子供の”見る力”を育てるビジョントレーニング【種類・チェックリスト・発達障害・遊び】

子供の”見る力”を高めることができるビジョントレーニング。ボールを使った遊びが苦手、絵本を読む時に読み飛ばしてしまうなど、日常生活における困難を解消することが期待できます。今回は、ビジョントレーニングとは具体的にどういったものなのか、種類やもたらす効果についてご紹介します。また、子供がどういったときにビジョントレーニングが必要になるのかについても解説しています。家庭でできるトレーニングやビジョントレーニングができる遊びも是非参考にしてみてくださいね。

ビジョントレーニングとは?

子供の”見る力”を高めるトレーニング

ビジョントレーニングは、改善や克服、発達支援を目的とした発達障害のある子供に対して行われるトレーニングです。トレーニングを通して、目で見たものの状態を捉える力を高め、見たものを正しく認識し、自分の体をイメージ通りに動かせることを目指します。

見る力

・視機能(入力)
・視知覚認知(情報処理)
・目と手の協応(出力)

”見る力”は、この3つから成り立ちます。発達障害のある子供は、この”見る力”に問題を抱えていることが多いため、ビジョントレーニングが効果的です。

6〜13歳の間に視機能を鍛えるトレーニング

ビジョントレーニングに適した最も適した年齢は、6〜13歳です。この時期は、”目のゴールデンエイジ”とも呼ばれ、ビジョントレーニングによる効果が最も出やすいです。13歳以上であっても、見る力を鍛えることができますが、視機能のベース作りのために、小さい頃からトレーニングしておくと良いでしょう。20歳ごろまでは、ビジョントレーニングによって動体視力を発達させれらることができ、運動能力を向上させることができます。

保育士くらぶ

ビジョントレーニングの種類

1. 眼球運動トレーニング

ビジョントレーニングの種類は、大きく分けて3つあります。まず1つ目は、眼球運動トレーニングです。眼球運動トレーニングとは、見たいものに対して素早くピントを合わせるトレーニングです。

跳躍性眼球運動
 一方の点から他方の点まで、視線を移動させる運動です。このトレーニングを行うことで、絵本の読み飛ばしや書写しのしづらさを改善します。

追従性眼球運動
 線に沿って視線を動かす運動です。文字を綺麗に書くことや、順番に文字を読めるようにトレーニングします。

両眼のトレーニング
 近くのものは両眼を寄せて見て、遠くのものは両眼を離してみる運動です。二重に見えることの改善や、距離感を上手くつかめるようになることが期待できます。

2. 視空間認知トレーニング

視空間認知トレーニングでは、目で見たものの形や色、距離感を正しく認識するトレーニングです。このトレーニングでは、4つのスキルに分けることができ、それぞれ異なる視野能力の改善が期待できます。

物と背景を区別する
 信号機と街並みというように、対象物と背景を区別します。見たい対象物だけを認識できるようになります。

色や形を把握する
 図形を理解したり、塗り絵に取り組みやすくしたり、遊びの困難を改善します。

大きさや色に関係なく、同じ形を認識する
 文字の認識がなかなかできない、大きさが違うと同じ形だとわからないといった場合に効果的です。

物との距離や大きさを把握する
 目で見たものを立体的に捉える力を向上させます。物にぶつかる事やボールを使う遊びが苦手といったことを改善できるでしょう。

3. 眼と体のチームワークトレーニング

眼と体のチームワークトレーニングでは、目から取り入れた情報に合わせて体を動かします。文字の書写しや、見て真似をすることが苦手な場合に効果的なトレーニングです。目で見たものの形や位置の情報と、体の動きを連動させることで、”見る力”を向上させることができるでしょう。

飛んできたボールを目で追いかける→ボールが手元に来るタイミングを考える→ボールを目で追いながら、キャッチする

この一連の行動が、ビジョントレーニングであり、心身の発達を向上させます。

子供にビジョントレーニングが必要な時

10個のチェックリストに当てはまる時

子供の日常生活における困りごとは、”見る力”の弱さに原因があることも多いです。以下のチェックリストに当てはまる子供は、ビジョントレーニングを始めてみると良いでしょう。

□本を読んでいると、読み飛ばしやつかえることが気になる。読んでいる場所もわからなくなる。
□文字を書くのが難しく、鏡文字を書く。
□マスや行からはみ出して文字を書く。
□書かれている文字を写すのが苦手。
□図形が苦手。
□ボールを使った遊びが苦手。キャッチするのが苦手。
□目でものを追う時に、顔を上下・左右に動かす。黒目の動きがぎこちない。
□はさみやボタン、ひもなど手先を使うことが苦手。
□物や人にぶつかることが多い。
□人の動きをまねたり、動きを覚えることが苦手。

視覚機能に問題を抱えている時

発達障害のある子供は特に、視覚機能の低下や何らかの問題を抱えていることが多いです。生まれつき脳の働きに違いのある発達障害は、目で捉えた情報を処理する機能に支障があるとされています。そのため、ビジョントレーニングによって、学習や運動、遊びでの問題を改善することを目指します。また、感覚過敏で日光が苦手な場合も、外に出て体を動かす機会が少ないため、視覚機能が低下している可能性があるでしょう。

ビジョントレーニングが発達障害にもたらす効果

発達障害の症状を軽減する可能性がある

ビジョントレーニングは、発達障害のある子供の日常生活における困りごとを改善することに役立ちます。特に、発達障害の一つであるLD(学習障害・限局性学習症)の場合、ビジョントレーニングで”見る力”を高め、学習に取り組む際の困難を解決しやすくなることが期待できます。ビジョントレーニングを行う際は、文字を大きくする・字体を変更する・マス目の大きなノートを用意するといった、子供が学びやすい環境づくりを意識しましょう。子供一人ひとりにあったビジョントレーニングを行うことが大切です。

眼球運動が脳に刺激を与える

発達障害は脳機能の障害のため、目で見た情報を処理することに問題を抱えていることが多いです。ビジョントレーニングにおける眼球運動を行うことで、脳に刺激を与え勉強や運動の機能改善が期待できるでしょう。また、発達の遅れに対応するだけでなく、二次障害を防ぐことにもつながります。できることが増えることで、自己肯定感を高め、自尊心の低下を防ぐことができます。発達障害のある子供に対してビジョントレーニングはとても効果的と言えます。

子供と家でできる簡単なビジョントレーニング

目の動きを育てるトレーニング

子供と家で簡単にできるビジョントレーニングをご紹介します。目の動きを育てるトレーニングでは、動くものを目で追ったり、視線を動かしたりしてピントを合わせる力を育てます。

コロコロキャッチ
 テーブルの上でビー玉やスーパーボールを転がし、反対側で子供がキャッチするトレーニングです。手やコップを使って転がってくるボールを目で追いながら、キャッチする練習をします。

動く対象物にタッチ
 指人形やマスコットなどの対象物を持ち、「タッチ!」の掛け声で子供が触ります。「スピードアップしたり、対象物を左右に動かしてみたりして目の動きを育てるトレーニングです。

見たものを認識する力を養うトレーニング

目で見たものを認識し、情報を脳へ送る力を養うトレーニングです。1日5分程度で良いので、毎日少しずつトレーニングを行いましょう。

矢印体操
 シートにさまざまな色や方向の異なる矢印を書き並べます。手拍子や音楽などのリズムに合わせて、矢印の向きを声に出しながら、両手を矢印の方向へ動かします。

タングラム
 5〜6歳以上が対象の遊びです。パズルに似ていますが、ピースの数が少なめで、1つ1つのサイズが大きいので初めて取り組むビジョントレーニングにおすすめです。

動画を観ながら視機能を鍛えるトレーニング

奈良県のメガネ屋さんが製作した、動画を見るだけで取り組むことができるビジョントレーニングです。動画に出てくる女の子を音楽に合わせて見つけたり、表示される数字の中から決まった数字を見つけるトレーニングです。遊びながらビジョントレーニングを行うことができ、手軽に取り組めますよ。親子で一緒に楽しみながらビジョントレーニングをしましょう。

親指フォーカストレーニング

親指フォーカストレーニングは、簡単に家で取り組むことができ、目の筋肉を鍛えることで眼球運動をスムーズに行えるようになることを目的としまうす。

親指フォーカストレーニングのやり方

1. 腕を肩幅に開け、親指を立てて両手を前に伸ばす。
2. 顔は固定したまま、目だけを1秒ごとに左右の親指を10往復見る。
3. 左右の親指を上下に離し、2と同じように往復して見る。
4. 左右の親指を斜めに構え、同じように往復して見る。
5. 親指を左右に構え、同じように往復して見る。

子供のビジョントレーニングができる遊び

お手玉キャッチ

お手玉で遊びながらできるビジョントレーニングです。お手玉を一つ用意して、両手で上に投げキャッチします。だんだん慣れてきたら、片手からもう片方の手に投げてキャッチする練習をしましょう。少しずつお手玉を投げる高さを上げていくこともおすすめです。手元を見ずに、目でお手玉の動きを追いながらキャッチすることがポイントです。1つのお手玉を簡単にキャッチできるようになったら、数を少しずつ増やしてくとより難易度の高いトレーニングを行うことができますよ。

ブロックで見たもの再現

ブロックを使って、見本と同じように再現するビジョントレーニングです。テーブルの上に形や色の異なるブロックをいくつか並べます。見本を1つ用意し、テーブルに並べたブロックの中から見本と同じ色と形のものを探します。見本と同じ形に並べるように練習します。慣れてきたら、いくつかのブロックを組み合わせた見本を作ったり、見本の左右反転に並べるようにすると難易度をアップできますよ。見本シートを用紙すると、子供1人でビジョントレーニングを行うこともできます。

マグネット探し

マグネットを用意し、指定したものを子供に素早く探してもらうビジョントレーニングです。動物やキャラクターなど、子供が好きなもののマグネットを用意すると良いでしょう。冷蔵庫やホワイトボードにマグネットを貼り付けたり、机の上に並べてみたりしてください。まずは、マグネットを動物やキャラクター、食べ物など種類によってカテゴリー分けして並べましょう。慣れてきたらそれぞれを混ぜて並べ、そこからマグネットを探すようにします。

子供のビジョントレーニングが受けられる場所

療育施設やトレーニングセンター

子供のビジョントレーニングは、提供している施設で受けることもできます。

・児童発達支援事業所
・放課後等デイサービス
・療育施設
・民間のトレーニングセンター
・学校の支援教室
・スポーツジム

全ての施設でビジョントレーニングを実施しているわけではないため、事前に問い合わせて確認する必要があるでしょう。施設を選ぶ際は、勉強やスポーツ、日常生活など困りごとや目的に合ったビジョントレーニングに対応しているかも確認しておくことが大切です。

まとめ

ビジョントレーニングで”見る力”を向上させよう

ビジョントレーニングは、視覚機能を鍛え”見る力”の向上をサポートするトレーニングです。日常生活の中で苦手なことや学習上の困りごとなど、さまざまな目的に応じて活用されます。”見る力”を向上させることで、物事をじっくり考えることができ、理解する力を身につけることができるでしょう。また、発達障害を持つ子供には、特性や困りごとに合わせたビジョントレーニングを行うことで効果が期待できます。子供に合わせたビジョントレーニングを取り入れ、”見る力”を向上させましょう。

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保育士くらぶは保育士の転職キャリアサポートを行うアスカが運営しています。保育士くらぶ編集部のメンバーは元保育士や幼稚園教諭出身のメンバーを中心に「保育業界をもっと良くしたい!」という思いがあるメンバーが在籍し、日々執筆しています。保育士くらぶでは現役保育士さんが職場で活かすことが出来る、保育のノウハウやネタ、保育学生にとって必要な知識などを発信しています。 アスカは保育士の就職支援を行う会社です。1994年創業。全国で約10万名の保育士、幼稚園教諭の皆さまが登録しています。年間約1万名がアスカを通じて保育園や幼稚園、学童などの施設への就職を決めています。 保育士の求人情報は 【保育求人ガイド】 https://hoikukyuujin.com/ プロフィール入力で園からスカウトを受ける 【保育士スカウト】 https://www.hoikushiscout.com/