保育士の給料引き上げとは?処遇改善の内容について解説【いつ・背景・パート】

日本の将来を担う子供達の成長に関わる保育士。責任のある仕事で、やりがいもあり社会の中ではなくてはならない職業です。しかし、需要がありながら給料が低いという理由で保育士を辞めてしまう人も多いというのが現状です。近年、そのことが問題視され処遇の改善が進められているのはご存知ですか?今回は、給料引き上げに至った背景から処遇改善の内容について詳しく解説していきます。保育士の給料引き上げについて詳しく知りたい方は、是非参考にしてください。

保育士の給料引き上げとは

保育士の処遇改善を目的とした施策

保育士の給料引き上げとは、保育士の処遇改善を目的とした施策です。保育士の給料は2022年2月から、保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業により月額約9000円アップしています。これは、保育士を取り巻く厳しい環境を問題視した政府によるものです。さらに、保育士の給料を引き上げる施策には処遇改善等加算という制度が存在しています。処遇改善等加算は、ⅠからⅢまで存在し、どれも違った形で保育士の給料アップを後押ししています。この後、処遇改善等加算についても詳しく解説していきます。

保育士くらぶ

保育士の給料引き上げが進む背景

給料の安さ

保育士の給料引き上げが進む背景には、給料の安さが挙げられます。内閣府の調査によると、2017年時点でフルタイムの保育士の全国平均月収は約23万円でした。保育士は、子供を見守り命を預かるという責任重大なお仕事。しかし、割に合わない給料により保育士を続けたくても続けられず、離職してしまう保育士が増えてしまいました。このことが問題視され、給料の見直しと引き上げが検討されることとなりました。

離職率の増加

次に挙げられるのは、保育士の離職率の増加です。保育士は他の職種と比べて離職率が高く、その主な理由として職場の人間関係や給料が安い、仕事量が多いということが挙げられています。仕事量に合わない給料だけでなく、保育園内の人間関係でも苦労している保育士さんが多いみたいですね。可愛い子供達の成長を間近で見守ることができ、子供の将来に大きく貢献できる保育士。しかし、それを上回るほどのストレスを感じ、保育士を辞めていく人も少なくはありません。

保育士の不足

そして、保育士不足も給料引き上げの背景にあります。現在、保育士の数は全国的に不足しており、厚生労働省のデータによると令和5年の保育士の有効求人倍率は全国で3.12倍という結果が示されています。有効求人倍率とは、求職者1人に示す求人の件数のことです。つまり、保育士の求職者1人あたりに約3件の求人があるということです。これは、多くの施設で保育士が不足しており、保育士を必要としているということになります。

保育士の処遇改善等加算Ⅰとは

保育士1人当たりの平均勤続年数によって加算率が上がる制度

ここからは、保育士の給料アップを後押しする制度である保育士の処遇改善等加算についてⅠからⅢまで解説していきます。まずは、処遇改善等加算Ⅰについてです。処遇改善等加算Ⅰとは、保育士1人当たりの平均勤続年数によって加算率が上がる制度です。この制度は、2015年に保育士の確保や保育士さんの資質の発展を目的として導入されました。加算の仕組みは、先述の通り保育士1人当たりの平均勤続年数によって上昇する仕組みで、基礎分の割合に賃金改善要件分の割合を加えて算出されます。賃金改善要件分とは、保育士さんに対する施設の賃金改善の取り組みに応じて行われる処遇改善のことです。

基礎分は平均勤続年数によって異なる

基礎分とは、それぞれの施設の保育士1人当たりの平均勤続年数によって加算率を上乗せする仕組みです。保育士1人1人の平均勤続年数は異なるので、対象となる全職員の勤続年数を合計して、対象となる職員数で割ります。そこで出た値が、施設の平均勤続年数として算出されます。加算の割合は、賃金に2%~12%の割合で加算されます。また、その加算額は昇給等に適切に割り当てるということが定められています。

非正規職員も対象

処遇改善等加算Ⅰの対象は、認可保育園などに勤める正規職員から、1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイトといった非正規職員も対象となっています。正規職員として働く保育士さんだけでなく、パートやアルバイトとして働く保育士さんと、幅広い範囲で制度が適用されていますね。これから保育園でパート・アルバイトとして働こうと思っている方で、自分はこの制度の対象外だと思っていた方も多いのではないでしょうか。自身への制度適用の有無を踏まえて、職場探しをしてみてると良いですよ。

キャリアアップに力を入れている施設に限定

処遇改善等加算Ⅰは、保育士さんに対して、キャリアアップに力を入れている施設が対象となる処遇改善ですので、注意が必要です。これをキャリアパス要件といいます。要件の内容は、役職や仕事内容等に応じた勤務条件・賃金体系の設定、職員の資質を発展させるための研修や周知などの実施です。要件を満たすことが出来なければ、賃金改善要件分より2%の減額となります。今、働く施設を探している保育士さんはこのことも踏まえて慎重に施設を選びましょう。

保育士の処遇改善等加算Ⅱとは

新たな役職を増設してキャリアアップの機会を設ける制度

次に、保育士の処遇改善等加算Ⅱについてです。処遇改善等加算Ⅱとは、新たな役職を増設してキャリアアップの機会を設ける制度です。かつて保育士の役職は、園長と主任保育士などといった役職しかなく、何年働き続けても役職に就任することが難しいためなかなか給料が上がらないという状況がありました。そこで、2017年に新たな役職を増設し、若手の保育士や中堅保育士のキャリアアップの機会を設け、給料アップを目指せる処遇改善等加算Ⅱを導入しました。これは、保育士の給料の低さを改善すると同時に、保育の質も向上させることが出来る制度のように感じますね。

非正規職員も対象

処遇改善等加算Ⅱの対象は、認可保育園などに勤める園長と主任保育士を除いた正規職員から1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイトなどの非正規職員も対象となっています。また、約3年から7年以上の保育士経験があり、以下のキャリアアップ研修を規定数修了することが必要になります。

・乳児保育
・幼児教育
・障害児保育
・食育・アレルギー
・保健衛生・安全対策
・保護者支援・子育て支援

これらの研修を1度修了すれば、転職や離職をしても生涯その効力を失うことはありません。

新たに増設された役職

職務分野別リーダー

ここで、処遇改善等加算Ⅱによって新たに増設された役職を紹介します。1つ目は、職務分野別リーダーです。これは、保育士の経験年数が約3年以上あることが条件になります。先に挙げた6つの研修のうち担当する分野の研修を修了し、発令があれば職務分野別リーダーにキャリアアップすることが出来ます。職務分野別リーダーの役職に就くと、現場で保育士として務めながら担当分野において他の保育士に指導やアドバイスを行うことが出来ます。

専門リーダー

2つ目は、専門リーダーです。これは、保育士の経験年数が約7年以上であり、先述した職務分野別リーダーを経験していることが条件になります。先に挙げた6つの研修のうち4つ以上の研修を修了し、発令があれば専門リーダーにキャリアアップすることが出来ます。専門リーダーの役職に就くと、豊富な専門知識に基づき、それぞれの成長過程で子どもの保育や食育、衛生管理などの分野においてリーダー的業務を行うことが出来ます。また、他の保育士に対してもアドバイスやサポートを行います。

副主任保育士

3つ目は、副主任保育士です。こちらも保育士の経験年数が約7年以上であり、先述した職務分野別リーダーを経験していることが条件になります。先に挙げた6つの研修のうち3つ以上の研修とマネジメント研修を修了し、発令があれは副主任保育士にキャリアアップすることが出来ます。副主任保育士は、若手・中堅保育士等と主任保育士の間の立場になります。内容は主に、主任保育士のサポートをしながら、新人の保育士や若手の保育士の育成などを行います。

保育士の処遇改善等加算Ⅲとは

給料の引き上げに必要な費用を補助する制度

そして、保育士の処遇改善等加算Ⅲについてです。処遇改善等加算Ⅲとは、給料の引き上げに必要な費用を補助する制度です。この制度の目的は、保育士の更なる待遇改善を目指すことにあります。この制度は、保育所等の処遇改善の中で最も新しく設定されたもので、賃金の継続的な引き上げ等に必要とする費用と位置づけられています。給料の引き上げのために国から費用が出るというのは心強いですね。

事業所・対象施設に勤務する全ての職員が対象

処遇改善等加算Ⅲの対象は、保育士や幼稚園教諭だけでなく施設の栄養士や調理師、事務職員などの対象の施設及び事業所に勤務する全ての職員が対象です。また、公立保育園で働く保育士さんも対象となります。パートやアルバイトなどの非正規職員も対象となりますが、延長保育や預かり保育などの通常保育業務以外のみに従事している職員は対象外となってしまうので、注意が必要になります。

処遇改善手当の支給が無い場合

支給対象施設が処遇改善手当の申請をしていない場合

処遇改善手当の支給がなされない場合も把握しておく必要があります。支給対象外の場合として挙げられるのは、支給対象施設が処遇改善手当の申請をしていない場合です。処遇改善手当を受けるためには、施設側が事前に処遇改善手当の申請手続きをしておく必要があります。国からの補助金は施設にまとめて振り込まれ、施設側が該当する職員に処遇改善手当を分配するためです。みなさんの働く施設で申請がなされているか確認してみましょう。

認可保育園で働いていない場合

また、認可保育園で働いていない場合も処遇改善手当の支給対象外となります。認可保育園とは、自治体の認可を受けた上で国の補助金で運営される保育園のことです。認可保育園、認定保育園、認定こども園、地域型保育事業以外の保育をおこなう施設の総称を認可外保育園といいます。そのため、院内保育園や居宅訪問型保育などの認可外保育園は処遇改善手当の支給がなされませんので、注意しましょう。

まとめ

保育士の処遇改善手当を理解してキャリアアップに役立てよう!

ここまで、保育士の給料引き上げについて解説してきましたが、いかがでしたか?保育士の給料は少し前と比べ、段々と改善されてきていることが分かりましたね。待遇が見直される中、処遇によって対象者が異なっていたり、経験年数や研修などといった条件があるものもありました。これらの条件をしっかりと把握して、給料アップが目指せる場合は転職も視野に入れてみてはいかがですか。処遇について理解した上で、環境を変えてキャリアアップを目指してみると、給料アップの近道になるかもしれません。

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保育士くらぶは保育士の転職キャリアサポートを行うアスカが運営しています。保育士くらぶ編集部のメンバーは元保育士や幼稚園教諭出身のメンバーを中心に「保育業界をもっと良くしたい!」という思いがあるメンバーが在籍し、日々執筆しています。保育士くらぶでは現役保育士さんが職場で活かすことが出来る、保育のノウハウやネタ、保育学生にとって必要な知識などを発信しています。 アスカは保育士の就職支援を行う会社です。1994年創業。全国で約10万名の保育士、幼稚園教諭の皆さまが登録しています。年間約1万名がアスカを通じて保育園や幼稚園、学童などの施設への就職を決めています。 保育士の求人情報は 【保育求人ガイド】 https://hoikukyuujin.com/ プロフィール入力で園からスカウトを受ける 【保育士スカウト】 https://www.hoikushiscout.com/