保育園におけるアイメッセージとは?【心理学・使い方・ユーメッセージ】

子供達へ指示や要求をするとき、みなさんはどのようにして言葉で伝えますか?大人が先生として子供と関わる保育の現場では、子供に指導を入れるべき場面に立ち会うことも少なくはないでしょう。しかし、伝え方によっては意図せず強めの口調になってしまったり、想像以上に恐怖心を与えてしまったりすることもあります。今回の記事では、保育園における子供達とのコミュニケーションに重要なアイメッセージという手法について解説していきます。ぜひ最後までご覧ください!

アイメッセージとは?

「私」を主語にした主張のテクニック

アイメッセージとは、私(=I)を主語にして伝える手法で、臨床心理士のトーマス・ゴードンによって提唱されました。ただ自分の思いを相手に伝えるだけでなく、相手に配慮をした上で自分の感情や考えを伝えるといったコミュニケーションになります。保護者や先生方、子供達、地域の方々などさまざまな人とのコミュニケーションが必要な保育園の先生を目指すなら、しっかりと頭に入れておきましょう!

子供への適切な接し方として提唱されたのが始まり

提唱者のトーマス・ゴードンは、教育における建設的な話し合いの重要性を強く感じていました。みなさんは、子供が間違ったことをした際に適切な対応ができている自信はありますか?おそらくどういった対応をすれば良いのか何も教わらないままで不安を感じているという方も多いはずです。トーマス氏はこの不安を解消すべく、保護者への指導においてアイメッセージ法を提唱しました。現在では教育に留まらず、ビジネスシーンなどの人間関係が重要になる場面で活用されているようですよ。

柔らかく伝わるが回りくどい表現になりがち

まずは、アイメッセージの具体例をご紹介します。


・(私は)あなたからの連絡がなくてさみしいです
・(私は)あなたの発言に傷つきました
・(私は)もう少し早く報告してくれるとやりやすいです
・(私は)その場所に行くのは心配です


このように主語が「私」になることで、最終的な判断を相手に委ねる言い回しになるため、柔らかい伝え方にすることができます。一方で「~して!」という行動の制限を伴う要求を直接的に行う伝え方ではありません。話す内容や相手によっては回りくどく感じられたり、要求がうまく伝わらなかったりすることもあるでしょう。

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ユーメッセージとは?

「あなた」を主語にして主張する方法

ユーメッセージとは、あなた(=You)を主語にして伝える、アイメッセージとは反対の手法です。具体例は、以下のようになっています。


・(あなたは)私にしっかり連絡をしてください
・(あなたは)私にひどい発言をしました
・(あなたは)もう少し早く報告することはできないのですか
・(あなたは)その場所に行かないべきです


このように主語が「あなた」になることで、アイメッセージよりもストレートに伝えることができます。

直接的に伝わるが支配的な表現になりがち

ユーメッセージを用いることで、アイメッセージよりも相手の領域に踏み込んで伝えることができます。話の意図を汲み取ることに苦手意識を持つ人や回りくどい表現を嫌う人などには、この直接的な伝え方は効果的といえるでしょう。しかしながらユーメッセージでは、相手の行動を制限する指示や要求の仕方になるため、口調が強く、相手に高圧的に捉えられる危険性も高くなります。アイメッセージのようにお互いを尊重したり、自分の気持ちを伝えたりすることが難しいため、関係性の悪化につながることもあるようです。アイメッセージ・ユーメッセージ、それぞれの短所や長所を理解して、相手や場面に合わせて変えていくことが良いでしょう。相手をよく理解していない場合は、まずアイメッセージから入ることをおすすめします!

保育園でアイメッセージが重要な理由

感情に隠された本心を相手に伝わりやすくするから

どんなに先生や保護者の方が子供のことを愛していても、子供からの心ない言葉や目に余る行動に傷ついたり腹を立てたりすることは当然あるでしょう。しかし、子供に怒りの感情をそのままぶつけてしまうことで、本心が伝わらないまま人間関係が悪くなる可能性があります。怒りは第二次感情。つまり、最初に生じる感情ではありません。アイメッセージを活用することで、この怒りの前にある悲しみや不安などといった第一次感情に自身で気づき、相手に伝えることができるようになります。

保育園でアイメッセージを意識すべき場面

先生が子供に怒鳴りそうになったとき

みなさん、子供達に怒鳴り声を上げてしまった経験はありませんか?保育者や指導者としてあまりよくないことだと頭で理解しつつも、つい怒鳴ってしまったことがあるという方はおそらく多いのではないでしょうか。怒鳴ることによって子供達は、「先生が怖いから怒られないためにやる」という思考で行動するようになります。これでは先生が見ていないところで同じことを繰り返したり、怒鳴り声に慣れれば反抗したりするようになるでしょう。アイメッセージを活用し、「やりたくない」のような子供の気持ちを受け止めたうえで保育者としての考えや要求を伝えるのがベストですよ!

子供が先生の求める行動をとってくれないとき

保育園では、子供達に先生の言うことを聞いてもらいたい場面が沢山あります。例えば、部屋の中を走らないでほしい場面や、おもちゃを大切に扱ってほしい場面など。先生は安全面や娯楽の面など様々なことに考慮しながら、日々真剣に子供達と向き合っています。子供達のことを考えてお願いしたことを適当に流されたり、聞いてもらえなかったりすると、自然ときつい言い方をしてしまうかもしれないですよね。まずは先生の中で子供達に何をしてほしいのか、また何をしてほしくない・やめてほしいのかを明確にしましょう。そしてアイメッセージを活用して、感情を織り交ぜながら優しい口調でお願いするようにしてくださいね!

集団に向けて先生が指示を出すとき

保育園にはさまざまな性格の子供達がいます。当然ながら、全員がいつでも相手の話をしっかりと聞いて理解し行動できるとは限りません。集団の子供達を相手に1発で指示を通すことはなかなか難しそうですよね。話を聞かない特定の子供がいる場合や、全体が騒がしくて指示が通りにくい場面などではぜひアイメッセージを活用して指示を出しましょう。なぜ今その指示を出しているのか、必要性を感じてもらえるような伝え方ができるとよいですね!

保護者や他の先生に思いを伝えるとき

保育園では、子供達はもちろんですが、その他にも保護者や地域の方々、また他の先生方とのやりとりも必要になります。特に保護者や他の先生方との連携は、良い保育活動を行ううえでは絶対に欠かせません。保育園の先生という立場で要求や助言などを行う際には、アイメッセージを活用してやわらかく伝えるように心掛けましょう。先生の思いを一方的に伝えるだけでなく、家庭での子供の様子や困りごとなどを聞き出す際に取り入れてもよいですね。

【3ステップ】アイメッセージの使い方

ステップ1 表情アイメッセージ

いきなり言葉のアイメッセージを使う前に、まずは表情や声の調子を変えることで相手に感情を伝えてみましょう。約3割の方は、言葉を使わない表情でのアイメッセージの段階で伝えたいことに気が付いてくれるはずです。ただし、やり過ぎてしまうとわざとらしく演技やアピールをしているように見えてしまうでしょう。この手法で相手に悟ってもらえなそうであれば、早めに次の段階に移行することがおすすめですよ!

ステップ2 言葉のアイメッセージ

表情や声色を工夫して伝わらないときは、具体的な言葉を用いて相手に伝える必要があります。言葉のアイメッセージによって、自分の抱えている困りごとや相手に対する要求などを言葉にして伝えていきましょう。言葉を用いることで、表情のみのアイメッセージよりも直接的に相手に伝えることができ、気が付いてもらいやすくなります。約7割ほどの方には、言葉のアイメッセージを用いた段階で伝わることでしょう。

ステップ3 ユーメッセージ

ほとんどの方にはステップ2のアイメッセージまでで伝わりますが、なかなか理解してくれない場合にはユーメッセージを使って伝えていきます。ユーメッセージはアイメッセージよりも直接的に伝えられますが、口調が強くなってしまうため最終手段として用いましょう。ユーメッセージの中でもなるべく言い方がきつくならない伝え方から試していき、相手の態度や反応によって調整するのがおすすめです。

アイメッセージの実践には併用が有効的

アイメッセージとユーメッセージには、それぞれ違った良さや効果があります。基本の使い方である3ステップは先ほどご紹介しましたが、あくまで参考程度に考えましょう。アイメッセージとユーメッセージを、場面や状況によって使い分けたり併用したりすることで、それぞれのメリットでデメリットを補うことができます。あまり段階にとらわれすぎずに、冷静に相手や現場の状況から判断して適切な手段を用いることができるようにしましょう。

アイメッセージを実践する際の注意点

子供の言動を評価するような表現をしない

「頑張ったね」や「良い子だね」などのユーメッセージを多用しすぎることで、プラスの発言でも評価の要素が強くなってしまいます。アイメッセージであれば保育者の感情を伝える要素が強くなるため、子供に受けとめられやすくすることができますよ。しかしながら「私」を主語にした言い方でも、「私は~と思うよ」などの言い方では、評価をされているという印象を子供に与えかねません。アイメッセージでは純粋に気持ちを言葉にして伝えるようにしましょう。

意見の押しつけをしない

アイメッセージは言葉の圧や相手に対する強制力が弱い伝え方です。しかし、気持ちではなく意見を伝えようとすると、相手に強要しているように伝わってしまう危険性があります。例えば「~しない方がいいと思う」や「~はしておくべきだと思う」などは「私」が主語であっても意見を押しつけているようにきこえてしまいますよ。正論によって説得しようとしていると感じた子供が、不快に思って反発することも少なくない伝え方です。このような表現は避けて、質問して誘ってみたり、一緒になってやろうとしたりすることが子供の自発性を大切にできるため、おすすめです!

偽のアイメッセージにならないようにする

上記で紹介したようなアイメッセージは、主語が「私」であってもユーメッセージの要素がかなり大きい伝え方です。「(私は)~した方がいいと思うよ」は「(あなたは)~すべきだ」と言っているようなものですよね。これはアイメッセージとは呼べない、偽のアイメッセージになります。アイメッセージを使って会話しているはずなのに、なぜか子供に反発されることが多いと疑問に感じたことはありませんか?そんなときは、この偽のアイメッセージになっていないかどうか、自身の発言をしっかりと振り返ってみましょう。

まとめ

アイメッセージを活用して思いを伝えよう

保育におけるアイメッセージのお話、いかがでしたか?アイメッセージは上手に使えるようになると誰とでも円滑にコミュニケーションを行うことができるため、保育の現場以外でも大事にされています。しかしながら大人同士のやりとりが中心の会社とは違って、保育園では大人である先生が子供達とやりとりをすることが中心ですよね。大人を相手にするときはあまり意識する必要のないことが、子供を相手にするとなると注意すべきことだったりもします。普段の会話からアイメッセージを心がけ、自然に使えるようにしていきましょう!

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