ソーシャルワークとは?【保育ソーシャルワーカー・役割・資格・相談例など】

ソーシャルワークという言葉を知っているでしょうか。いま社会で注目されている言葉で、人々が生活していく中で直面する課題を解決するために、制度や仕組みを変えていこうとする働きのことを指します。また保育ソーシャルワークという言葉も聞いたことがあるでしょうか。子供と保護者双方にとってより良い保育環境の実現に重要だとされているものです。この記事では、ソーシャルワークや保育ソーシャルワークのなり方や役割など広く説明していきます。

ソーシャルワークとは

困っている人に対して社会的なサービスなどを提供し相談を聞くこと

ソーシャルワークという言葉は、より良い社会の実現のために仕組みや制度を変え、整えるための相談やカウンセリングなどを行うことを指します。困っている人を助けるサービスやシステムはありますが、見つけられなかったり利用できなかったりすることもあるでしょう。そういった際に、困っている相談者の相談を聞いたり、解決できそうなサービスにつなげたりすることがソーシャルワーカーの仕事となります。

現在さまざまな分野で必要とされている

ソーシャルワーカーと一括りに言っても、働く場所や呼び方は多岐にわたります。病院などの医療機関において、心理的や経済的、社会的に悩んでいる患者やその家族が抱える問題に関する相談支援を行うソーシャルワーカー。こういった現場で働いているソーシャルワーカーを医療ソーシャルワーカーといい、医師や自治体などと連携しながら業務を進めています。学校などで児童が抱える問題に対して、家族や学校の先生と連携しながら相談支援を行ない、問題の解決を図っているソーシャルワーカー。こういったソーシャルワーカーはスクールソーシャルワーカーといいます。そして保育の現場で活躍するソーシャルワーカーがこの後下で述べていく保育ソーシャルワーカーです。

保育士くらぶ

保育ソーシャルワークとは?

保育の現場で求められる相談支援のこと

上で述べたソーシャルワ上で述べたソーシャルワークを保育の現場で請け負い、活躍している人を保育ソーシャルワーカーと呼びます。また、保育ソーシャルワーカーとは保育ソーシャルワークに関する専門的知識及び技術をもって、特別な配慮を必要とする子どもと保護者に対する支援をつかさどる者。これが日本保育ソーシャルワーク学会が定義する保育ソーシャルワーカーです。つまり保育の現場において、助けを必要としている子どもたちや家族の相談を受け、支援していく人ということになるでしょう。

保育の分野でカバーしきれない部分も対応できる

保育や幼児教育を真剣に行なっていく上で、避けることができないのが家庭の問題です。子ども達の1日は、保育園の中だけではなく、家庭で家族と過ごす時間も長いですよね。家庭内での問題に保育士が関わってくるシーンも少なくはないでしょう。しかし、保育士の方々はあくまでも保育や幼児教育の専門家であり、家庭問題に詳しかったりプロではありません。そういった際に保育ソーシャルワーカーがいることで、家庭問題の解決のサポートを行い保育の分野だけでカバーできない問題にも対応できるようになります。

なぜ保育ソーシャルワークが必要なのか?

さまざまな環境に置かれた子どもたちがいる

保育ソーシャルワーカーが必要とされる理由の一つには、子どもたちを取り巻いている環境の変化が挙げられるでしょう。現在、子どもたちの周囲の環境は多様化しており、次第に複雑になっていっています。その上支援を必要としているにもかかわらず、保育士さんでは対処できないことが多いのではないでしょうか。そしてだんだんと相談しづらくなってしまい、抱え込むことになってしまうケースが多いのが現状です。特に児童虐待やDVなど人に相談できないほどに深刻な問題を抱えていることもあり、早急な対応が必要な状況でしょう。

児童福祉法の改正も影響している

平成24年に施行された児童福祉法の改正によって、保育園にその地域全体の子育て支援をおこなっていくという役割が与えられました。これを地域子育て支援拠点事業といいます。こう言った役割を担う必要ができたことによって、保育ソーシャルワーカーが求められるようになりました。一つ一つの保育園からの観点だけでなく、保育園と地域が連携して地域の子育て支援環境を整えていくようになりました。この取り組みを行なっていく上で保育ソーシャルワーカーが非常に重要な役割を果たしていくことになります。

保育所保育指針の影響も

保育所保育指針にもソーシャルワークという言葉が使われるようになってきました。保育所保育指針の中には、保育士やその他専門性を有する職員が相応にソーシャルワーク機能を果たすことが必要だという旨記載されています。保育所や保育士がソーシャルワークに関する専門機関や専門職でないとしても、保育の現場においてその中心は保育士が担うべきだとしています。ソーシャルワークの原理や知識、技術などの理解を深め、援助していくべきだとも記載されていますね。こういったこともあり、実際に保育の現場において保育ソーシャルワーカーが欠かせないという意識が浸透し、重要視されているのでしょう。

保育ソーシャルワーカーになるには?

保育ソーシャルワーカーの資格がある

保育ソーシャルワーカーになるためには、日本ソーシャルワーク学会が開催している養成研修を受講する必要があります。詳細は下で述べますが、初級と中級、上級三つのレベルに分かれています。初級と中級に関しては、養成講座を受けることで資格が認定され、特に初級であれば比較的容易に資格を取得できるのでぜひ目指してみると良いでしょう。上級保育ソーシャルワーカーの資格のみ、実務の経験や学会での活動が必要になってくるので注意しましょう。

3段階に分かれた資格体系

学会認定資格である保育ソーシャルワーカーには三つの等級があります。保育ソーシャルワーカーに関する基本的な知識や技術を要していると得られるのが初級ソーシャルワーカーです。次に、初級保育ソーシャルワーカー以上に高度な専門的知識や技術を要していると得られるのが中級保育ソーシャルワーカー。最後に上級保育ソーシャルワーカーです。自身が高度な知識や技術を備えていることをもちろん求められます。ですがそれ以上に初級や中級保育ソーシャルワーカーに対して指導や相談の役割を担えることが必要となってきます。

実践的なスキルを身につけることも必要

保育ソーシャルワーカーとして働いていくのであれば、研修などで学んだ知識だけでなく、実践的なスキルを身につけることが必要になるでしょう。人間関係によって起こる問題に関する相談などは、学んだ知識だけで対応できないこともあります。保護者や子供たち、保育士の方々など多くの人との信頼関係を築くためのコミュニケーション能力が必須と言えるでしょう。加えて、小さな変化を見逃さないための観察力や広い視野も欠かせません。より親身に相談を聞くために、健康福祉や医療の知識を学んでいる人もいて、より学んでいこうという意識も必要になっていくでしょう。

子ども家庭福祉ソーシャルワーカーについて

2024年に開始予定の新たな資格

子供家庭福祉分野に専門性を持つ新たなソーシャルワーカーの資格の準備が厚生労働省の専門部会で進められています。現在、2024年の4月の開始を目指されているこの制度。子育て世帯を取り巻く多くの社会課題に対応するために、新設が目指されている状況です。こういった点からも保育ソーシャルワーカーが求められていることがわかりますね。実務や研修、試験の合格が必要になるとみられていて、取得は容易ではないかもしれませんがぜひ目指してみると良いでしょう。

子ども家庭福祉ソーシャルワーカーの活躍の場は広い

子ども家庭福祉ソーシャルワーカーは幅広い場所での活躍が期待されています。保育所などに限らず、児童相談所をはじめ、市区町村の虐待相談対応の部署。また、民間の児童養護施設や乳児院、児童家庭支援センターなど多くの場所で活躍していくことでしょう。特に児童福祉法によって、この資格が児童福祉司の任用資格として利用されるという点が非常に注目されています。児童相談所で働くための任用資格を拡大して、採用活動を進めている点からも必要とされている現状がわかるでしょう。

保育ソーシャルワーカーへの相談例

発達や成長度合いへの質問

保護者からの相談例として挙げられるものが子供の発達に関することです。子供の言葉の学習速度が遅かったり、集団行動が苦手だったりと子供の発達速度を悩んでいる親御さんたちは少なくありません。最近は発達障害という言葉が広く知られるようにもなり、より子供の発達に敏感になっていて相談を受けるケースが多いようです。実際にそういった診断を受ける場合もあるので専門性の高い対応を必要とされます。保護者の方々も子供たちも安心できるような支援方法を提供することが重要となるでしょう。

育児に関する悩み

保育ソーシャルワーカーへの相談例として育児に関する悩みも多くあります。子供と保育者の関係性や保育士への要望、どういった育児を行なっていけば良いのかなど、育児に関する幅広い相談を受けることになります。特に通っている保育施設への不信感や疑問、要望していいのかどうかなどは、いきなり直接保育士にぶつけることが難しいでしょう。そういった際に保護者の方々が頼ることができるのがが保育ソーシャルワーカーです。

家庭の事情や保護者自身の悩み

子供に関する直接的な悩みだけでなく、家庭や保護者自身の問題に関する相談も保育ソーシャルワーカーに寄せられることでしょう。家庭の経済面での困窮に関するものや、パートナーからのDVなど、間接的に子供たちへ大きな影響を与えていく問題に関する相談例も多いようです。また保護者からの相談に限らず、保育士が子供虐待の疑いなどに関する相談を受けるケースもあり、慎重かつスピーディーな対応を要することでしょう。家庭面や保護者自身に関する問題はとにかくデリケートなことが多いので、保育ソーシャルワーカーには高いスキルが必要とされるでしょう。

まとめ

支援を必要としている人の相談に乗ろう

いかがだったでしょうか。今回はソーシャルワーク、そして保育ソーシャルワークに焦点を当ててきました。現在保育の現場では保育ソーシャルワークは欠かせなくなっています。保育士として働いているだけでは対応できない問題にも対処できるのでやりがいも大きいでしょう。ソーシャルワーカーの方の支援を必要としている人は未だ多くいます。この記事を読んで、ソーシャルワークに興味を持った方はぜひ自分で調べてみたり、実際に資格を取得してみてください。

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