ピアジェの発達段階理論とは?【保育士試験・特徴・例・シェマ・同化・調節・均衡化】

保育にかかわるシーンや保育士試験では特に耳にすることが多い、ピアジェの発達段階。なんとなく知っているけど、具体的に説明することはできないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、ピアジェの4つの発達段階の、それぞれの特徴や例を詳しく解説しています。保育士試験や、実際の保育で活かすときのポイントについても説明しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

ピアジェの発達段階とは?

認知発達理論で子供の発達段階を分類したもの

ピアジェの発達段階論とは、認知発達理論によって子供の発達段階を分類した理論です。認知発達理論によると、子供の発達段階は感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期の4段階に分けて説明されます。他の有名な理論としてフロイトの心理性的発達理論や、エリクソンのライフサイクル理論が挙げられますが、内容はそれぞれ全く異なるので、混同しないように気を付けましょうね。

心理学者ジャン・ピアジェによって提唱された

発達段階理論を提唱したジャン・ピアジェは、スイスの心理学者です。20世紀最も影響力の大きかった心理学者の1人で、「発達心理学の父」とも呼ばれています。ピアジェは非常に研究熱心で、1980年に亡くなるまでの間に50冊以上の本と500冊以上の論文を遺しました。ピアジェは発生的認識論によって、それまで幼児は無能で受動的であるとされていた世間の考えを覆し、子供は実験と観察を繰り返し自らの力で成長していくと主張しようとしたのです。

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【認知発達理論】4つの発達段階の特徴

①感覚運動期(0~2歳児)

0歳から2歳にかけては感覚運動期と呼ばれます。言葉を使えないため、なめたり、触ったりして、触覚から情報をつかもうとする特徴があります。この時期に起こる特徴は、循環反応、対象の永続性を獲得すること、模倣行動の3つ。循環反応とは気になったことを繰り返し行うことですよ。対象の永続性を獲得するとは、手や布で隠しても物がそこにあることを理解できるようになるということ。模倣行動は、自分が見聞きした人の顔や声を真似する行動のことです。

②前操作期(2~7歳児)

2歳から7歳にかけては前操作期と呼ばれます。この時期の子供たちは言語能力や想像力の発達が顕著で、ごっこ遊びなどを好んで行います。この時期に見られる特徴は、自己中心性と自己中心化、実念論、アニミズム、人工論、象徴的思考期と直感的思考期などが挙げられるでしょう。この時期の子供は、自分の立場からしか物事を考えることができません。また、あらゆるものに心が宿るというアニミズムの考えを持ちます。すべてのものは人によって作られたものだと考えることがあります。

③具体的操作期(7~11歳)

7歳から11歳にかけては具体的操作期と呼ばれます。小学校に通うころの年齢ですね。この時期の子供は頭の中で情報の処理を行うことができるようになり、保存の概念、数の保存を理解します。保存の概念を理解すると、例えば、入れ物に入った液体を、形が違う別の入れ物に移し変えても、もともとの量は変わっていないことが理解できるようになります。数の保存を理解すると、頭の中だけで計算ができるようになります。

④形式的操作期(11歳~)

11歳ごろから形式的操作期が始まります。前段階の具体的操作期では、目の前にある具体的な事象を論理的に考えられるようになりますが、形式的操作期になると、実際に目にしていない抽象的な事柄についても論理的に考えることができるようになります。例えば一次関数のように、現実世界には存在しない数値について考えることができるようになるのはこのころからですね。自分で実際に経験していないことも頭の中で考えられるようになります。

シェマとは?

認知の枠組みのこと

人は外界の事象を認識するための枠組みシェマを持っていて、外界の事象をこのシェマに取り入れることを同化と呼びます。そして他の事象も既存のやりかたで処理しようとしますが、それに当てはまらない場合もありますよね。このとき新しい知識を得て、既存のシェマに変化を加えることで解決しようとすることを調節と言います。同化と調節を繰り返し均衡化することで、子供はより正しいシェマを形成していくのです。

発達段階論の4ステップと例

①シェマの獲得

シェマの獲得とは、今後物事を理解する上での枠組みとなるものを獲得することです。例えば、猫を何匹か見て、「あれは猫だよ」と教えてもらったとします。すると子供は、猫と呼ばれるものの共通点を見つけ、外界の事象を猫だと認識できるようになりますよ。これが、シェマの獲得です。猫は四足歩行で毛が生えているというシェマを獲得した子供は、これ以降、ここに外部の出来事を当てはめ、猫を認識できるようになるのです。

②同化

同化とは、既存の枠組みに出来事を当てはめることで物事を理解することです。感覚や運動を通して身の回りにあるものを自分の中の世界に取り入れようとしますよね。猫を認識するシェマを獲得している子供が、猫の絵を見たとき、猫は四足歩行で毛が生えているという既存のシェマによって猫を理解しました。このとき、猫は平面上に描かれていることもあるという新たなシェマが追加されます。これが同化という作業なのです。

③調節

同化の作業を行っていくうちに、いずれシェマに当てはまらない事柄もでてくるでしょう。そんな時に行われるのが調節です。子供が犬を見て、猫は四足歩行で毛が生えているというシェマにあてはめて「猫だ」と言った時に大人が「あれは犬だよ」と教えたとします。この時に子供が犬と猫に違いがあることを認識し、犬と猫を区別するようになっていくことを、調節と言いますよ。この調節によってシェマの間違いが改善され、より正しくなっていきます。

④均衡化

同化と調節を繰り返し、シェマを変化させていくことが均衡化です。均衡化によって、乳児はバランスを取りながら外界とシェマを擦り合わせ、未熟なシェマはより正しいシェマに近づいていきます。教育場面においてもシェマを使った学習方法は役立ちます。一から何かを教えようとするよりも、子供たちがもともと持っているシェマを意識しながら、それに沿って新しい知識を覚えられるように指導をすると、均衡化が促され身につきやすくなりますよ。

保育士試験での出題は?

出題されることがある

この発達段階論は保育士試験にも出題されることがあります。保険の心理学を学ぶ上でピアジェの発達段階論は必須ですね。実際の子供たちの姿を思い浮かべ、発達段階に当てはめながら学習してみましょう。最新の令和5年度後期の保育士試験でも、保険の心理学の科目で、問6、問10でピアジェの発達段階に関する問題が出題されました。出題形式は選択問題で、4つの文章を読んで、それぞれの正誤を問われるというものでした。


保育士試験 令和5年(2023年)後期 保育の心理学 
問6 次のうち、認知の発達に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の 正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 延滞模倣とは、自分の外部にある物理的対象である物に働きかけ、その結果として生じる感覚を楽しみ、それを再現しようとして繰り返すような行動をいう。

B 最初期に出現する指さしは、他者から問われたことに指さしで応じる「応答の指さし」である。

C ヒトは、生後間もない頃は母語にない音を区別できるが、生後6か月頃から、次第に母語にない音を区別できなくなる。例えば、日本語母語話者の場合、1歳頃には「L」と「R」の音の区別が できなくなる。

D 脱中心化によって、複数の視点で物事を捉えることができるようになると、保存課題に正答できるようになる。


1 ○ ○ × ×
2 ○ × ○ ○
3 × ○ × ○
4 × × ○ ○
5 × × × ×

答え 
4

学習するときのポイント

心理用語と発達段階を結び付けて覚える

ピアジェの発達段階論を学習する際には、各発達段階が何歳から何歳までなのか、その時期の特徴は何か、具体的な数字や単語で答えられるようにしておくことです。これは保育士試験の対策として学習するときも同じことですが、用語だけを覚えても実際に活かすことができません。用語と発達段階を一緒に覚えたほうが理解が深まりますよ。結び付けて覚えられると、育児現場でも実践できるので頑張って覚えてみましょう。

丸暗記より全体をニュアンスで理解

発達段階の内容は複雑なので、一気に丸暗記しようとするのはおすすめしません。まずは全体を通しての内容を大まかに理解してから、各発達段階ごとに関連する単語を結び付けるようにして覚えていくと良いでしょう。例えば感覚運動期の特徴なら、最初から「循環反応」と単語で覚えようとするのではなく、まずは繰り返しが好きな頃という風に理解しておいて、全体を理解してから単語を覚えます。どの特徴がどの時期に現れるのかで混乱しなくなるのでおすすめですよ。

発達段階理論を教育に活かすために必要なこと

段階ごとの特徴を理解する

発達段階論を教育に活かすためには、段階ごとの特徴を理解しておくことが重要です。各段階ごとに現れる特徴が分かっていれば、子供が起こす行動一つ一つに納得がいくはずです。子供の考えていることや、子供がやりたいことを理解するのに役立つでしょう。また、その年の子供の能力の目安であったり、身につけるべき能力の基準にもなるので、子供たちの活動時間に行う遊びを選ぶのにも役立てられますよ。

具体例を理解する

各段階の子供たちが具体的にどんなことができるか理解しておくことが必要です。例えば感覚運動期の子供たちなら、言葉を使うことができず、なめたり触ったり感覚から情報を得ることができます。これが分かっていれば、感覚運動期の子供たちが話せなくても心配することはありませんし、逆に誤飲や危険なものに触ってしまうことには注意しておく必要があることが分かりますね。具体例を理解しておけば現場ですぐに対応できるでしょう。

あくまで目安であることを忘れない

意外と忘れがちなのが、この発達段階はあくまで目安であり、実際の発達には個人差があるということ。発達段階ごとの特徴が現れるタイミングはそれぞれの子供によって違います。この年の子供たちは全員これができる!という絶対の特徴はありません。できること、できないことはそれぞれの子供の能力によります。子供たちに無意識に発達段階論を押し付けてしまわないように注意しましょう。

まとめ

発達段階を理解して保育士試験や仕事に役立てよう

発達段階論は保育士試験で頻出する上に、試験後、実際に保育士として働く上で活かすタイミングが多い理論です。試験後も忘れないように復習しておきたいですね。発達段階論を知ることで、各発達段階の子供たちができること、できないことの両面を知ることができます。これを理解していると、不要なことで怒らずに済み、保育目標を立てやすくなりますよ。ぜひ活用してみてくださいね。

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