ピグマリオン効果とは?実験内容や保育現場での使い方を詳しく解説!【保育・実験・神話・ゴーレム効果】

ピグマリオン効果という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ピグマリオン効果とは他人から期待されるとその期待通りの結果を出す心理効果のことです。ピグマリオン効果は仕事や子供の保育に活用することができますよ。この記事では、ピグマリオン効果の由来、ハロー効果・ホーソン効果・ゴーレム効果との違い、職員や子供へのピグマリオン効果の使い方を紹介しています。また、ピグマリオン効果を活用する際には重要な注意点があります。ぜひこの記事を参考にしてピグマリオン効果を保育に取り入れてみてください。

ピグマリオン効果とは

他人から期待されるとその期待通りの結果を出す心理効果

ピグマリオン効果とは他人から期待されるとその期待通りの結果を出す心理効果です。1964年にアメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱されました。「教師期待効果」、「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。その反対の結果になる現象のことを「負のピグマリオン効果」、「ゴーレム効果」と呼んでいます。しかし、ピグマリオン効果には再現性がないなどの批判的な意見もあり、現在でも議論が行われているようですよ。

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ピグマリオン効果の由来

ギリシャ神話に由来している

ピグマリオン効果の名前は以下のギリシャ神話に由来していますよ。 昔、地中海のキプロス島にピグマリオンという王様がいました。彫刻家でもあったピグマリオンは自分の手で理想とする女性像を掘り上げ、その像のあまりの美しさに王様は心を奪われ、恋をしてしまいます。ピグマリオンは像が本物の女性に変わってくれないか切に願い、神様は彫刻に命を吹き込みました。そして、ピグマリオンとその女性は結婚し、幸せに暮らしたそうですよ。

ピグマリオン効果の実験内容

ネズミを使った実験

ピグマリオン効果を誕生させたローゼンタール氏とフォード氏は、ネズミを使った迷路実験を実施。実験を行う際、「これはよく訓練されている賢い系統のネズミ」、「これは訓練がなされていないのろまなネズミ」と説明して学生たちのグループにネズミを渡しました。その結果、以下のことが起こりました。 ・訓練されたネズミを渡された学生のグループは、ネズミを丁寧に扱った ・のろまなネズミを渡された学生のグループは、ネズミをぞんざいに扱った ローゼンタールは両者のネズミへの期待値の違いが実験結果にも反映されたと結論付けました。このような学生とネズミの間で起こった現象は、教師と学生の間でも成り立つのではと考えたそうですよ。

教育現場での実験

ピグマリオン効果の実験は教育現場でも行われました。1964年に、サンフランシスコの小学校でハーバード式突発性学習能力予測テストという知能テストを実施。テストを行う際に、学級担任に「これから数カ月の間、成績が向上する生徒を割り出すための知能テスト」と説明をしました。そして、テスト後に検査結果とは関係なく無作為に抽出した生徒の名簿を見せ、「この生徒たちが成績が向上する生徒である」と伝達しました。すると、学級担任に「成績が向上した生徒」と見せた生徒の成績が向上したそうですよ。

ハロー効果とピグマリオン効果の違い

ハロー効果は一つの特性を全体の評価としてしまう心理効果

ハロー効果は一つの特性を全体の評価としてしまう心理効果です。例えば、「顔がいいから性格もいいだろう」というように一部の評価から拡張して評価してしまうということです。「ハローエラー」や「認知バイアス」とも呼ばれていますよ。ハロー効果にはポジティブ・ハロー効果、ネガティブ・ハロー効果があります。ハロー効果が生じる理由は、一方の側面からの判断によって即断即決が可能となるためと考えられています。

ホーソン効果とピグマリオン効果の違い

ホーソン効果は注目されることでいい結果になるという心理効果

ホーソン効果は注目されることでいい結果になるという心理効果。アメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われたホーソン実験と呼ばれる実験が行われました。その実験で、労働条件や経済的条件より、「注目を集めている」という意識が生産性を向上させるという結果が出たそうです。ホーソン効果は注目や関心によって生産性が上がる、ピグマリオン効果は期待によって成果が上がるという部分で、この2つが類似性が高いと認識されていますよ。

ゴーレム効果とピグマリオン効果の違い

ゴーレム効果は他人に期待しないとその通り悪い結果になる心理効果

ゴーレム効果とは他人に期待しないとその通り悪い結果になる心理効果のことです。ピグマリオン効果はプラスの効果なのに対して、ゴーレム効果はマイナスの効果ということですね。ゴーレム効果のゴーレムとはユダヤの伝説に出てくる意思のない泥人形のことです。呪文を唱えるとゴーレムは動き出しますが、額の護符の文字を一文字取り去ると、土に戻ってしまうという伝説から由来しています。

保育現場における職員へのピグマリオン効果の具体的な使い方

裁量を与える

保育現場においては、職員に裁量を与えることで、職員のモチベーションを高く保ちながら、自己成長につなげることができます。職員が行う業務に対して頻繁に口を挟んだり、指示を挟んだり、上司にいちいち許可を取らないといけない場合は職員の自信をなくしてしまう可能性があります。裁量権を多く与えることでピグマリオン効果を発揮して職員のモチベーションを高く保つことができますよ。

期待していることを示す

職員に対して「私はあなたに期待している」ということをそれとなく言葉にして伝えるようにしましょう。また、職員が失敗したときは「何回も言っているのにどうして間違えたの」というような詰め寄る言い方では職員が委縮して自信をなくしてしまいます。「あなたに期待しているから、もっと成長できる」というようなポジティブな言い方をするようにしましょう。こうすることで、職員はピグマリオン効果により自分は期待されていると自信を持つことができます。

肯定的な態度を示す

ピグマリオン効果を発揮するうえで職員に対して常に肯定的な態度を示すことはとても大事です。先ほども書いたように職員の失敗に対して頭ごなしに失敗を責めるような言い方やネガティブな言い方をしてはいけません。ポジティブな表現をして肯定的な態度で接するようにしましょう。また、職員を信用することも重要です。職員を信用して成長できるように仕事を与えることで、職員が自分は認められていると感じられるようになります。

子供へのピグマリオン効果の具体的な使い方

結果よりもプロセスを重視する

保育において結果よりもプロセスを重視することは重要ですよ。プロセスよりも結果につい目を向けてしまい、「こうした方がいい」と口を出してしまいがちです。しかし、子供の成長には結果が良くなくても、慣れないことに対して自分の力で一生懸命に乗り越えた過程が大切です。例えば、子供が何か成し遂げたことに対して、「今までコツコツ頑張ってきたからだね」というプロセスを重視した言葉がけをしましょう。

加点方式で言葉をかける

子供と接するときは減点方式ではなく、加点方式で言葉をかけていきましょう。子供ができなかったことばかりを重視していると、その子供は自信をなくしてしまいます。子供ができたことに対して、「ここが良かったね」というように子供の成長に一緒に喜び、前向きになれるような言葉がけをしていきましょう。例えば、野球を習っていてなかなか成果が出ない子供がいたとします。その子供に対して、「1年も続けているのにどうして活躍できないの」と言うのではなく、「前よりも速く球を投げられるようになったね」と、加点方式の言葉をかけましょう。

子供が目標を達成したら一緒に喜びを分かち合う

子供が何か目標を達成した場合は、一緒に喜びを分かち合い大いに褒めましょう。先ほど、「結果よりもプロセスを重視する」と書きましたが、結果が出た場合に褒めてはいけないというわけではありません。子供が前までできなかったことができたりテストでいい点数をとったときに、「すごいね!」と子供と喜びを分かち合うことで、子供との信頼を築くことができますよ。ただし、褒めすぎることはよくありませんよ。

子供のやる気を引き出す

子供の成長をサポートするために、子供自身のやる気を引き出し行動できるようにしましょう。子供が何かに向かって挑戦しようとしているときは肯定する姿勢を取ることが大事です。努力して目標を達成できなかった場合でも、「失敗しても大丈夫だよ」と子供自身を受け止める姿勢が大切ですよ。子供が安心して目標に向かって行動できるようになります。子供の成長のために、子供のやる気を引き出していきましょう。

子供を信じる

ピグマリオン効果を活用するときは子供を信じることが大事です。子供が何かしたいといったときに、「危ないからしない方がいい」や「まだできないよ」と否定する言葉をかけてはいけません。そういった言葉をかけられると、子供は自信ややる気をなくしてしまいます。子供のことを信じて、いろいろなことに挑戦する様子を見守ってあげましょう。子供のことを信じて接する場合とそうしない場合では子供のモチベーションには大きな差が生まれますよ。

ピグマリオン効果を活用する際の注意点

過度な期待をかけすぎない

ピグマリオン効果では過度な期待をかけてしまうと、逆効果になってしまいます。例えば、職員に対して能力に合ってない大きな仕事を任せると、失敗してしまったときに自信をなくしてしまいます。そのため、その人に合った仕事を任せることが大切ですよ。子供の場合も同じで、保育士さんからの期待に応えられないと、やる気をなくしてしまいます。期待していることを子供に伝える際には、プレッシャーになっていないか注意することが大事ですよ。

褒めすぎない

職員に対して過度に褒めすぎてしまうと現状に満足し、自ら成長を止めてしまう可能性があります。その結果、仕事に対して手を抜いてしまったり、大きな失敗を招いてしまったりするかもしれません。また、子供の場合は褒めすぎると「自分は他の子よりすごいんだ」と、他人を見下すようになってしまう可能性があります。職員や子供が自分の実力を過信して成長を止めないように、注意する必要がありますよ。

まとめ

仕事や子供の保育にピグマリオン効果を活用しよう

いかがでしたか。ピグマリオン効果について理解できたでしょうか。ピグマリオン効果は仕事にも子供の保育にも活用することができます。今回の記事を参考にしてピグマリオン効果を保育に取り入れてみてはどうでしょうか。職員や子供を信じて受け止めることで、成長を促すことができます。職員や子供の努力を認めながら肯定的な態度で接していきましょう。何かに向かって挑戦していく過程で時には失敗してしまうこともあるかもしれません。そのときは失敗を責めるのではなく、今までの努力を誉めることが大切ですよ。

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