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日々保育の仕事をする中で、保護者からのクレームに直面することがあると思います。保育士として、子どもたち同様に保護者に対しても丁寧な対応は欠かせません。しかし、まれに保育施設や学校に対して理不尽な要求やクレームをする保護者もいるようです。そこで今回の記事では、保護者からのクレームの対応方法やクレームを防ぐ方法などを詳しく解説していきます。「クレームの対応って大変だな」「どう対応したら穏便に済ませられるの?」と、不安や疑問をお持ちの方は、是非参考にしてくださいね。
保護者からのクレームはどう対応すべき?
最後までしっかりと話を聞く

保護者からクレームが寄せられた際には、まずは冷静に受け答えをして、最後までしっかりと話を聞くことが大切ですよ。なぜなら、途中で話を遮ったり否定したりすると、保護者の不満がさらに大きくなる可能性があるからです。相手の気持ちに寄り添いながら、共感を示しつつ話を聞くことで、保護者も冷静になり落ち着いて話ができるようになります。また、保護者が何を求めているのかを正確に把握するためにも、相槌を打ちながら丁寧に聞きましょう。その上で適切な対応策を考え、誠意をもって対話をすることが重要です。
否定や反論はしない

保護者からのクレームは、すぐに否定したり反論したりせず、まずは保護者の話をしっかりと聞くことが大切です。なぜなら「でも」「それはできません」などと反論をしてしまうと、保護者の感情を逆撫でしてしまい、問題がさらに大きくなってしまう可能性があるからです。理不尽なことを一方的に言われるのは苦痛ですよね。しかし、たとえ誤解があったとしても、まずは共感の姿勢を示し、相手の気持ちを受け止めることが大切です。その上で、事実を整理して冷静に対応策を考えましょう。
安易に謝罪や回答をしない
保護者からのクレームに対し、焦って安易に謝罪したり、その場で即答したりしないことも大切です。安易に「すみません」と謝罪を繰り返すと、単なる平謝りとなり、満足のいく話し合いにはなりません。また、状況を正しく把握しないまま謝罪すると、誤解を招いたり、責任の所在が不明確になったりする可能性があります。さらに、すぐに「やります!」と即答するのも避けましょう。なぜなら、実現できなかったときに不満がさらに大きくなってしまうからです。問題の悪化を避けるためにも、まずは冷静に話を聞いて事実関係を整理した上で、適切な対応を検討しましょう。
自分だけで対応しない

保護者からクレームが寄せられたら、自分だけで対応しようとせず、適切な人に相談することが大切です。クレームの内容によっては、園長や主任、同僚に相談しながら対応する必要があります。保護者には「この場では決断ができないため、園の中で話し合ってから改めてご連絡します」と伝え、対応を早まらないようにしましょう。そうすることで、より適切な解決策を見つけることができますよ。特にトラブルがあった際は、早急に対応する必要があります。悪い内容ほど園長や主任に早く報告し、情報共有することで、冷静に対処することができますよ。また、園全体で対応方針を統一することで、保護者にも安心感を与え、信頼関係を築くことにつながります。
できることはすぐに実行
保護者からのクレームの中で対応が可能な内容は、できるだけ早く実行することが大切です。解決可能な問題を放置したり対応が遅れたりすると、保護者の不満がさらに大きくなり、信頼関係が損なわれる可能性が高まります。そのため、対応が可能なことは「すぐに改善いたします」と素直に受け入れて、改善することが大切ですよ。保護者から寄せられるクレームの中には、悪いことばかりではなく、自分たちでは気付けなかった改善点のヒントも含まれています。すぐに改善できるクレームの場合は速やかに実行して安心感を与え、保護者との深い信頼関係の構築につなげていきましょう。
保護者がクレームを伝える背景
コミュニケーション不足

保護者がクレームを伝える1つ目の原因は、コミュニケーション不足です。日々の保育の様子や子どもの成長について十分な情報共有がされていないと、保護者は不安を感じやすくなってしまいます。また、ちょっとした疑問や不満が解消されないまま積み重なることで、大きなクレームにつながることもあります。そのため、普段からこまめに保護者と会話をしたり、連絡帳やお便りなどを活用したりして情報を伝えることが大切ですよ。保護者との信頼関係を築くためにも、積極的にコミュニケーションを取るように心がけましょう。
自己中心的な考え

保護者がクレームを伝える2つ目の原因は、自己中心的な考えです。簡単に言うと「自分の考えが全て正しい!」と思い込む、自己中心的な考えによるクレームです。自己中心的な保護者は自分の価値観を第一に考えるあまり、園全体の方針や他の子どもたちの状況を考慮せずに要求を強く主張してしまうことがあります。「うちの子だけ特別に対応してほしい」といった思いが強いと、園の対応に納得できず、クレームにつながることもありますよ。このような場合は、園の方針や集団生活のルールを丁寧に説明しましょう。保護者が納得できるように、多角的な視点でわかりやすく話すことが大切です。
相談相手がいない

保護者がクレームを伝える3つ目の原因は、相談相手がいないことです。子育てに関する悩みや不安を気軽に話せる相手が身近にいないと、些細な心配ごとが大きなストレスを抱える原因になってしまうのです。特に核家族や共働き家庭では、育児の悩みを適時に他の大人と共有できる機会が少なく、不満を一人で抱え込みやすい傾向です。その結果、視野の狭い自己中心的な考えに繋がり、保育施設の保育士しか頼れる人がおらず、無理難題を言ってしまう方がいるのです。保育士は、日頃から保護者とコミュニケーションをとり、些細な悩みでもできるだけ汲み取れるようにしましょう。保護者が安心して気軽に話せる場を提供することは、信頼関係の構築につながりますよ。
誤情報の拡散

保護者がクレームを伝える4つ目の原因は、誤情報の拡散です。園での出来事が正しく伝わらず、保護者同士の会話や子どもからの話を通じて誤った情報が広まることで、不安や不満が大きくなりクレームへと発展することがありますよ。特に、断片的な情報や個人の主観が混じると、事実とは異なる形で受け取られることがあり、それが園への不信感につながることもあります。そのため、園側は日頃から正確な情報を全ての保護者に直接伝えることを意識し、不安や疑問に対して丁寧に説明することが大切です。例えば、連絡帳やおたより、場合によっては電話やメールも活用して正確な情報共有を行いましょう。
子どもの喧嘩や怪我

保護者がクレームを伝える5つ目の原因は、子どもの喧嘩や怪我です。園での集団生活の中では、子ども同士のトラブルやちょっとした怪我は避けられません。しかし、保護者がその状況を詳しく知らないと、「なぜうちの子が傷ついたのか」「どうして防げなかったのか」と不安や不満を感じて、クレームにつながることがありますよ。そのため、子どもの喧嘩や怪我があった際には、当日中に保護者に事実を正確に伝え、どのような対応を取ったのかを丁寧に説明しましょう。
実際にあった保護者からのクレーム事例
担任を変えて!

ここからは、実際にあった保護者からのクレーム事例をいくつかご紹介します。1つ目は、「担任を変えて!」というクレームです。担任を変えて欲しいと言われると自分に落ち度があったのではないか…と、とても落ち込みますよね。このようなクレームは保育士の人格否定にも繋がりかねない、非常に深刻な事例と言えるでしょう。このクレームの背景には、様々な要因が考えられます。例えば、保育士と保護者とのコミュニケーション不足や教育方針の食い違い、子ども同士のトラブルなどが挙げられます。保護者としては、子どもの成長を願うあまり、些細なことが不安や不満に繋がり、このような要求に至ってしまうのかもしれません。
〇〇君のお母さんが…
2つ目は「〇〇君のお母さんが…」というような保護者同士のトラブルによるクレームです。保護者に対する愚痴や悪口は、話してる内容が本当かどうかが分からないため、保育士は「話には乗らない」「肯定しない」というのがベストな対応です。保護者同士のトラブルは、子どもたちの人間関係にも影響を与えかねないため、慎重な対応が求められますよ。一方の保護者の言い分だけを鵜呑みにせず、双方から事情を聞くことが重要です。双方から事情を聞いた上で、保育士は中立な立場を徹底しましょう。
なぜうちの子が主役じゃないの!
3つ目は、発表会などの役決めで生じやすい「なぜうちの子が主役じゃないの!」という内容のクレームです。自己中心的で自分の子どもだけを最優先に考えている保護者から、このようなクレームが入ることがあるようです。中には「自分の子どもが不平等な扱いを受けているのではないか?」といった疑念を持ってしまう保護者もいます。園によっては、発表会で全員が主役といった少し行き過ぎたクレーム対策をとる場合もあるようですね。
その他
その他にも、対応に困ってしまう保護者からのクレームがあります。具体的には次のような内容です。
・うちの子が絵を描くのが下手なのは、保育士のせいだ!
・家ではできないので、園でトイレトレーニングを終わらせて!
・園で汚れた服は全て園で洗濯して返して!
・ケガをさせるのが嫌だから散歩は行かせず、他のクラスの子どもを近寄らせないで!
このように、園としては対応に困ってしまうクレームが寄せられることも少なくはありません。上記のようなクレームのあとに、その家庭は結局他の園に転園してしまう場合もあるようです。
保護者からのクレームには理不尽な内容も多い
夜寝れなくなるから昼寝をさせないで!

保護者からのクレームには理不尽な内容も多く、「夜寝れなくなるから昼寝をさせないで!」というクレームもあります。一見、子どもの睡眠を心配する親心のように見えますが、教育活動への理解不足や、過剰な要求とも捉えられます。このようなクレームに対しては、冷静に対応する必要がありますよ。昼寝が子どもの成長に与える影響や重要性などを分かりやすく説明しましょう。
参考:お昼寝は何歳まで? 成長に欠かせないお昼寝の役割と適切な昼寝時間
家庭の用事があるから行事の日を変えてほしい
また、「家庭の用事があるから行事の日を変えてほしい」というクレームもあります。このように、行事に関して個人の都合を押し付けてくる保護者がいらっしゃいます。園の行事は、多くの子どもや保護者が参加できるように計画され、準備にも時間をかけています。そのため、一部の家庭の都合だけで日程を変更することは困難であり、他の家庭にも影響を及ぼしかねません。こうした場合は、事前の調整の重要性を丁寧に説明しましょう。どうしても参加が難しい場合は、写真や動画の共有など代替案を提案することで、理解を得ることが大切です。
保護者からのクレームを防ぐには?
信頼関係を築く

保護者からのクレームを防ぐには、普段から信頼関係を築くことが大切です。日頃から丁寧なコミュニケーションを心がけ、子どもの園での様子や成長をこまめに伝えることで、保護者の不安を軽減することができますよ。また、保護者の話にしっかり耳を傾け、些細な悩みや相談に対しても誠実に対応することが大切です。こうした丁寧な対応を積み重ねて信頼関係が築けていれば、小さな不満がクレームに発展することを事前に防ぎ、何か問題が起きた際にも冷静に話し合うことができますよ。
まとめ
適切な対応をしてクレームを減らそう!
いかがでしたか。今回の記事では保育現場における保護者からのクレームについて、実際にあった例や具体的にどう保護者の方に対応したら良いか?などを解説しました。保育園では、なるべくクレームが起こらないように日頃からコミュニケーションをとることが大切です。また、誤情報によるクレームを避けるためにも、報告、連絡、相談を意識しましょう。特に担任を受け持つ保育士は、保護者からクラスの責任者として見られます。大変だとは思いますが、保護者からのクレームは一人で抱え込まず、必ず主任や園長に相談して解決につなげてきましょう。