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近年、社会問題となっているネグレクト。ニュースや新聞などでネグレクトという言葉を聞いたり見たりしたことはあるけれど、詳しい意味についてはわからないという人も多いのではないでしょうか?この記事では、そもそもネグレクトとはどのようなものなのかや、ネグレクトが起きてしまうきっかけなど、ネグレクトについて詳しく説明します。ネグレクトについて知ることで、苦しんでいる子供や保護者たちの助けとなることができると良いですね。
ネグレクトとは?
子供に対する必要な養育を行わない児童虐待の一種
ネグレクトとは、保護者が子供に対する必要な養育を行わないことを指す、児童虐待の一種です。ネグレクトは、子供の健康や発達に深刻な悪影響を与える可能性があります。10年前のネグレクトに関する相談件数は19,250件だったのに対し、令和4年度の相談件数は35,556件と大幅に増加(こども家庭庁『令和4年度児童相談所における児童虐待相談対応件数』より)。この件数からもわかるように、現在の日本ではネグレクトは大きな問題となっています。
※ネグレクトという言葉は子供だけでなく、高齢者や障害者に対するものも含むことがありますが、本記事では子供に対するネグレクトを扱います。
ネグレクトの種類
一般的ネグレクト
ネグレクトといっても一つではなく、様々な種類があります。一つ目は、一般的ネグレクトです。ネグレクトと聞いて皆さんが最初に思い浮かべるのがこの一般的ネグレクトでしょう。一般的ネグレクトとは、子供に対して生きていくために十分な衣食住を与えない虐待を指します。具体的には、必要な栄養の取れる食事を与えなかったり、清潔な衣服をあたえなかったり、お風呂に入れてあげなかったりなどがあります。
情緒的ネグレクト

二つ目は、情緒的ネグレクトです。情緒的ネグレクトとは、親が子供の感情や心理的な欲求を無視し、親の都合の良いようにコントロールしようとすることを指します。具体的には、泣いていても慰めてもらえない、考えや感情を認めてくれないなどがあります。情緒的ネグレクトは周囲が最も気付きにくく、親自身やネグレクトを受けている本人までもが気が付かないこともあるでしょう。その結果、大人になってからアダルトチルドレンになってしまうことがあります。
医療的ネグレクト
三つ目は、医療的ネグレクトです。医療的ネグレクトとは、子供に十分な医療を受けさせず、心身の障害に繋がってしまうこと、繋がる可能性のあることを指します。子供の体調が悪いときに病院に連れて行かないことだけでなく、健診や予防接種を受けさせないことも医療的ネグレクトに含まれます。適切な処置を行えば助かったはずの命が医療的ネグレクトによって失われているのが現状と言えるでしょう。
教育的ネグレクト

四つ目は、教育的ネグレクトです。教育的ネグレクトとは、子供を保育園や幼稚園、小学校などに通わせず、必要な教育を受けさせないことを指します。国民には子供に教育を受けさせる義務があり、子供が6歳になったら小学校に通わせなければなりません。そのため、子供が登校しないと教師が家庭訪問をすることがありますが、「本人が行きたがっていない」と不登校を勝手に装う親もいるようです。
ネグレクトが起こるきっかけ
貧困
ネグレクトが起きてしまうきっかけには様々な要因がありますが、その一つが貧困です。経済的な困窮状態にあると、十分な食事が確保できない、医療費を払えず病院に行けない、学校に通わせるための学用品の準備ができないといったことが起こるでしょう。結果的にそれらがネグレクトに繋がってしまっています。また、生活費を稼ぐために保護者が長時間労働や夜勤をしていることで、子供が放置されてしまうこともあります。
育児へのストレスやワンオペ育児

育児へのストレスやワンオペ育児もネグレクトに繋がる要因です。育児によるストレスや疲れにより、精神的に追い詰められ、子供の愛し方がわからなくなってしまうようです。特にワンオペ育児では相談できる相手がいないため、孤立感を感じ、よりストレスをためやすくなってしまいます。ストレスや疲れによる産後ノイローゼや産後うつ。これらは誰にでも起こりうることです。忙しい日々の中でもストレスをため過ぎないよう注意しましょう。そのためには周りのサポートも重要です。
親自身がネグレクトを受けていた
親自身が幼少期にネグレクトを受けていたことも要因の一つです。子供の人格が完成する8~10歳の時期までは保護者の愛情は必須。自分自身が親からの愛情を知らずに成長してしまったため、自分が親になっても子供の愛し方がわからず、ネグレクトが連鎖してしまいます。ネグレクトを受けて育った人にとってはそれが当たり前のため、自分がネグレクトをしている自覚がありません。そのため、周囲からのサポートは必要不可欠です。
子供の障害
子供の障害による育てにくさがネグレクトに繋がってしまうこともあります。障害を持つ子供を育てるには特別なケアが必要。また、一般的な育児よりも常に子供を相手にしていなければならず、自分の時間を確保しにくいという点もあります。育てにくさだけでなく、そもそも自分の子供が障害を持っているということを受け入れられないといったこともあるようです。以上のような理由から、ストレスをためてしまい、ネグレクトが起きてしまうことがあるでしょう。
ネグレクトの子供への影響
身体面への影響
ネグレクトは子供の成長に大きな影響を及ぼします。その中でも、身体面への影響として主に以下のようなことがあげられます。
・不潔な衣服やオムツ、お風呂に入らないことによる皮膚の湿疹やオムツかぶれ
・夏場に放置されることによる脱水症状
・保護者の監督不十分による事故でのケガ
・放置されたことによるケガや病気の悪化
精神・行動面への影響
ネグレクトは身体面だけでなく、精神や行動面にも大きな影響を及ぼします。精神や行動面の影響として主に以下のようなことがあげられます。
・愛情不足による自己肯定感の欠如
・慢性的な愛情飢餓による愛着障害
・自分の感情を受け入れてもらえないことによる暴力的な行動
・食料の不十分による窃盗行為
・次世代へのネグレクトの連鎖
特に自己肯定感の欠如は自傷行為や自殺に繋がる恐れがあり、大変危険です。
子供がネグレクトを受けているサイン
食事に関するサイン

ネグレクトを受けている子供には、周囲から見てわかるサインが出ていることがあります。その中でも、食事に関するサインには主に以下のようなものがあります。
・人の家でおやつを何度も要求する
・給食等を何度もおかわりする
・常におなかを空かせていて、元気がない
行動におけるサイン
ネグレクトを受けている子供の行動におけるサインには以下のような点があります。
・わざと人を逆撫でするような行動をする
・極端に人懐っこい
・人の家で勝手な行動をする
・夜遅くまで出歩いている
学校生活におけるサイン
ネグレクトを受けている子供の学校生活におけるサインには主に以下のようなことがあります。
・必要な学用品が不足している
・ルールを守ることができず、集団行動が苦手
・学習能力に何かしらの問題がある
・家に帰ろうとしない
・平日の昼間なのに外を出歩いており、学校に行っていないように見える
親が実践できるネグレクトをしないための対策法
人に話を聞いてもらう

自分は大丈夫だと思っていたり、してはいけないとわかっていたりしても陥ってしまうことがあるのがネグレクト。ネグレクトをしないために、親自身が実践できることがあります。一つ目は、人に話を聞いてもらうことです。育児には思い通りにいかないことも多く、ストレスを抱え込みやすくなります。自分を追い込んでしまわないよう、心身の疲れを感じたら周囲の人に相談してみましょう。人に話を聞いてもらうだけでも気が楽になります。身近に相談できる人がいないときには、民間団体や企業が運営する相談ホットラインや支援センターや児童館のサービスを利用することもできますよ。
一時的に子供と距離を取る
子供と一時的に距離を取ることも、ネグレクトを予防する手段です。少しの間、子供と距離と取り自分の時間を確保するだけで、育児への関心低下や子供へカッとなってしまうといった症状が一気に和らぐことがあります。周囲に子供を預けられる人がいない場合には、保育所の託児サービスやベビーシッター、自治体のサービスなどを利用してみるのも良いでしょう。保育所や自治体への相談はハードルが高いと感じるときは、一般の保育園の一時預かりを利用することができます。一時預かりは、保育園に在籍していなくても使うことができます。
周りの子供がネグレクトを受けているかも?と思ったら
大人が児童相談所虐待対応ダイヤル189に通告する

周囲でネグレクトの兆候を見つけた場合には、児童相談所虐待対応ダイヤル189にすみやかに通告しましょう。189に連絡すると、近くの児童相談所につながり、通告者からの情報をもとに専門家が調査を進めます。相談者の情報や相談内容は口外されないよう、厳しく定められているため、安心して相談することができるでしょう。匿名での相談も可能です。虐待の通告は、児童虐待防止法によりすべての国民の義務となっています。ネグレクトかな?と思ったときにはためらわずに189へ相談しましょう。いち早い通告で子供たちを助けることができます。
まとめ
ネグレクトについて知り困っている親子を助ける行動を取ろう

いかがでしたか?現在、ネグレクトで困っている親子は多くいます。この記事を参考にネグレクトについて知ることで、何か手助けができるかもしれません。ハードルが高いと感じるかもしれませんが、勇気を出して行動に移してみましょう。また、ネグレクトから親子を救うためだけでなく、ネグレクトの予防にも周囲の協力は必須です。子育てに困っている人がいたときには、優しく手を差し伸べてあげられると良いですね。