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近年、保育園における外国籍の子どもの受け入れ数が増えています。受け入れ数を増やしている園の中には、言語や文化の違いによる課題に悩んでいる園もあるのではないでしょうか。この記事では、保育園が外国籍の子どもを受け入れる際に配慮すべきことや適切な対応方法について紹介していきます。市区町村が行う外国籍の受け入れを行う園への支援内容も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
保育園における外国籍の子どもの現状
外国籍の子どもの受け入れ数は増えている
まずは、保育園における外国籍の子どもの現状について見ていきましょう。保育園での外国籍の子どもの受け入れ数は増加傾向にあるのが現状です。国内に住む5歳未満の子どもの数は10年前と比べて3割増加しており、外国にルーツのある子どもを受け入れている保育所等は約7割に上ります。多様性のある社会を目指していく中で、保育の現場でも様々な国籍の子どもが共に過ごせる環境が求められていると言えるでしょう。
保育園が外国籍の子どもを受け入れる際の課題
保護者に園のルールを理解してもらえない
ここからは、保育園が外国籍の子どもを受け入れる際の課題について紹介していきます。1つ目に挙げられるのが、保護者に園のルールを理解してもらえないということです。保育園には様々なルールがありますよね。着替えや水筒などの持ち物の規定や、送迎時間の決まりなど、外国籍の保護者には細かいと感じてしまうルールもあるかもしれません。母国の文化には無いルールだと、理解してもらうのに時間がかかる場合があります。
園児の家庭での様子がわからない
2つ目に挙げられるのが、園児の家庭での様子がわからないということです。保育園は、いくつもの家庭の子どもを一度に預かる施設ですよね。そのため、安全に子どもを預かるためには各家庭からの情報共有が欠かせません。家ではどう過ごしているか、食べ物のアレルギーはあるかどうか、おやつは食べるか、寝つきは良いか、など様々なことを聞いた上で保育を行います。一方で、言語や文化の違いから外国籍の保護者と意思疎通が上手く取れないことがあります。普段の家での様子がわからないため、手探りの状態で保育を行わなければいけないこともあると言えるでしょう。
園児に保育士の指示が通らない
3つ目に挙げられる課題としては、園児に保育士の指示が通らないということがあります。外国籍の子どもの場合、家では母国語で話していることもあるでしょう。その場合、日本語の理解が十分でない可能性もあります。保育士の言っていることがわからず、「静かにして」や「座って」などの簡単な指示でも通らないことがあるかもしれません。子どもとしてはみんなと同じようにしたいと思っていても、そもそも指示が伝わっていない場合があるので注意が必要です。
園児が他の友達と上手く関係を築けない
外国籍の子どもが保育園に通う場合、他の園児と上手く関係を築けないことがあるという課題も挙げられます。子ども同士でも、友達になるには言葉のやり取りを含むコミュニケーションが必要ですよね。一方で、外国籍の子どもで言語や文化の違いがあると、上手く友達の輪に入れないということも考えられます。スムーズな会話ができなかったり、ルールがわからず一緒に遊べなかったりするかもしれません。年齢が上になればなるほど生じやすい課題だと言えるでしょう。
保育園が外国籍の子どもの受け入れで配慮すべきこと
日本の文化を強制しないようにする
ここからは、保育園が外国籍の子どもの受け入れで配慮すべきことを紹介していきます。まず初めに、日本の文化を強制しないようにするということです。日本の保育園に通う上で、守ってほしいルールはあるでしょう。一方で、外国籍の子どもや保護者のそれぞれの母国にも、日本と同じように様々な文化がありますよね。外国籍の子どもを受け入れるにあたっては、柔軟な対応が求められます。特に宗教の慣例や食事の制限など、日本では珍しくても多国では重要だとされる文化もあります。お互いに話し合って、互いの文化の強制にならないように配慮することが大切です。
ジェスチャーに気をつける
外国籍の子どもを受け入れるときは、ジェスチャーに気をつけるようにしましょう。ジェスチャーは、言葉が通じないときにとても便利なツールです。身振り手振りを使って相手に言いたいことを伝えようとするのは、コミュニケーションの上では必要なことでしょう。しかし、ジェスチャーは世界共通ではありません。日本では一般的に使われるジェスチャーでも、国によっては失礼な意味にとられてしまうこともあります。受け入れ先の国でタブーとされているジェスチャーを把握するなどして、上手くコミュニケーションを取れるようにしましょう。
園全体でサポートできる体制を作る
保育園が外国籍の子どもの受け入れをするにあたっては、園全体でサポートできる体制を作ることが大切です。これまで説明してきた通り、外国籍の子どもを保育園で受けれ入れるのは決して簡単なことではありません。文化や言葉の違いに配慮するのはもちろん、保護者にも園児にも様々なサポートが必要になります。それら全てのサポートを、外国籍の子どもを受け入れるクラス担任の保育士が1人で対応するのは大変ですよね。クラス担任に関わらず、園全体でサポートできる体制を作ることで、柔軟な対応も可能になります。
小学校入学を踏まえた支援を行う
外国籍の子どもを受け入れる場合は、小学校入学を踏まえた支援を行うという配慮も必要です。子どもを保育園に預ける外国籍の家庭においては、小学校入学以降も日本で生活する場合が多い傾向です。小学校は保育園と違って多くの時間を勉強に使いますよね。授業についていけるだけの日本語力が必要とされるだけでなく、年齢が上がるにつれてコミュニケーション力も求められるようになります。そのため、保育園以上に言葉や文化の違いに苦労することがあります。受け入れる外国籍の子どもが年長さんである場合は特に、入学の手続きや日本の義務教育の仕組みの説明なども、外国籍の子どもや保護者へ適宜行っていく配慮が必要でしょう。
保育士が行う外国籍の子どもへの適切な対応例
母国の文化に関する遊びを取り入れる
ここからは、保育士が行う外国籍の子どもへの適切な対応を紹介していきます。外国籍の子どもを受け入れる保育士にとっては、どう対応したら良いかわからないこともありますよね。1つおすすめできるのが、受け入れた子どもの母国の文化に関する遊びを取り入れるということです。慣れない環境で緊張していたり、馴染めなかったりする子どもでも、母国の文化に関することであれば興味を持ってくれることもあります。他の園児達にとっても、異文化交流の良い機会になりますよ。
イラストを使って指示を伝える
外国籍の子どもに対しては、イラストを使って指示を伝えるのもおすすめです。日本に来てからまだ日が浅い子どもの場合は、日本語が十分に理解できず、保育士の指示が伝わらないこともあります。一方で、簡単な指示が通らないと集団保育に支障が出る場合もありますよね。そのような時にはイラストを使って説明してみましょう。イラストであれば、日本語がよくわからなくても指示を伝えることができます。簡単な日本語を覚えるきっかけにもなるので、言葉に出しながらイラストを使ってコミュニケーションを取ってみるのがおすすめですよ。
簡単な挨拶を母国語で行う
外国籍の子どもを受け入れた場合は、簡単な挨拶を母国語で行ってみるのがおすすめです。母国と全く異なる言語や文化にまだ馴染めないうちは、挨拶も上手くできない子も珍しくありません。保育士が母国語を習得するのは難しいですが、簡単な挨拶であればすぐに実践できますよね。朝や帰りの挨拶のときに、母国語で話しかけてみると上手くコミュニケーションが取れることがありますよ。園児との信頼関係を築くきっかけにもなるかもしれません。
保育士が行う外国籍の子どもの保護者への適切な対応例
おたよりの内容を翻訳して伝える
保育園で外国籍の子どもを受け入れる場合、その保護者にも適切な対応をする必要があります。ここからは、保育士が行う外国籍の子どもの保護者への対応方法を紹介していきましょう。まず1つ目に挙げられるのが、おたよりの内容を翻訳して伝えるということです。保育園の出すおたよりには、園から保護者に伝えたい重要な内容が載っていますよね。一方で、外国籍の子どもの保護者の中には日本語が読めない人も少なくありません。大事な内容が伝わらず、後々トラブルが起きてしまうこともあります。共有事項をしっかり伝えるために、おたよりを翻訳して渡すのがおすすめです。全てを翻訳する必要はありません。絶対に伝えたい重要な内容のみを翻訳するだけでもトラブルを未然に防ぐことができますよ。
生活習慣の違いをヒアリングする
外国籍の子どもの保護者には、生活習慣の違いをヒアリングすることも大切です。日本と母国では、保育の仕方や子どもの家での過ごし方など、様々な部分で違いがあることも珍しくありません。例えば、日本の保育園ではお昼寝をすることがほとんどですよね。一方で、お昼寝の習慣がない国もあるかもしれません。文化や宗教の違いによって、生活習慣が大きく異なることもあります。それらの違いに適切に対応するために、まずは保護者へのヒアリングを行うのがおすすめです。
市区町村が行う外国籍の子どもを受け入れている保育園への支援
加配保育士の派遣
外国籍の子どもを保育園が受け入れるためには、様々な対応が求められます。外国籍の子どもを受け入れている保育園を対象に、支援を行っている市区町村もありますよ。具体的な支援内容としては、加配保育士の派遣などが挙げられます。現状、法律上では外国籍の子どもに対する保育士の加配は定められていません。一方で、外国籍の子どもを受け入れた場合、一般的な日本国籍の園児とは異なる対応が必要になる場合があります。既存の保育士では人員が足りないときに、市区町村から加配保育士を派遣してもらうことができますよ。
通訳の派遣
自治体によっては、通訳の派遣を行っている市区町村もあります。入園手続きや、生活習慣に関するヒアリングなど、保護者としっかり意思疎通を取ることが求められる場面がありますよね。外国籍の子どもの保護者が日本語をあまり話せない場合、コミュニケーションが上手く取れないこともあるでしょう。市区町村が通訳を派遣してくれている場合は、保護者との面談のときなどに、とても重要な役割を果たしてくれますよ。
ICT機器の貸し出し
ICT機器を貸し出している市区町村もあります。翻訳機を始めとするICT機器を借りることができれば、外国籍の子どもの保護者との意思疎通はかなり楽になりますよね。通訳の派遣は、通訳がいないとコミュニケーションを取ることが難しくなってしまいますが、翻訳機であればどこでも持ち運びができるので、いつでも意思疎通を図ることができます。また、確実に伝えたい単語などを調べるときにも便利です。人件費を抑えつつ園の支援ができるツールの1つですよ。
まとめ
外国籍の子どもには適切な配慮と対応を行おう
いかがでしたか。保育園が外国籍の子どもを受け入れる際の注意点や課題について説明してきました。国内における外国籍の子どもの数は増加しており、今後はより多くの保育園でも外国籍の子どもの入園希望がくることが想定されます。一方で、言語の違いによって上手く意思疎通が図れなかったり、文化の違いによって適切な保育が行えなかったりすることがあるのも課題です。自治体からの支援も受けながら、園全体でのサポート体制を整えていけると良いですね。