母子生活支援施設とはどんな施設?【役割・対象者・利用可能期間・入所理由】

母子生活支援施設とはどのような施設か知っていますか。施設の名前は聞いたことがあっても詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。母子生活支援施設とは生活が困窮した母子を対象に保護や自立支援を行う施設です。保育士資格を持っていると保育士や母子支援員として働くことができますよ。この記事では、母子生活支援施設の役割や利用可能期間、入所理由、そして施設で働く人の職種や将来性などについて詳しく解説します。ぜひこの記事を参考にしてこれからの保育士としてのキャリアに役立ててください。

母子生活支援施設とは

母子の自立を支援する施設

母子生活支援施設とは児童福祉法第38条に基づき、母子の自立を支援する児童福祉施設。様々な事情で生活することが困難になった母子に対して一時保護や母子の自立に向けての支援を行います。利用料は世帯所得によって負担が異なります。電気・ガス・水道にかかる費用は実費負担となるようですよ。母子生活支援施設は全国に215施設あり、約5,300人ほどの子どもたちが利用しています。

保育士くらぶ

母子生活支援施設の対象者

シングルマザーや18歳未満の子供

母子生活支援施設の対象者は様々な事情で保護が必要なシングルマザーや18歳未満の子供です。シングルマザーではなくても何らかの事情で離婚できない母親と子供も対象です。また、場合によっては20歳未満の子供も入所可能ですよ。母子生活支援施設では母子が一緒に利用しなければなりません。母子分離の場合は児童相談所などの他機関の支援対象となります。入所中だけではなく、退所後の母子に対しても相談や支援を行います。

母子生活支援施設の役割

母子の一時保護や住居提供

母子生活支援施設の役割の中には母子の一時保護や住居提供があります。配偶者からのDVから守るために母子を一時的に保護し、今後のことについて相談に乗ったりします。必要に応じて心の傷をやわらげるためにカウンセリングを行うこともあるようですよ。また、母子生活支援では母親と子供が一緒に生活できるように住居提供を提供します。世帯ごとに個々の生活空間が用意されているため、部屋では落ち着いて生活することができます。

子供への保育サービス

母子生活支援施設には保育士の配置がされています。就学前の保育所に入所できない子供を対象に保育サービスを提供します。保護者が安心して仕事に行けるように早朝や夜間など保護者の勤務時間に合わせて保育を行いますよ。また、子供の成長に応じて勉強のサポートをしたり日常生活の支援を行うこともあるようです。一部の施設では地域の子供たちに対して、放課後学童保育の提供、夕食の提供、様々なイベントの実施などを行っています。

母子への自立支援

母子生活支援施設では母子への自立支援も行います。母子それぞれの状況をふまえて職員が就労や生活、子供の教育などについてアドバイスを行います。資格取得やハローワークに関する情報提供を行い、保護者が就労に向けてスキルや情報を身につけられるようにサポートもしますよ。また、母子が自立して退所できるように支援計画を作成することもあります。母子の自立に向けた支援は母子生活支援施設の重要な役割ですよ。

母子生活支援施設の利用可能期間

子供が18歳になるまで

母子生活支援施設を退所するタイミングは母子が自立し、安定した生活を送れるようになったときや子供が18歳になったときです。子どもの年齢は原則として18歳までと定められてはいますが、場合によっては20歳まで利用することもできます。児童養護施設入所児童等調査を見ると、5年未満が87.1%、1年未満が33.1%、1年が23.9%と、入所者の半数以上が一年以内に退所していることがわかります。

母子生活支援施設の利用料

生活保護を受けている場合は無償

母子生活支援施設の利用料は世帯の収入によって異なります。生活保護を受けている場合は無償となります。住民税非課税世帯は月額1,100円、課税世帯は2,200円から最大で全額徴収になりますよ。所得ごとの利用料は以下の通りです。

A生活保護世帯0円
B市町村民税非課税世帯1,100円
C1市町村民税の課税世帯(所得割のない世帯)2,200円
C2市町村民税の課税世帯(所得割がある世帯)3,300円
D1〜D14所得税課税世帯4,500円〜全額徴収

ただし、食費や光熱費は実費負担となります。

母子生活支援施設への入所世帯数や入所理由

入所世帯数は減少傾向、入所理由はDVなど

母子生活支援施設は2021年時点で215か所あり、3,142世帯あるようです。施設数と入所世帯数は年々減少傾向にあります。施設数と入所世帯数の減少の理由には施設数の地域格差や児童扶養手当や住宅手当等の制度拡充などの影響があるようですよ。また、施設の老朽化や施設のルールに馴染めないという問題もあるようです。母子生活支援施設の入所理由は配偶者からのDVが最多で、ほかには住宅事情、経済的理由があります。

母子生活支援施設で働く人の職種

施設長

施設長は施設の責任者として施設の運営、人事や母子が自立できるように支援計画の作成を行います。施設長になるには以下のいずれかの要件を満たす必要がありますよ。

・医師であり、精神保健もしくは小児保健に関する学識経験がある
・社会福祉士である ・母子生活支援施設にて職員としての実務経験が3年以上ある
・上記の資格と同程度の能力があると都道府県知事が認め、業務の実務経験が3年以上ある

母子支援員

母子支援員は母子のそれぞれの状況に応じて生活や養育などの相談支援を全面的に行います。母子支援員になるには以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

・保育士
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・都道府県が指定する児童福祉施設の職員を養成する学校、またはその他の養成施設を卒業している
・高等学校卒業者、もしくは通常の課程による12年の学校教育を修了し2年以上児童福祉事業での実務経験がある

保育士

母子生活支援施設には保育所に準ずる施設を設けているところがあります。乳幼児30人につき1人の保育士の配置が義務付けられています。乳幼児が通っている保育施設が休みだったり体調不良で通園できない場合に、働いている保護者の代わりに保育を行いますよ。保護者からの子育ての相談に対して、アドバイスをすることもあるかもしれません。これによって保護者が安心して仕事に取り組むことができ、子供たちは安全な環境で過ごすことができます。

心理療法担当職員

母子生活支援施設に入所している母子は心理的ケアが必要なケースが多いです。そのため、心理療法担当職員は母子支援員や少年指導員と連携して母子に対して心理療法を行います。心理療法担当職員になるには、大学などで専門的に心理学を学び修了した人かつ心理療法を行う技術があることが要件ですよ。個別対応が必要な子供には1対1のケアを行う個別対応職員や入所中の進学・就職、退所後のアフターケアを行う自立支援担当職員を配置するところもあります。

少年指導員

少年指導員は母子生活支援施設に入所している子供に対して生活面や学習面での指導を行います。また、施設の事務員も兼務しています。少年指導員として働くには、以下に書くように母子支援員と同じ要件を満たす必要がありますよ。

・保育士
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・都道府県が指定する児童福祉施設の職員を養成する学校、またはその他の養成施設を卒業している
・高等学校卒業者、もしくは通常の課程による12年の学校教育を修了し2年以上児童福祉事業での実務経験がある

調理員・嘱託医

施設内保育を行っている施設では調理員の配置が義務付けられています。調理員は栄養バランスの良い食事を提供します。しかし、調理業務全般を外部委託している施設の場合では調理員の配置をしなくてもいいこととなっていますよ。また、嘱託医は各施設に1人の配置が義務付けられています。嘱託医は母子の健康を維持するために病気、感染症の予防、健康管理を行います。母子生活支援施設の配置基準については「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」の第4章にも書かれていますよ。

母子生活支援施設で働く保育士の1日の流れ

午前中は保育、午後はミーティングなど

7:00  母子の登園、登校、出勤
10:00 日勤職員の出勤 ・夜勤職員と交代
引継ぎやその日の予定を確認をします。
11:00 生活状況の確認・保育
施設で保育サービスを提供している場合は低年齢の子供たちの保育を行います。
12:00 休憩
13:00 相談支援・事務作業
保護者からの相談に応じたり事務作業を行います。
15:00 降園 子供の見守り
降園、下校した子供たちの見守りをします。
18:00 ミーティング
19:00 退勤

母子生活支援施設では、働いている母親が帰宅した後に相談や支援を行うことが多いため、交代制勤務をとっているところが多いようですよ。

母子生活支援施設と保育園の仕事の違い

支援対象者が違う

母子生活支援施設で保育士さんが働くには保育士として乳幼児の保育を行うパターンと母子支援員として働くパターンがあります。保育士として働く場合は母子生活支援施設と保育園では仕事内容に大きな違いはありません。母子支援員として働く場合は幅広い年齢の支援対象者の対応をすることになります。母子支援員は子供の学習サポートや母親に代わって送り迎えをするなど幅広い業務を行います。夜勤や土日勤務があることもありますよ。

母子生活支援施設で働くことの将来性

利用者のニーズは高いため将来性はある

先ほども書いたように母子生活支援施設の施設数は年々減少傾向にあります。しかし、母子生活支援施設の利用者のニーズは高いため、将来性はあるといえますよ。1年未満で自立し、退所していく母子は全体の33.2%もいます。様々な事情を抱えた母子の支援を行うことは決して簡単なことではありません。しかし、保育士として、または母子支援員として親身に相談に乗っていくことで、母子は自立していくことができます。母子が退所するときには達成感ややりがいを感じることができるかもしれません。

まとめ

母子生活支援施設とは何かを知り、理解を深めよう

いかがでしたか。母子生活支援施設について理解を深めることができたでしょうか。保育士資格を持っていると、保育士として、または母子支援員として母子生活支援施設で働くことができます。母子生活支援施設の入所者は様々な事情を抱えているため、精神的ケアが必要な母子に対しては適切な支援をする必要があります。決して簡単ではない仕事ですが、親身になって対応していくと自立していく母子に対して達成感ややりがいを感じることができるのではないでしょうか。

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