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みなさんはモロー反射を知っているでしょうか。赤ちゃんが行う原始反射の一つで、手足を外側に伸ばしたのちに手を抱え込むという乳児特有の動作のことですね。動作自体は見たことがあっても、詳しいわけではないという方や、あまりよく分かっていないという方もいることでしょう。今回は、モロー反射をテーマにしていきますよ。対策や区別するべき疾患など、幅広い内容を解説していきます。ぜひ読んでみて、モロー反射についてより深く知ってくださいね。
モロー反射とは
原始反射の一つで手足を外側に伸ばし手を抱え込む乳児特有の動作
モロー反射は、生まれながらに備わっている原始反射の一つです。特定の刺激に対して無意識に反応する反射動作が原始反射ですね。その原始反射のうち、手足をビクッとさせた後に腕を広げてから抱きつくような動作をすることをモロー反射と言います。さまざまな外部の刺激から引き起こされるモロー反射。大きな音や何かに触れた時はもちろん、光や温度、風などの些細な刺激なども含まれます。また、自分自身の動きに反応することもあります。さまざまな刺激によってモロー反射が引き起こされるので、1日の中でも何度も見られる現象と言えるでしょう。
モロー反射の時期は?
生後4ヶ月ほど続くもの
実は、モロー反射は胎児の時期から行われています。たいていの場合、在胎28〜32週でモロー反射が開始し、37週ごろには確立しているとされています。通常、生後4ヶ月程度で消失し、見られなくなる現象ですね。モロー反射の消失期については個人差もあるようで、6ヶ月ほど続く子供もいます。モロー反射が長引くと不安になる方もいますが、必ずしも何か疾患を抱えているというわけではありません。あまりにも極端に反応が弱かったり、長引いたりしているケース以外は、余裕を持って接すると良いでしょう。
モロー反射の確認方法は?
誘発法
乳児期には、モロー反射が正常に行われているかどうかの検査を1ヶ月検診の際に行います。その方法が誘発法と呼ばれるものです。脳性麻痺をはじめとする疾患の有無の確認にも用いられていますね。誘発法は、文字の通り実際にモロー反射を誘発して様子を観察するものです。仰向けに寝た乳児の頭部を手のひらで30度ほど持ち上げ、軽く手の力を抜いて頭を少し落下させます。この誘発法を使用する際には、頭部を打撲させたり転落させないように注意が必要ですね
モロー反射によって何が起きる?
寝ていても起きて泣いてしまう
モロー反射が起きることによる困りごととしては、子供が泣き出してしまうということが挙げられるでしょう。苦労して寝付けても、モロー反射で起きてしまい、泣き出してしまうと大変ですよね。特に些細な刺激でも引き起こされてしまうのがモロー反射です。刺激を与えないようにしていても、自分の動きで起きてしまって防ぎにくいものでもありますよね。下では、モロー反射への対策を紹介しているので、ぜひ実践してみてくださいね。
保育士のモロー反射への対策は?
抱き方を工夫する
赤ちゃんを抱っこしている際に寝た場合には、起きて泣いてしまわないように抱っこの仕方を工夫することが有効でしょう。誘発法からも分かる通り、モロー反射は赤ちゃんの頭部が動いたり重力を感じたりした際にも起こります。そのため、頭の位置が変わらないように抱っこすることは、有効な対策になりますね。赤ちゃんは優しく抱っこしてもらうことで、リラックスして眠ることができます。常に同じ姿勢で抱っこすることはもちろん大変ですが、可能な範囲で安定した抱っこをして赤ちゃんを寝かせてあげると良いでしょう。
環境を調整する
モロー反射が起きないようにするためにできることとして、環境を調整することが挙げられます。モロー反射は周囲の音や光、風などによって引き起こされます。子供が寝ている時には、これらの要因が子供たちを刺激しないように環境を整えることが必要ですね。子供への刺激となるものは様々で、全てを防ぐことは難しいでしょう。扇風機やヒーターを子供から遠い場所に設置して、光や風が直接当たらないようにするなど、1つずつの工夫を積み重ねていくことが重要ですね。
おくるみを使用する
モロー反射への対処法として、おくるみを使用することも非常に効果的です。おくるみは、赤ちゃんを抱っこしたり寝かしつけたりするときに使用する、赤ちゃんを優しく包む大きめの布のことですね。おくるみで子供をくるむことによって、手足がうまく固定されてモロー反射が起きにくくなります。自分自身の動きに驚くことでもモロー反射が起きますが、それも防ぐことができるでしょう。直接、子供の肌に触れるものなので、肌触りや通気性などにこだわったものを選ぶと尚良いですね。
保育士のモロー反射の対策のためのポイントは?
保育士同士でモロー反射に関する勉強会を開く
原始反射は、子供によって頻度や動作の大きさなど、さまざまな違いがあることでしょう。ですから、原始反射に関しての勉強会を行っておくことが有効です。このあと触れますが、原始反射と区別がつきにくい疾患もありますし、原始反射の重さによっては病院で診察を受けることを勧める必要もあるでしょう。勉強会ほど大それたものでなくても、お互いにどのような子供がいるか情報交換したり、新人保育士に対して教えたりすると良いですね。周囲と連携しながら、正しい知識を蓄えていくことが大切でしょう。
こまめな記録を心がける
また、子供の様子を記録しておくことも重要ですね。子供ひとりひとりの原始反射の特徴を記録しておくことで、変化や異変に気付きやすくなるでしょう。また、過去の経験や知識の蓄積によって、より適切な対応をしやすくなりますね。また上でも述べた勉強会などでの知識の共有もしやすくなるでしょう。さらには、保護者の方との会話や情報共有も行いやすくなり、保護者の方々へ信頼感や安心感を与えることもできますよね。こまめな記録は、保護者の方との関係性や連携にもつながっていくことでしょう。
モロー反射とその他の疾患の関係は?
点頭てんかん
モロー反射と混同されやすい、区別すべき疾患として点頭てんかんが挙げられるでしょう。一般的に点頭てんかんは、1歳未満の子供に発症のリスクがあるとされていて、予後不良の危険性もあるとされているほどの疾患です。主に、脳機能に重度の障害を抱えていることで起きるてんかんですね。突然、両手を振り上げたり、体を折り曲げて頭に力が入った丸まるような動きをしたりします。症状自体を見るとモロー反射と区別がつきにくく、放置されてしまうこともあるようですね。放置すると発達が止まったり、遅れたりする可能性もあります。点頭てんかんの場合は数秒で治まり何事もないかのようにするのも特徴の一つで、少しでも異変を感じた場合には、速やかな受診が必要となるでしょう。
脳性麻痺
モロー反射がきっかけで判明する疾患として、脳性麻痺が挙げられるでしょう。胎児の時期、もしくは生後4週間程度の間に赤ちゃんの脳に損傷が起きたことによって発症します。症状は、体が反り返ったり、手足がこわばったりします。また、運動機能の発達が著しいことも特徴の一つで、モロー反射などの原始反射が本来の消失時期を越えても表れ続けることがありますね。たいてい、モロー反射は4ヶ月ほどで消失しますが、発達の具合によって変わるので過度に神経質になる必要はありません。ただし、モロー反射が1年以上続くなどのケースでは脳性麻痺に早く気づくきっかけにもなるので、病院で診察してもらうと良いでしょう。
核黄疸
モロー反射が全くなかったり、あるにしても極めて微弱なものである場合に考えられる疾患が核黄疸です。核黄疸は胎児である際に、母親の血液中のビリルビンという、黄色の色素の量が多くなることによって赤ちゃんの脳が損傷してしまうという疾患のことです。核黄疸を発症していると、筋肉の緊張が弱かったり元気がなかったりするという特徴もありますね。筋肉の緊張が弱いことによって、モロー反射も自然と弱くなったり、もしくは全く起こらなかったりします。これらの特徴に当てはまると感じた際には、すぐに病院を受診するべきでしょう。
腕神経叢麻痺
腕神経叢麻痺も、モロー反射が判別の一つの指標となる疾患です。腕神経叢麻痺は、赤ちゃんが産まれてくる際に産道が狭いことで首と手をつなぐ神経が引っ張られ、損傷している状態のことを指します。母親の骨盤が狭かったり、赤ちゃん自体の体が大きい際に起きやすい疾患と言えるでしょう。腕神経叢麻痺を患っている赤ちゃんの場合、本来、左右対称に腕が上がるモロー反射の腕の上がり方が左右非対称になります。モロー反射を見守っていると、比較的見つけやすく、判別しやすい疾患とも言えますね。たいてい、生後間も無く回復していきますが、長引くと手術が必要になることがあったり、機能障害が残ることもあったりするので、まずは病院での受診をおすすめします。
原始反射とは
自動歩行
モロー反射の他にもさまざまな原始反射がありますが、その一つとして自動歩行が挙げられます。自動歩行は歩行反射とも呼ばれているものですね。自動歩行は、足の裏が平らな面に触れた際に見せる、足を前後に出して歩き出しているような動作のことです。自動歩行は、出生後からすぐに見られるもので、たいてい2~3ヶ月ほどで消失します。新生児の腋の下を支えて、起立させて足を床をはじめとする平面に触れさせると見られるでしょう。
哺乳反射
哺乳反射も原始反射の一つで、赤ちゃんが口の中に入ってきたものを吸うという動作です。この哺乳反射は、出生後からすぐに見られるもので、たいてい半年ほどで消失します。哺乳反射は、いくつかの動作をまとめた総称のようなもので、探索反射、捕捉反射、吸啜反射に分かれています。探索反射は、ものが唇に触れた際に触れたものを探すように首を左右上下に回す動作。捕捉反射は、ものが唇に触れた際に唇や舌を使ってふれたものを捕捉しようとする動作。最後に吸啜反射は、ものを咥えた際に舌をなめらかに動かして吸う動作ですね。
把握反射
把握反射は、赤ちゃんの手足に刺激が加わった際に見せる、握るような仕草です。詳しくは、赤ちゃんの手のひらに何かが触れた際に握り返す動きのことを手掌把握反射と言います。また、足の裏の親指の付け根付近にある膨らみに何かが触れた際に、足の全ての指が内側に曲がる動きのことを足底把握反射と言いますね。手掌把握反射は生後すぐから3~4ヶ月程度で消失しますが、足底把握反射はより長い9~10ヶ月程度かけて消失してきますね。
バビンスキー反射
バビンスキー反射も原始反射の一つで、足の裏の小指側の外側をかかとからつま先まで強めに擦ると、その刺激によって足の親指が外側に曲がり、残りの指が扇状に広がるという反射動作です。バビンスキー徴候とも呼ばれていますね。これまで説明してきた原始反射と異なるのは、役割を果たしているわけではないという点でしょう。このバビンスキー反射は、出生後からすぐに見られるもので、1~2年程度かけて消失するもので、他の原始反射と比べても長い期間見られるものです。
まとめ
正しいモロー反射についての知識を得よう
いかがだったでしょうか。今回の記事ではモロー反射について解説してきました。モロー反射に加えて、その他の原始反射についても触れましたね。赤ちゃん特有の動作で、実際に目にすると驚くという方も多いでしょう。周囲の大人としても悩みや不安にもつながりやすいものですが、情報共有や情報収集を行って、正しい知識を身につけることが重要ですね。また、特にモロー反射が激しい時の対策などにも触れたので、ぜひ活用してみてください。