食品はできるだけ早く冷蔵庫に入れることが重要です。また、調理済みの食品は常温で長時間放置せず、早めに食べきることが推奨されます。さらに、冷蔵保存する際も過信せず、なるべく短期間で消費するように心がけましょう。温度管理と早めの消費がふやさないための基本です。
やっつける
食中毒予防の3原則のうちやっつけるは、食品に付着している細菌やウイルスを加熱などの方法で死滅させることを指します。特に肉類や魚介類、卵などは中心部までしっかり加熱することが重要ですよ。例えば、中心温度が75℃で1分以上の加熱が効果的とされています。また、加熱後の再汚染を防ぐために、加熱後は清潔な器具を使用することも大切です。このような加熱処理により、体内に有害な微生物が入るのを防ぐことができます。
保育における食中毒予防のポイント
手洗いの徹底

保育において食中毒などの感染症を予防するためには、手洗いの徹底が極めて重要です。子ども自身はもちろん、保育者も調理や食事の前後、トイレの後や外遊びの後など、正しい手順でこまめに手を洗うことが基本です。特に指の間や爪の間、手首まで丁寧に洗うことが求められますよ。また、子どもたちには、手洗いの習慣を身につけさせるために歌や絵本などを使って楽しく教える工夫も有効です。清潔な環境づくりの第一歩として、手洗いは欠かせません。
掃除・消毒

保育における食中毒予防のポイントとして、掃除と消毒は非常に重要です。子どもたちは免疫力が未発達であり、身の回りの環境から食中毒にかかるリスクが高い傾向です。そのため遊具や机、ドアノブやトイレなど、手が触れる場所を定期的に清掃と消毒をすることが欠かせません。特に、嘔吐や下痢などの症状が見られた場合は速やかに対象エリアを消毒し、感染拡大を防止します。また、正しい手順と濃度で消毒剤を使用することも大切ですよ。
タオルを共有しない

日常の保育においてタオルを共有しないことは、食中毒予防の基本的な対策の1つです。特に子どもは抵抗力が弱く、風邪やウイルス性胃腸炎、手足口病などが集団内で広がりやすいです。そのため唾液や鼻水、汗などが付着したタオルを共有することは感染リスクを高めます。個人専用のタオルを用意し、名前を記入して区別することで、接触感染を防ぎましょう。また、タオルは定期的に交換して清潔を保つことも重要です。
安全な調乳

日常の保育における食中毒予防の観点から、安全な調乳は非常に重要です。調乳に使用する粉ミルクは無菌ではないため、適切な温度管理が必要ですよ。調乳時には70℃以上のお湯を使用して粉ミルクを溶かし、病原菌を死滅させることが基本です。また、使用する哺乳瓶や乳首は、事前に洗浄と消毒を行い、雑菌の混入を防ぐ必要があります。さらに、作り置きは避けて調乳後は2時間以内に使用するようにし、残ったミルクは再利用せず廃棄しましょう。これらの衛生管理を徹底することで、乳児の健康を守ることができます。
床に落とした食べ物を子どもに触らせない
床に落とした食べ物を子どもに触らせないことは、基本的な食中毒予防対策の1つです。床には目に見えない多くの雑菌が付着しており、食べ物が落ちた際にはそれらの菌が付着している恐れがあります。子どもは免疫力が未発達なため、少量の菌でも体調を崩すことがありますよ。そのため、落ちた食べ物は決して再使用せず、すぐに処分し、手洗いを徹底することが大切です。そのため保育者は、子ども1人ひとりを注意深く見守っておくことが大切ですね。
保育者自身の感染予防

日常の保育において、保育者自身の食中毒予防は極めて重要です。まず、子どもと接する前後や食事、排泄の介助後などには必ず手洗いや手指消毒を徹底しましょう。また、マスクの着用や適切な咳エチケットも基本です。体調に異変を感じた場合は無理をせず休養を取り、食中毒などの感染拡大を防ぐ配慮が求められます。保育者自身が健康を保つことは、園全体の衛生管理と子どもたちの安全を守ることにつながりますよ。
また、保育園でできる風邪予防はこちらの記事を参考にしてみてください!
食中毒になった際の応急処置
こまめな水分補給
食中毒になった際は、下痢や嘔吐によって体内の水分や電解質が大量に失われるため、こまめな水分補給がとても重要です。一度に多くの水を飲むと吐き気を悪化させる可能性があるため、少量ずつゆっくりと摂取することが望まれます。経口補水液やスポーツドリンクなど、電解質を含んだ飲料を選ぶとより効果的ですよ。水分補給を怠ると脱水症状に陥る恐れがあるため、意識的に補給を続けることが大切です。
嘔吐している場合は横向きに寝かせる

食中毒によって嘔吐している場合、吐しゃ物が気道に詰まるのを防ぐために本人を横向きに寝かせましょう。特に意識がもうろうとしている場合は、仰向けのままだと嘔吐物を誤って吸い込み、窒息や肺炎を引き起こす危険があります。横向きに寝かせる際は、顔を少し下に向け、呼吸を妨げない体勢にすることがポイントです。また、吐しゃ物の処理には手袋やマスクを使用し、感染拡大を防ぐ対策も徹底しましょう。
無理に食べない
食中毒になった際、無理に食べないことは応急処置の1つです。吐き気や嘔吐、下痢などの症状があるときに無理に食事をとると、さらに胃腸に負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります。特に発症初期は、とにかく胃腸を休ませることが回復への第一歩となります。水分補給は必要ですが、無理に固形物は摂らず、症状が落ち着くまではおかゆやスープなど消化のよいものから徐々に始めるのが理想的です。
まとめ
日常から意識して食中毒の予防を徹底しよう!

いかがでしたか?今回の記事では、保育園における食中毒の対策について、3原則や予防のポイント、食中毒になった際の応急処置などを詳しく解説しました。保育園における食中毒対策は、子どもたちの命と健康を守るための基本的な取り組みです。日常の衛生管理や職員の意識向上はもちろんのこと、園全体で共通のルールを定め、定期的な見直しを行いましょう。また、食中毒が疑われる場合には迅速な対応と適切な報告、連絡体制を整えておくことが求められます。日頃からの丁寧な対策が、安全で安心な保育環境の維持につながるでしょう。