こども家庭庁って何をするところ?いつから?【大臣・採用・組織図】

目次

2023年4月1日から、新たに「こども家庭庁」が新設されました。今後、「こども家庭庁」は、子供たちを真ん中に置いた「こどもまんなか社会」を目指し、家庭内暴力や子供の貧困、ひとり親家庭の問題などに取り組んでいくことになります。これによって、教育や保育はどのように変わるのでしょうか?今回は、「こども家庭庁」の発足にある背景や従来政府が抱えていた問題点を見ながら、どのように「こども家庭庁」が動いていくのかを解説していきます。

こども家庭庁とは?

すべての子供に関する政策を総括する機関

こども家庭庁とは、今までバラバラだった子供たちのための行政機関を総括する機関。総理大臣直属の機関として、内閣府の外局に位置し、内閣特命担当大臣も置かれています。こども家庭庁には、各省庁に子供政策の改善を求めることができる「勧告権」があります。内閣特命担当大臣とは、施策の統一を図る際に、内閣総理大臣から命を受けて内閣府に設置される国務大臣のこと。こども家庭庁の場合においても、別々に行われていた行政政策を統一するために設置されました。

こども家庭庁設置法により2023年4月1日から設置された

こども家庭庁は、2022年6月15日の参院本会議で可決、成立し、2023年4月1日から設置されました。当初は、「こども庁」という名称で発足されることが検討されていました。しかし、子供の基盤は家庭にあるものとして名称を「こども家庭庁」に変更。こども家庭庁は、子供たちだけの問題ではなく、子供を取り巻く環境すべての問題解決を図る機関として運営されます。そのため、「こども家庭庁」という名称を使うことで、幅広く政策を行う行政であることがより印象深くなりました。

3つの部門に分かれ子供を社会の中心にすることを目指す

こども家庭庁は、3つの部門に分かれて運営されます。

・企画立案/総合調整部門
・成長部門
・支援部門


子供が社会の中心になることを目的として、現代の子供が抱える問題を解決するために設置されました。子供が社会の中心になるとは、政府が目指す「こどもまんなか社会」を実現すること。これを実現するにあたって、専門的な機関が求められるようになりました。そこで「こども家庭庁」を発足し、この3つの部門でそれぞれ問題解決していくことになります。

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こども家庭庁の3つの部門について解説!

企画立案・総合調整部門:子ども政策全体の司令塔

ここからは、先ほど紹介した3つの部門について細かく解説していきます。まず1つ目は「企画立案・総合調整部門」。
子供政策の司令塔として運営されるこの部門。子供たちや子育て当事者たちの意見を聴く仕組みを整えたり、その視点に立った政策の立案を行います。それだけなく、支援を必要としている人に、適切な支援を届けるための広報や情報発信の役割も担っています。全体の司令塔としては、政策の妥当性などをデータや統計を活用して検討する役割を持ちます。

成長部門:子どもたちの健全な成長をサポートする

続いて、「成長部門」について解説します。「成長部門」は、子供たちの健全な成長をサポートするための政策立案を担います。
現在実施が決定している政策は、主に3つ。

・幼稚園や保育所などの教育や保育の基準を策定
・日本版DBSの導入を検討
・「CDR」の検討


「日本版DBS」とは、子供の性被害を防ぐために、子供と関わる仕事をする人物の犯罪歴をチェックできるというシステムのこと。これは公的機関が発行する「無犯罪証明書」を就業先に提出させる制度で、過去に性犯罪歴のある人物が保育や教育の分野で就業できなくなります。
「CDR」とはチャイルド・デス・レビューのことで、子供が事故で死亡した際などに、その経緯を検証して再発防止につなげるシステムのことです。こども家庭庁発足以前より、既に文部科学省や厚生労働省をはじめとして「保育事故研修」・「学校事故研修」などの取り組みが別々になされていました。こども家庭庁の発足に伴い、成長部門において統一的にこの政策を行うことになります

支援部門:虐待やいじめなど困難を抱える子どもを支援する

最後に解説するのは、「支援部門」。「支援部門」は、虐待やいじめなどの困難を抱えている子供や家庭の支援を主に担います。深刻ないじめ問題が起きた場合には、文部科学省に対して説明や書類提出を求めることができます。また、現代国内で「ヤングケアラー」が問題視されていますよね。本来大人が担うべき家族の世話や家事などを行っている子供のことをさす「ヤングケアラー」。そんな「ヤングケアラー」の早期把握、福祉や医療と連携した支援を行うのも「支援部門」です。

こども家庭庁ができる背景は?

いじめや虐待などの件数が増加している

こども家庭庁が発足した背景として、まず1つ目に、いじめや虐待の件数が増加していることが挙げられます。2021年の「児童相談所での児童虐待相談対応数」は、過去最多の20万7660件。コロナ禍の影響で親の孤独感がひどくなったことや、行動制限によって不安感が増大したことによって増加したのではないかと考えられています。また、ネットでの誹謗中傷(ネットいじめ)が、2021年には2万件を超え、過去最多となりました。このようにいじめや虐待の件数の増加がこども家庭庁発足の背景となっています。

子供の貧困問題

現代の日本において、ひとり親家庭の子供の7人に1人が、貧困状態にあります。コロナ禍の影響で、多くの飲食店やサービス業が営業自粛に追い込まれてしまいました。その結果、働き口を失ったり、働ける日数が減ってしまい、家計が苦しくなったと予想されます。貧困状態にある子供たちは、給食費が払えなかったり、学校に必要なものを十分に用意できなかったりします。こども家庭庁の発足により、こういった問題を抱える子供たちや家庭を支援していく目的があります。

子育てにおける負担の増加

また、子育てにおける負担の増加もこども家庭庁の発足につながっています。家庭と周囲の関係が希薄になったことにより、核家族化も手伝って、親だけで子供を育てるという場面が増えました。現代では、特に子供が幼いうちは、感染症の心配や周囲へ迷惑をかけてしまうのではないかという不安から、外出することも少なくなっています。その結果、社会から疎外されているような孤独感を抱えてしまい、子育てを負担に感じたり、大きなストレスを抱える親が増えました。

別々の行政が行っていた子供に関する政策を統一するため

こども家庭庁が発足する背景として、4つ目に挙げられるのは、別々の行政が行っていた子供に関する政策を統一するためです。各省庁がそれぞれに子供に関する政策を行っていたため、政策を行う組織や権限が分かれていました。それによって、省庁間で業務の重複が起きたり、効率的な政策を実行できなかったりといった弊害が。子供に関する政策をより効率的に、より適切に実施するために統一的な組織が求められるようになり、こども家庭庁が発足することになりました。

こども家庭庁の基本理念や政策は?

子供に関する政策の土台としての基本理念

こども家庭庁は、主に6つの基本理念を掲げています。

① こどもの視点、子育ての当事者の視点に立った政策立案
② 全ての子どもの健やかな成長、Well-beingの向上  ※Well-being…幸せな状態
③ 誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援
④ こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ目ない包括的な支援
⑤ 待ちの支援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換
⑥ データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価・改善)

基本理念に基づきこども政策の3本柱に取り組む

上記の基本理念に基づき、こども家庭庁は、こども政策の3本柱に取り組んでいくとされています。こども政策の3本柱とは、以下の3つを指します。

①ライフステージごとに希望が持てる社会を目指す
⓶すべての子供に安全・安心な環境を提供する
③すべての子供の健やかな成長を保障する

若い世代が、結婚・妊娠・子育てに希望を感じられ、希望を見出す社会を目指すことによって、まずは近年問題視されている少子化対策をはかるねらいがあります。若い世代では、経済的な理由から結婚を考えていない人や、結婚・妊娠によって社会的に不利な立場になってしまうと考えている人が増えています。今後は、こども家庭庁の行う政策によって、そう考える人が少しでも減少するように取り組んでいかなければなりません。

こども家庭庁に期待される役割とは?

子供や家庭における政策を集約し一元化すること

こども家庭庁に期待される役割として、まず1つ目に子供や家庭における政策を一元化することが挙げられます。これまでは、子供の貧困に関する問題は内閣府、保育所での児童虐待は厚生労働省など、年齢や担当省庁によって別々に管轄されていました。しかし、現代においてはひとり親家庭における貧困と虐待の問題が起きるなど、ひとつひとつの問題を切り離して対応することが難しくなっています。そのため、こども家庭庁の発足に従って、従来は制度の構造上含まれなかった子供たちを含む、すべての子供たちを支えるシステムが期待されています。

長期的な視点に立った政策を立案・実現すること

次に挙げられるのは、長期的な視点に立った政策の立案・実現。幼少期のトラウマや傷は、その後の人生に大きな影響を与えるものです。例えば、幼少期にネグレクトや家庭内暴力を受けている子供は、精神的に不安定になってしまうケースが多く見られます。そして、将来的に対人関係でうまくいかないことが増えたり、家庭を築いても自分の子供にどう接したらいいかわからなかったりすることが。そのため、こども家庭庁には、一時的な支援・対策ではなく、子供たちのその後の人生を見通した政策が求められます。

子供の参画によって政策を実現すること

3つ目に挙げられるのは、政策実現にあたって、子供が参画できる仕組みをつくることです。上記2つの政策において最も重要なものは、子供たち自身の声を実際に聞くこと。今までは、大人たちから見た最善の方法を政策として実施していました。しかし、実際に問題を抱えている子供たちの声を聴き、それを反映させる仕組みがなかったため、今後は、こども家庭庁がその仕組みを作っていくことが期待されています。

こども家庭庁になると幼稚園・保育園は変わる?

保育園の管轄が厚労省からこども家庭庁へ

こども家庭庁が発足したことによって、保育はどう変わるのでしょうか?まず1つ目に大きく変わる点として、保育園の管轄が厚生労働省から、こども家庭庁へと変更されます。今までは、幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省、そこに認定こども園や新たな保育施設が加わり、どの施設がどこの管轄なのかがばらばらになっていました。こども家庭庁の発足によって、幼稚園以外が子ども家庭庁の管轄ということになります。

幼保一元化に向けた動きがある可能性も

こども家庭庁の発足が求められた最も根本的な部分には、「幼保一元化」がありました。同じ幼児教育の場であり、共通する点もおおい幼稚園と保育園の管轄がバラバラで、当初はその部分をまず統一するべきという声が大きかったのです。しかし、議論が深まる中で、発足の目的が教育の質向上・機会均等化から、ひとり親家庭・虐待・子供の貧困に重きが置かれるようになりました。そのため、新設と同時に幼保一元化を図る動きはなくなりましたが、幼稚園以外が子ども家庭庁の管轄になったことなどを鑑みて、やはり幼保一元化するべきではないかと指摘されています。これから政策を立案・実施していく中で、幼保一元化に向けて動きがある可能性が高いと言えるでしょう。

まとめ

4月から新設されたこども家庭庁について知っておきましょう!

今回は、4月から新設されたこども家庭庁について解説しました。こども家庭庁について知っておくことで、活用できる支援の幅が増えますよ。また、教育の機会均等化や、管轄元の変更等によって、多くのことが保育の現場において変わっていくことが予想されます。これから予想される変化や、政策について、保育・幼児教育に携わる者として、保育士のみなさんも、「こども家庭庁」について知っておきましょう!

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