乳児院とは?【どんな施設・役割・主な職種・求められるスキル】

乳児院は、保護者のいない乳幼児や家庭での養育が困難な乳幼児を預かり、親の代わりとなって必要なケアと愛情を提供する施設です。親の病気や家庭の事情で一時的に育児が困難な場合にも利用されることがあり、子どもの健全な成長を支える重要な役割を果たしています。今回の記事では、乳児院が果たす役割や乳児院で働く主な職種、乳児院で働く保育士に求められるスキルなどを紹介します。乳児院で働くことに興味を持っている保育士さんは、ぜひ参考にしてみてください。

乳児院とは?

保護者に代わって子どもを育てる施設

乳児院とは、保護者の経済的な事情や病的な事情、保護者からの虐待などにより子どもを家庭で育てることが困難な場合に、一時的に子どもを保護して育てる施設。主に0歳から2歳までの子供が対象で、365日24時間体制で生活全般を支援します。医療・保育スタッフが常駐し、健康管理や発達支援を行いながら、安全で安心な環境を提供します。また、家庭への復帰や養子縁組を目指して、親や里親と子どもをつなげるなどの責任ある役割も担っています。乳児院は、子供の健やかな成長を支援する重要な福祉施設なのです。

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乳児院が果たす役割

保護と養育

乳児院が果たす役割は主に4つあります。1つ目は保護と養育。乳児院は入所する子どもたちに、安全で健やかに成長できる環境を整えます。基本的な生活ケアとして、食事、睡眠、衛生管理を提供するだけでなく、発達段階や家庭状況に応じた教育や遊びを通じて、生活習慣や道徳心を育成します。また、療育の面では、心身の健全な発達を支えるために、専門のスタッフが発達に応じたケアや教育を行いますよ。これにより、子どもたちが愛情と安全を感じながら成長できるようサポートしています。

保護者と里親の支援

2つ目は保護者と里親の支援。乳児院では、保護者の心理的・社会的なサポートを通して、保護者が子育てを再開するための支援や、子どもが里親家庭に移る際のサポートを行います。保護者が家庭復帰を希望する場合は、子どもと一緒に生活するための育児指導や家庭環境の改善支援を手助けし、育児の知識やスキルの向上を図ります。また、子どもが里親と暮らすことになった場合にも、子どもが新たな環境へスムーズに移行できるように支援するとともに、適切な養育環境の提供や育児方法の指導を行っていきますよ。

入所前と退所後の支援

3つ目は入所前と退所後の支援。入所前の支援では、親の相談に応じ、家庭での養育が難しい場合のアセスメントを行います。ここでは、行政機関や児童相談所と連携し、子どもの権利と福祉を最優先に考えた措置を検討することが重要です。また入所後の支援では、専門的なスタッフが子どもに対して安心できる環境を提供し、個々の発達に応じたケアを行います。食事や衣服、医療など基本的な生活支援に加え、情緒的な安定を図るための愛情豊かなケアも行いますよ。さらに子どもの成長に必要な教育や遊びの機会を提供し、健全な発達を促進します。保護者が家庭復帰を目指す場合や里親、養子縁組を希望する家庭への移行支援も行っていきます。これにより、乳児が適切な家庭環境で育つことを支援します。

地域の子育て支援

4つ目は地域の子育て支援。乳児院は地域の子育て支援の一環として、育児に関する相談やアドバイスを提供し、地域の保護者が抱える悩みや不安を解消する役割も担っています。さらに、乳児院は地域の保育士や保護者を対象とした研修やワークショップを開催し、子育てに関する知識やスキルの向上を促進していますよ。これにより、地域全体で子どもたちの健やかな成長を支える仕組みが整えられていきます。

乳児院で働く主な職種と役割

施設長

ここからは、乳児院で働く主な職種と役割を紹介していきます。乳児院の施設長は、施設全体の運営と管理を統括する責任者です。主な役割は、施設の運営計画の策定と実施、予算管理、職員の採用や教育と評価、そして施設内の安全管理。また、乳幼児のケアの質を確保するために職員と連携し、子どもたちの成長と発達を支援するプログラムの開発や改善を行います。さらに、施設長は地域や行政との連携を強化し、乳児院が地域社会で適切な役割を果たせるよう調整します。このように施設長は、施設の円滑な運営と子どもたちの成長や安全を守る重要な役割を担っています。

医師や嘱託医

乳児院では、子どもたちの健康管理を専門的に行うために小児医療の診療経験を医師、または嘱託医が必ず配置されています。医師や嘱託医は定期的に乳児院を訪れ、子どもたちの健康状態を診察し、必要な治療や健康指導を行います。また、日常的な健康管理だけでなく緊急時の対応も医師や嘱託医の指導の下で行われます。職員に対しても健康管理や感染症予防のための指導を提供し、全体的な健康環境の維持に貢献していますよ。医師や嘱託医の存在は、子どもたちが安心して過ごせるために欠かせない役割を果たしていると言えるでしょう。

看護師

乳児院で働く看護師は、入所する子どもの人数に応じて必ず配置されます。主な役割は乳幼児の健康管理で、日々の健康観察や体温測定、体重測定などを行い、病気や異常を早期に発見することに努めます。また、医師の指示の下で薬の投与や医療処置を行い、必要に応じて病院への連絡や搬送を担当。看護師は、子どもたちが安心して生活できる環境を提供するために、感染症対策や衛生管理にも細心の注意を払うことが必要です。保護者や他のスタッフと連携し、子どもの健康に関する情報共有や育児に関するアドバイスも行いますよ。

保育士

乳児院で働く保育士は、乳幼児の基本的なケアを行い、成長と発達を支援する重要な役割を担います。主な業務は食事の提供、排泄の管理、睡眠のサポートなど。また子ども1人ひとりのニーズに応じた遊びや学習活動を計画して実施し、愛情深い環境を提供することが求められます。加えて、保護者や他の専門職との連携も重要で、子どもの健康や発達状況についての情報共有やアドバイスも行いますよ。保育士は、子どもに安心感を抱かせ健やかな成長を促進するために、日々の成長と発達のケアに加え、子どもたちへの深い理解と細やかな配慮が求められます。

児童指導員

児童指導員は乳児院で重要な役割を担います。児童指導員は主に、乳幼児の日常的なケアや発達支援といった保育士と同じような支援を行い、生活全般をサポートします。具体的には、乳児の健康管理や食事の準備、入浴やおむつ替えといった基本的なケアを提供。また、乳児の発達に応じた適切な遊びや活動を取り入れ、社会性や認知能力の成長を促します。児童指導員は、乳児の安全を確保し、保護者や他のスタッフと連携しながら、温かく安定した環境を提供することが求められますよ。

児童指導員についての詳しい内容はこちらの記事を参考にしてみてください!

家庭支援専門相談員

家庭支援専門相談員は、乳児院で家庭との橋渡しを行う専門職です。児童相談所と連携し、虐待など家庭環境上の問題を抱える保護者の相談や援助を行うほか、子どもが家庭に戻る準備をサポートし、家庭環境の改善に努めます。具体的には、家庭とのカウンセリングや支援計画の策定、親子関係の修復を目指した支援を行います。また、家庭内での問題点を把握した上で解決策を提案し、必要な支援機関と連携します。家庭環境の改善を図り、子どもがより良い環境で成長できるようにすることが主な役割と言えるでしょう。さらに里親委託のとりまとめや、地域における子育て家庭の相談援助なども行いますよ。

個別対応職員

乳児院での個別対応職員は、乳幼児1人ひとりに対して特別なケアを提供するという役割を担います。個別対応職員の主な業務には、乳幼児の発育状況や健康状態を継続的に観察し、個々のニーズに応じた支援を行うことが挙げられます。また、保護者とのコミュニケーションを図り、育児に関するアドバイスやサポートを提供。個別対応職員は、乳児の情緒的安定や社会性の発達を促進するための環境作りにも力を入れ、乳幼児の成長を支える重要な役割を果たします。

心理療法担当職員

心理療法担当職員は、乳児院に入所する乳幼児の心理的なケアと発達支援を行います。乳児院には、虐待などが原因で心理的なケアを必要としている子どもがいます。心理療法担当職員はそのような子どもに対して、面接などを通して専門的な心理療法を提供しますよ。心理療法担当職員は、厚生労働省令によって施設に配置できる基準が定められ、大学等で心理学を専攻し個人及び集団に対する心理療法を習得していることが任用にされる条件となっています。心理療法担当職員は、子どもたちの健全な成長をサポートし、子どもたちが抱える心理的な課題を解消するための重要な役割を果たしているのです。

乳児院で働く保育士に求められるスキル

子どもの行動に対する観察力

乳児院で働く保育士に求められるスキルでは、まず子どもの行動に対する観察力が挙げられます。乳児院では子どもの行動や状態を細かく把握することが重要です。子どもたちは自分の感情や状態を言葉で表現するのが難しいため、保育士は子どもの微妙な表情や身体の動き、泣き声や笑顔などを注意深く観察します。また、子どもの興味や好き嫌い、友達との関係性なども観察することで、個々の子どもに適した保育や支援が提供できます。観察力を基にした適切な対応は、子どもたちの安心感や信頼関係の構築にもつながるでしょう。

子どもと信頼関係を築くためのコミュニケーション能力

乳児院で働く保育士には、子どもとの信頼関係を築くための優れたコミュニケーション能力も求められます。保育士は、子どもたちの気持ちやニーズに気づき、適切な言葉や行動で応答することで、子どもたちが安心感を持てる環境を作る必要があります。その際には、子どもの年齢や発達段階に応じた言葉遣いや表現方法を選び、理解しやすい形でコミュニケーションを取ることが重要ですよ。さらに、傾聴の姿勢を持ち、子どもたちの言葉や感情を受け止めることで、子どもたちは自分が尊重されていると感じ、より信頼関係が深まるでしょう。このようなコミュニケーションの取り方が、子どもの情緒の安定や社会性の発達に大きく関係してくると言えます。

辛抱強く対応するための忍耐力

乳児院で働く保育士にとって、辛抱強く対応するための忍耐力はとても重要なスキルです。乳幼児は感情のコントロールが未熟であり、泣いたり怒ったりすることが日常茶飯事。保育士はこれに対して冷静に対応し、子どもたちの感情を受け止めながら辛抱強く対応する必要があります。忍耐力を持つことで、子どもたちが安心して感情を表現できる環境を提供し、情緒の安定を促進します。また保護者や他の職員とのコミュニケーションにおいても、辛抱強く対応することで、より円滑な連携が図れるでしょう。これらの忍耐力が、子どもたちの安心感と信頼を築く基盤となりますよ。

緊急時に適切な対応をとるための対応力

緊急時の対応力も、乳児院で働く保育士に求められるスキルです。緊急時に迅速かつ適切に対処する能力は、乳幼児の安全を確保するために不可欠です。具体的には、急病や怪我が発生した際に適切な応急処置を行い、必要に応じて医療機関に連絡するといった適切な判断力。また、火災や地震などの災害時には、冷静に避難誘導を行い、乳幼児を安全な場所へ避難させる指導力が挙げられます。さらに、保護者への迅速な連絡や報告を行い、子どもたちの心のケアも欠かせません。保育士は、常に冷静で臨機応変な対応が求められるため、事前の訓練やシミュレーションを通じて、適切に対処する能力を高めておくことが重要となるでしょう。

まとめ

乳児院で働いて養育者と子どもをつなぐ支援をしよう!

いかがでしたか。今回の記事では、乳児院について、果たす役割や乳児院で働く主な職種、乳児院で働く保育士に求められるスキルなどを紹介しました。乳児院は、様々な事情で家庭での養育が難しい乳幼児たちが一時的に生活する場所。乳児院で働く職員は、子どもたちの健やかな成長を支えるだけでなく、養育者と子どもをつなぐために日々努力しています。保育や福祉の分野での経験を活かし、乳児院で子どもと関わるお仕事がしたい方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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保育士くらぶは保育士の転職キャリアサポートを行うアスカが運営しています。保育士くらぶ編集部のメンバーは元保育士や幼稚園教諭出身のメンバーを中心に「保育業界をもっと良くしたい!」という思いがあるメンバーが在籍し、日々執筆しています。保育士くらぶでは現役保育士さんが職場で活かすことが出来る、保育のノウハウやネタ、保育学生にとって必要な知識などを発信しています。 アスカは保育士の就職支援を行う会社です。1994年創業。全国で約10万名の保育士、幼稚園教諭の皆さまが登録しています。年間約1万名がアスカを通じて保育園や幼稚園、学童などの施設への就職を決めています。 保育士の求人情報は 【保育求人ガイド】 https://hoikukyuujin.com/ プロフィール入力で園からスカウトを受ける 【保育士スカウト】 https://www.hoikushiscout.com/