モンテッソーリ教育とは?【特徴・教育分野・メリット・デメリット・おもちゃ・保育園】

皆さんはモンテッソーリ教育という言葉を聞いたことはありますか?聞き馴染みのない人も多いのではないでしょうか。近年、園独自の教育法や教育方針を取り入れる保育園が増えていますが、その中でも注目度の高い教育法がモンテッソーリ教育です。今回は、モンテッソーリ教育の特徴やメリットデメリットなど、モンテッソーリ教育について詳しく解説します。モンテッソーリ教育についてあまり知らないという人や、さまざまな教育法を知りたい学びたいと考えている保育士さんは、ぜひ参考にしてみてくださいね。

モンテッソーリ教育とは?

子供が備えている自己教育力を前提とした教育法

モンテッソーリ教育とは、子供たちの自己教育力を尊重し、子供たちの主体性や自立する力を育てる教育法です。自己教育力とは、子供には自分で自分を育てる力が備わっているという考え方のこと。その力を存分に発揮できる環境と自由が保障された中で、自発的に活動を繰り返していくという考え方を根底に、モンテッソーリ教育は開発されました。モンテッソーリ教育において、大人は必要以上に介入することなく、子供たちがそれぞれ「やりたい!」と思えることができる環境を提供することが求められています。

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モンテッソーリ教育の特徴

発達の4段階

モンテッソーリ教育にはいくつかの特徴がありますが、そのうちの1つが発達の4段階です。モンテッソーリ教育の考え方では、人間として完成するのは24歳ごろとされており、それまでの発達段階を4つに分けています。4つの発達段階は以下の通りです。

変容期
0~6歳の幼年期、乳幼児期を指す。”ヒト”として生まれてきた子供が、人間社会という環境の中で”人間”への変わっていく、モンテッソーリ教育の中で最も重要な時期とされる。何か物事に対して強く興味を示し、集中して同じことを繰り返す時期でもあることから、敏感期とも呼ばれる。
一定安定期
6~12歳の児童期、学童期を指す。”アイデンティティ”を芽生えさせ自立心を高めた子供が、集団でより大きな課題に取り組めるようになる。
変容期
12~18歳の思春期を指す。性的に成熟し、子供から大人へ移り変わる。この時期の子供は精神的に不安定なため、慎重な関わり方が求められる。
安定期
18~24歳の青年期を指す。精神や肉体的に成熟し、自立した人間として相互に支え合って社会を形成していく。

おしごとの時間

モンテッソーリ教育では、独自の教具を使った活動の時間のことを“おしごとの時間”と呼んでいます。大人が生きていくために仕事をするように、子供も自分自身を成長・発達させていくために”おしごと”をするのです。おしごとの5つの教育分野に関しては後から紹介するため、そちらを参考にしてみてくださいね。おしごとの時間には、子供たちが自主的に遊びたくなるようなモンテッソーリ教育独自の教具が使用されます。モンテッソーリ教育独自の教具は、以下のような基準で作られています。

  • 子供たちが手に取りやすく遊びやすいサイズであること
  • 色や形が魅力的で、子供たちが手に取ってみたいと思うもの
  • 教具の数は1セットずつであり、他の子が使っていた場合は順番待ちをする必要があること
  • できるだけ本物の素材(ガラス、木、銅など)であること
  • 上質で清潔であること
モンテッソーリ教育独自の教具には以下のような商品があるため、参考にしてみてくださいね。

個別活動

一般的な保育園では歌の時間や工作の時間など、教員が活動内容を決め、それにみんなで取り組むことが大半でしょう。一方、モンテッソーリ教育では、子供たちが各々自分のやりたいことや興味のあることを選び、個別に活動します。一日中同じ活動をしても良いし、さまざまな活動を転々としても良いのです。大人は、子供たちの自主的な行動を尊重する。これこそが、モンテッソーリ教育において一番大切と言えるでしょう。個別活動を大切にしている分、園としての行事が少ないことも特徴です。

モンテッソーリ教育専門の教師がいる

モンテッソーリ教育を取り入れている保育園には、モンテッソーリ教育専門のモンテッソーリ教員を配置することが必要です。モンテッソーリ教育では子供の自主性を大切にしていますが、当然、無秩序に何でもやって良いわけではありません。その線引きを守りながらも、子供たちが自発的に学べる環境を提供するには、専門的な知識を持ったモンテッソーリ教員が欠かせません。モンテッソーリ教員には以下のような12の心得が提示されています。この心得からも、モンテッソーリ教員としてのあり方をくみ取ることができるでしょう。

  1. 環境の整備
  2. 教具・教材をはっきり正確に提示する(子供が仕事をはじめるとき)
  3. 子供が環境との交流をもち始めるまでは積極的に、交流が始まったら消極的に接する
  4. 物を探している子供や、助けの必要な子供の忍耐の限度を見守る
  5. 原則として、呼ばれたところに必ず行く
  6. 子供に誘われたときは、子供の要求を、言葉で直接表現されない要求までも含めて、よく聞いてやる
  7. 仕事をしている子供を尊重する
  8. 間違いはあからさまに訂正しない
  9. 休息している子供には、無理に仕事をさせない
  10. 作業を拒否する子供や理解しない子供は、忍耐強く誘いつづける
  11. 教師は自分を探す子供に存在を感じさせる
  12. 教師は、仕事を終えた子供のところに姿を現す
※ここでいう”仕事”とは、子供たちの活動のことを指す
※日本モンテッソーリ教育綜合研究所「モンテッソーリ教育の基本的な考え方」より

モンテッソーリ教育の5つの教育分野

日常生活の練習

モンテッソーリ教育には、5つの教育分野があります。1つ目は、日常生活の練習です。日常生活に必要な動作の練習を通して、適応や自立、人格形成を助けることを目的とします。自分の身体を思うようにコントロールできるようになることで、自分のことは自分自身でやる心が身に付き、自信や自立心を育むことができるでしょう。発達段階により異なりますが、日常生活の練習における活動内容には以下のようなものがあります。

  • ものを運ぶなどして基本的動作を養う。
  • 鼻をかむなど自分に配慮することを学ぶ。
  • 動物や植物の世話をするなど環境に配慮することを学ぶ。

感覚教育

2つ目は、感覚教育です。人間は感覚器官を使ってさまざまな情報を受け取っています。感覚教育では、視覚や嗅覚と聴覚、味覚や触覚の五感を使った活動を繰り返し行うことで、感覚器官を洗練させることを目的としています。ここで重要な役割を果たすのがモンテッソーリ教育独自の教具。重さや長さ、質感などあるひとつの特性を伸ばすことを特徴とした教具により、子供たちは抽象的な概念を理解していくことができるでしょう。

言語教育

3つ目は、言語教育です。子供は最初から言葉をもって生まれてくるわけではありません。自分の周囲で話されている言葉を母語として獲得するため、言葉の量や質は環境に大きく左右されます。モンテッソーリ教育の言語教育では、トータルリーディング(統合的読み)という力を得ることが最終目標。語彙の多さや文法力だけでなく、行間や内包された意味も含め言葉を理解することを目指しています。

算数教育

4つ目は、算数教育です。モンテッソーリ教育における算数教育の目的は、計算ができるようになることではありません。数という抽象的な概念を理解し、具体的な量を体感することこそが、算数教育の目的です。そのためには、モンテッソーリ教育独自の算数教具が利用されます。数量が具体物として実際に手で扱えるようになっているため、子供たちは数の概念を体得することができるでしょう。体得した数概念をもとに、暗算などの抽象的な思考にもつながっていきます。

文化教育

5つ目は、文化教育です。文化教育は、言葉と数以外に子供たちが興味を持つ、世界で起きている幅広い事象を扱う分野です。小学校の社会や理科に相当する、歴史や地理、地学、生物といった分野を扱います。美術や音楽などに関しても、身近なものとして体験や体感をすることで、知識ではなく文化として獲得することができるでしょう。子供たちの知りたいという欲求や興味関心に基づいた活動を取り入れることが大切です。

モンテッソーリ教育のメリット

子供の個性を伸ばすことができる

モンテッソーリ教育にはさまざまなメリットがあります。メリットの1つ目は、子供の個性を伸ばすことができることです。前述したように、モンテッソーリ教育では個別活動が重要視されており、子供たちの興味関心に基づいた活動が行われています。子供たち1人1人に合わせた教育を行うことで、子供たちの個性を伸ばすことができるでしょう。個別活動を通じて、子供たちは自分の特性や才能を発見し、自己表現や問題解決能力を高める機会を得ることができます。

自主性や積極性が身につく

メリットの2つ目は、自主性や積極性が身につくことです。モンテッソーリ教育では大人が子供たちの活動を決めるのではなく、子供たちが「やりたい!」と思うことを自分自身で選んで活動します。子供たちの意思を優先した主体的な学びを行うことで、自主性や積極性を身につけていくことができるでしょう。子供たちの主体性を大切にするためにも、大人が必要以上に介入しないことが重要になります。例えば、ハサミや包丁を使う活動においては危ないからと言って禁止するのではなく、安全な道具の使い方をサポートすることなどが求められます。

思いやりが身につく

3つ目は、思いやりが身につくことです。モンテッソーリ教育を取り入れた園の大半では、異なる年齢の子供たちが同じクラスとなる縦割りのクラス編成が行われます。自分よりも年齢が下の子供たちと接することで、他者への思いやりを学ぶことができるでしょう。下の年齢の子にとっても、上の子たちをお手本にさまざまなことに挑戦する機会となります。縦割り保育については以下の記事も参考にしてみてくださいね。

集中力が養われる

4つ目は、集中力が養われることです。モンテッソーリ教育では、子供たちが活動を行っている間、大人が必要以上に手を貸したり声をかけたりすることはありません。そのため、子供たちは目の前のことに夢中で取り組むことができます。このような環境で育つことで、子供たちは高い集中力を養うことができるでしょう。以上のように、モンテッソーリ教育では指導する大人の技量が大きく関わっていることがわかります。

モンテッソーリ教育のデメリット

発達が偏る可能性がある

モンテッソーリ教育にはさまざまなメリットがある一方、デメリットもいくつかあります。デメリットの1つ目は、発達が偏る可能性があることです。前述したようにモンテッソーリ教育では、そのときやりたいことを子供たち自身で選んで活動します。そのため、同じ活動ばかり行ってしまう子供が出てくることが考えられるでしょう。同じ活動ばかりしていては発達が偏ってしまう可能性があります。足りない分野の遊びを家庭で補うなどの対策が必要ですね。

競争心が育ちにくい

2つ目は、競争心が育ちにくいことです。ライバルに対し、嫉妬などの負の感情を抱きにくい幼児期は、子供たちの競争心を育むのに最適な時期です。しかし、モンテッソーリ教育は他人と比較することなく自分と向き合うことを基本としているため、競争心を育てる遊びをする機会が少なくなってしまうでしょう。特に運動に関してはライバルの影響がとても大きく、他人からの刺激により身体能力が向上しやすい傾向があります。このデメリットへの対策としては、園での活動に加え、運動系の習い事をすることが挙げられるでしょう。

集団行動に苦手意識を持ってしまう

3つ目は、集団行動に苦手意識を持ってしまうことです。モンテッソーリ教育では、その日にどんな遊びをするのかは個人の自由であり、クラスで一斉に同じ活動をすることはあまりありません。行事が少ないのもモンテッソーリ教育を取り入れた園の特徴です。他の子供との関わりが少ない分、協調性が育ちにくく、集団行動を苦手と感じてしまうことがあるでしょう。集団行動に苦手意識を持ってしまうことへの家庭でできる対策法は、親と協力して家事を行うことです。家事を上手に行うことが目的ではないため、サラダに使う野菜をちぎるなど簡単なものでも良いでしょう。

まとめ

モンテッソーリ教育を通して子供たちの自立を促そう!

いかがでしたか?今回は、モンテッソーリ教育の5つの教育分野やメリットデメリットなど、モンテッソーリ教育について詳しく解説しました。モンテッソーリ教育では、子供の興味関心や主体性が最も重要視されています。また、独自の教具を使用した活動もモンテッソーリ教育の大きな特徴です。子供の自主性や積極性、個性を伸ばしたいと考える人は、この記事を参考に、モンテッソーリ教育を取り入れた園への入園を考えてみてはいかがでしょうか?

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