発達障害グレーゾーンとは?療育は必要?特徴や原因について解説します!【大人・子供・仕事・接し方・普通学級・英語・遺伝】

みなさんは、発達障害についてどれくらい知っていますか?現代では、ADHDやASDといった言葉がよく聞かれるようになりました。このような特性を持つ子供たちのために、工夫を凝らした教育をする場所や支援の場所も増えてきています。しかし、社会には、そういった【発達障害】として診断されないグレーゾーンの子供たちも多数存在しています。昨今のグレーゾーンの子供たちは、うまく支援が受けられなかったり、その特性を理解してもらえなかったりする場面も。この記事では、そんなグレーゾーンについて理解を深めるために、特性や接し方などについて解説していきます!

グレーゾーンとは?

発達障害の傾向がみられるが確定診断が出せない状態のこと

グレーゾーンとは、発達障害として確定診断をつけることができない状態のことを意味します。発達障害の症状がいくつか認められるものの、診断基準を全て満たすわけではない場合にグレーゾーンとして認識されます。また、「自分は発達障害かもしれない」と思いながら医療機関を受診していない人が「自分はグレーゾーンだ」と認識している場合も。グレーゾーンという言葉は、医学的な診断名ではなく、その状態を示す通称として使用されています。

人口の約14%がグレーゾーンといわれている

日本では、全体人口の約14%がグレーゾーンではないかと考えられています。日本の人口を見ると、7人に1人はグレーゾーンの人がいると考えることが出来ます。グレーゾーンは、医学的に診断がつかない状態のため、本来発達障害の方が受けられる支援が受けることができません。それだけでなく、どうして自分には普通の生活ができないのか、どうして生きづらいのかという悩みを抱えている人が多いです。現代の日本社会において、14%もの人がこのような生きづらさを抱えているのです。

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発達障害とは?

自閉症スペクトラム【ASD】

ASDとは自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の英語表記である、「Autism Spectrum Disorder」の頭文字をとったもの。自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)は、以下の2つの基本特性がある発達障害です。

・対人関係や社会的なやりとりの障害
・こだわり行動

ASDの人は、暗黙のルール、比喩や皮肉といった表現を理解するのが苦手で、社会的な場面で困難を抱えやすいです。そのため、場の空気を読むことや、人とかかわることが苦手な傾向に。それだけでなく、物の順序や順番、勝敗、自分なりのやり方などにつよいこだわりがあることも特徴の1つです。ASDの原因は、生まれつきの脳の障害であると考えられています。先天的な脳の異常が原因になるため、完全に治ることはありません。しかし、本人の特性にあった環境調整、療育・教育によって症状の改善や発達の促進が期待できます。

注意欠陥・多動症【ADHD】

ADHD(注意欠如・多動症)とは、【不注意】【多動・衝動性】を主な特徴とする発達障害のひとつ。ADHDの子供は、同年代の子に比べて落ち着きがないと見られます。学校では授業中に立ち歩いたり、先生の話をじっと聞いていたりするのが難しい傾向に。作業をしていても不注意でミスを起こしやすく、まわりから【注意が足りない】【失敗しやすい】とみなされることが多いです。ADHDは、生まれつき脳の一部に障害があることが原因となります。

学習障害【LD】

学習障害(LD)とは、【聞く】【話す】【読む】【書く】【計算・推論する】のうち、1つ以上の習得・活用に困難を示す発達障害のこと。学習障害を持つ人は、発達や知能の遅れはみられません。LD(Learning ・Disorder)と略されることもあります。学習障害は以下の3つに分類されます。

・ディスレクシア(読字障害)
ディスレクシアとは、【字を読むことに困難がある障害】の通称です。文字の読み方・形を認識することが難しいことが特性です。

・ディスグラフィア(書字表出障害)
ディスグラフィアとは、【字を書くことに困難がある障害】の通称。文字の形が認識しづらく、視覚から得る情報処理の難しさが特性にあげられます。

・ディスカリキュア(算数障害)
ディスカリキュアとは、「算数・計算、その場にないものを推論することが困難な障害」の通称です。ディスカリキュアの人は、数を概念として捉えることが苦手です。

【年齢別】グレーゾーンの子供の特徴は?

【2~5歳】同年齢の子供たちとうまく遊べない

グレーゾーンの子供は、幼少期、同年齢の子供たちとうまく遊べないことが多いです。状況をうまく読むことができないので、自分勝手な行動をしてしまったり、順番を守れず割り込んでしまったりします。本人には悪気がないので、どうして友達と上手に遊べないのか自分では分かりません。次第に、友達と遊ぶよりも1人で遊ぶ方が楽しいと考えるようになり、1人でいることが多くなります。大人とは積極的に関わろうとするのに、同年齢の子供たちとは遊びたがらないといった傾向が徐々に見られるようになります。

【6~12歳】言い争いやトラブルが多い

小学生の年齢になると、同級生や先生との言い争いやトラブルが多くなります。発達障害やグレーゾーンの子供は、曖昧な表現や場面を読むといったことが苦手なため、自分が発する言葉も直接的になりがちです。小学生になると、友達とたわいもない話をする場面が増えますよね。そういった場面で、場の空気が読めずトラブルになってしまったり、比喩表現が苦手で直接的な言葉を使って傷つけてしまったりすることが多くなります。

【13~18歳】文脈の理解ができない

中高生になると、文脈が理解できないことによってトラブルが増えます。発達障害グレーゾーンの子供は、社会的な共通理解がある物事や、暗黙のルールを理解するのが苦手。言われたことが理解できない、話し合いをしていてもかみ合わないという傾向があります。例えば、家庭科の調理実習の日に、髪の毛を結んでくるように言われたとします。大半の人が、調理したものに毛髪が入らないように、あるいは火を使うときに長い髪がさがってくると危ないからと理解するでしょう。しかし、発達障害グレーゾーンの子供は、なぜ結ぶのかを理解できません。そのため、前髪だけを結んできたり、結んだ意味のない髪型にしてしまったりするのです。

子供がグレーゾーンかもしれないと思ったら?チェックするポイントは?

対人関係や社会性における困難があるか【ASD】

子供がグレーゾーンかもしれないと思った時、どんなことに気を付けながら様子を見れば良いのでしょうか?グレーゾーンと言っても、先ほど紹介したように、主に3つの発達障害が関わっています。そのため、それぞれの特性に気を付けながら、子供の様子を見る必要があります。まず1つ目に注意するべきなのは、対人関係や社会性における困難があるかどうか。この項目について少しでも気になることがある場合は、ASDの傾向がある可能性があります。子供が同年齢の子供たちと遊ぶとき、なにか困っている様子はないか。集団行動が極端に苦手ではないか等を気を付けながら様子を見てましょう。

臨機応変な対応が出来るか【ASD】

2つ目に確認するべきなのは、臨機応変な対応が可能かどうか。ASDの特性を持つ子供は、自分なりのこだわりがかなり強く、環境や状況の変化がとても苦手な傾向があります。具体的な場面でいうと、席替えが苦手だったり、自由に座っていいところで毎回同じところに座ったりします。そして、自分がいつも座っている場所が使えなくなると、パニックになったり癇癪を起すことも。この項目については、幼稚園や学校でどんなふうに過ごしているかを知ることが重要です。

衝動的な行動が多いか【ADHD】

続いて、ADHDの傾向がないかを考えるときに効果的なチェックポイントを挙げます。まず1つ目は、衝動的な行動が多いかどうか。具体的には、遊びの順番待ちの列で、待ちきれなくて割って入ったり、お話の途中で話し始めたりといった行動です。ADHDの子供は、我慢することが非常に苦手な傾向があります。そのため、やりたいと思ったらすぐ行動したいと考え、待つことができません。この項目に注意して子供の行動を見てみると、ADHDの特性の衝動性の有無をチェックすることができます。

忘れっぽさや注意力散漫な印象はあるか【ADHD】

2つ目は、忘れっぽさや注意力散漫な印象があるかどうか。特に、幼稚園や学校で集中力がないと指摘されたり、遊びや楽しみに関しても飽きっぽさを感じる場合は、ADHDの傾向がゼロではないと考えられます。自分の持ち物をすぐになくしたり、忘れ物が多かったりする場合も、この項目にあてはまるでしょう。ADHDの傾向が強い場合、怠けているのではなくても、何を持ってこなくてはいけなかったのかわすれてしまいます。そのため、忘れっぽい・物忘れや失くしものが多いという印象になります。

文字や文章の理解に困難があるか【LSD】

最後に、LSDの傾向があるかを確認するときのチェックポイントを紹介します。子供が勉強や本を読むとき、文字や文章の理解に困難があるかを確認しましょう。なかなか文字が書けるようにならなかったり、枠の中に文字を書くのが苦手だったりする場合があります。それだけでなく、数字を書くのが苦手だったり、算数の簡単な計算も、指を使わないとできなかったりする場合も。LSDには、3つの分野に分かれてそれぞれ苦手なことがあります。少しでも違和感を覚えたら、1つずつ確認してみると良いでしょう。

子供の行動をよく観察し特性を理解する

グレーゾーンは、医学的な診断がつけられません。その理由は様々ですが、保護者や教師の間では、障害ではなく特性だと考える方が多いです。なぜなら、どちらかといえばその傾向が他の子供に比べて強いだけで、それ以外のことは問題なくこなせたりするからです。そのため、もしも子供がグレーゾーンかもしれないと感じたら、まずは子供の特性を理解するためによく観察して様子を見る必要があります。例えば、ADHDの傾向があるかもしれないとわかった場合。忘れ物をなくすためにリマインダー等のツールを活用する等、特性に基づいた対応をすることが出来ます。グレーゾーンと言っても、その症状の強弱や特性は、1人1人異なります。子供の特性を理解して、接することが重要です。

グレーゾーンはどうして診断がつかないの?原因は?

体調によって症状にブレがある

実は、グレーゾーンの人は必ずしも症状が軽いというわけではありません。それでは、どうしてグレーゾーンは、診断がつけられないのでしょうか?発達障害グレーゾーンの人は、その日の体調によっても症状が左右される傾向に。診断を受けた日がたまたま体調がよく、目立った症状が見られないという場合には、医師は発達障害の診断を下すことができないこともあります。グレーゾーンの人は診断基準を満たすか満たさないかのボーダーラインにいるため、ちょっとした体調の違いでも症状がブレてしまうことがあるのです。

幼少期の情報不足

発達障害の診断基準には、幼少期からその症状が存在していたかも含まれています。グレーゾーンとして診断が確定できないのは、幼少期の記憶や情報があいまいで発達障害の症状があったかわからない場合。この場合、たとえ現段階で発達障害の診断基準を満たしていても、明確に発達障害であると診断することができません。この部分については医師は患者からヒアリングする以外に確認する方法がないため、患者が覚えていない場合は診断を下すことができません。

医師の主観による診断

精神科や心療内科における発達障害の診断には、診断基準があります。しかし、その診断基準を満たしているかどうかを判断するのは医師の主観によるもの。そのため、ある医師は発達障害と診断しても、別の医師は発達障害ではないと診断することがあります。これは、発達障害グレーゾーンゆえに、診断結果が異なるとも考えられます。症状の強弱は、先述のとおり体調によっても左右されるため、診察する医師によって診断が異なってしまうことがあるようです。

グレーゾーンの子供に療育は必要?

子供一人ひとりを見て必要性を判断しよう

発達障害グレーゾーンの子供に、療育は必要なのでしょうか?グレーゾーンの子供は、1人1人症状の重さや特性が異なると解説しました。そのため、療育が必要かどうかにおいても、一概に必要である・不必要であるとは言えません。どんな症状でも、その子の特性をしっかりと理解して検討する必要があります。現在自分がいる環境に順応し、グレーゾーンの傾向はあるものの、特に問題がない場合は、必要がないと考えて良いです。対して、あまりにも周囲となじめず、生きづらさを抱えていて、グレーゾーンの特性がかなり影響している場合は、療育が必要であると言えるでしょう。

グレーゾーンの子供が療育を受けるメリットは?

子供の生きづらさを軽減できる

療育は、子供の特性や個性を理解して、向きあっていくという特徴があります。グレーゾーンの子供たちのことを、小さな子供だとよくあることだからと、周囲の大人が問題視しないこともあるでしょう。しかし実際には、原因はわからないけれど、周囲と同じようにできなくて悩んでいたり、子供たち自身は生きづらさを抱えていたりすることが多いです。その生きづらさが発達障害グレーゾーンの特性に起因する場合も、しない場合も、療育をうけることによって子供が自分を責める気持ちを軽減する手助けになります。

発達障害の症状を改善・抑えることができる

グレーゾーンの子どもの中でも特性が強く表れていない場合、療育を受けることで発症を防ぐことができる可能性も。特性が強く表れる前に、理解を深め子ども自身や周囲が適切な関わり方を学ぶことで、特性を個性として受け止めることができます。療育では、個々に違う特性を適切に理解するために、日常的な行動を分析します。これによって、どんな対応・環境がもっとも適しているのかを見極めることが可能に。将来的に発達障害に苦しむ子どもを減らすためにも、グレーゾーンの子どもの療育は必要と言えます。

二次的障害の予防に

あるアンケートでは、グレーゾーンの就園児に見られる困り事で最も多いのは【一斉指示に従えない】というものでした。周囲の大人から見れば、小さい子供にはよくあることでは?と見逃されるような内容です。しかし、成長とともに、これらの行動ができないことで叱責を受けたり、人間関係を構築できなくなったりするようになる可能性も否定できません。その影響から、子ども達の自己肯定が下がってしまい、二次的障害が出てしまう可能性があります。療育を早くから始めることによってこのような二次的障害を予防することが可能に。早い段階から子供自身や周囲の大人がその子の特性を知り、問題の解決方法を学んだりすることで二次的障害を防ぐことができます。

まとめ

グレーゾーンを理解して正しい接し方を理解しよう!

ここまで、発達障害のグレーゾーンについて解説しました。グレーゾーンと一括りに言っても、その特性は様々です。子供たちの特性を個性として捉えて、1人1人にとって最適な環境で成長できるといいですよね。そのためには、グレーゾーンとはどんなものなのかを理解して、どういう風に接することが最適なのかをより多くの人が知っておく必要があります。それだけでなく、今生きづらさを抱えている大人の中にも、グレーゾーンが原因になっている人がいるかもしれません。社会において、グレーゾーンへの理解が深まることによって、すべての人が生きやすい社会を目指すことが出来るでしょう。

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