1965年(昭和40年)に厚生労働省によって制定された保育所保育指針。保育所保育指針とは、保育に関する考え方を具体化したもののこと。また、保育所保育指針は保育士試験でも出題問題の一つとして多く取り上げられています。保育所保育指針は、保育士をめざす人も保育士になる前に必ず認識しておかなければいけないもの。2018年には、保育所保育指針の改定も行われて改定で変わったポイントもたくさんあります。では、保育所保育指針の具体的な内容はどのようなものなのでしょうか。改定後はどんなところが変わったのでしょうか。本記事で保育所保育指針について徹底解説しました。
保育所保育指針とは
保育の考え方を具体化したもの
まず、保育所保育指針とは保育に関する考え方を具体化したものです。保育所保育指針は、1965年(昭和40年)に厚生労働省によって制定されました。また、2017年度に厚生労働省より改定が行われ、2018年4月1日から施行されています。保育所保育指針は、保育士試験でも出題問題として出てきます。これから保育士として働く人も、現役保育士さんも保育所保育指針は絶対に把握しておきたいものです。
保育所保育指針が改定されて変わった事
保育のねらいや内容が具体的になった
保育所保育指針が改定されて変わったポイントの一つ目は、保育のねらいや内容が具体的になったことです。新保育所保育指針の中にある第2章の「乳児保育に関わるねらい及び内容」「1歳以上3歳未満児に関わるねらい及び内容」で具体的に改定されています。これは、共働き世帯の増加によって保育施設に入る乳児から3歳未満児が多くなったことで保育内容を充実させようという動きがあり、改定されました。
保育園が教育施設と位置づけされる
保育所保育指針が改定されて変わったポイントの二つ目は、保育園が教育施設と位置づけされるようになったことです。新保育所保育指針第1章の総則に「幼児教育をおこなう施設として共有すべき事項」と記載されるようになったのです。わかりやすく説明すると、保育園も幼稚園や認定こども園と同じように教育施設と位置づけられました。これにより、保育園もよりよい教育を行うことが求められるようになったのです。
健康と安全がより配慮されるように
保育所保育指針が改定されて変わったポイントの三つ目は、健康と安全がより配慮されるようになったことです。子どもたちを守ることは、保育士さんにとっても重要な役割の一つですよね。新保育所保育指針では「第3章健康及び安全」の中に災害への備えについて新しく制定されることになりました。災害の備えについて設けられたことで、万が一災害が起きたときに地域の消防署や防災センターと連携できるように定期的に訓練を行わなければいけなくなりました。
子育て支援が強化された
人保育所保育指針が改定されて変わったポイントの四つ目は、子育て支援が強化されたことです。これは、子育てニーズの多様化に合わせて追加されたものです。改定前は保護者に対する支援と言われていました。それが、2018年の改定で子育て支援と名前が変更されてより支援の幅が広がったのです。子育て支援では急速にネットが発達したことからよりプライバシーを守る項目が追加になりました。また、保護者や家庭、地域が連携をして支援を行うことも求められるようになりました。
保育の質を上げる取り組みが追加
保育所保育指針が改定されて変わったポイントの五つ目は、保育の質を上げる取り組みが追加されたことです。新保育所保育指針第5章の「職員の資質向上」の中で、研修の実施体制等が追加されました。具体的な内容としては、研修で得た知識・スキルを保育所で共有し、保育所全体の資質向上を図ること。そして、保育所において保育士のキャリアアップを見据えた研修計画を作成することが挙げられます。厚生労働省が定めた保育士等キャリアアップ研修ガイドラインを使用して、保育士を養成していくことが求められるようになったのです。
5領域とは
保育の目標を5つの領域に分類したもの
5領域とは、保育を行う上での目標を5つの領域に分類したものです。保育所保育指針の中の1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容の項目で示されており、具体的な内容は以下の通りです。
- 「健康」:心身の健康に関する領域
- 「人間関係」:人との関わりに関する領域
- 「環境」:身近な環境との関わりに関する領域
- 「言葉」:言葉の獲得に関する領域
- 「表現」:感性と表現に関する領域
以上の5つを指し、それぞれにねらいと内容が設定されています。5領域は、子どもの発達の基盤になっていくものであり、保育園の指導も5領域を元に行うことで子どもの心身の総合的な発育が期待できますよ。
5領域の具体的な内容
健康
健康の領域では、健康な心と体を育てて健康で安全な生活をつくり出す力を養うことが目標となっています。健康の領域で保育で実践しやすいのは、食育や運動などが挙げられます。食育は、健康な心身を作るために望ましい食習慣を形成することはとても重要なこと。よい食習慣を育んでもらうために大事なのは、強制するのではなく子どもが自分から進んで食べるように工夫をしましょう。また、運動は身体を動かす機会を確保して運動する意欲がわくように工夫することが求められます。まずは、先生がまず体を動かして見本を見せることやゲーム要素を取り入れて楽しく運動をできるような工夫を行いましょう。
人間関係
人間関係の領域では他の人々と親しみ、支え合って生活するために自立心を育てて人と関わる力を養うことが目標です。子どもが自分から人間関係を上手く構築するようになるには保育士さんがサポートしすぎないことが大切。また、お友達とうまくコミュニケーションができないことも人間関係がうまくいかない原因の一つです。そんな時に役立つのが、伝える力です。お友達に気持ちがうまく伝わらないと、子どもは暴力を振ってしまったり暴言を吐いたりしてしまうかもしれません。大切なのは、子どもに気持ちを言葉にして伝えることを教えること。子どもが気持ちの伝え方を学ぶことで人間関係を良好に築くことができるかもしれませんよ。
環境
環境の領域は、周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養うことが目標となっています。乳幼児は周囲の様々な物事に関心を持ちます。子どもは、好奇心や探求心が旺盛な時期に自然と触れ合うことや様々な遊びを体験させることで心身の感覚が発達して色々なことに対する気づきを促すことができますよ。学習意欲の高い子どもに育つには、周囲の自然や生き物と触れ合う機会を作ることや様々な活動を通して子どもが何に興味があるのかを見極めることが大切です。
言語
言語の領域の目標は二つあります。一つ目は、経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現して相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育てること。二つ目は、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養うことが目標となっています。言葉は周囲の環境への関心や人間関係の関わりの中で発達していきます。しかし、言葉の発達には個人差がありますので、子どもの年齢や発達に合わせて言葉を覚えさせましょう。
表現
表現の領域は、感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、子どもの想像力を豊かにすることが目標となってます。子どもが考えや感じたことを豊かに表現するには、様々な体験をすることで感情や感覚を刺激して感性を養っていく必要があります。子どもが自分から意欲的に表現できるような働きかけ、環境づくりを行うようにしましょう。
10の姿とは
幼児期の終わりまでに育ってほしい姿
10の姿とは、幼児期の終わりまでに育って欲しい幼児の具体的な姿として提示されています。一般的に幼児期の終わりとは小学校入学までを指します。10の姿とは、幼児教育の法令改正に伴って2018年に施行されました。
- 健康な心と体
- 自立心
- 協同性
- 道徳性・規範意識の芽映え
- 社会生活と関わり
- 思考力の芽生え
- 自然との関わり・生命尊重
- 量・図形、文字等への関心・感覚
- 言葉による伝え合い
- 豊かな感性と表現
以上の10項目を踏まえて、子どもの成長を振り返って今後の保育に活かしていくのが10の姿です。
10の姿の具体的な内容
健康な心と体
健康な心と体の目標は二つあります。一つ目は、幼稚園生活の中で満足感や充実感を持って自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせながら取り組むこと。二つ目は、見通しを持って自ら健康で安全な生活を作り出していけるようになるのが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6)
具体例を挙げると、衣服の着脱や排せつなどの基本的な作業を自力ですることや自らの健康に対する関心や安全への意識の高めさせることが挙げられます。
自立心
自立心の目標は、二つあります。一つ目は、子どもが自分の力で行うために自分でしなければならないことを自覚して行って諦めずにやり遂げること。満足感や達成感を味わいながら、自信を持って行動するようになることが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6)
具体例を挙げると、自分の身の回りのことは自分ですることや出来ないことは先生や周囲の人に手伝ってもらうことが挙げられます。
協同性や協調性
協同性や協調性の目標は、友達との関わりを通じ、その思いや考えを共有することや目標の実現に向けて協力したりする充実感を味わうことが目標となっています。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6)
協同性は子どもがこれから人間関係を構築する時にとても重要になります。例を挙げると、子どもが相手の思いや気持ちを理解して行動することやクラスみんなで共通の目的を持って役割を分担することが挙げられますよ。
道徳心
道徳心の目標は、二つあります。一つ目は、やっていいことと悪いことの区別がつき、相手の立場に立って行動するようになること。二つ目は、友達と折り合いを付けながら、決まりの大切さが分かり守るようになるのが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6) 具体例を挙げると、みんなで使うものを大切に扱うことやお友達とわからないことを教え合うことが挙げられます。
社会生活と関わり
健康な心と体の目標は、家族を大切にしようとする気持ちを持ちつつ、いろいろな人と関わりながら、自分が役に立つ喜びを感じることが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6) 社会生活との関わりが増えることで、情報を伝え合ったり、公共の施設を大切にしたりと社会全体とのつながりの意識等が芽生えるようになるのです。具体例を挙げると、子どもが地域の人々に親しみを持って接することや自分が住む地域の伝統に触れて大事にすることが挙げられますよ。
思考力
思考力の目標は二つあります。一つ目は、子どもが身近な事に好奇心や探究心を持って積極的に関わり、疑問点に気付いたり、工夫して解決したりなどをして多様な関わりを楽しむようになること。二つ目は、友達と一緒に答えを探し、確かめて新しい考えを生み出す喜びを感じさせることが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6) 具体例を挙げると、子どもが自分から考えて製作を行うことなどが挙げられますよ。
生命の尊重(養護教育)
生命の尊重の目標は二つあります。一つ目は、子どもが自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ、身近な事象への関心が高まり、愛情を持って自然を大切にするようになること。二つ目は、子どもが身近な動物や植物を命があるものだと理解し、いたわり大切にする気持ちを持つようになることが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6)
生命の尊重の目標を達成するには、自然に出会い、生命の不思議や感動に触れさせる機会を与えることが大切ですよ。具体例を挙げると、遠足で子どもが動物園に行って動物と関わり、生命に触れるといったことが挙げられますね。
図形や文字等への関心・感覚
図形や文字等への関心・感覚の目標は、二つあります。一つ目は、子どもが生活や遊びの中で数の形や量などに親しむ経験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりすること。二つ目は、子どもが必要に応じて図形や文字を活用して、より一層図形や文字への関心が高まることが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6) 具体例を挙げると、子どもが数を数えたりすることができるようになったり、物の性質や仕組みを考えて工夫して使うことができるようになることが挙げられます。
言葉による伝え合い
言葉による伝え合いの目標は、二つあります。一つ目は、言葉を通して先生や友達と心を通わせ、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付けること。二つ目は、言葉による表現を楽しむようになることが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6) 具体例を挙げると、以下の四つが挙げられます。
・子どもが自分の思ってることをお友達が理解できるように考えて話せるようになる。
・文字の意味や役割、必要性を理解する。
・絵本や物語に親しみ世界観をお友達と共有する。
・遊びのルールをお友達と考えて共有する。
豊かな感性と表現
豊かな感性と表現の目標は、二つあります。一つ目は、生活の中で感じたことや考えたことを自分で表現したり、お友達同士で表現する過程を楽しんだりして、表現力が高まるようになること。二つ目は、友達同士で表現し合い、心豊かに通わせ、表現することの楽しさや面白さに気づくことが目標です。(参考:教育課程部会幼児教育部会 資料6)
具体例を挙げると、言葉遊びの中で子どもの豊かな感性と表現を鍛えるなどが挙げられますよ。
まとめ
5領域と10の姿を頭に入れて保育に活かそう
今回は、保育所保育指針についてまとめてみました。いかがでしたでしょうか。保育所保育指針の中には、5領域と10の姿という保育の考え方を具体化したものがあるといったことがわかりましたね。本記事でご紹介した5領域と10の姿の目標は、たくさんあって何から始めたらいいかわからないと思うかもしれません。しかし、できることから始めれば大丈夫です。園で取り組みやすいと思ったものから始めてみて日々の保育にぜひ役立ててみてくださいね。
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