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バルシューレがどのようなものなのか知っていますか?バルシューレという単語を初めて聞いたという人もいるのではないでしょうか。バルシューレとはドイツで生まれたもので、近年日本でも注目されているものです。子供たちのスポーツに対する関心を湧き上がらせるためには、とても良い入り口になりますよ。今回は、バルシューレでどのような力が養われるのか、どのような効果があるのか、またどのようなプログラムが実際に行われているのかなどを紹介していくのでぜひ参考にしてくださいね。
バルシューレって何?
ドイツで生まれたボールを使った運動プログラム
まずは、バルシューレがどのようなものであるのか紹介していきます。バルシューレの発祥地は、ドイツ。ドイツにあるハイデルベルク大学スポーツ科学研究所のクラウス・ロス教授により開発されたのがバルシューレ。バルシューレはドイツ語ですが、英語に訳すと『ボールスクール』です。そのため、ボールを投げるや蹴るなどというプログラムが行われますよ。このように、バルシューレとはボールゲームを通して、さまざまな動きを経験し成長することを目指した運動教育の1つです。
バルシューレで養われる力
その1 基礎運動能力
バルシューレを通して養われる力には、主に4つが挙げられます。1つ目は、基礎運動能力。バルシューレでは、体の動かし方やボールの扱い方を中心に学ぶことができます。バルシューレには148種類のボールゲームがあるため、さまざまなボールゲームを通して、まずは体を動かすことの楽しさを子供たちに知ってもらうことが重視されています。ボールゲームを楽しんでいるうちに、自然と基礎運動能力が身につけられるのがバルシューレのメリットですよね。
その2 自己肯定感
バルシューレで養われる力の2つ目は、自己肯定感。バルシューレは、一人ひとりの成長にフォーカスするため、他人と比較することはありません。子供たち一人ひとりの個性的な考えや発想を尊重し、チャレンジすることを促します。そしてうまく行った時には、『できた』を大いに誉めます。すると、子供たちに『できた』という成功体験を積ませることができ、自己肯定感を育むことが期待できますよ。
その3 コミュニケーション能力
バルシューレで養われる力の3つ目は、コミュニケーション能力。バルシューレは1人で行うというよりは、チーム対抗で行うプログラムがほとんどです。また、チームで話し合う時間も十分に設けられるため、コミュニケーション能力を育むことが期待できますよ。自分の考えていることを他人に表現することは簡単なことではありません。それをチーム内で繰り返し行うことで、自分の頭の中にあることを言葉にする力やコミュニケーション能力を伸ばすことにつながりますよ。
その4 対応力
バルシューレで養われる力の4つ目は、対応力。チームで行う場合には、自分で考えていたこととチームの他のメンバーが考えていたことが必ずしも一致するとは限りませんよね。そのような時には、対話が必要になります。すると、他人の考えていることを理解しようと柔軟性を身に付けることができます。同時に、多様性を理解したり、受け入れることにつながりますよね。自分1人で行うときとチームで行う時には変化が生じますが、それに応じる対応力を身に付けることもできますよ。
バルシューレのねらい
体を動かすことの楽しさを知ってもらう
バルシューレを行うねらいは、子供たちに体を動かすことの楽しさを知ってもらうこと。バルシューレは、『教科を学ぶ前に読み書きを覚えるように、スポーツを始める前に身体の動かし方を知ろう』という考えが根本にあります。そのため、バルシューレを通して、ボールの基本的な扱い方を学びながら、自分の好きなまたは得意なプログラムを見つけることが目的の1つです。スポーツに苦手意識を持つのではなく、まずは子供たちに体を動かすことの楽しさを知ってもらうことが重視されていますよ。
バルシューレの特徴
自由なプレー
バルシューレにはいくつか特徴が挙げられるので、ここで紹介していきますね。1つ目は、子供たちに自由にプレーさせるということ。バルシューレにおいて、指導者がいわゆる技術指導・修正指導を行うことはほとんどありません。子供たち自身で考える力、潜在的な能力を引き出すことが重視されていますよ。経験や思考を繰り返すことで、子供たちが創造的なプレーをすることを目的としています。
習う前にやってみる
バルシューレの特徴の2つ目は、習う前にやってみるということ。これは前に説明した自由なプレーにもつながりますが、バルシューレでは基本的に技術指導が行われることはありません。そのため、ゲームに勝つためには、上手にボールを飛ばすためには、と考えることが必要不可欠になります。勉強で答えを知ってしまったらもういいやとなりますよね。それはスポーツにおいても同じことが言えます。そのため正解のやり方を教えるのではなく、まずはやってみようというのが、バルシューレのスタンスです。
運動が苦手・未経験の子供でも参加できる
バルシューレの特徴の3つ目は、運動に苦手意識を持っている子やほとんど未経験であるという子でも参加できること。バルシューレは、スポーツへの入門のような位置付けです。つまり、バルシューレは体を動かすことやスポーツをすることを『好き』になってもらうのが目的。そのため、もともと運動が得意な子を対象としているいうよりは、運動が苦手な子や未経験の子を対象としていますよ。
具体的なメニュー内容
ボール当てっこ
バルシューレの教室で行われる具体的なプログラムの内容について説明していきます。1つ目は、ボール当てっこ。ボール当てっこは2つのチームに分かれて行います。
①コーンをある場所に置く
②コーンを挟むように同じ距離のところに2本ラインを引き、ライン上に並ぶ
③よーいどんの合図で20秒間、コーンに向かってボールを投げる
最終的に、コーンにより多くのボールを当てられたチームが勝ちというゲームです。狙った高さ距離にボールを投げることがこのゲームの目標です。
三並べ競争
次に、三並べ競争について紹介します。三並べ競争もボール当てっこと同様に2チームに分かれて行います。各チーム、ボールを3つ持った状態でスタートです。
①スタートラインから5〜10m離れたところに縦3つ横3つの計9個のフラフープを並べる
②【3回目まで】各チーム1人が、ボールを1つ持ちフラフープの中に置きに行く
③ボールを置いたら走ってスタート地点まで戻り、次の人とハイタッチをしてバトンパス
④【4回目以降】手元にボールがなくなるので、既に置いてあるボールを移動させる
そして、縦・横・斜めのいずれかで、先にボールが3個並べたチームが勝ち。チームでボールの色を分けるとわかりやすいですよ。
バルシューレの指導者の制度
C級〜S級までにクラス分け
次に、バルシューレの指導者の制度について紹介していきます。1つ目は、C級〜S級までランクが分かれていること。バルシューレの指導者になるためには、C級からスタートし、経験や検定の合否などを踏まえてS級までレベルアップしていきます。
C級:座学で学ぶ理論を3時間以上と実技6時間以上を履修したのち、検定試験に合格。その上で指導者登録したもの。
B級:C級指導資格を取得または更新してから1年以上経過していること。理論・演習・現場実習を履修すること。
A級:①B級指導資格を取得してから1年以上経過していること。②10時間の資格認定者研修を受講し理事会で合格と判断されたもの。③10 回以上、C 級指導者講習会において運営補助の経験があるもの。①〜③を全て満たしたもの。
S級:①A級指導者資格を取得してから3 年以上経過していること。②20 回以上、C指導者講習会の講師を担当した経験があるもの。③3 回以上、B級指導者講習会において運営補助の経験があるもの。①〜③を全て満たしたもの。
資格の有効期限は3年度末
指導者となるためには、NPO法人バルシューレジャパンが定めた指導者養成講習会を修了し、指導者登録をする必要があります。そして指導者登録をしたものがバルシューレの指導者として認められます。認定の期間は3年間。認定を受けたその年度の末尾までを1年度と数え、3年ごとに講習を受けることで認定を更新することができます。更新には更新料や講習の受講・検定合格などが必要になるので事前に確認しておきましょう。
技術指導ではなく潜在能力をひきだす
バルシューレの特徴としても紹介しましたが、バルシューレの指導者に求められることは技術指導ではなく、子供たち一人ひとりの潜在能力を引き出すこと。そのため、ボールの投げ方や蹴り方を具体的に教えるのではなく、子供たちの思考をサポートことが重要です。行き詰まっている場合には、直接的な指導ではなく、ヒントを出して考えてもらうという間接的な指導が求められます。指導者とはいいながらも、サポート役のような役割を果たすのが、バルシューレの指導者の特徴ですよ。
バルシューレがもたらす効果
体内時計の形成
バルシューレがもたらす効果として、体内時計の形成が挙げられます。人間は、体内時計により夜眠くなり、朝になると起きるようになっています。近年、発達障害の子供が増加傾向にあり、その原因の1つは睡眠不足であると言われています。そしてその睡眠不足の原因は、体内時計の不形成です。昼間や夕方にバルシューレを通して体を動かし、3回の食事をきちんととることで、体内時計の形成をサポートすることができますよ。
軽度の発達障害児や知的障害児にもおすすめ
自発性・情緒の安定を促進できる
バルシューレは、軽度の発達障害児や知的障害児にもおすすめですよ。自分で考え、他の人と意見を交換するという場面が多くありますよね。そのため、チャレンジをしてみようという自発性や自分の気持ちや考えを少しは表現できるようになると情緒の安定にもつながります。指導者は発達障害や知的障害に精通しているわけではないので、症状が重度である場合は難しいこともあるでしょう。程度が軽い場合には、子供にとって外界と関われる良い刺激になりますよ。
まとめ
バルシューレを通して子供たちに運動に慣れ親しんでもらいましょう
ここまでバルシューレについて紹介してきましたがいかがでしょうか。バルシューレは子供にスポーツを強制するものではなく、体を動かすことにへの苦手意識を自然となくすことができますよ。また、『できた』という成功体験を積み重ねることで、子供たちは自信を持つことができますよ。このようにバルシューレは、運動を好きになってもらうだけでなく、人間性としても成長を期待できますよね。