こども誰でも通園制度はいつから始まる?一時保育との違いやモデル事業の紹介も【利用時間・料金・どこ・こども家庭庁・保育士・反対】

最近話題となっているこども誰でも通園制度。政府が少子化対策の1つとして決定した制度ですが、具体的な内容を知っていますか?小さい子供がいる家庭はもちろん、保育士さんや幼稚園の先生など、保育に携わる人は知っておくべき内容です。制度の導入によって保育現場にも様々な対応が求められる可能性があります。ここでは、こども誰でも通園制度とはどんな制度か、いつから始まるのか、問題点やモデル事業についても紹介していきますよ。こども誰でも通園制度の理解に不安がある人は、ぜひ参考にしてみてください。

こども誰でも通園制度とは?

親が働いていなくても時間単位で子供を預けることができる制度

まず初めに、こども誰での通園制度の概要を見ていきましょう。こども誰でも通園制度とは、親が働いていなくても時間単位で子供を預けることができる制度です。従来の保育制度では、働いていたり、病気にかかっていたりすることで親が育児を出来ない場合のみ子供を預けることができました。保育園は親の代わりに子供を見てくれる場所ですが、親が子供を見れないとする何らかの理由が必要だということですね。一方で、こども誰でも通園制度では、親が子供を見れる状況にあっても保育施設を利用することができます。親が条件を満たさないために保育園に通えなかった子供も、時間単位で保育園に通えるようになります。

こども誰でも通園制度の概要

・実施主体:市区町村
・対象:0歳6ヶ月~3歳未満の子供
・利用できる施設:保育所、認定こども園、幼稚園、地域型保育事業所等
・利用時間:月10時間以内

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こども誰でも通園制度が創設された背景

異次元の少子化対策の1つとして行われた

こども誰でも通園制度は、少子高齢化が進む日本において、異次元の少子化対策として打ち出された政策の1つです。2023年6月に掲げられたこども未来戦略方針で制度の創設が発表されました。日本では1970年代から少子高齢化が進んでおり、人口減少に歯止めがかからない状態が続いています。少子化の理由の1つである子育てに対する不安を解消し、子供を育てやすい環境を作るために制度が生まれました。

こども誰でも通園制度の実施はいつから?

2023年からモデル事業が始まっている

2023年6月に発表されたこども誰でも通園制度は、2023年度からモデル事業が実施されています。31の自治体、50箇所の施設でモデル事業が行われているため、住んでいる地域が対象になっている人もいるかもしれません。既に制度を使っているという人もいるかもしれませんね。こども誰でも通園制度の実施主体は市区町村なので、モデル事業の実施方法も様々です。地域の実情に合った方法を模索しながら進めているのが現状だと言えるでしょう。

本格的な全国での実施は2026年から

モデル事業として既に始まっているこども誰でも通園制度ですが、本格的な全国での実施は2026年からを予定しています。それに向けて、2024年からさらに150の自治体で試行的な事業が行われる予定ですよ。モデル事業を行っているとは言えど、全国の自治体で実施を始めるにはまだまだ多くの課題があります。制度をより多くの人に使ってもらうためには、予約システムや保育環境の整備が欠かせません。2024年度から保育士の配置基準を見直す改定を行いましたが、保育士不足の解決にはまだまだ施策が必要です。2026年からの全国実施に向けて、制度の課題が改善されると良いですね。

こども誰でも通園制度の目的

子供同士での交流の場を増やす

こども誰でも通園制度の目的にはいくつかありますが、1つ目の目的は子供同士での交流の場を増やすことです。従来の保育制度では、親が働いていたり、病気であったり、利用条件を満たす理由がないと保育園を利用することができませんでした。親が専業主婦で保育園に通うことができない子供は、小学校入学までの大半の時間を親と過ごすことになります。しかし、子供の成長には多くの人との関わりが大切だとされています。親がしっかり子供と向き合う時間も大切ですが、子供同士での交流の場も必要です。こども誰でも通園制度で早くから多くの子供と触れ合える機会を作ることで、子供の成長にも良い影響を与えることができるでしょう。

子育てについて相談できる場所を増やす

2つ目の目的としては、子育てについて相談できる場所を増やすということです。子供を保育園に通わせていると、送り迎えのときに他の保護者に会ったり、保育園の先生と話をしたりする機会がありますよね。それによって、子供を通じた交流の輪を作ることができます。何か子育てで困ったことがあったとき、保育園の先生や周りの保護者に相談するということも多いのではないでしょうか。一方で、保育園に子供を通わせることができない場合、保護者同士の交流の機会が無く、相談できる場所を見つけにくくなってしまいます。多くの人が保育園を利用できるようになることで、子育ての不安を解消できる場所を作ろうというのが目的です。

保護者の育児負担を減らす

保護者の育児負担を減らすのもこども誰でも通園制度の目的です。健康で働いていなかったとしても、育児というのはものすごくエネルギーを使うものです。家にずっといて子供の面倒を見るのは、決して楽なことではありませんよね。条件を満たさず保育園を利用できないために、かえって育児負担を感じてしまっている人も多いのではないでしょうか。こども誰でも通園制度の導入は、育児をする保護者の息抜きの時間を作ることも期待されています。月に少しの時間でも子供を預ける場所ができることで、育児による体力的かつ精神的な負担を減らそうという考えです。

保護者が考えるこども誰でも通園制度の問題点

利用可能時間が短い

こども誰でも通園制度は、様々な目的を持って作られた制度ですが、中には問題点もあります。保護者側から見た制度の問題点としては、利用可能時間が短いということが挙げられるでしょう。現在考えられているこども誰でも通園制度は、月に10時間までしか利用できないという上限があります。月に10時間というと、週に2~3時間ということですよね。毎日保育園に通っている子供と比べたら、かなり短い時間であるという印象を受けるのではないでしょうか。週に1回、数時間の利用で子供同士での交流の場を作ったり、保護者の育児負担を軽減したりするという目標が達成できるのか、疑問に感じる人も多いでしょう。

希望する園に子供を預けられない可能性がある

希望する園に子供を預けられない可能性があるという点も、こども誰でも通園制度のデメリットの1つです。こども誰でも通園制度を利用したいと考えている人の中には、「誰でも子供を預けられるようになるならこの保育園に通わせたい!」という希望がある人もいるのではないでしょうか。園によって雰囲気や指導方針が異なるので、制度を利用するなら可能な限り希望する園に預けたいと考えるのも当然です。一方で、保育園側が受け入れることができる子供の数には限りがあるため、制度の導入で入園倍率は上がることが想定されます。今は子供の人数に空きがある保育園でも、簡単には預かってもらえなくなるかもしれません。せっかく制度を利用して保育園に通わせることができるようになっても、希望する園に預けることができないのはデメリットだと言えるでしょう。

保育士が考えるこども誰でも通園制度の問題点

安全面の確保に課題が残る

保育士側が考えるこども誰でも通園制度の問題点としては、安全面の確保に課題が残るという点が挙げられます。こども誰でも通園制度が始まると、保育園は今までより多くの子供を受け入れざるを得なくなりますよね。一方で、子供を見ることができる保育士の数がすぐに増える保証はありません。1人あたりの保育士が見る子供の数が増える可能性があります。そうなると、1人1人の子供に注意を向けることが難しくなり、安全面がおろそかになってしまうことも考えられるでしょう。現状、国が定める保育士の配置基準では1人の保育士が見る子供の数が多すぎるとの指摘もあります。安全面をしっかりと確保できるような多方面からの工夫が必要だと言えるでしょう。

保育士の人材不足が加速する

保育士の人材不足が加速する、というのも問題点の1つでしょう。先程説明した通り、こども誰でも通園制度が始まると、保育園が預かる子供の数が増えることになります。保育士の数が増えないままでは、保育士の人材不足が問題になるのは当然です。もともと、こども誰でも通園制度が創設される前から保育士は人材不足だと言われてきました。長時間労働や低賃金が問題として指摘されており、保育士を志望する人が少なくなったり、退職者が増えたりしていることが原因です。こども誰でも通園制度が本格的に実施される前に、保育士不足を改善するための環境整備が求められます。

労働環境が悪化する可能性がある

保育士にとっては、労働環境が悪化する可能性があるというのも問題です。こども誰でも通園制度の導入で、受け入れる子供の数が増えることで仕事が忙しくなるのでは、という懸念があるからです。保育士の仕事は、子供を見るだけではありませんよね。保護者とのやり取りや、園の事務作業、装飾や壁面制作にイベントの準備など、長時間労働かつ重労働が当たり前だとされる職場でもあります。保育士不足が解決されないままでは、保育士1人あたりの業務量が増え、労働環境が悪化してしまう可能性も十分にあるでしょう。

こども誰でも通園制度と一時預かり事業の違い

預けることができる条件や手続きが異なる

こども誰でも通園制度の内容を聞いたときに、「一時預かり事業と何が違うの?」と思った人もいるのではないでしょうか。一時預かり事業は、保護者が働いていなくても、何らかの理由で育児が出来なくなった場合に子供を預けることができる制度です。こども誰でも通園制度との違いは、実施の目的や利用の際の手続きにあると言えます。一時預かり事業は、育児が一時的に困難になった保護者を支援する目的で行われているのに対し、こども誰でも通園制度は子供の健全な成長を促すという目的が含まれています。また、一時預かり事業が事業所への来訪や電話での予約を行っているのに対し、こども誰でも通園制度ではネットを利用した予約が想定されていますよ。

こども誰でも通園制度の地域別モデル事業例

宮城県仙台市

宮城県仙台市では、令和5年8月から令和6年3月まで、こども誰でも通園制度のモデル事業が行われていました。モデル事業は現在終了しており、市のホームページでは実施の成果が公表されています。仙台市では、8月にモデル事業としての預かりを実施してから、年度末までの継続した利用を原則としていました。決まった曜日で週に1~2回預けられるようにしていましたが、利用時間が短いために子供が園に慣れるまで時間がかかるといった課題が出ていたようです。期間を決めて事業を行い、効果と課題を公開している点で意義のあるモデル事業だったと言えるでしょう。

東京都八王子市

東京都八王子市では、令和6年の3月までモデル事業が行われていました。保育所等に通っていない0歳~2歳児を利用対象に、毎週の定期的な預かりを想定して事業を行っていました。0歳児と1歳児に関しては保護者同伴での利用を定めていたり、年齢ごとに利用時間や曜日を分けていたりと、月齢による違いで環境を区別していたのが特徴だと言えるでしょう。まだモデル事業が終わったばかりなので、これから課題点や今後の見通しなどが公表されると良いですね。

神奈川県川崎市

神奈川県川崎市でもこども誰でも通園制度のモデル事業が行われていました。市内の保育所や認定こども園、幼稚園などを合わせて21カ所で事業を行ったのが特徴です。川崎市では、多くの保護者が一時預かり事業を利用して子供を預けているという実態もあるため、こども誰でも通園制度の需要も高いと言えます。川崎市という人口の多い自治体でのモデル事業を行うことで、今後の本格実施を見据えて参考になる点が多くあると言えるでしょう。

福岡県福岡市

福岡県福岡市では、令和5年8月から現在までこども誰でも通園制度のモデル事業を行っています。自分の時間ができて良かったという保護者の声もある一方で、月に10時間の利用では時間が短いという意見もあったようです。それを受けて、令和6年度7月から月40時間の利用を可能にする独自の取り組みを行うことが発表されました。国の基準の4倍となるため、新たな基準のモデル事業として参考になるでしょう。保育士不足や環境整備についてどう対処していくのかが注目ですね。

まとめ

こども誰でも通園制度が全国で実施される前に問題点を理解しておこう

ここまで、こども誰でも通園制度の概要が実施時期、モデル事業の例などについて紹介してきました。こども誰でも通園制度は、既存の基準では保育園を利用することができなかった保護者を支援し、子供の成長環境の改善を図る目的があります。保護者の負担軽減や子供同士の交流機会の確保などの効果が期待できる一方で、様々な問題点も。数年後に控えた全国での本格実施を前に、保育士不足の解決や利用時間の見直しなどの対策が求められます。モデル事業を参考に、全国での議論が進むと良いですね。

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