発達でこぼことは?発達障害との違いって?【診断・文房具・差・あるある】

近年広まりつつある「発達でこぼこ」という言葉をみなさんは知っていますか?聞いたことはあっても意味を知らないという人や、「発達障害を言い換えた表現なのでは?」と考えている人もいるかもしれません。今回の記事では、そんな知られているようで意外と知られていない発達でこぼこについて、特徴や関わり方などを詳しく解説していきます。園児や自分の子供に発達でこぼこの特徴が見られても焦ることのないように、保育士さんやママさんはぜひ目を通していってくださいね!

子供の発達でこぼことは?

得意と苦手の差が大きい特徴をもつ子供のこと

精神科医である杉山登志朗先生の著書によると、発達でこぼこ(凸凹)の意味は以下のようになっています。

「発達凸凹」とは、認知に、高い峰と低い谷の両者をもつ子どもと大人である。
(『発達障害のいま』杉山登志郎、講談社現代新書、2011)

認知とは、「理解・判断・論理などの知的機能」のことです。
発達凸凹の凸と凹が表すのは、他者と比較した際の特徴ではなく、あくまでその人の中での「得意(凸)」「苦手(凹)」のようですね。発達凸凹とは、そのような得意と苦手の差が大きい、つまりは能力のバラつきが大きい特徴をもつ人のことを意味しています。

適応障害が加わると発達障害になる

先ほどと同様の杉山先生の著書によると、発達障害について以下のような定義がなされています。

狭義の発達障害とは、発達凸凹に適応障害が加算されたグループである。
式で表せば、次のようになる。

発達凸凹+適応障害=発達障害
(『発達障害のいま』杉山登志郎、講談社現代新書、2011)

つまり「発達でこぼこ(凸凹)」のままでは、「発達障害」にはあたらないということのようですね。「適応障害」とは、環境とのミスマッチが原因で起こるものです。よって、その人にとって環境が悪く、ストレスの増加などから生活に支障が出る状態になった場合「発達障害」の診断にいたります。

発達障害の状態にいたる人を減らしたい思いから命名された

杉山先生は、「発達障害の特徴をもって生まれた人」は、「発達障害の診断がつく人」の5倍以上はいるとみています。それだけ多くいるのであれば、彼らの環境を整えることで「発達障害の状態にいたる人」を減らしたい。そんな思いから「発達でこぼこ(凸凹)」という名をつけたそうです。ハラスメントなどのように、名前をつけることで認知度や注目度を高める効果を期待している側面もありそうですね。実は、「おうとつ(凹凸)」ではなく「でこぼこ(凸凹)」の表現にしたことにもこだわりがありました。凹よりも凸を先にもってきたのは、杉山先生が「得意・苦手間の差が大きい状態は、マイナスとは限らない」と考えたからのようです。そんな思いが込められた「発達でこぼこ(凸凹)」という言葉が今後より一層広まっていくと嬉しいですね!

保育士くらぶ

子供の発達障害の種類と症状

自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症(AD)とアスペルガー症候群を合わせた発達障害です。すべてのことを同じように考えてしまうという常同思考があり、人とコミュニケーションをとることや、環境の変化への適応に困難さが生じます。予期せぬ事態にはパニックにもなりがち。一方で、暗記や計算の能力が並外れて高くなるサバン症候群や、学業成績が優秀なアスペルガー症候群なども存在します。優れた能力が目立つ場合には、周囲から困難さに気がつかれにくく、社会人となった後に診断されて判明することもあるようですよ。

注意欠如・多動性障害(ADHD)

名前の通り、不注意や多動性な特徴が目立つ発達障害です。不注意といっても、興味を持ったものにはしっかりと集中することができます。特徴が見られるのは、興味がないものに子供が向き合わなければならない場面で、注意力が散漫するゆえに落ち着きのない行動をしてしまうようです。衝動性があり、すぐに感情的になって友達に手を出してしまうなんて危険性も。また、忘れ物が多いなどの特徴もあるので、就学前に対策を考えておくのがおすすめですよ。

学習障害(LD)

知的障害を伴わず、本人の知的レベルや努力に全く問題が見られないにも関わらず、読み書きや計算などに著しく困難さが生じる発達障害です。困難さは、読み書きや話す・聞く力、計算する力、推論する力など基本的な学習能力のうち、特定の能力のみに伴い、様々な障害を引き起こします。例えば、正しく文字が書けない書字表出の障害や、上手く計算ができない算数の障害。また、文字は読めるのに発音が上手にできない読字障害などにより、子供本人も気がつかないうちにつらさを感じてしまうという場面も多いようです。

子供に発達障害の疑いがあるときは?

特性チェックリストを活用し結果に応じて対処方法を考える

発達でこぼこの特徴の種類は非常に多く、まさしく千差万別です。したがって「この子、発達でこぼこかもしれない」と大人側が感じることがあっても、その後の対応に困ることが多いでしょう。そんなときは、特性チェックリストの活用がおすすめです。簡単なリストであるため、詳細な分析や明確な区別はできませんが、特性による傾向については知ることが可能です。子供の言語化の難しさは、チェックリストの活用等によって解消していきましょう!

必要に応じて加配制度を活用する

加配制度とは、障がいのある子供が幼稚園や保育園を利用する際に、通常よりも多くの先生を配置することで園生活をサポートする仕組みです。発達障害や言葉の遅れなどがある子供の場合、友達とのコミュニケーションが上手くとれずに苦しい思いをすることも多くなるでしょう。そんなとき自分の困難を理解し、手を貸してくれる人が身近にいれば、援助が必要な子供達にとっては心強いはずです。子供に発達でこぼこの疑いが見られたら、親御さんはまず始めに保育園の先生へ相談するようにしましょう。

医療機関で診断・検査を行う

発達でこぼこに関する相談を早めに保育園へ行うことの重要性について、1つ前の項目で触れました。家庭や保育園での様子を照らし合わせながら先生と親御さんで話し合いを行う中で、受診の必要性などを判断していきます。必要性が認められれば、前述した加配制度の活用や、医療機関の受診等を勧められるようですよ。相談体制の整備が不十分な保育園だった場合には、近所の小児科などに早めに相談をし、医師の紹介や検査などをしてもらいましょう。

乳幼児期の発達障害の特徴

乳児期(~1歳)の例

・抱っこや手をつなぐなどのスキンシップが苦手
・あやしてもほとんど笑わない
・極端な偏食がある
・寝つきが悪く、些細な物音でも起きてしまう

などが発達障害のある乳児期(~1歳)の子供に見られる特性や特徴の一例になります。スキンシップは小さい子供にとって必要不可欠なものなので、拒絶されることが多いと少し心配になってしまいますよね。あくまで一例に過ぎませんが、些細な異変や違和感を感じたら、早めに相談・受診をしましょう!

幼児期(~6歳)の例

・意味のある言葉をほとんど話さない
・保育園などで集団行動に加わらない
・嫌なことへの耐性がなく、すぐ手が出たり、逃げ出したりする
・会話中になかなか目を合わせない
・常に動いたり、すぐにどこかに行ったりしてしまう(多動)

などが発達障害のある幼児期(~6歳)の子供に見られる特性や特徴の一例です。園内の集団行動や共同作業を行う際などに行動が目立ちやすいでしょう。

発達障害のある子供との関わり方のコツ

忘れることを予防するため大人と一緒に確認する

注意欠如・多動性障害(ADHD)の子供は、忘れ物が多いという特性を持っています。保育園ではさまざまなイベントが行われるので、プール道具や工作の材料など、子供達が自宅から持ってこなければならないことも多くあります。子供達は日々成長し、自分一人で出来ることがどんどん増えていますよね。必要なものを自分で用意する経験を与えることは大切ですが、忘れっぽい子供の場合には親御さんの最終チェックを必ず入れるようにしましょう。メモやリマインダー、リストなどにまとめて行うとチェックの作業がしやすくなるのでおすすめですよ!

絵や文字などの視覚情報を用いて伝える

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供の中には、抽象的な言葉の意味をうまく理解できない特徴をもっている人がいます。また2つ以上の作業を同時に行うことも苦手なため、「~してから、〇〇」のように2つのことをまとめて伝えると、聞き逃しが増えてしまうようです。文章は短く区切り、1つずつに分けた内容を、イラストや矢印を用いて視覚的に伝えるように工夫しましょう。加えて、1日の予定や時間のような目に見えない抽象的な情報も、理解に苦しむ場合が多いようです。イラスト付きの予定表やタイマーなどの視覚情報を意識して取り入れていきましょう!

子供がわからないことを叱らずに学び方を考える

小学生になる前の準備として、絵本の音読や、名前を書く練習、簡単な計算や英会話の練習などを行う保育園も少なくないことでしょう。しかしながら、学習障害(LD)のある子供は、そのような勉強に関する場面でつまづきやすいという特徴があります。できないことをやる気がないことや努力が足りないことに直結して考えたり、ただ叱ったりすることはせずに、困難に応じて学習方法を工夫しましょう。

特性の重複がある場合は手厚いサポートを行う

これまで述べてきたADHD、ASD、LDなどの障害の特性は、単体ではなく重複するケースも多くみられます。例えばADHDとLDが重複する場合、LDによる読み書きや計算などの学習面での困難に、ADHDによる集中力の途切れやすさが加わります。学習面における困難が増幅した場合には、先生方が適切に手厚いサポートを行うことが重要ですね。また、ここへさらにASDの特性が加わり、3つの特性が重複するケースも存在します。重なる特性が増えることで、支援を行いたくてもポイントが見つけにくくなってしまうはずです。サポートの難しさに直面した場合には、支援機関や医療機関などの専門家へ迷わず相談するようにしましょう!

できていることに積極的に目を向ける

障害の特性によってさまざまな困難を抱えている子供は、日常生活を送っているだけで周囲に迷惑がられたり、怒られたりすることが多いです。しかし、あまり注意ばかりをしてしまっては、子供の自己肯定感を著しく低下させてしまう恐れがあります。子供の身近にいる大人は、できないことよりもできたことに注目するクセをつけていくようにしましょう。「〇〇ができていないよ」から「〇〇までできたね!すごい!」へと声のかけ方をほんの少し変換するだけでも、子供の心は軽くなりますよ!

ダメなことよりやっていいことを伝える

「あれダメ、これダメ」の声のかけ方では、やってもいいことは何なのかを子供が具体的にイメージできていないことがほとんどです。また子供にとっても「ダメ」という単語を何度も言われ続けるのは、あまり気分のよいものではありません。数字やイラストなどの視覚情報を用いて、やっていいことを具体的にまとめることで、やってもいいことが子供にとって明確に把握しやすくなりますよ。また「ミスしてしまっても〇〇すればOK」という内容を具体的に提示することで、失敗を失敗のままにしないクセを身につけさせることができますよ!

発達でこぼこについて保育士が配慮すべきその他のこと

親御さんが一人で抱え込まないようにする

発達でこぼこの存在に気付かずに、「他の子供たちはあれくらいできるのにうちの子は…」と落ち込んでいる親御さんがいるかもしれません。保育士さんは、そんな一人で抱え込んでいる親御さんのサポートを行いやすい立場にいます。保育園での子供の様子や、親御さんとの面談を通して気になることがあったら、しっかりと寄り添って相談に乗りましょう。また、必要に応じて医療機関での診断や、療育教室などを利用することも大切です。自分の育て方の問題ではない事実に安堵したり、同じ境遇の母親と話すことで元気づけられたりもするようですよ。気軽に視聴できるYouTubeでも、同じ境遇の方とつながることを目的に発信している方がいたので、ぜひご覧ください!

まとめ

発達でこぼこの特性を理解して適切に関わろう

発達でこぼこは、存在に気付かないままでは、本人や周囲が大変苦しい思いをしやすいです。発達でこぼこ・発達障害の特性は種類も多く、一人で判断し、適切に対応するのはなかなか困難なことでしょう。特性の種類や接し方を理解することも重要ですが、保育士さんは親御さんへのサポートも円滑に行えるようになると良いですね。家庭・教育現場・医療・行政など、役割はそれぞれあります。他の機関に頼るべきところは頼りつつ、保育士さんが行うべきサポートは全力で行っていきましょう!

保育士くらぶ

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保育士くらぶは保育士の転職キャリアサポートを行うアスカが運営しています。保育士くらぶ編集部のメンバーは元保育士や幼稚園教諭出身のメンバーを中心に「保育業界をもっと良くしたい!」という思いがあるメンバーが在籍し、日々執筆しています。保育士くらぶでは現役保育士さんが職場で活かすことが出来る、保育のノウハウやネタ、保育学生にとって必要な知識などを発信しています。 アスカは保育士の就職支援を行う会社です。1994年創業。全国で約10万名の保育士、幼稚園教諭の皆さまが登録しています。年間約1万名がアスカを通じて保育園や幼稚園、学童などの施設への就職を決めています。 保育士の求人情報は 【保育求人ガイド】 https://hoikukyuujin.com/ プロフィール入力で園からスカウトを受ける 【保育士スカウト】 https://www.hoikushiscout.com/