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児童発達支援施設とは、未就学の子ども達を対象に療育を行うことを目的とした施設です。児童発達支援施設では様々な職種の人が働いていますが、そのうちの一人が看護師。この記事では、児童発達支援施設で看護師がどのような役割を担っているのか、看護師が児童発達支援施設で働くときの注意点や年収などを紹介します。就職先や転職先を探している看護師さんは、是非こちらの記事を参考にしてみてくださいね!
児童発達支援施設で働く看護師の仕事内容は?
看護計画書の作成と実施
児童発達支援施設には、施設を利用する子ども達へ療育支援や医療ケアをするために必要な看護計画書が存在します。看護師が行う業務の1つは、看護計画書の作成と実施です。看護計画書を作成する目的は、施設と家庭でのケアや健康管理の方針を統一するため。そうすることによって、子ども達一人ひとりが抱えている課題に対して、適切な療育支援と医療ケアを提供することができるのです。期待する成果を得るために、看護師は作成した看護計画書に基づいて看護業務を行います。
他の職員と子どもの情報共有
児童発達支援施設には、看護師だけでなく保育士や児童指導員、介護福祉士も在籍しています。職種によって担う役割は様々ですが、児童発達支援施設を利用する子ども達一人ひとりの状況に合った療育支援を職員全員で行うために、職員間で必ず情報共有をします。前回の通所の振り返りや最近の様子、医療ケアの内容確認や当日の予定など、情報共有する項目は多岐にわたります。通所する子ども達へ安心安全な療育支援を提供するために、子どもの情報共有は欠かせません。
子どもの送迎への付き添い
児童発達支援施設では、子ども達の自宅から児童発達支援施設までの送迎業務があります。通所する子どもの医療ケアは送迎中も必要になるため、看護師が付き添います。自宅から出発する際に、保護者から子どもの体調や様子を聞くことも看護師の仕事です。送迎の道中、子どもが車内で体調を崩してしまうことが。そのようなとき、看護師が付き添っていることで、すぐに専門的な処置ができるのです。
子どもへのトイレ誘導や食事のサポート
児童発達支援施設において、子どもへのトイレ誘導や手洗い、食事のサポートも看護師の仕事です。必要に応じてオムツ交換もします。食事中に誤飲や誤嚥などの危険が無いよう、子ども達への注意は欠かせません。子どもによってサポートする内容は様々。そのため、痰の吸引や胃管からの経管栄養など、担当する子どもに適した医療ケアも行います。トイレ誘導や食事のサポートは他の職員が行うこともありますが、医療ケアが必要な子どもへの介助には、看護師が必要不可欠です。
担当する子どもに適した遊びの提供
児童発達支援施設に通所する子ども達が抱える課題は様々。子ども一人ひとりに設定している療育方針や看護計画書に沿った遊びを提供することも、看護師の仕事です。例えば、コミュニケーションに課題がある子どもの場合、安全を考慮しながら積極的に公園や児童館に行きます。そこで、同じ年ごろの子ども達との関わりを促し、ルールを守ることや挨拶など、基本的な他者とのコミュニケーションを学びます。このように、就学した後で子どもが困らないように将来を見据えたサポートをすることも、看護師の大切な仕事ですね。
子どもの日々の健康管理
児童発達支援施設における看護師の仕事として1番重要と言っても過言ではないのが、子どもの日々の健康管理です。例えば、気管支に障害のある子どもが通所している施設の場合、鼻水や痰の吸引処置や、部屋の湿度管理などが欠かせません。バギーに乗って移動する際は、呼吸器の回路がバギーからはみだしていなかなど、医療器具の管理もします。このような命に関わる医療ケアは他の職員では対応ができません。そのため、とても重要な仕事と言えるでしょう。
家族への報告と支援
児童発達支援施設で看護師が毎日行うべき仕事。それは、通所する子どもの家族への報告と支援です。例えば、送迎中や支援中に普段と違った様子や言動があったときは、具体的に家族へ報告をします。そして、子どもに対する不安要素は家庭によって様々なので、家族の心情に寄り添いながら悩みを傾聴。場合によっては保護者面談を行い、家族が安心して育児を行えるように物理的、また心理的な支援をします。
児童発達支援施設で働く看護師の1日のスケジュール例
常勤
まずは、児童発達支援施設で働く常勤看護師の1日のスケジュールをご紹介します。
施設の清掃や点検と消毒
当日の予定や受け入れる子どもの情報共有
9:00~10:00 子どもの送迎と受け入れ
保護者から子どもの体調や家庭での様子を聞き取る
健康状態のチェック
10:00~12:00 個別の療育支援と医療ケア
子どもの健康状態を観察しながら療育活動へ参加
必要に応じて医療ケアを提供
12:00~13:00 昼食や休憩
子どもの食事のサポート
自分も昼食を取りながら子ども達の健康状態を見守る
13:00~16:00 個別の療育支援と医療ケア
特定の医療ニーズがある子どもへ適切なケア
定期的な健康チェックやリハビリテーション
16:00~17:00 子どもの送迎
保護者へ子どもの1日の様子や健康状態について報告
保護者からの質問や相談を受ける
17:00~18:30 記録や報告書作成と終業準備
1日の活動内容や子どもの健康状態、提供した医療ケアを記録
報告書を作成し他の職員と情報共有
翌日の準備や片づけを行い退勤
こちらのスケジュールは一例です。施設の運営方針や役職によって異なります。
非常勤
次に、児童発達支援施設で働く非常勤看護師の1日のスケジュールをご紹介します。
施設の清掃や点検と消毒
当日の予定や受け入れる子どもの情報共有
9:00~10:00 子どもの送迎と受け入れ
保護者から子どもの体調や家庭での様子を聞き取る
健康状態のチェック
10:00~12:00 個別の療育支援と医療ケア
子どもの健康状態を観察しながら療育活動へ参加
必要に応じて医療ケアを提供
12:00~13:00 昼食や休憩
子どもの食事のサポート
自分も昼食を取りながら子ども達の健康状態を見守る
13:00~14:30 個別の療育支援と医療ケア
特定の医療ニーズがある子どもへ適切なケア
定期的な健康チェックやリハビリテーション
14:30~15:00 記録や報告と終業準備
子どもの健康状態や提供した医療ケアを記録して他の職員と情報共有
片づけを行い退勤
こちらのスケジュールは一例ですが、常勤に比べて非常勤は短い時間で働けます。児童発達支援施設に通所する子ども達よりも早く帰る時は、退勤前に必ず勤務中の職員に業務の引き継ぎをしましょう。
放課後等デイサービスで働く看護師との違い
活動時間
放課後等デイサービスと児童発達支援施設では、施設の活動時間が違います。放課後等デイサービスは6歳から18歳までの学校へ通う子どもが対象。そのため、学校が終わった後の時間帯から活動します。また、学校休業日に開所するときは日中から活動します。児童発達支援施設は0歳から6歳までの未就学児が対象。そのため、主に日中から活動します。このように、子ども達と直接関わる時間帯に、それぞれ違いがあります。
看護対象児の年齢
放課後等デイサービスと児童発達支援施設では、看護対象児の年齢が違います。放課後等デイサービスは6歳から18歳の就学児が対象。18歳に達した後も、自治体に申請すれば20歳まで継続して施設を利用することが可能です。児童発達支援施設は0歳から6歳までの未就学児が対象。一般的には、1歳半健診を病院で受けた後に、地域の保健師から子どもの発達に関するアドバイスを受けて、児童発達支援施設の利用を始める家庭が多いとされています。
連携施設
放課後等デイサービスと児童発達支援施設では、連携する施設に違いがあります。放課後等デイサービスでは、学校や地域の活動団体との連携が中心。子どもの学業や生活能力の向上、地域社会との交流などをサポートします。児童発達支援施設では、医療機関や保育施設との連携が中心。子どもの早期療育や日常生活のサポートをします。このように、それぞれ支援する子どもの年齢に適した施設と連携しています。
児童発達支援施設で働く看護師の平均年収は?
常勤で約350万円から450万円
児童発達支援施設で働く看護師の平均年収は、常勤で約350万円から450万円、非常勤で約232万円と言われています。ちなみに、放課後等デイサービスで働く常勤看護師の年収は約405万円、介護施設で働く常勤看護師の年収は約444万円、病院で働く常勤看護師の年収は約508万円と言われています。ボーナスの有無や役職によって年収は変わりますが、児童発達支援施設と比べると、他の施設の方が年収は高い傾向です。
児童発達支援施設で看護師が働くときの注意点
常に医師がいる環境では無い
児童発達支援施設では、身体的障害をもつ子ども達も通所します。身体的障害の症状は子どもによって様々。子ども一人ひとりに対し、看護師が適切に対処します。病院と違って常に医師がいる環境ではないため、急変時は自ら考えて適切な判断をします。基本的に施設にいる医療職員は看護師一人なので、非常にプレッシャーを感じるでしょう。どのような場面でも、適切な判断と落ち着いた行動ができる精神力が必要ですね。
病院勤務とは年収の違いがある
児童発達支援施設で働く看護師と病院で働く看護師では、年収の違いがあります。児童発達支援施設で常勤で働いた場合、年収は約350万円から450万円。病院で常勤で働いた場合の年収は約508万円です。この年収の違いの主な要因としてあげられるのが、夜勤の有無。病院で働く看護師が交代制で夜勤をした場合、夜勤手当がつきます。児童発達支援施設は主に日中の勤務です。仕事内容は似ていても、児童発達支援施設と病院では、看護師の年収に違いが生まれていますね。
障がい児への深い知識が求められる
児童発達支援施設では、様々な発達障害、身体的障害を抱えた子ども達が通所します。課題としている内容は子ども一人ひとり違います。例えば、痛みをともわない定期的に行う医療ケアだったとしても、普段と違う状況や時間帯という理由で暴れてしまう子どももいます。そのため、看護師は全ての子どもの特性に合わせた、適切な対応がとれるように、障がい児への深い知識が求められるのです。
特殊な医療ケアが必要な場合がある
児童発達支援施設は、気管支に問題がある子どもや経管栄養が必要な子どもなど、重症心身障がい児も通所します。痰吸引や呼吸器の管理、胃の中の消化状態をチェックするなど、特殊な医療ケアが必要です。送迎中や食事中、療育支援中など、特殊な医療ケアを行うシチュエーションは多岐にわたります。もし、普段と違うことが起こったときは、必ず保護者や他の職員に報告します。どのような状況であっても、冷静な対応と適切なケアができるスキルも必要ですね。
まとめ
専門的な知識と経験を活かして障がい児の発達に関わることができる
いかがでしたか?今回は、児童発達支援施設で働く看護師の仕事内容や1日のスケジュール、年収などを紹介しました。児童発達支援施設では、様々な障がいを持つ子どもと近い距離で関わり、一人ひとりに寄り添った丁寧な療育支援や医療ケアを行います。そして、丁寧な療育支援や医療ケアを安心安全に行うためにも、施設にいる各専門の職員とコミュニケーションをとり、チームワークよく行動することが大切です。専門的な知識と経験を活かしたい看護師さんは、ぜひ児童発達支援施設を勤務先の候補に入れてみてくださいね!