感覚統合とは?子供の”できる”を増やし自己成長に繋げよう【感覚統合療法・二次問題・発達障害・チェックシート】

自分の体を把握し、周囲の状況に応じた行動をとることができるように感覚を整理していく感覚統合。子供が集団生活に対して苦手意識を持っていたり、不器用さが大きく目立ってきたりすると心配になりますよね。感覚統合は、そういった子供の集団生活や集中力において重要な役割を果たしています。そこで今回は、感覚統合とはいったい何なのか、子供の感覚統合が上手くできていない状態について解説します。感覚統合療法や発達障害との関係、チェックシートも紹介しているのでぜひ参考にしてくださいね。

感覚統合とは?

脳でたくさんの刺激を整理すること

人は普段から、視覚や聴覚などを通してたくさんの刺激を受けて生活していますよね。刺激を感じる感覚の中には、五感に加えて筋肉の伸び縮みや関節の動きに関わる感覚、体のスピードに関する感覚といった合計7つの感覚があります。感覚統合とは、こういった生活におけるさまざまな感覚を脳で分類し、整理することを言います。感覚統合が上手くいっていると、綺麗に紙を折ることができたり、マスに収まるように文字を書くことができます。

状況に応じた感覚の調整や注意ができること

人は、感覚統合を行うことで様々な体に入ってくる感覚に応じて、体の力を調整し注意ができるようになります。周囲の状況や接する人に応じて、コミュニケーションを問題なく行えることもこれに含まれるでしょう。自分の体を動かしたり、道具を使って何かを作ったり無意識のうちに状況に適した行動をとることができるのは、感覚統合によって感覚を上手く整理しているからです。感覚統合が上手くいっていないと、刺激に対して適切に対応することができず、騒音に対しても敏感になることがあるでしょう。

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感覚統合に含まれる感覚の種類

触覚:皮膚を通じて感じる感覚

感覚統合に含まれる感覚は、味覚や嗅覚、視覚などといったよく知られている感覚以外にもいくつかあります。触覚は、皮膚を通じて刺激を感じ、危険を察知したり、痛みを感じる感覚です。熱い、寒いといった感覚も触覚の一部ですね。

【触覚の4つの働き】

①情緒の安定
 子供を抱っこされたり、背中をさすったりして安心させる働き。
②防衛
 熱い物に触れた瞬間に手を離すことや、虫を払い除けることなどして防衛する働き。
③識別
 素材の違うものを触って識別する働き。
④ボディーイメージの発達促進
 自分の体の輪郭や大きさを把握する働き。天井が低いと身をかがめる、狭い所を通る時は細めるといった行動ができる。

固有受容覚:体の動きや力をコントロールする感覚

自分の体の動きや力をコントロールする固有受容覚。筋肉や関節、腱などで感じ、情報を脳に伝えることで体をスムーズに動かすことができます。

【固有受容覚の4つの働き】

①力加減
 重いものを持つときは腕に力をいれ、繊細なものはそっと優しく持つといった力を加減する働き。
②運動コントロール
 関節を使って曲げ伸ばしできるように体の動きをコントロールする働き。
③重力に反した姿勢を保つ
 倒立や腕立てなど、重力に反して体を持ち上げ、姿勢を保つ働き。
④バランスを保つ
 電車の揺れやつまずいた時など、転ばないようにバランスをとるような働き。

前庭覚:体の傾きやスピードを感じる感覚

平衡感覚やスピード、体の傾きを感じ、脳に伝える前庭覚。耳の奥にある三半規管で感じとります。

【前庭覚の3つの働き】

①脳の目覚め具合を調節
 眠いと感じた時に、頭を振って目を覚まそうとするなど、脳がぼんやりしている状態から目覚めさせる働き。
②バランス
 自分の身体が傾いていると瞬時に察知し、バランスをとる働き。
③眼球運動のサポート
 ぐるぐると回転すると目が回る状態。前庭覚が傾きを察知することで、眼球の筋肉と連動して動かす働き。

感覚統合が上手くいっていないとき

情緒面:落ち着きがない

子供の感覚統合が上手くいっていないと、様々な問題が起こります。情緒面では、落ち着かず集中力がないことが多く見られるでしょう。また、自分の感情をコントロールすることが難しく、衝動的な行動をしてしまうこともあります。周りの音や刺激に注意が向いてしまい、ルールや時間を守ることができないこともこれに含まれます。自分の思い通りにいかないことを受け入れることが難しく、集団生活を苦手とすることもあるでしょう。

感覚面:触られることを嫌がる

感覚面の問題は、感覚過敏と感覚鈍麻があることです。感覚過敏とは、刺激に対してとても敏感になり、触られることを強く嫌がったり、特定の音に対して拒否反応を起こしたりします。感覚鈍麻とは、感覚に対しての反応が鈍く、刺激を求めて自ら頭を叩くことがあります。また、痛みに気づかず怪我をした状態で生活してしまうこともあるでしょう。刺激に対して上手に整理することができず、苦しんでしまう子供も少なくありません。お箸を使ったり、靴の紐を結んだりするような細かな動作もこれに含まれます。

言語面:言葉の遅れがある

言語面での問題は、コミュニケーションが上手く取れないことが多く、自分の気持ちを伝えることが難しいことが見られます。これは、言語刺激を処理する働きが低下していることが原因です。言葉がすぐに出てこないことや、発達における言葉の遅れが原因で会話に苦手意識を持つこともあるでしょう。また、目が合わない、話しかけても振り向かないといった行動も特徴の一つです。こういった言語面での問題を、感覚統合によって言語処理能力を刺激し、改善を目指します。

対人面:友達と遊ぶことが苦手

対人面における問題では、友達と一緒に遊ぶことを苦手とすることが多いです。遊びの中で友達と決めたルールや決まりを理解することが難しいので、みんなど同じ行動ができず上手に遊ぶことができないでしょう。また、自分をコントロールできず衝動的な行動をしてしまうため、友達との距離ができてしまうことも少なくありません。感覚統合が上手くいっていない子供の対人面での問題は、情緒面や言語面での問題と関連が強いです。

動作面:自分の行動をコントロールできない

動作面の問題では、じっとしていられないことが多く、運動が苦手です。動作面では、情緒面で見られる問題がそのまま行動に表れることがあるでしょう。集中力が続かないことでそわそわしてしまう、じっとしていることができないといった情緒面での問題が直接動作に見られることがあります。また、ボディイメージの形成や、手指の機能処理が上手くいかないことで、体を使った運動や手先の細かな動きが苦手と感じてしまうことがあります。

感覚統合療法

セラピーで自発力を高める

感覚統合療法は、セラピーを用いて感覚機能を刺激し向上させていくことをねらいとしています。感覚統合療法では、子供に寄り添いながら、子供が”楽しい”と思えるような内容を主な活動に取り入れています。子供が楽しみながらセラピーを受けていくことで、感覚を上手く整理し、より適切に体を動かしていけるようになるでしょう。触り方やバランスの取り方、力の入れ加減などの感覚を調節したり、接し方を工夫していくことで成功体験を増やしていきます。子供が自分から能動的に活動できることを目指します。

遊びを通して感覚統合を促進する

家や保育園でも、遊びを通して感覚統合を促進することができます。感覚統合が促進される遊びは、キャッチボールや積み木遊び、ブランコ遊びなど、身近にあるおもちゃや遊具で行うことができます。日々の保育園での活動や、家庭内での遊びを通して感覚統合を楽しく高めることができるので、ぜひ取り入れてみてくださいね。遊びとして行うことで、子供も楽しみながら進んでやりたいと思うようになっていくでしょう。

感覚統合に問題がある時の二次問題

自信を失ってしまう

感覚統合に問題があると、さまざまな問題が起こるので、子供はどうしても自信を失ってしまうことがあります。感覚統合が上手くいかずできないこと、難しいことがあることを理解してもらえないこともあるでしょう。周囲から”不器用””怠けている”と思われ、子供の自己肯定感が低くなってしまうことがあります。いろいろな活動や遊びに失敗してしまうことも多く、消極的になったり、投げやりになったりすることも少なくありません。

発達障害との関係

発達障害の症状と関わりがある

感覚統合は、発達障害の症状と関わりがあります。発達障害の子供に見られる症状は、感覚統合が上手くいっていないことと関係していることがあります。感覚統合を理解することは、発達障害への理解や症状の緩和につながっていくでしょう。

【発達障害との関わり】

・自閉症スペクトラム障害(ASD):過剰な感覚過敏や感覚遮断の特徴が見られる。感覚統合の問題により、新しい環境や刺激に対する適切な反応が難しくなる場合がある。
・注意欠陥多動性障害(ADHD):感覚統合に問題があると、刺激に対する注意を維持することが難しく、AQDHDの症状がひどく目立ってしまう要因となることがある。
・学習障害(LD):学習環境での刺激に対応することが難しく、学習に対して困難な経験をすることがある。

発達障害の療育方法として利用される

感覚統合療法は、発達障害の療育方法としても利用されることがあります。特に、発達障害の特徴である感覚過敏や感覚遮断などの問題に対して、感覚を適切に処理し対処することを目指します。感覚統合療法では、子供が感覚統合を高め、行動や社会的スキルの発達を促進することが期待されます。発達障害を持つ子供にとって、適切な感覚刺激を行い、行動や反応を学べることが重要になるでしょう。専門家やセラピストは、発達障害によるさまざまな症状やニーズに沿って、感覚統合療法を行う必要があります。

子供の感覚統合に問題があると思ったら

感覚統合検査やチェックシートで調べる

子供の感覚統合に問題があると感じたら、感覚統合検査やチェックシートで調べてみましょう。チェックシートを参考に、子供の感覚統合や発達状態のつまずきを確認することができるでしょう。チェックシートを目安に、感覚統合検査を受けることでより専門的な目線で子供の治療を行うことができますよ。

【チェックシート】
◻︎明るい光や色、模様に過敏である
◻︎特定の資格刺激に対して反応がない
◻︎騒音や突然の音に敏感である
◻︎特定の音にたうする反応が過剰である
◻︎衣服のタグや布の質感など、特定の触覚刺激に対して過敏である
◻︎皮膚を強くこする、刺激を求めるといった感覚過敏や感覚遮断に関連する行動
◻︎体を揺らしたり、落ち着きがなかったりすることがある
◻︎体のバランスや位置感覚に問題がある
◻︎感情のコントロールが苦手である
◻︎新しい環境や刺激に適応することが難しい

感覚統合療法を受けてみる

チェックシートで子供の状況を確認してみて、不安に感じる点があるときは、感覚統合療法を受けてみましょう。感覚統合療法は子供が遊び感覚で、”楽しい”と思える活動を取り入れています。治療の方法が、遊びやおもちゃを使った活動であれば気軽に挑戦しやすいですよね。感覚統合療法は、自治体の療育センターやリハビリ施設、医療機関で提供している場合があります。少しでも興味があれば、一度相談してみることも良いでしょう。

まとめ

子供の感覚統合を促進し”できる”を増やそう

子供の感覚統合が上手くいっていないと、失敗経験が重なり、どんどん自信をなくしていってしまいます。遊びや活動を通して感覚統合療法を行うことで、子供の”できる”や”気になる”を増やし、自己成長に繋げることができます。日々の生活にも取り入れることができるので、ぜひ試してみてください。チェックシートを目安として、少しずつ子供に合った感覚統合療法を行なっていくことが大切です。感覚統合を高め、子供が楽しく過ごし、自信を持てるようにサポートしていきましょう。

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保育士くらぶは保育士の転職キャリアサポートを行うアスカが運営しています。保育士くらぶ編集部のメンバーは元保育士や幼稚園教諭出身のメンバーを中心に「保育業界をもっと良くしたい!」という思いがあるメンバーが在籍し、日々執筆しています。保育士くらぶでは現役保育士さんが職場で活かすことが出来る、保育のノウハウやネタ、保育学生にとって必要な知識などを発信しています。 アスカは保育士の就職支援を行う会社です。1994年創業。全国で約10万名の保育士、幼稚園教諭の皆さまが登録しています。年間約1万名がアスカを通じて保育園や幼稚園、学童などの施設への就職を決めています。 保育士の求人情報は 【保育求人ガイド】 https://hoikukyuujin.com/ プロフィール入力で園からスカウトを受ける 【保育士スカウト】 https://www.hoikushiscout.com/