保育士不足の原因とは?対策も解説!【現状・解決策・課題・影響・社会問題】

近年、保育士不足が深刻化 しており、2024年の有効求人倍率は3.54倍に達しています。特に、資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士の増加が大きな課題となっています。その背景には、責任の重さや低賃金、業務量の多さなどの厳しい労働環境がありますよ。今回の記事では、保育士不足の現状や原因、解決に向けた取り組みを詳しく紹介します。保育士不足を解消するには、保育士不足の原因を理解したうえで保育士が働きやすい環境を整えていく必要があります。

保育士不足の現状

2024年の有効求人倍率は3.54倍

保育士の有効求人倍率は、令和6年1月の時点で3.54倍。これは全職種平均の1.35倍を大きく上回っています。有効求職者数は減少傾向にあり、令和5年1月の16,041人から令和6年の1月には13,819人まで減少。一方で、有効求人数は高止まりしており、採用難の実態が浮き彫りになっています。また、都道府県別では栃木県が7.90倍と最も高く、逆に最も低い高知県でも1.63倍と全国的に人手不足であることがわかります。

潜在保育士の増加

保育士資格を持ちながら現在は保育士として働いていない人のことを、潜在保育士と言います。厚生労働省の調べによると、指定保育士養成施設卒業者のうち、約半数は保育所に就職していません。また、2020年時点で、資格保有者約154万人のうち、約95万人が保育職に就いていません。こうした潜在保育士が増えていることで、保育士不足の規模が拡大しているようです。潜在保育士が保育士として働かない理由としては、給与の低さや長時間労働、責任の重さなどが挙げられています。

待機児童問題

待機児童とは、保育施設への入所条件を満たしているにもかかわらず、入園できない児童のことを指します。この問題の一因として、保育士不足が挙げられます。例えば、定員に空きがあっても、必要な保育士の数が確保できないために受け入れを制限せざるを得ないケースがありますよ。また、保育士の業務負担が大きく離職率が高いため、新たな施設ができても十分な人員を確保できず、待機児童の解消が進まない地域もあります。しかし、近年では保育施設の拡充や新型コロナウイルス感染症の影響による利用控えにより、市区町村の約8割で待機児童が解消されました。平成29年には2万6,081人いた待機児童が、令和4年には2,944人と約1/8に減少し、問題は改善傾向にあります。

保育士くらぶ

保育士不足の原因

責任が重い

保育士は、子どもの命を預かるため責任が大きい仕事です。また、子どもたちの安全を確保するだけでなく、成長や発達をサポートする役割も求められます。特に乳幼児は突発的な事故が起こりやすく、一瞬の気の緩みが大きなトラブルにつながるため、常に緊張感を持って働く必要があります。さらに、保護者への対応や園の運営にも関与することが多く、精神的な負担が大きい職業と言えますよ。こうした責任の重さに対し、十分な報酬やサポート体制が整っていない施設が多いため、保育士を長く続けることが困難になる人も少なくありません。

給料が低い

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均給与額は約26万円です。全職種の平均給与額は約34万円であるため、保育士の給与は他の職種と比べて低い傾向にあることがわかります。特に、若手や非正規雇用の保育士はさらに低い賃金で働いていることが多く、経済的な理由で離職するケースも少なくありません。国や自治体は処遇改善のために補助金制度を導入していますが、現場では依然として賃金の低さが問題視されています。給与の向上がなければ、長く働き続けることが難しく、保育士不足の解消にはつながりにくいのが現状です。

業務量が多い

保育士の仕事は子どもを保育するだけではありません。保護者への連絡帳の記入や園の行事の準備、保育計画の作成、掃除や消毒作業など多岐にわたります。さらに、保育中も一人ひとりの子どもの様子を把握しながら安全に気を配る必要があり、休憩をとる時間も限られています。こうした業務量の多さに加え、人手不足の影響で一人あたりの負担が増加しており、結果的に離職率が高くなる原因の1つとなっていますよ。

人間関係に不安がある

保育士の職場では、職員同士の関係や保護者との関わりが重要になります。しかし、人手不足の影響で職場の雰囲気が悪化しやすく、上司や同僚との関係にストレスを感じる人も少なくありません。特に経験の浅い保育士は、先輩から指導を受ける中で強いプレッシャーを感じたり、職員とのコミュニケーションがうまくいかずに悩んだりすることがあります。また、保護者対応では、理不尽なクレームや一方的な要望に対応する機会もあるため、精神的な負担が大きいのも事実です。

体力や健康に不安がある

保育士の仕事は、体力的にも負担が大きい職業です。子どもと一緒に遊んだり、抱っこをしたりすることが日常的に求められるため、腰や膝への負担が蓄積しやすくなります。また、風邪や感染症が流行しやすい環境にあるため、病気にかかるリスクも高いとされていますよ。特に、十分な休憩時間や休暇が確保できない職場では、体調を崩しやすく、結果的に退職を考える保育士が増える要因になっています。保育士が安心して働けるように、健康管理をサポートする仕組みが必要と言えるでしょう。

就業時間が不規則

保育園は早朝から夜遅くまで開園しているため、シフト制で働く保育士にとっては勤務時間が不規則になりやすい傾向です。特に、延長保育を担当する場合は夜遅くまでの長時間勤務になることもあります。また、園行事や保護者対応などで残業が発生することも多く、プライベートの時間を確保しにくいのが現状ですよ。こうした勤務形態に負担を感じ、長く続けられないと考える保育士も多いため、労働時間の適正化が求められています。

保育士不足を解消するための国の対策

保育士確保プランを実施

厚生労働省は保育士不足の解決に向け、平成27年に保育士確保プランを策定しました。平成29年度末までに6.9万人の保育士確保を目標とし、様々な取り組みを進めました。具体的な取り組みの内容は以下の通りです。

・保育士試験の年2回実施の推進
・保育士に対する処遇改善の実施
・保育士試験を受験する者に対する受験のための学習費用を支援
・保育士養成施設で実施する学生に対する保育所への就職促進を支援
・福祉系国家資格を有する者に対する保育士試験科目等の一部免除の検討
・保育士・保育所支援センターにおける離職保育士に対する再就職支援の強化
・保育士確保施策の基本となる4本の柱(人材育成、就業継続支援、再就職支援、働く職場の環境改善)の確実な実施

他にも経験や役職に応じた手当の導入や育児中の元保育士向け相談会も実施し、人材確保を強化しました。

参考:保育士確保プラン

保育士確保集中取組キャンペーンの実施

政府は2020年度末までに、約32万人分の保育の受け皿を確保することを目指し、保育士確保集中取組キャンペーンを実施しました。このキャンペーンでは、保育士を目指す学生や潜在保育士に向けて、復職支援の情報提供や研修の機会を拡充しています。また、保育士の魅力を発信するための広報活動も強化されており、SNSやウェブサイトを活用して、保育士としてのキャリアパスや職場環境の改善状況を発信しています。さらに、給与の1%引き上げや経験に応じた5千円~4万円の給与改善、潜在保育士の復職支援などを実施。このキャンペーンを通じて、保育士不足の解消を加速させることが期待されています。

参考:保育士確保集中取組キャンペーン

保育士キャリアアップ研修の実施

保育士のキャリアアップを促進するため、政府は保育士キャリアアップ研修を導入しました。この研修では、以下の6分野を学びます。

・乳児保育
・幼児保育
・障がい児保育
・食育、アレルギー
・保健衛生、安全対策
・保護者支援、子育て支援

また、職務分野別リーダー・専門リーダー・副主任保育士という新たな役職が設けられました。昇進には研修修了と実務経験が必要で、最大月額4万円の処遇改善が受けられます。

参考:保育士キャリアアップ研修

保育士不足を解消するための保育施設の対策

賃金を上げる

先ほど紹介した通り、一般的に保育士の給与は他業種と比較して低く、特に経験を積んでも昇給が少ないことが問題視されています。国も保育士確保キャンペーンやキャリアアップ研修の実施など、保育士の待遇改善には力を入れています。しかし、保育士が十分な賃金を得られているとは言い切れないのが現状です。そのため、保育士の離職率を下げるためにはさらなる待遇改善が必要です。こうした改善を進めることで、保育士の経済的安定が確保され、長期的な就業が促進されるでしょう。

労働環境の見直しをする

保育士は子どもの保育だけでなく、保護者対応や書類作成、行事の準備など多岐にわたる業務をこなしています。そのため、業務負担の軽減が急務となっています。例えば、ICTを活用して保育記録や連絡帳の作成をデジタル化することで、事務作業の時間を削減できますよ。また、シフト管理を適切に行い、休憩時間や有給休暇を確実に取得できる仕組みを作ることも重要です。さらに、保育補助員を増やし業務の負担を分散させることで、保育士が子どもと向き合う時間を確保できるようになります。働きやすい環境を整えることで、保育士のモチベーション向上や離職率の低下が期待できるでしょう。

働きやすい職場環境をつくる

保育士が長く働き続けるためには、心理的な負担を軽減し、安心して働ける環境づくりが必要不可欠です。人間関係のトラブルを未然に防ぐためには、定期的な面談を実施して職場内のコミュニケーションを活発にすることが効果的です。また、園内ではチームワークを意識し、お互いに協力しながら業務を進めることも重要です。さらに、職員同士が意見を交換しやすい場を設けることで、働きやすい雰囲気を作ることができますよ。育児休業や時短勤務の制度を整え、ライフステージに応じた働き方を選択できるようにすることも、離職を防ぐうえで有効と言えます。

園全体で保護者の要望に取り組む

保育士は、子どもを預かるだけでなく保護者との関係も大切にする必要があります。保護者からの要望に適切に対応し、信頼関係を築くことが保育士の働きやすさにもつながります。そのためには、園全体で方針を統一し、個々の保育士に負担が集中しないようにすることが重要。例えば、保護者対応を園長や主任保育士が積極的に行うことで、現場の保育士が保育に集中できる環境を作れます。また、保護者アンケートを実施して改善点を明確にすることで、過度なクレームを未然に防ぐことができます。園全体で協力しながら保護者と向き合うことで、保育士がストレスなく働ける環境を整えることができますね。

保育士の評価制度を設ける

適切な評価制度がないと、努力が認められずモチベーションが低下し離職につながることがあります。そのため、保育士のスキルや経験を正当に評価し、キャリアアップにつながる仕組みを作ることが重要です。先ほど紹介した保育士キャリアアップ研修では、研修を受けることで職務分野別リーダーなどの役職に就くことができるようになりました。また、評価基準を明確にし、努力や実績が適切に評価される環境を整えることも必要です。さらに、職員同士で相互評価を行うことで、働きがいやチームワークの向上にもつながります。

まとめ

保育士不足の解消に向けた様々な取り組みがある

いかがでしたか。保育士不足には様々な原因があります。そして、保育士不足解消に向けて行政や保育施設では様々な取り組みが行われています。例えば、保育士確保集中取組キャンペーンや保育士キャリアアップ研修の実施などです。さらに、一部の保育園では基本給の引き上げや残業代の支給増加といった独自の取り組みも進められていますよ。こうした施策が広がることで、保育士の定着率向上や新たな人材確保が期待されています。

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