潜在保育士とは?【人数・補助金・多い・復帰支援】

皆さんは”潜在保育士”という言葉を知っていますか?潜在保育士は、保育士の人手不足解消へ繋がると期待されている存在です。今回は、そもそも潜在保育士とはどんな人なのかや、潜在保育士への復職支援など、潜在保育士について詳しく解説します。潜在保育士について知らないという人や、自分自身が潜在保育士だけど復職するには自信がないという人は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。

潜在保育士とは?

保育士資格を持ちながらも保育士として働いていない人

潜在保育士とは、保育士資格を持ちながらも、保育士として働いていない人のことを指します。潜在保育士には2つのパターンがあります。1つ目は、一度保育士として就職後、他業種に転職した人や現在無職の人。2つ目は、保育士資格は取ったけれど、保育士としては勤務せず、他業種に就職した人です。どちらのパターンでも、潜在保育士と言えるでしょう。現在大きな問題となっている待機児童問題解決に、潜在保育士の力が期待されています。

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潜在保育士の現状

保育士登録数増加に伴い潜在保育士も増加

出典:「令和4年度版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-

保育士として登録されている人は、日本全国に約167万人います。その中で保育施設等で従事している人は約64万人。つまり、約103万人は潜在保育士となってしまっています。グラフからもわかるように、保育士登録者数が年々増加するにつれて、潜在保育士の数も年々増加しているのが現状です。
※「令和4年度版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-」を参考

潜在保育士が”潜在”してしまう理由

賃金

潜在保育士が”潜在”してしまう理由には様々な要因があります。その中でも大きな原因として、賃金が満足のいくものでないことがあげられます。令和5年に厚生労働省が行った調査※1によると、保育士の平均月収は約27万円でした。全職種の平均月収が約32万円※2のため、保育士の賃金は低いと言えるでしょう。2022年2月に保育士の給料引き上げが行われましたが、実際にはまだ満足のいくものにはなっていないのが現状のようです。
※1「令和5年賃金構造基本統計調査『職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)』」厚生労働省
※2「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」厚生労働省
保育士の給料引き上げに関しては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

仕事量

保育士の仕事量が多いことも、潜在保育士が”潜在”してしまう理由のひとつです。通常の保育業務に加え、日誌や連絡帳の記入などの事務作業もこなしているのが保育士。さらに行事の企画や製作物の作成など、仕事量は膨大です。そのため、サービス残業や持ち帰り作業など、勤務時間外に仕事をしている保育士が多くいるのが現状です。このような労働環境ではワークライフバランスを保つのは難しく、保育士が保育現場から離職してしまう理由と言えるでしょう。

職場環境

職場環境により精神的な負担を感じ、離職してしまう人も多いのが保育士です。働くうえで、職場の人間関係や環境を重視する人も多いでしょう。女性が多い職場にある独特の空気感や、保護者からの意見など、気を張る場面が多く、負担を感じてしまうことが多いようです。特に保護者対応に関しては、園への信用問題にも関わるため、より神経を使う場面が多いでしょう。また、同じクラスを担当する他の保育士との相性が悪く、離職してしまうケースもあります。

自身の体力への不安

子供たちを抱っこしたり一緒に遊んだりと、保育士として働いていると体力を使う場面が多くあります。また、保育園の施設や備品は子供たちに合わせた大きさとなっているため、かがんだり膝立ちになったりと、足腰の負担になることもあるでしょう。子供たちとコミュニケーションを取るときも目線を低くする必要があります。潜在保育士の中には40~50代の人も多く、自身の体力への不安が復職への大きなハードルとなっているようです。

家庭と仕事の両立が難しい

家庭と仕事の両立が難しいことも、潜在保育士が復職に踏み切れない理由のひとつです。保育士は朝早くから夜まで働いていることが多く、自分の子供との時間が十分に取れないこともあるようです。また、保育現場では人手不足なことが多く、自分の子供の急な発熱やケガで仕事を早退するのが難しいこともあるでしょう。休暇や早退ができたとしても、職場に申し訳なさを感じ、退職を選ぶ人も多いようです。

ブランクがあることへの不安

保育士として働いていたけれど、退職してブランクがある人にとっては、今の保育と自分が働いていたころの保育との違いに不安を感じることもあるようです。最近では、保育園独自の取り組みをしている園が多かったり、ICTを取り入れた活動をしていたりと、以前とは保育環境が大きく変わっていますよね。自分の持っている知識や技術で足りるのか心配になり、ブランクが長くなるほど復職へのハードルが高くなっている傾向があります。

潜在保育士への復職支援

就職準備金貸付事業

潜在保育士の復職は、保育士の人手不足解消の力として期待されています。そのため、国や各自治体ではさまざまな復職支援を提供しています。1つ目は、就職準備金貸付事業です。この事業は、潜在保育士が保育園などの保育施設で勤務することが決まった場合に、就職準備金の貸付けを行う事業です。各自治体により異なりますが、東京都の場合は最大40万円の貸付けが可能ですよ。また、復職した保育士が2年以上保育施設で勤務すると返還免除となることもあります。ただし、貸付けを行う条件などがあるため、詳しい内容はお住いの地域のホームページなどで確認してみてくださいね。東京都の詳細はこちらのページで確認することができます。

未就学児をもつ潜在保育士への保育所復帰支援事業

2つ目は、未就学児をもつ潜在保育士への保育所復帰支援事業です。この事業は、小さい子供を持つ潜在保育士を対象に、子供を保育所に通わせる保育料の一部を貸付ける事業です。貸付額は東京都の場合、保育料の半分とし、月27000円が上限。また、就職準備金の貸付けと同様に、2年以上の勤務で返還が免除となるようです。東京都の詳細に関しては、こちらのページを確認してみてくださいね。

子供の預かり支援事業利用料金の一部貸付け

3つ目は、子供の預かり支援事業利用料金の一部貸付けです。この事業は、早朝や夜など子供を保育施設に預けることができない時間帯に、ベビーシッターなどを利用する料金を一部貸付けるものです。ベビーシッターが子供の面倒を見てくれていれば、安心して働くことができますね。この貸付金に関しても、上記二つと同じように、2年以上の勤務で返還が免除となります。貸付額は、子供の預かり支援に関する事業を利用した料金の半額で、年間123,000円以内となっています。東京都の詳細に関してはこちらのページで確認できますよ。

保育士・保育所支援センターの拡充

4つ目は、保育士・保育所支援センターの拡充です。保育士・保育所支援センターとは、各都道府県に設置されている、潜在保育士や現役保育士の支援や相談などを行う機関です。保育士・保育所支援センターには、保育士の復職に関する様々な情報がまとまっているため、積極的に利用すると良いでしょう。こちらの資料には、全国の保育士・保育所支援センターの連絡先が掲載されているため、お住いの地域のセンターをチェックしてみてくださいね。

離職保育士届出制度

5つ目は、離職保育士届出制度です。離職保育士届出制度とは、潜在保育士が届出して登録をすることで、保育に関する最新情報の閲覧や復職へのサポートを行ってもらえる、2017年4月から始まった制度です。基本的には、前述した保育士・保育所支援センターで登録することができます。保育スキル向上のための研修なども受けることができるため、少しでも保育士への復職を考えている人は登録しておくと良いでしょう。なお、保育士業務を行うときに必要な保育士登録とは異なるため、注意が必要です。

保育士就職支援セミナー・保育実習

6つ目は、保育士就職支援セミナー・保育実習です。国や各自治体、民間企業が開催する研修会で、保育に関する知識の思い出しや学び直しをすることができます。知識を講義で身に付けるだけでなく、実際に保育実習に参加することもできます。実際に保育士として働いていた期間からブランクがある人でも、安心して復職できるでしょう。東京都が行うセミナーでは、保育制度や子供の発達、乳幼児を引き付ける遊びの技術や就職活動についてなど、幅広く学ぶことができますよ。自分の知識に不安がある人は、お住いの地域でセミナーが開講されているかチェックして、参加してみてくださいね。

保育士対象の就職・転職フェア

7つ目は、保育士対象の就職・転職フェアです。就職・転職フェアとは、複数の企業や法人が1つの会場に集まり、その会社や園について説明するイベントです。様々な保育園の特徴をその場で比較することができるため、自分に合った園を見つけやすいでしょう。また、各法人の担当者にその場で対応してもらえるため、疑問をすぐに解消できます。直接話すことで、安心して就職活動を進めることができるでしょう。

潜在保育士が復職する方法

保育士専門の人材サービスを利用する

潜在保育士が復職する方法として、保育士専門の人材サービスを利用することがあげられます。保育士の需要が増加しているのに伴い、保育士を専門とした人材サービスも増えてきています。各保育園の情報を提供するだけでなく、就職活動のサポートをしてくれるところもあるようです。「保育士として復職したいけれど、何から始めれば良いのかわからない」という方は人材サービスを利用し、アドバイスしてもらうと良いでしょう。一般には公開されていない求人情報を得られることもありますよ。保育士くらぶを運営する株式会社アスカでも、保育士専門人材サービス”保育求人ガイド”を展開しています。日本全国の求人情報を掲載しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

希望の保育園を見学する

人材サービスを利用し、興味のある園が見つかったら、実際にその保育園を見学してみると良いでしょう。特に、離職した理由が職場の人間関係や労働環境にある方は、保育園の見学を強くおすすめします。サイトに掲載されている情報だけではわからない、園の雰囲気や子供たちの様子を把握することができますよ。また、実際に見学することで、自分が働いている姿をイメージでき、就職活動や働くことへのモチベーションアップにもなります。

まとめ

保育士の人材不足解消には潜在保育士の力が必要!

いかがでしたか?今回は、潜在保育士が潜在してしまう理由や復職する方法など、潜在保育士について詳しく解説しました。保育施設の人材不足や待機児童問題の解消には潜在保育士の力が必要です。また、国や自治体は潜在保育士に向けて多くの復職支援を提供しています。自分自身が潜在保育士の方は、これらの復職支援を上手に利用し、保育士として現場に復帰することを考えてみてはいかがでしょうか。

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保育士くらぶは保育士の転職キャリアサポートを行うアスカが運営しています。保育士くらぶ編集部のメンバーは元保育士や幼稚園教諭出身のメンバーを中心に「保育業界をもっと良くしたい!」という思いがあるメンバーが在籍し、日々執筆しています。保育士くらぶでは現役保育士さんが職場で活かすことが出来る、保育のノウハウやネタ、保育学生にとって必要な知識などを発信しています。 アスカは保育士の就職支援を行う会社です。1994年創業。全国で約10万名の保育士、幼稚園教諭の皆さまが登録しています。年間約1万名がアスカを通じて保育園や幼稚園、学童などの施設への就職を決めています。 保育士の求人情報は 【保育求人ガイド】 https://hoikukyuujin.com/ プロフィール入力で園からスカウトを受ける 【保育士スカウト】 https://www.hoikushiscout.com/