吃音症とは?吃音症の子供への接し方やサポートの方法を紹介【症状・原因・やってはいけないこと】

言葉の発達とともに現れることが多い、吃音症。実は子供の10~20人に1人は吃音症を経験すると言われています。吃音症は身近なものではありますが、吃音症の子供への対応の仕方や、周囲の人々が心がけるべきことを知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、吃音症の症状や治療法、周りの人がサポートする方法についても紹介しています。吃音症の子供への対応について考えている保育士さんにぜひ読んでいただきたい記事です。

吃音症とは

滑らかに発声できない症状のこと

吃音症とは、滑らかに発声できない症状が出る発話障害のことです。話したいことがあったとしても、音や語の一部を繰り返したり、引き伸ばしたりしてしまい、言葉がすらすらと出てきません。また、これらの症状に伴って、話そうとすると体の一部に力が入ってしまう、どもりやすい言葉を回避しようとするなど、発声以外の症状が出ることもあります。また、いつも吃音になるわけではなく、すらすら話せるときと話せないときがある人もいます。

解明されていないことが多い

実は、吃音症という病気はまだ完全には解明されていません。治療法や原因についてもまだ確立していないのが現状です。医師によって治療の仕方は異なり、絶対にこの方法で治るという治療法も明らかになっていません。大人の吃音症の治療では、言語訓練、心理療法、行動療法など様々な方法の治療法を組み合わせることが多いです。しかし子供の吃音症においては言語訓練を行う事が難しいため、発話意欲を下げないための環境を整えることを優先します。

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吃音症の原因は?

遺伝

吃音症の原因は詳しいことは明らかになっていませんが、遺伝によるところが大きいと言われています。親、または親戚の中に吃音症の人がいる人は、いない人に比べて吃音症の発症率が上がると言われています。育て方が悪かったのかと責任を感じてしまう保護者の方が多いので、育て方の問題ではないということを伝えてあげましょう。もちろん、吃音症の原因は必ずしも遺伝子によるものとは言い切れません。

ストレス

遺伝のほかに、ストレスが原因となって発話に問題が起きたり、吃音症が悪化することがあります。大人になってから吃音症を発症した場合の原因はストレスであることが多いですが、子供の吃音症の原因になることはそこまで多くありません。子供がストレスによる吃音症になった場合は、妹や弟が生まれたことで今までと同じように親に甘えられない、引っ越しなどで急に環境が変わるなどの環境の変化によることが多いようです。ストレスが原因で自律神経や筋肉の緊張が高まり、発声がしづらくなってしまうようです。

吃音症の症状

①繰り返し(連発)

吃音症の症状は3つに分けられます。その一つに、繰り返し(連発)があります。これは発そうとした言葉の一音を何度も発声してしまう症状で、例えば「おはよう」と言おうとすると「お、お、お、おはよう」のようになってしまうのです。吃音を発症し始めたときによくみられる症状であり、本人には自覚がないこともありますよ。まずはこの連発の症状が発症して、次に難発の症状に移行していくというパターンが多いようです。

②引き伸ばし(伸発)

引き伸ばし(伸発)という症状があります。これは発そうとした言葉の一部を引き伸ばしてしまう症状で、例えば「おはよう」と言おうとしたとき、「おーーーはよう」となってしまうのです。この症状も吃音の症状が出始めた最初の方で起こり、その後難発へと移行していくのです。また、この伸発の症状も、連発の症状と同じように本人に自覚がないことがありますよ。また、この伸発の症状は連発と同時にでることもあります。この場合は「こ、こ、こーーんにちは」のように、混ざり合ってさらに発音が困難になるのです。

③間が開く(難発)

難発とは、言いたい言葉があってもつかえてしまい、無声の状態になってしまう症状のことです。例えば「おはよう」と言いたくても初めの1音が出てこないので、「………おはよう」となってしまいます。難発が起きている間は、本来発音中は開いているはずの声帯が閉じた状態になってしまうのです。吃音は、連発や伸発から始まり難発に進んで行くので、成人で吃音に悩む方は難発の症状に苦しむことが多いですよ。

吃音症の患者人口

人口の1パーセント程度

吃音症の患者は全人口の1パーセント程度と言われています。なんと日本には120万人、世界では約7000万人もいるのです。その中で、幼児期に吃音を経験している子供は発達性吃音と呼ばれる吃音症であることが多く、大体の場合は成長するにつれて回復していきますよ。成人になってもこの吃音症の症状が残る人は約1パーセント程度です。また、子供時代の吃音症患者の男女比は1:1から1.4:1程度と、大きな差はありません。しかし大人になると4:1ほどで男性の方が多くなります。

吃音症の子供への接し方は?

ゆっくり短文で話す

吃音症の子供にはどのように接すればよいのでしょうか。子供に接するときに有効な行動の一つは、ゆっくりと短い言葉で話しかけることです。吃音症になると言葉が思うように出てこなくなるため、喋ること自体に苦手意識を持ちやすくなります。ゆっくりした短文で、吃音症の子供のお手本となる話し方で話し、子供の発話をサポートしてあげましょう。また、親が早口だと真似をしてスピードを上げて喋ろうとしてうまくいかず、吃音に繋がることがあります。

話を遮らず最後まで聞く

吃音症の子供が話しづらそうにしていたり、言葉に詰まっていたとしても、まずは子供が話し終わるまで黙って聞いていてあげましょう。このとき、子供が言いたいことが分かっていたとしても言葉を先取りしてはいけません。暖かく話を聞いてもらえるとわかれば、吃音の症状がでても喋る意欲を失うことはないでしょう。話しやすい環境を作るため、話を聞く大人が常にポジティブな態度でいることが重要ですね。

吃音症の子供にやってはいけないことは?

からかうこと

吃音症の子供にやってはいけないことは、からかうことです。吃音症でどもってしまう子供の話し方をばかにしたりすると、子供は恥ずかしさから話をすることが苦痛になってしまうことがあります。絶対にやめましょう。初めはどもったり言葉を引き伸ばしたりといった症状がみられる吃音症ですが、話すことが苦痛になると、やがて難発という、話そうとしてもうまく声が出せず無声の状態になってしまう症状へと進行していくことがありますよ。

プレッシャーをかけること

プレッシャーをかけることも望ましくありません。具体的には、どもってしまったら言い直させたり、どもったことを怒ったりすることです。また、「落ち着いて喋って」、「ゆっくり話して」などの声掛けもプレッシャーに繋がってしまいます。吃音症に関して否定的な態度は極力とらないようにしましょう。子供が話そうとしていることを尊重し、焦らず、落ち着いて子供の話を聞いてあげましょう。

症状を指摘すること

症状を指摘すると子供は話すたびに緊張を感じてしまいます。子供の吃音の症状が出てしまっても「そうじゃないでしょ」、「どもった部分をもう一回言い直してみて」など、吃音に対して否定的なことを言わないようにしましょう。基本的に子供が話している間は割りこまず、黙って聞くことが大切です。吃音症の子供と会話をする際には、話す番、聞く番をきめて、子供が話し終わるまでは口を挟まず聞き役に徹するようにしましょう。話している間に割り込まれる経験を何度もすると、早く話さなければとあせってしまうようになるからです。焦りが吃音を悪化させることもあるので、聞き手は注意しましょう。

吃音症と診断される基準は?

発話100文節中3回以上吃音が出たら診断される

多少、連発の症状や難発の症状があったとしても、吃音症と診断されないことがあります。一般的に吃音症と診断されるのは、頻繁に言葉が詰まる、あいさつ程度のごく短い言葉でも詰まってしまう、などの症状があるときです。基準上では、連発、伸発、難発の合計が100文節中に3以上あり、それが約半年以上続くことで診断します。また多くの吃音症を患う人々は、独り言を言ったり、赤ちゃんや動物に対して話しかけたりと、他人に見られることを意識せずに話すときには吃音の症状が出ません。

吃音症の治し方

子供の7~8割は発症後3年で自然治癒する

吃音症は治療法や原因が詳しくわかっていない病気ではありますが、心配しすぎることはありません。なぜなら、吃音症の子供の7割から8割は自然治癒するからです。これは、子供の吃音症のほとんどが発達性吃音と言われているためですよ。発達性吃音とは、子供の認知能力や言語能力が急速に発達し、流暢に話そうとするときに言葉を探したり言い直したりすることが原因であるとも言われています。そのため子供の成長とともに自然治癒していくのです。

話しやすい環境を整える

吃音症を治すには、話しやすい環境を整えることが重要です。吃音症で病院に行く子供の4分の1は不登校とも言われています。環境によって吃音の症状が現れている可能性があるので、一度見直してみてくださいね。例えば、保育園の中に吃音症の子供が喋っているときにからかってくる子供はいませんか?もしそのような子供がいれば、保育士から個別に指導をしましょう。また、子供が褒められたと感じる機会を増やすことも効果的です。

言語聴覚士による話し方のトレーニングを受ける

吃音症を治すために、言語聴覚士によるトレーニングを受けることも有効です。実際に言語聴覚士によって行われる訓練方法の1つである、DCMについて紹介します。この訓練方法は、吃音症の子供と関わる大人が意図的にわかりやすい言葉を使って会話するというものですよ。例えば何か質問をするときは、「今朝は何を食べたの?」と聞くより、「今朝はご飯とパンどっちを食べたの?」と、選択肢を作るように意識します。選択肢があった方が、質問された子供は頭の中で文章を組み立てることが容易になり、話しやすいのです。

まとめ

吃音症の子供が自信を持って話せるようにサポートしよう

吃音症になると、症状を指摘されたり、思うように話せなかったりすることにストレスを感じ、徐々に自信を持って話すことが困難になっていってしまいます。周りの大人がサポートできることは、子供が話しやすいように環境を整えたり、ゆっくり話したりして吃音症の子供の話し方のお手本になるようにすることですよ。そして、保育園では周りの子供たちにからかわれたりすることがないように、先生たちがしっかりサポートしてあげたいですね。

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