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保育園に通う乳児さんや幼児さんは免疫が未発達。加えて子供同士での濃厚接触が多い保育園は、集団感染が起きやすい場所です。このため子供が体調を崩した際には、保育士の方の素早い対応が求められます。今回の記事では保育士の方に向けて、症状別・指定感染症別に子供が感染症にかかった際の登園基準についてまとめました。コロナウイルス感染症における最新の登園基準についても詳しく紹介していますので、保育士の方はチェックしておきましょう!
保育園で使われる登園基準ってなに?
感染症にかかった子供の出席停止の基準
登園基準は、感染症にかかった子供の出席停止の基準です。ある感染症にかかった場合に出席停止を求めるべきか、また求める場合は何日の出席停止を求めるべきかということがこの登園基準によって細かに定められています。また発症直後、子供の体調に異常があることが明らかであっても、原因が分からない場合もありますよね。こういった場合のために、登園基準のガイドラインにおいては症状別の対応もまとめられています。保育園に通う子供が体調を崩した場合にはひとまず登園基準従って対応を取りましょう。
集団感染を防ぐために用いられる
登園基準は、感染症への集団感染を防ぐために用いられています。上記にもあるように、子供たちは感染症にかかった経験が少なく、ウイルスに対する抵抗力が弱いのが特徴。体力やその他の点においても未発達な部分が多く、感染症にかかりやすくなっています。このため一人の子供が感染すれば、瞬く間に集団感染へと繋がってしまう恐れも。登園基準はこういった子供間での感染拡大を防ぐ目的で用いられています。加えて感染症にかかった子供本人の十分な休養のためにも、この登園基準を守る必要がありますよ。
保育園で使われる登園基準の根拠は?
学校保健安全法第19条
登園基準の根拠は学校保健安全法第19条です。学校と名前にある通り、学校保健安全法は元々学校に通う児童や生徒を対象とした法律。しかしながら健康診断や保険的対応においては児童福祉施設も、この学校保健安全法に準拠することになっています。しかしながら保育園に通う乳幼児は、学校に通う学童や生徒に比べてもウイルスに対して脆弱です。こういった点を踏まえたうえで、個人の特性に合わせた対応をとることが求められています。登園基準を最低ラインとし、子供の年齢などによって時にはより慎重な対応をとることも必要です。
※児童福祉施設…保育所や幼保連携型認定こども園など、児童福祉に関する事業を行う施設の総称。
コロナウイルスにかかった子供の登園基準
発熱後5日+症状が軽快してから1日が経つまで
学校保健安全法の定める新型コロナウイルス感染症の出席停止期間について、厚生労働省のホームページでは上記のようにまとめていますよ。症状が軽快してから1日を経過するまでとされているため、回復までの期間が長い場合はその分出席停止期間も長引くということになります。またこちらの出席停止期間は、一般の自粛期間と同じになっています。
5類感染症移行(5月8日)による変更点は?
2023年5月8日に、新型コロナウイルス感染症は新型インフルエンザ等感染症(2類相当)から5類感染症へと移行されました。上記で紹介した登園基準も、この5類感染症移行後のものになっています。出席停止期間以外の注意点としては、下記が挙げられます。
- 本人や保護者の意向に基づかない、医療機関での検査や検査キットによる自己検査を強制しない
- 濃厚接触者であっても、本人の感染が確認されていない場合は出席停止の対象とする必要はない
症状別の登園基準【熱の24時間ルール】
熱がある場合の対応
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、登園を控えるのが望ましい状態を症状別にまとめています。当てはまる場合は、登園を控えるよう保護者に伝える等の対応が求められますよ。初めに、熱の24時間ルールとも呼ばれる発熱時の対応についてご紹介。発熱時の体温は、個々の平熱応じて個別に判断しましょう。
24時間以内に38℃以上の熱が出た場合 |
24時間以内に38℃以上の熱は出ていないが、それ以前に解熱剤を使用していた場合 |
至急受診が必要
意識がはっきりしていないときや、顔色が悪く苦しそうな時は至急受診が必要です。
下痢がある場合の対応
次に下痢がある場合の対応について紹介します。
24時間以内に複数回の水様便がある |
食事や水分を摂るとその刺激で下痢をする |
下痢と同時に体温がいつもより高いなどの症状がみられる |
朝に排便がない、機嫌が悪く元気がない、顔色が悪くぐったりしている等の症状がみられる |
至急受診が必要
血液や粘膜、黒っぽい便が出る場合や、脱水症状を起こしている場合には至急受診が必要です。
嘔吐がある場合の対応
続いて嘔吐がある場合の対応について紹介しますよ。
複数回の嘔吐があり、水を飲んでも吐く |
元気がなく機嫌、顔色が悪い |
吐き気が止まらない |
腹痛をともなう嘔吐がある |
下痢をともなう嘔吐がある |
至急受診が必要
加えて脱水症状がある場合や血液を吐いた場合などは、至急受診が必要となります。
咳が出る場合の対応
続いて咳が出る場合の対応を紹介します。
夜間しばしば咳のために起きる |
呼吸の際にゼイゼイ、またはヒューヒューと音をたてている(喘鳴) |
呼吸困難がある |
呼吸が早い |
少し動いただけで咳が出る |
至急受診が必要
喘鳴があり、かつ苦しそうな場合や、息遣いが荒くなった至急受診しましょう。また突然症状が現れた場合は異物誤嚥の可能性がありますので注意が必要です。
発しんがある場合の対応
最後に、発しんがある場合の対応について紹介します。
発熱ともに発しんがある |
口内炎がひどく食事や水分をとれない |
発しんが顔面等にあり、患部を覆えない |
浸出液が多く他児への感染の恐れがある |
かゆみが強く手で患部を搔いてしまう |
至急受診が必要
熱の再発に伴う発疹(麻しん)など、感染症による発しんが疑われる場合はすぐに受診しましょう。
指定感染症の登園基準
第1種感染症後の登園は完全に治癒してから
第1種感染症に感染した場合は、完全に治癒してから登園を再開しましょう。
第1種感染症一覧
- エボラ出血熱
- クリミア・コンゴ出血熱
- 痘そう
- 南米出血熱
- ペスト
- マールブルグ病
- ラッサ熱
- 急性灰白髄炎
- ジフテリア
- 重症急性呼吸器症候群※1
- 中東呼吸器症候群※2
- 特定鳥インフルエンザ
※1病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。
※2病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。
第2種感染症の登園基準は感染別に異なる
第二種感染症の登園基準は、種別に定められています。第2種感染症は日常的に感染するリスクの高い感染症が多いですので、対応を覚えておくといいでしょう。
第2種感染症一覧と出席停止期間
- インフルエンザ
発症後5日を経過し、かつ、解熱後 3 日を経過するまで※3 - 百日咳
特有な咳が消失するまで、又は5日間の適正な抗菌性物 質製剤による治療が終了するまで - 麻しん
解熱した後3日を経過するまで - 流行性耳下腺炎
耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫れが現れた後5日を経過 し、かつ全身状態が良好になるまで - 風疹
発疹が消失するまで - 水痘
全ての発疹が、かさぶたになるまで - 咽頭結膜熱
主な症状が消えた後、2日を経過するまで - 新型コロナウイルス感染症※4
※3 特定鳥インフルエンザを除く
※4 病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルスであるものに限る。
第3種感染症後の登園は感染の恐れがなくなってから
第3種感染症に感染した場合、医師が感染のおそれがないと認めるまでは登園停止となります。
第3種感染症一覧
- コレラ細菌性赤痢
- 腸管出血性大腸菌感染症
- 腸チフス
- パラチフス
- 流行性角結膜炎
- 急性出血性結膜炎その他の感染症
第1種感染症や第3種感染症は第2種感染症頻度に比べると感染頻度の少ない感染症ですが、念のため対応を確認しておきましょう。
登園基準における出席停止期間の数え方
発症1日目は0日目として数える
登園基準に従う際のポイントは、発症後の日数の数え方です。登園基準では発症1日目は0日目として数えます。コロナウイルス感染症を含め、出席停止期間が発症後〇〇日たつまでと定義されている感染症は多くありますので、注意が必要ですよ。また保育士の方が正しく把握していても、保護者の方が登園再開の日を誤解してしまう可能性があります。子供が感染症を発症した際には、保護者の方にも出席停止期間について共有しておきましょう。
出席停止期間に保育園に預けたい場合はどうする?
医師による許可をもらう
子供の体調の回復が予想よりも早くみられることもしばしば。この場合園から伝えられた出席停止期間内であっても、保育園に預けたいと要請があることがあります。しかしながら回復後まもなくはウイルスの排出が多く、他の子供に感染してしまう恐れがあります。なるべく登園を控えるように要請するのが望ましいですが、どうしてもという場合には再度受診してもらい、医師の登園許可をもらうように要請しましょう。
保育園への登園再開に必要な書類
指定感染症からの復帰には登園許可証が必要
指定感染症からの復帰には登園許可証が必要です。登園許可証は医師が記入する意見書と、医師の診断を受けて保護者が記入する登園届の2種類があります。しかしながら登園許可証の提出は絶対ではなく、園ごとによって対応が異なります。指定感染症であっても提出を求めない場合や、指定感染症でなくても提出を求める場合など様々ですので、保育士の方は再度園に確認しておきましょう。
まとめ
登園基準に則った対応で集団感染を防ごう!
保育園に通う子供たちは免疫の機能が未発達。そのため子供が体調を崩すことは多くありますよね。しかし日常茶飯事だからと言って油断は禁物です。指定感染症に感染しているリスクもありますので、子供の体調不良に気付いた場合は今回紹介した厚生労働省のガイドラインを参考に、なるべく早く対応を取りましょう。また指定感染症に感染していると分かった場合には、既定の出席停止期間を保護者に共有してくださいね。登園基準に則った対応で、子供たちを集団感染からを守りましょう!