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保育施設の人員配置基準、知っていますか?
待機児童問題の解決に向けた対策は、保育士さんの処遇改善や地域限定保育士制度の創設といった具体策が次々に実施されています。
それでもまだ待機児童ゼロという目標は達成されていません。
保育士不足という現状は、その待機児童問題の大きな要因であることは間違いありません。
なぜ保育士が不足しているのか?
その原因はいろいろありますが、保育施設における人員の配置基準と言う最低限のルールが少なからず関わっています。
今回はこの「配置基準」について改めて調べてみました。
保育施設の運営者だけでなく、現場で働く保育士さんたちも自分が勤務する保育園の配置基準をしっかり把握しておきましょう。
保育園の配置基準①厚生労働省による「最低基準」
まずは、保育園などの福祉施設の管轄である厚生労働省が定めた最低基準からチェックしましょう。
厚生労働省が定める配置基準とは、施設の面積や設備、定員や職員の配置などの基準で、これをクリアした施設は認可保育園として税制の優遇や補助金・助成金の交付があります。
この基準を満たせない、あるいは満たしていても認可申請を行っていない保育施設を認可外保育園、または無認可保育園と呼びます。
つまり、この最低基準は、認可保育園として運営したい場合の基準で、そうでない保育施設はクリアする必要がない基準です。
ただ、認可外だから劣悪な環境だというわけではなく、保護者のニーズに合った施設や優良な施設がたくさんあります。
また、各自治体が厚生労働省の定めた指針に基づいて立ち入り調査を定期的に行っています。
認可保育園に関して定められた保育士配置の最低基準は以下の表のようになります。
児童の年齢 | 保育士の年齢 |
---|---|
0歳児 | 児童3人に対して保育士1人 |
1・2歳児 | 児童6人に対して保育士1人 |
3歳児 | 児童20人に対して保育士1人 |
4・5歳児 | 児童30人に対して保育士1人 |
これ以外に、「定員90人以下の保育所については、1人を加算する」とあります。
出典:児童福祉施設最低基準
保育園の配置基準②計算方法
前項で簡単に保育士の配置基準を紹介しましたが、正確には児童の数に応じて保育士の数を決定する算式を使うことになります。
0歳児 | 児童数 × 1/3 |
1・2歳児 | 児童数 × 1/6 |
3歳児 | 児童数 × 1/20 |
4・5歳児 | 児童数 × 1/30 |
※割り切れない場合には、小数点第1位まで計算(小数点第2位は切り捨て)、小数点第1位を四捨五入する。
たとえば0歳児が19人、1歳児・2歳児が21人、3歳児が24人、4歳児・5歳児が41人だった場合で計算してみましょう。
→ 6人
1歳児・2歳児:21×1/6=3.5
→ 4人
3歳児:24×1/20=1.2
→ 1人
4歳児・5歳児:41×1/30=1.36
→ 1人
園児が105人に対し、12人の保育士が最低必要という計算結果になりました。
しかし、実際には多くの保育園が早朝保育や延長保育を行っていることから、保育士さんの勤務はシフト制のところがほとんどです。
どの時間帯においても保育士が2人は必要ですし、勤務時間中にも休憩時間を設けなければいけないため、そのための交代人員も必要になります。
しかも、基準内だからと言って1歳児6人や4歳児30人を1人の保育士が見るのがとても難しいことは明白です。
そのため、多くの認可保育園ではこの最低基準以上の保育士(もしくは保育補助)を配置しています。
保育園の配置基準③自治体による基準
先程紹介した配置基準は、国が定めた最低基準です。
しかし、前項でも触れた通りその最低基準では実際に運営することは難しく、保育の質の低下が懸念されます。
そこで、都道府県や市町村などの自治体では、この基準よりも多く人員を配置して、ゆとりを持った保育ができるようにと、独自の基準を設けているところがあります。
待機児童数全国最多と言われる東京都世田谷区では、1歳児6人に対して保育士1人の国の基準に対して、1歳児5人に保育士1人とさらに厳しい基準を設けています。
出典:世田谷区保育の質ガイドライン
待機児童が社会問題化した平成28年に、厚生労働省から基準見直しが要請されましたが、
保坂区長は
「待機児童が非常に厳しい中、質にこだわるのかという(疑問の)声もあるが、子供が安全な環境で育つことが何より重要。量的な整備と質的な確保は車の両輪だ」
待機児童数全国最多の世田谷区、厳格な保育施設基準「継続」 – 産経ニュースhttps://www.sankei.com/region/news/180112/rgn1801120069-n1.html
とコメントし、基準見直しはしない方針を示しました。
保育園の配置基準④緩和で待機児童解決なるか
国の基準よりも厳しい基準を設けている自治体に緩和を要請していることは、前項でも紹介しました。
さらに、平成28年4月には「保育所における保育士配置の特例」を施行しました。
1. 朝夕等の児童が少数となる時間帯における保育士配置に係る特例 |
保育士の最低2人配置要件について、朝夕など児童が少数になる時間帯においては、保育士2名のうち1名は子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。 |
2. 幼稚園教諭及び小学校教諭並びに養護教諭の活用に係る特例 |
保育士と近接する職種である幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭を、保育士に代えて活用可能とする。 |
3. 保育所における保育の実施に当たり必要となる保育士配置に係る特例 |
保育園等を8時間を超えて開所していることなどにより、認可の際に最低基準以上必要となる保育指数を上回って必要となる保育士数について、子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。 |
配置基準緩和で懸念されること
「保育園が増えないのは国の定める基準が原因」
そういう意見も確かにあるようですが、その基準を緩和、あるいは撤廃すれば保育園は増えるでしょうか?保育士さんは増えるでしょうか?
明確な答えは分かりません。
ただ、この基準の緩和で保育の質が低下するのではと心配する保育関係者や保護者はたくさんいます。
保育の質が低下するだけでなく、子どもたちの安全が脅かされるのではと指摘する声もあります。
何より現場の保育士さんにとっても、負担増で退職・転職を余儀なくされるような事態にならないとも限りません。
配置基準を満たすのは、本当に大変…
保育士不足が待機児童問題解消のカギを握るのは間違いありません。
保育の受け皿である保育園を増やすことも大事ですが、そこに絶対必要な保育士さんを確保できないのも間違いのない現実です。
国の定める基準を満たすだけの人員を確保できない、子どもたちに目が行き届く人員を配置できない、そんな保育園がたくさんあります。
ギリギリの状態で運営を続けざるを得ない保育園もたくさんあります。
待機児童解消はもちろん必要ですし、必ず達成して欲しい目標でもあります。
しかし、そのために犠牲になるものが増えるような緩和政策が本当に必要なのか?という声があるのも事実です。
保護者や保育士さん、保育園の経営者、そして何より子どもたちにとって良い保育が実現されることを願うばかりです。