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オノマトペという言葉を耳にしたことがある方も多いはず。日本語の会話には、このオノマトペが特に多く用いられています。つまりオノマトペは、私たちが日々耳にしているはずの言葉です。ただオノマトペが何を表すのか、きちんと説明しようとすると難しいですよね。一方でこのオノマトペ、保育の分野で注目されている言葉でもあります。今回はオノマトペの意味からオノマトペを使った遊び、そして子供たちと学習する際のポイントまで、わかりやすく解説していきます。
オノマトペとは?
擬態語・擬音語・擬声語の総称
オノマトペは擬態語と擬音語、擬声語の総称です。では擬態語や擬音語、擬声語はそれぞれ一体どんな言葉を指すのでしょうか。擬態語は物事の状態、擬音語は様々な音、そして擬声語は人や動物の声を表現する言葉を指します。つまりオノマトペは様々な状態や動き、音を表現した言葉。オノマトペの例として、以下のようなものがあります。保育園においてもよく耳にする言葉ばかりですよね。
擬態語の例:物が散らかっている状態を表すごちゃごちゃ、深く眠っている様子を表すぐっすり
擬音語の例:皿が割れる音を表すガシャン、電車が走る音を表すがたんごとん
擬声語の例:犬の鳴き声を表すわんわん、猫の鳴き声を表すにゃーにゃー
保育園でオノマトペを学ぶメリット
身体表現が豊かになる
オノマトペを使うことで、子供の身体表現を引き出すことができます。例えば写真を撮る際に、「笑って!」と声を掛けられるよりは、「ニコッっとして!」と言われた方が自然な笑顔になれますよね。このようにオノマトペを使った呼びかけによって、子供たちは動作がイメージしやすくなるのです。「スっと背筋を伸ばして!」や「クルクル回ってみよう!」など、様々な呼びかけにオノマトペを用いてみましょう。子供たちはいつもよりも良い反応を示してくれるはずです。
覚えやすく使いやすい
オノマトペは、子供たちにとって覚えやすく使いやすい言葉。それは、オノマトペが単語だけで使いやすい言葉だからです。文章で説明しようとすると難しくなりがちなことも、オノマトペを使えば一言で子供たちに伝えることができます。例えば静かにしてほしい時に「しーっ」と呼び掛けたり、楽しみなことがある時に「わくわく」と表現したりすることができます。このように単語だけでも使うことができるオノマトペは、子供たちに伝わりやすい上に、子供たちにとって覚えやすい言葉です。そして、覚えた後に使いやすい言葉でもありますよね。
言葉の楽しさを味わえる
オノマトペは、子供に言葉の楽しさを味わってもらうのにぴったりな言葉。オノマトペには「わんわん」や「ころころ」といった、2語の繰り返しでテンポのいい言葉が多いですよね。このように語感が良いオノマトペを、子供たちはつい言葉にしたくなります。オノマトペの楽しさを味わってもらうために、子供たちにオノマトペを発声してもらう場面を保育の時間に取り入れましょう。以下で紹介するオノマトペを使った絵本や歌、遊びがおすすめですよ。
オノマトペを絵本で学ぶ
『もこ・もこ・もこ』
作:谷川俊太郎 絵:元永 定正
谷川俊太郎さんは、教科書にも詩が載せられている著名な方ですよね。『もこ・もこ・もこ』の中を見ると、使われているオノマトペは見開き1ページに多くても2つ。またオノマトペが単語で使われています。加えて絵もシンプルで見やすいので、乳児さんにも楽しんでもらえる作品です。この絵本は、地面からもこもこと何かがあらわれる設定と、オノマトペが組み合わさった不思議な世界観が特徴です。子供たちが夢中になること間違いなしですね。
『カニ・ツンツン』
作:金関寿夫 絵:元永 定正
『カニ・ツンツン』は言葉の響きの楽しさを味わえる作品。ストーリー性は少ないため、大人よりも単純に音を楽しむ子供たちの方が馴染みやすい絵本です。この絵本はいろいろな言語から発想を得ているので、普段はあまり聞かない音の並びばかり。そのまま読むのではなく、抑揚やリズムを工夫して読み聞かせをしてみましょう。そうすることで子供たちをより楽しませることができるはずです。
『ころころころ』
作、絵:元永 定正
こちらは『もこ・もこ・もこ』と『カニ・ツンツン』の絵も担当した、元永定正さんが制作した絵本。カラフルなまるがころころと道を進むストーリーです。ころころと聞くと、なんだかかわいらしいイメージを抱きますよね。そんなイメージにぴったりな淡い色が使われた絵本で、子供たちはもちろん大人も癒されることができますよ。また上記で紹介した2つの絵本も含め、オノマトペの部分を子供たちが発声できる場面を作りましょう。繰り返してもらったり、問題形式にしたりするのもいいですね。
オノマトペを歌で学ぶ
かえるのうた
訳詞:岡本敏明 作曲:ドイツ民謡
カエルの鳴き声をモチーフにしたこの歌。最後の「ケロケロケロケロ・クヮクヮクヮ」というフレーズが印象的ですよね。「ケロケロケロケロ」の部分は、「ゲゲゲゲゲゲゲゲ」や「ゲロゲロゲロゲロ」と歌われることもあるそうです。カエルの鳴き声がどんなオノマトペで表せるか、子供たちと考えてオリジナルの歌詞で合唱するのもいいでしょう。またドイツ民謡が元となっているこの曲。原曲ではどのようなオノマトペが使われているか、是非子供たちと確認してみてくださいね。
あめふり
作詞:北原白秋 作曲:中山晋平
あめふりは、2007年に日本の歌百選に選ばれた有名な一曲。この曲では「ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン」というオノマトペが、1番から4番まで繰り返されます。そのためオノマトペの部分が特に印象に残りますね。あめふりで使われているオノマトペは、水たまりを踏んで歩く感覚や弾んだ気分を想像させてくれます。憂うつになりがちな雨の日も、明るい気分にさせてくれる童謡です。
とけいのうた
作詞:筒井敬介 作曲:村上 太朗
時計の針の音を、「コチコチカッチン」というオノマトペで表現した童謡。時計の長針と短針がくっついたり離れたりする様子を「こんにちは」と「さようなら」という歌詞で表しているのも面白いですね。オノマトペを用いて時計に親しみを持つことができる一曲。時計の見方を覚え始める幼児さんにぴったりです。またとけいのうたのほかにも、オノマトペが使われた時計の歌はいくつかありますよね。例えば、大きな古時計や早起き時計などが挙げられます。それぞれの曲で時計の針の音がどのように表現されているか、比べながら歌うのもいいでしょう。
オノマトペかるたで学ぶ
オノマトペかるたの作り方
オノマトペを取り札の題材に使用するオノマトペかるた。オノマトペかるたを作る工程と遊ぶ工程、それぞれを楽しむことができます。
2.厚紙と同じ大きさの白画用紙を5枚用意する。厚紙と同じように線を引く。
3.厚紙と画用紙を線に沿って切り取る(厚紙、画用紙をそれぞれ84枚切り取る)。
4.厚紙の片面に画用紙を張り付ける。 カードの周りを囲うようにメンディングテープを張り付ける。
5.4で作ったカードの画用紙の面に、題材とするオノマトペを縦書きで書く。(読み札)
6.5と別のカードの画用紙の面に、題材とするオノマトペの頭音を書き、円で囲う。空いているスペースにそのオノマトペをイメージする絵を描く。(取り札)
上記の工程で、「れ」「ろ」「を」の3音を除く42音分のカードを作成しましょう。「れ」「ろ」「を」を除くのは、それらを頭文字とするオノマトペが非常に少ないためです。
オノマトペかるたの遊び方
オノマトペかるたが作成できたら、さっそく遊んでみましょう。オノマトペかるたの遊び方は、普通のかるたと同様です。
2.保育士さんが語り手になり、読み札を1枚ずつ読み上げる。
3.子供たちは読み上げられたオノマトペを表現する取り札を探して取る。
4.2と3の段階を読み札がなくなるまで続ける。取り札が一番多かった子供の勝ち。
語り手は、子供たちに交代で行ってもらうのもいいですね。遊ぶ工程だけ楽しみたい場合は、市販されているオノマトペかるたを使用するのがおすすめです。
オノマトペをジェスチャーゲームで学ぶ
オノマトペジェスチャーゲームの遊び方
オノマトペジェスチャーゲームでは、オノマトペを自分の身体で表現する練習ができます。
2.子供たちを、紙を見てオノマトペを表現するグループ(A)と、何のオノマトペを表現しているか当てるグループ(B)とで半分に分ける。AとBのグループで、向かい合うようにそれぞれ1列に並んでもらう。
3.保育士の方がオノマトペを書いた紙をAの子供たちに見せ、先頭の子どもに動きで表現してもらう。
4.Bの先頭の子どもがAの表現する動きが表すオノマトペを当てる。
5.20秒程度で正解発表をして、次の順番の人に移る。
動きを表すオノマトペを発想するのは子供たちには難しいかもしれません。1のオノマトペを紙に書きだす作業は保育士の方が事前に準備しておきましょう。身体表現を豊かにしてくれるオノマトペを用いるのにぴったりなゲームですね。
オノマトペをごっこ遊びで学ぶ
洗濯遊び
もちろん家事をする際の動作や音も、オノマトペで表現することができます。普段のごっこ遊びにオノマトペを取り入れてみましょう。例えば洗濯の場面に使われるオノマトペには、以下のようなものがあります。
・洗濯物を洗う時のゴシゴシ
・洗濯機が回っている時のガタガタ
・洗い終わった洗濯物を伸ばす時のパタパタ
保育園に通う子供たちが実際に洗濯を行うことは大変です。オノマトペを使って洗濯遊びをすることで、洗濯をよりリアルに表現してもらいましょう。
料理遊び
料理は、メニューによって作り方が違います。使用する食材や調理器具、そして調理器具の使い方。これらの組み合わせによって発生する音が変わるため、料理の工程を表現するオノマトペは多種多様です。具体的には以下のようなものがあります。
・食材を切る時のトントンやザクザク
・鍋で煮る時のコトコトやグツグツ
・フライパンで焼くときのジューッ
様々な音が鳴り響くキッチンで料理をする楽しさを、オノマトペでイメージしてもらうことができますね。
オノマトペを学習する際のポイント
保育のあらゆる場面に取り入れる
子供たちは周囲の大人が発する言葉を聞いて、たくさん真似をしますよね。これは、子供たちが言葉を学習する手段の一つです。そのため保育士の方がオノマトペを意識して使えば、おのずと子供たちが使うことのできるオノマトペも増えていきます。オノマトペを学習する時間以外においても、普段の会話や呼びかけなどでオノマトペを使ってみましょう。食感や感情、天気などを表すオノマトペは、毎日の保育に取り入れやすいですね。
間違いに過敏にならない
子供たちが使うオノマトペが一般的なものと違っても、修正する必要はありません。子供たちそれぞれが感じたことを表現したオノマトペ。これらは物を見たときの感じ方や音の聞こえ方が、人によって違うことを学ぶための材料にすることができます。新しいオノマトペを簡単に作り出せるのは、まだ固定概念をもっていない子供たちの特権。ぜひ子供たち独自のオノマトペも肯定したうえで、一般的に使われているオノマトペについても教えてあげてくださいね。
慣れてきたら英語のオノマトペにも挑戦
子供たちが日本語のオノマトペに慣れてきたら、英語のオノマトペにも挑戦してもらいましょう。英語のオノマトペもたくさんありますよ。
手を叩く音 日本語:パン 英語:clap
笑い声 日本語:アハハ 英語:haha
電話の音 日本語:リンリン 英語:ring-ring
日本語と英語で全く異なるオノマトペもあれば、似ているオノマトペもあって面白いですよね。英語学習の第一歩にオノマトペを用いるのもおすすめです。
まとめ
オノマトペで子供たちの表現の幅を広げよう
オノマトペは子供たちが楽しみながら簡単に使うことができるため、保育の現場にぴったり。保育士の方は、子供たちにオノマトペと触れ合う機会をたくさん用意してあげましょう。今回紹介した絵本や歌、遊びもぜひ保育の時間に取り入れてみてくださいね。幼児期の子供たちは、自分の感情や感覚を表現する言葉をまだ十分に身に着けていません。オノマトペを使った保育で、子供たちの表現の幅を広げてあげましょう!
参考文献
コドモネクスト「簡単ゲーム編 ⑧オノマトペジェスチャーゲーム」 一般財団法人児童健全育成推進財〈https://www.kodomo-next.jp/administrator〉
松崎史周(2019)「保育におけるオノマトペの教材化-オノマトペかるたを作成して-」
子供は遊びの天才だ 運動遊びの森「5歳児の表現遊び4選!!~擬音語を使った表現を楽しもう!!~」〈https://small-giant.work/archives/1824#i-5〉
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