保育園でAEDを使った救命をしよう!【救急対応マニュアル・設置義務・未就学児・子供用パッド・事例】

保育園でいざという時、皆さんはAEDを使用することができますか?AEDは、心停止の人の救命に役立つ医療機器です。しかしながら、使い方が分からない人や、小さな子供へ使用することに抵抗を感じている人も多いのではないでしょうか。今回の記事では、小さな子供にも安心して処置が行えるように、子供や保育園に焦点を当てたAED使用に関する内容を取り上げています。また、そもそもAEDが保育園に無い場合や、導入するか迷っている場合にも役立つ情報を掲載しています。AEDの重要性を学び、正しく救命処置が行える保育士を目指しましょう!

保育園・幼稚園にAEDの設置義務はある?

設置義務はないが必要性はある

AEDは法律による設置義務が無いため、保育園や幼稚園においても設置義務といった決まりはありません(自治体によっては一部の施設に設置義務の条例を定めている場合もあります)。一方で、厚生労働省によるAEDの適正設置に関するガイドラインでは、設置が推奨される施設の一部に幼稚園が挙げられています。加えて、AEDの設置が考慮される施設でも、保育所・認定こども園は2番目に挙げられていますよ。義務はありませんが、子供の多い施設では事故が起こりやすいため、AEDを設置し保育士が使えるようになっておくのが安心ですね。

保育士くらぶ

保育園・幼稚園に特有なAEDのリスク

責任を問われて訴訟に発展するリスクがある

保育園におけるAEDは、子供の救命だけでなく、保育園側の立場を守る観点からも重要といえます。健康を損ないやすく、危険を回避する能力が低いと法的に判断される乳幼児の多い保育現場。事故発生の際には施設側の責任を問われ、訴訟に発展する事例も少なくありません。また訴訟に発展した際、基本的に裁判所は、以下のような判断を下しています。

保育所や幼稚園は園児に代わって危険を予測し、園児を保護する責任と安全配慮の注意義務がある。

突然園児が心停止になった場合、たとえ予測が困難であっても、保育士には適切な対処が求められるのです。子供の命を預かる保育現場では、自覚と責任を持って行動しましょう。

説明責任・保護責任とは

保育士として働く上で特に重要な2つの責任について解説します。

【説明責任】保育士が保護者に対して説明を行う責任のことです。
子供の健康と安全に関わる事項等について詳細な説明を行うことで、
保護者らが適切かつ円滑に保育園を利用できるようにします。
事故等の発生時には、発生理由や行った対処、未然防止の可能性等を詳しく説明しなくては
いけません。

【保護責任】老年者や幼年者のような保護を必要とする人の生命・身体を危険から守る責任のことです。保護者と保育園は子供の保育に関する契約を結んでいます。
そのため保育園は、安全な環境下における保育サービスの提供が求められる安全配慮義務
負っているのです。
安全配慮義務等を違反した場合には、保育園側が損害賠償責任を負うことになるため、
保育士は十分に把握しておきましょう。

訴訟の際に役立つAEDの機能

周囲の録音など証拠を残す機能

保育士や保育園には様々な責任があります。責任が多いということは、それだけ訴訟されるリスクも多いということです。しかしながらAEDの機能を活用することで、リスクを軽減したり、回避したりできる場合があります。例えば、前述したような説明責任・保護責任が問われるリスク。AEDを使用したことに関して刑事告訴をされる事態となった場合、混乱しやすい突然の事故状況を思い出して説明するのは非常に困難でしょう。そこで、証拠を残すために役立つAEDの機能をご紹介します。

・AED作動中の周囲の音を録音する(1件あたり最長15分間、最大4件)
・不測の事態に備えて確認したセルフテストデータを残す(最大3,000件)
・心電図のデータを残す(5秒、最大1,000件)

上記の機能は、AED カーディアックレスキュー RQ-5000 という機種のものになります。実は現在販売されているAEDには、録音機能が備わっていないタイプも多いようです。また録音可能であっても、別途オプションが必要という場合も。導入前に予め機能を確認するようにしましょう。

子供のAEDに関する事例

駅伝大会でAEDを使用した救命が行われた事例

2015年1月、山口県萩市で開催された駅伝大会の中継所にて、60代の男性ランナーが突如倒れました。そのとき偶然その場面に遭遇したのは、当時中学生の的場さんでした。彼は、半開きの目のまま仰向けに倒れた男性を発見し、胸が全く動いていない等の明らかに不自然な状況から、すぐに心肺停止を疑いました。AEDの必要性に気が付いたものの、当時の現場にはない様子であったことをいち早く察した的場さん。すぐに「スポーツ施設ならあるかもしれない」と近くのフィットネスクラブへ向かいました。AEDを手にした的場さんは再び現場へ。倒れた男性へ心臓マッサージを行っていた居合わせた医師たちにAEDを渡し、3回の電気ショックを行った後に救急車内で男性の心臓は動き出しました。当時居合わせた医師の1人によると、「心臓マッサージをしても反応がなかったため、あとの手段はAEDかなと思っていた」とのこと。また、的場さんは「半年前に学校でAEDの授業を受けたことがとっさの判断につながった」と話しています。

小学校でAEDによる処置が施されずに亡くなった事例

2011年9月、さいたま市の桐田明日香さん(当時小学6年生)は、駅伝の練習中に校庭で突然心臓発作を起こし、倒れました。のちの調査によると、倒れた直後すぐにAEDによる処置が必要だった模様。しかしながら、当時現場にいた複数人の教師は、桐田さんの様子から呼吸と脈があると思い込んでしまったために、AEDの必要性に気が付きませんでした。救急車の到着までAEDが使用されなかった結果、倒れた翌日に桐田さんは死亡。桐田さんの死をきっかけにさいたま市教育委員会では、2012年にASUKAモデルと名付けた教員向けの救急対応のマニュアルを作成しました。今回ご紹介した2つの事例から、第一発見者となりうる子供達にAEDの重要性を教えることがいかに大切かが分かりますね。

乳児の一次救命処置の手順

胸骨圧迫と人工呼吸を行う

【全年齢共通 胸骨圧迫(心臓マッサージ)に入るまでの手順】

①反応の有無を確認
②応答やしぐさがない場合、119番通報とAEDの手配
③胸と腹部の動きから呼吸を確認
④正常な呼吸がない(しゃくりあげるような不規則な呼吸の場合を含む)場合、ただちに胸骨圧迫

【乳児(1歳未満)へ胸骨圧迫を行う場合の方法】

押す位置:両乳頭部を結ぶ線の少し足側を目安とする胸の真ん中
強さ:2本指で、胸の厚みの約3分の1が沈む深さまで
回数や速さ:胸骨圧迫を1分間あたり100~120回のテンポで30回、人工呼吸を1回に1秒かけて2回。
このセットを絶え間なく繰り返す。
※人工呼吸が可能な場合は、片手で傷病者の額を押さえつつ、もう一方の手の指先を顎の先端に当てて持ち上げ、気道を確保してから行う

乳児以上(1歳以上16歳未満)の場合

【乳児以上(1歳以上16歳未満)へ胸骨圧迫を行う場合の方法】

押す位置:胸の中央
強さ:体格が大きければ両腕で、少なくとも5cmは沈む深さまで(成人同様)
回数や速さ:全年齢共通。乳児同様に胸骨圧迫30回、人工呼吸2回のセットを絶え間なく繰り返す
※人工呼吸ができる場合は、傷病者の気道を確保して行う
※窒息、溺水、小児の心停止の場合は、人工呼吸を組み合わせることが望ましいとされる

AEDを使用する

使い方

AEDは、心停止した心臓に電気ショックを与え、拍動を正常に戻す救命器具です。胸骨圧迫や人工呼吸を行いながらAEDの到着を待ち、到着したら電源を入れて電極パッドを装着し、音声ガイドに従いましょう(ふたを開けると電源が入る機種もある)。また電気ショック後はただちに心肺蘇生(胸骨圧迫,人工呼吸)を再開しましょう。

【注意点】
除細動ボタンを押すときは、手振りや掛け声によって、傷病者から離れるように周囲の人々へ必ず指示を出しましょう。

未就学児用パッド・未就学児用モードがある場合

傷病者が未就学児(乳児を含む)と推測される場合に使用しましょう。使用手順は、小学生~大人用(旧:成人用)のものと同様です。

【注意点】
未就学児用パッド・モードは、これまで小児用パッド・モードの名称で販売されていました。
そのため、古い表記のままで設置されている場合があります。
使用時の混乱を防ぐためにも、身近なAEDについては事前によく知っておきましょう。

未就学児用パッド・未就学児用モードがない場合

小学生~大人用パッド、小学生~大人用モードを使用しましょう。

【注意点】
〇小学生~大人用パッド・モードは、これまで成人用パッド・モードの名称で販売されていました。
古い表記のままで設置されている場合があるため、こちらも事前に把握しておくようにしましょう。

〇小学生~大人用パッドを用いて未就学児用モードを使用する場合は、未就学児用パッドよりもサイズが大きいため、パッド同士が触れ合ってしまわぬよう注意しましょう。

AEDでの救命に役立つ知識

死戦期呼吸

死戦期呼吸とは、AEDが必要な状態の傷病者に見られる、しゃくりあげるような不規則な呼吸のことです。下顎呼吸やあえぎ呼吸が死戦期呼吸にあたり、一見呼吸をしているように見えてしまうという非常に危険な要素を含んでいます。実際、死戦期呼吸を知らなかったことが原因で、AEDの使用がなされずに命を落としたケースも複数存在します(前述した桐田さんの死亡事例がその一例)。死戦期呼吸について知り、判断を誤らないようにしましょう。

AEDは最後まではずさない

AEDを用いて電気ショックを与えることで、傷病者の息が回復したように見える場合があります。しかしながら、死戦期呼吸によって呼吸があるように見えている可能性の存在を忘れてはいけません。死戦期呼吸状態の傷病者をそのまま放置すれば、命を落とすリスクが非常に高まります。自らの判断に頼らず、心電図を測定して胸骨圧迫の有無を判断してくれるAEDの指示に従うようにしましょう。

AEDの適正な配置場所

AEDは、いざという時すぐに持ち出せる場所へ設置することが重要です。厚生労働省によるAEDの適正配置に関するガイドラインには、AEDを設置する際に考慮すべき事項が示されています。大まかには以下の通りです。

・心停止から5分以内に電気ショックが可能な配置
・分かりやすい場所
・誰もがアクセスできる
・心停止のリスクがある場所の近くへの配置
・壊れにくく管理しやすい環境への配置

実際に目を通して、設置場所の見直しなどを行いましょう。

耐用年数や保障期間が長いものを選ぶ

AEDの耐用年数は未使用であっても5~7年、法定耐用年数は4年となっています。メーカーの耐用年数は約7年、保証期間は5年が一般的です。定期的な交換が必要となるAEDのパッドやバッテリー等の消耗品は、なるべくコストを抑えたいというところも多いのではないでしょうか。AEDを購入する際には、耐用年数や保証年数の期間内でのトータルコストを比較して選ぶとよいでしょう。

子供に対応した機器を選ぶ

保育園や幼稚園には子供が多くいるため、子供に対応した機器やオプション付きのAEDを導入することが望ましいです。スイッチ1つで切り替えが可能なタイプや、別売りの子供用オプション品を購入する必要があるものなど、子供対応のAED機器にも様々な種類があります。子供対応の条件に加えて、設置場所や用途なども複数の販売店にしっかり伝え、各社から見積もりを集めて検討しましょう。

リース(レンタル)を選ぶ場合が多い

AEDを購入する場合、初期費用や消耗品の購入、数年ごとの買い替えなどに高額な料金がかかります。そのため、月々一定支払いによりリース(レンタル)を行う施設が多いようです。長期間利用時のトータルコストはかかりますが、消耗品の交換費用はかからず、初期費用を抑えることができる等の利点があります。また、メンテナンス相談窓口を利用することができるため、安心して利用できそうですね。

保育士間で救命救急講習を行う

▲AEDの使い方の詳細が分かる動画はこちら

https://youtu.be/eOzVcV6CyLI

▲保育現場での救急訓練を紹介している動画はこちら

子供の一次救命処置の手順やAEDの使用方法等は、知識を頭に入れるだけでなく、現場での実践的な練習を通して確実に習得していくことが重要になります。緊急時に落ち着いて処置が行えるように、保育士間で積極的に講習や訓練を行いましょう。詳細を分かりやすく解説している日本赤十字社の動画や、保育現場での救急訓練を紹介している動画を載せているので、参考にしてみてくださいね!

まとめ

AEDを積極的に導入して子供の命を守ろう

今回の記事では、保育現場でのAED使用について説明してきました。AEDの必要性は理解できましたか?緊急時の保育現場では、保育士間や子供達とのチームワークが救命のカギとなります。保育士が救命処置を行えるようになることに加えて、第一発見者になりうる子供達にも情報伝達の必要性をよく伝えるとよいですね。救える命を落とさないためにも、AEDを積極的に活用していきましょう!

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