身体的障害をもつ子供にできる支援とは?【等級・身体障害手帳・メリット・種類・発達支援】

身体的障害をもつ子供は、日本においてどのような支援を受けることができるのでしょうか。今回の記事では、身体的障害をもつ子供に対して行われている発達支援や、その他の福祉サービスについて詳しく解説していきます。また身体的障害に関する基本的な知識や、身体的障害をもつ子供と関わる際のポイントについても紹介していきますよ。身近に身体的障害を抱える子供がいる方や、療育の仕事に興味のある方はぜひこの記事をチェックしてください。

身体的障害のある子供はどれくらいる?

日本国内に7万人程度

令和4年度の調査において、日本国内に約7.2万人いると推計されている身体障害児(18歳未満)。身体的障害をもつ子供はそれぞれ生活上での困難を抱えており、社会的な支援が必要不可欠です。また身体的障害には多くの種類があり、障害の種類によって子供が抱える問題は大きく異なります。身体的障害の種類については、次の段落で紹介していきますよ。

身体障害児の数(推計)
在宅者数6.8万人
施設入所者数0.4万人
合計7.2万人

‐参考資料
在宅者:厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査」(2016)
施設入所者:厚生労働省「社会福祉施設等調査」(2018)
内閣府「障害者の状況」(2022) 

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身体的障害の種類

視覚障害

身体障害者福祉法において、身体障害は5つの種類に分類されています。初めに視覚障害について紹介しますよ。視覚障害は、その名の通り眼の障害指し、視力の障害や視野の障害、色覚の障害などに分類されます。また視覚障害は以下のように呼び分けられます。

視覚障害の呼び分け
全盲視力が全くない状態(光も見えない)
弱視視力がほとんどない状態
視野狭窄視野が狭い状態
色覚異常色が通常と異なって見える状態

聴覚・平衡機能障害

聴覚・平衡機能障害は、どちらも耳に関連する障害。一方の平衡機能は体のバランスをとるための機能で、この機能が障害されると立ったり歩いたりすることが難しくなります。この機能は平衡機能は耳にある三半規管と関連していると考えられており、同じ耳の障害である聴覚障害とまとめられています。またもう一方の聴覚障害は以下のように分類されますよ。

音声・言語・そしゃく機能障害

音声・言語・そしゃく機能障害は、発声や飲食に関連する障害です。いずれも口元に関連する障害ですが、発声器官の物理的損傷の他に脳機能が関連している場合もあります。音声・言語・そしゃく機能障害の例は以下の通りです。

  • 音声機能の喪失…無喉頭、後頭部外傷による損失、発声筋麻痺による音声機能喪失
  • 言語機能の喪失…ろうあ、聴あ、失語症
  • そしゃく機能障害…筋疾患や口内の欠損等によってそしゃくが難しい状態

肢体不自由

肢体不自由は上肢や下肢、体幹等の機能に障害があり、日常生活で必要な動作が困難になった状態。このうち上肢・下肢の障害には、上肢全般や下肢全般の機能に関する障害の他に、手足や指の機能の障害も含まれます。また体幹の機能の障害では、立ったり座ったりして体制を維持することや、歩くことが困難になります。このほかに不随意運動や失調による運動機能の喪失も肢体不自由に分類されますよ。

内臓機能などの疾患による内部障害

内臓機能などの疾患による内部障害は、内臓機能の障害やHIVによる免疫機能の障害により生活が困難になった状態を指します。見えない障害と呼ばれることもあり、外見ではわかりづらいために配慮を得ることが難しい障害でもあります。また内部障害には以下のような種類があります。

  • 心臓機能障害
  • 腎臓機能障害
  • 呼吸器機能障害
  • 膀胱・直腸機能障害
  • 小腸機能障害
  • 肝臓機能障害
  • ヒト免疫不全ウイルス(HVI)による免疫機能障害

身体的障害の等級【身体障害等級】

障害の重さによって1~7級に分けられる

身体障害者手帳における身体的障害の等級は、障害の重さによって1級から7級に分類されます。身体障害者手帳の等級が1に近いほど障害が重度であることを表し、より手厚い福祉サービスが提供されますよ。またこの等級は、身体障害者手帳を申請する際に審査の過程で決定されます。等級の判定は都道府県知事によって指定された、指定医によって行われますよ。障害が1~7級に当てはまらない場合でも、いくつかの障害を持っている場合は身体障害者手帳が交付されることもあります。

子供は身体障害者手帳をもらえる?

0歳の子供からもらえる

身体障害者手帳は0歳から交付してもらうことができます。一般的には、2~3歳で身体障害者手帳を取得することが多いようです。一方で日本においては、障害の有無にかからず医療費2割負担などの福祉サービスが提供されています。また子供の医療費無償化など、市町村によっても手厚い支援が行われていますよ。このため子供に先天的な身体障害があっても、身体障害者手帳の取得に焦る必要はありません。

身体障害者手帳の取得で受けらる福祉サービス

医療費の助成や公共料金の割引

身体障害者手帳の取得によって、医療費の助成や公共料金の割引といった福祉サービスを受けることができます。娯楽施設の入場料割引など、特に子供にとってうれしいサービスもありますよ。

身体障害者手帳の取得によって受けられるサービス(一部)
・医療費の助成
・公共料金や携帯電話料金の割引
・補装具にかかる費用の助成
・所得税・住民税の割引
・運賃・通行料の割引
・娯楽施設の入場料の割引(子供料金の半額など)

身体的障害のある子供への発達支援

児童発達支援・医療型児童発達支援

児童発達支援は未就学児を対象とした通所型の発達支援。児童発達支援に医療的なサービスを付属させた医療型児童発達支援も用意されています。また児童発達支援を提供する施設には児童発達支援センターと児童発達支援事業所の2種類があり、それぞれ以下のような特徴がありますよ。

児童発達支援センター
・地域の中心となる療育施設で、比較的大規模
・児童発達支援の他に、家族支援や保育所等訪問を提供
児童発達支援事業所
・比較的小規模で、施設数が多い

放課後等デイサービス

放課後等デイサービスは、主に6歳から18歳までの就学児を対象とした通所型の発達支援施設。放課後や長期休暇など、授業のない時間帯に子供を預かることを目的としています。児童発達支援に比べて対象年齢が高いため、学習支援や心理教育をはじめとした多様なプログラムが実施されていますよ。

放課後等デイサービスのプログラム(例)
・パソコンを用いたITプログラム
・クッキングプログラム
・運動プログラム
・心理教育プログラム(ソーシャルスキルトレーニングなど)

居宅訪問型児童発達支援

居宅訪問型児童発達支援は、外出が非常に難しい障害児を対象とした訪問型の発達支援。理学療法士や看護師、保育士といった資格をもつ訪問支援員が、障害児の自宅で支援を行います。居宅訪問型児童発達支援の対象となる子供の例としては以下が挙げられます。

居宅訪問型児童発達支援の対象(例)
・重度の障害をもつ子供
・人工呼吸器などによる医療的なケアが必要な子供
・感染症リスクが高い子供

障害児入所支援

障害児入所支援は、主に18歳未満の子供を対象とした入所型の発達支援。障害によって自宅で生活することが困難な場合に、子供を専門スタッフの常駐する入所施設に預けることができますよ。また障害児入所支援は、医療型障害児入所支援と福祉型障害児入所支援の2種類に分けられます。肢体不自由や重症心身障害を持つ子供は、治療を並行できる医療型障害児入所支援を利用することが多いようです。障害児入所支援における具体的な支援内容は以下のようになっていますよ

障害児入所支援の内容
・食事や排せつなど日常生活を営むための訓練
・集団でのレクリエーション
・コミュニケーション支援

発達支援にかかる費用は?

世帯収入によって異なる

障害児施設給付制度により、上記の発達支援は自己負担1割で受けることができます。その上で利用者負担額には上限があり、具体的な上限額は世帯収入によって決定されますよ。例えば年間所得が840円万円までの世帯では、負担上限4600円が適応されます。

利用者負担の上限金額(例外あり)

生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯 0円
市町村民税課税世帯(前年度の年間所得が840万円までの世帯) 4600円
市町村民税課税世帯(前年度の年間所得が890万円以上の世帯) 37200円

身体的障害のある子供と関わる際のポイント

子供の持つ障害について正しく把握する

身体的障害をもつ子供と関わる際には、初めに子供の持つ障害について正しく把握することが大切です。障害の種類が同じでも、障害の程度や症状は様々。また身体的障害を持つ子供が、精神疾患などのその他の障害を抱えているケースも少なくありません。このため個人に必要な支援や、適切な対応を見つけるためには障害に対する正しい理解が必要不可欠です。一方障害における個人差をとらえるのは容易なことではありません。保護者の方は、医療機関や児童発達支援センターなどにおいて専門家に意見を求めるのが良いでしょう。

できることに注目して支援を行う

発達支援においては、子供のできることに注目することが大切です。子供を心配するあまり、子供のできることにまで制限をかけないようにしましょう。子供の持つたくさんの能力に目をむけることで子供の将来の可能性を広げることができますよ。また子供の得意不得意だけではなく、子供が楽しめるかどうかや興味を持っているかどうかに着目することも大切です。子供が自ら進んで取り組める分野が見つかったときには、その分野のコミュニティや習い事への参加を提案してみるのもいいですね。

情緒的な関わりに重点を置く

身体的障害の子供と関わる際には、情緒的な関わりに重点を置きましょう。またこの際、重要となるのは保護者への心理的サポートです。障害児をもつ保護者の中には、子供の持つ障害を自分のせいだと思い込んだり、周囲から心無い声を受けたりして精神的に疲弊してしまう人もいます。保護者のストレスを低減し精神的安定を保つことで、親子間の情緒的な関わりを改善していくことができますよ。発達支援センターをはじめとした多くの療育施設では、障害児をもつ親への支援であるペアレントトレーニングが行われています。保護者の方は子供のためにも、こういった支援を利用して自らの精神的ケアを忘れないようにしましょう。

まとめ

身体的障害を持つ子供を適切な支援に繋げよう!

今回の記事では身体的障害の種類や、身体的障害を持つ子供に対して行える支援について紹介しました。発達支援や障害者手帳取得による福祉サービスなど、身体的障害を持つ子供が利用できる支援は非常に多くあります。身体的障害を持つ子供が身近にいる場合は、ぜひこうした福祉サービスに繋げましょう。また療育求人ガイドでは療育に関連した記事を数多く掲載しています。放課後等デイサービスペアレントトレーニングについても紹介していますので、是非こちらも確認してくださいね。

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