保育園で行う避難訓練のポイントは?【ねらい・配慮・年間計画・地震・火事・水害・不審者】

保育園で定期的に行われる避難訓練。子供たちの命を守るための大切な行事です。日本は災害大国と言われるほど自然災害の多い国であり、保育園で避難訓練を行うことはとても重要でしょう。この記事では、保育園で避難訓練を行うときのねらいや避難訓練を行うときのポイントなど、詳しく解説します。保育園での避難訓練について詳しく知りたい保育士さんは、ぜひ参考にしてみてくださいね。

保育園で避難訓練を行う目的・ねらい【立場別】

子供


子供たちにとっての目的・ねらいは以下の通りです。

  • どのような状況でも、保育士の話を聞き安全に避難できるようにする。
  • 自宅等の保育園以外の場所で被災した際の避難方法を学ぶ。
災害が発生すると多くの子供たちがパニックになってしまうことが考えられます。冷静に安全な避難をするためには慣れが必要です。日頃から繰り返し避難訓練を行い、子供たちに安全な避難方法を伝えておきましょう。

保育士


保育士にとっての目的・ねらいは以下の通りです。

  • 災害時に冷静な判断をするために訓練を行う。
  • 子供たちが安全に避難できるよう適切な指示を出す。
  • 避難訓練後に振り返りを行い、避難時の問題点の把握や改善を行う。
子供たちの命を守るために、保育士には冷静で的確な判断と指示が求められます。避難訓練を通して、どのようにすれば子供たちに指示が伝わりやすいのか確認しておくと良いでしょう。また、日頃から災害について子供たちに説明しておくのも大切です。

保育園


保育園にとっての目的・ねらいは以下の通りです。

  • 緊急時に保護者とスムーズに情報共有を行う。
緊急時に子供たちを保育園から保護者へ安全に引き渡すためには、連絡を取るための手段や避難場所、引き渡しの際のルールなどを事前に保護者と共有しておく必要があります。保護者が在宅なのか仕事に行っているのかなど、どのようなケースにも対応できるよう、様々なシーンを想定しておきましょう。

保育士くらぶ

保育園での避難訓練の実施内容【ケース別】

地震


地震を想定した避難訓練では、以下の内容で行います。

①地震が発生した時
  • 窓際から離れる。
  • 机の下などの物が落ちてこない場所に隠れる。
  • 乳児の場合、座布団やクッション等で頭を守る。
②揺れが収まってから
  • 窓やドアを開けて避難経路を確保する。
  • 火元がある場合はガス栓を閉める。
  • 防災頭巾を被せ、上着を着たり外靴を履いたりするなどの避難の準備をする。
③避難誘導
  • 避難経路や避難場所を確認する。
  • 避難後、子供たちの人数を確認する。
  • 子供たちを保護者へ引き渡す。
日本は地震の多い国であり、今後も大きな地震が発生することが予想されています。地震の場合は、そのときの状況によって避難の仕方が変わるため、様々な場面を想定して避難訓練を行いましょう。

火事


火事を想定した避難訓練では、以下の内容で行います。

①火事が発生したとき
  • 火元を確認し、避難経路を確保する。
  • ハンカチやタオル等で口と鼻を覆い、煙を吸わないよう指示する。(可能であればハンカチやタオルを濡らす)
  • 火災の拡大を防ぐために窓やドアを閉める。
  • 火事の通報をする。
  • 可能な場合は消火器で消火活動を行う。
②避難誘導
  • 煙を吸わないよう、低い姿勢で移動する。
  • 安全な場所に子供たちを誘導し、避難後、人数の確認を行う。
  • 子供たちを保護者へ引き渡す。
火事の場合は、出火元を確認してから行動することが大切です。事前に可能性のある出火元を洗い出し、状況ごとの避難経路を考えておきましょう。火事の通報をする際の119番通報に関しては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

水害


水害を想定した避難訓練では、以下の内容で行います。

①水害が発生したとき
  • 水害の状況を確認する。
  • 避難経路の確認を行う。
②避難誘導
  • なるべく高い場所へ避難する。
  • 避難後、人数の確認を行う。
  • 子供たちを保護者へ引き渡す。
台風や大雨による水害は事前に予測できる場合が多く、事前に対策しやすいでしょう。安全なうちに保護者に引き渡すことができるよう、早めに保護者への連絡をするなどの対応が必要です。

不審者の侵入


不審者の侵入を想定した避難訓練では、以下の内容で行います。

①不審者が園内に侵入したとき
  • 状況の確認を行う。
  • 警察に通報する。
  • 事前に決めておいた合言葉を使い、職員間で情報の共有を行う。
  • 避難経路を確認する。
②避難誘導
  • 安全な場所に子供たちを避難させる。
  • 子供たちを保護者へ引き渡す。
不審者が園内に侵入した際、一番やってはいけないことは相手を刺激することです。”不審者”という言葉に反応し、攻撃してくることが考えられるため、事前に決めておいた合言葉で不審者の侵入を園内に知らせましょう。合言葉としては、「○○先生(いない先生の名前)職員室に来てください」や「○○(実際にはない活動)の時間です。みなさん○○に集まってください」などの言葉を使うことができます。

保育園で避難訓練を行うときの事前準備

年間計画表の作成

保育園で避難訓練を行う際には、事前準備が欠かせません。事前準備としてやっておくべきこと一つ目は、年間計画票の作成です。保育園では、月に1~2回、年間12~20回ほど避難訓練を行います。年度の初めに年間計画票を作成し、様々な状況での避難訓練を実施できるようにしましょう。年間計画票には災害発生時の保育状況や避難訓練のねらいなどを記載します。年間計画票の例は以下の通りです。

マニュアルの作成

二つ目は、マニュアルの作成です。災害の種類によって、緊急時に取るべき行動は異なります。どのような場面にも対応できるよう、災害の種類別にマニュアルを作成しておきましょう。マニュアルには、災害発生時の職員の役割分担や対応内容を具体的に記載します。マニュアル作成時には、各自治体が発行している保育施設用の防災マニュアルや、経済産業省が発行している「保育施設のための防災ハンドブック」を参考にしてみてくださいね。

防災グッズの確認

三つ目は、防災グッズの確認です。普段存在を忘れがちな防災グッズですが、避難訓練を機会にチェックすると良いでしょう。チェックするときは、懐中電灯などの機械が作動するかどうか、非常食の賞味期限・消費期限は切れていないかなどを確認します。防災グッズに関しては、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

保育園で避難訓練を行うときのポイント

保育士間の連携を徹底する

保育園で避難訓練を行う際にはいくつかポイントがあります。一つ目は、保育士間の連携を徹底することです。緊急時には、保育士間の情報共有が大切。また、子供たちを誘導させる人や通報を行う人などの役割分担を行い、スムーズに子供たちを避難させられるようにする必要があります。事前に話し合いを行い、避難訓練当日には役割通りに動けるようにしておきましょう。避難訓練後には反省会を行い、保育士間の連携が取れていたか振り返りを行うことも重要です。

他のクラスと協力し合う

二つ目は、他のクラスと協力し合うことです。保育園には保育士の指示に従い自分で移動できる年齢の子もいれば、保育士のサポートが必要な赤ちゃんもいます。乳児クラスの避難には抱っこしたり、ベビーカーに乗せたりと時間がかかります。自分のクラスの避難が完了し、安全が確認できたら他のクラスを助けにいくと良いでしょう。乳児クラスの避難に時間がかかることを見越し、事前に計画を立てておくことも重要です。

おかしも


子供たちに避難するときのポイントを伝えるときには、”おかしも”を使うと良いでしょう。”おかしも”の意味は以下の通りです。

お:さない
か:けない
し:ゃべらない
も:どらない
「ち:ちかづかない」を追加して”おかしもち”とする場合もあるようです。なぜこの約束を守らなければならないのかも合わせて、子供たちに避難する時に重要なことを伝えましょう。標語のようにわかりやすくなっているため、子供たちも覚えやすいのではないでしょうか。

いかのおすし

”おかしも”だけでなく、”いかのおすし”という、不審者に出会った時の対応方法を示した言葉もあります。”いかのおすし”の意味は以下の通りです。

いか:知らない人にはついていかない
の:知らない人の車にらない
お:危ないと思ったらおきな声を出す
す:その場からぐ逃げる
し:大人の人にらせる
”おかしも”と同様、それぞれの重要性も一緒に伝えると良いでしょう。

子供たちに避難訓練について伝える方法

絵本や紙芝居

子供たちに、避難訓練を行うときに大切なことや重要性を伝えるには、絵本や紙芝居を使うと良いでしょう。言葉だけでは伝わりにくいことも、イラストやストーリーが加わることで子供たちが理解しやすくなります。おすすめの絵本や紙芝居には以下のようなものがあります。

災害時のリアルな状況を伝えるため、保育士が簡単な劇を行うのも子供たちに避難訓練について伝える有効な方法です。緊急時に行うべきことを、保育士が子供役を演じて実践すると良いでしょう。劇中で「こんなときはどうすればいいと思う?」など、子供たちに問いかけをすることで、子供たちが主体的に考えることもできます。ただし、災害というテーマに対し、怖いと思ってしまう子供たちがいるかもしれません。ゆっくりとした口調で、子供たちの恐怖心を取り除きながら劇ができると良いですね。

クイズ

子供たちが楽しみながら取り組める、避難訓練〇✕クイズもおすすめの方法です。〇✕クイズの例題には以下のようなものがあります。

【地震編】
  • 問:地震が起きたら走って外に出る
    答え:✕
  • 問:地震で揺れているときは机の下にもぐる
    答え:〇
  • 問:外にいるときに地震が起きたら丈夫な建物の中に逃げる
    答え:〇
【火事編】
  • 問:火事から逃げるときは姿勢を高くして移動する
    答え:✕
  • 問:火事のときに消防車を呼ぶ電話番号は110である
    答え:✕

まとめ

保育園で避難訓練を行いもしもの時に備えよう!

いかがでしたか?今回は、保育園での避難訓練の実施内容や、事前準備など、保育園での避難訓練について詳しく説明しました。緊急時には子供たちだけでなく、大人でも冷静な判断や行動ができないことも多いでしょう。しかし、日頃から避難訓練を行うことで、緊急時の対応を身に付けておくことができます。避難訓練にしっかりと取り組み、いざというときに子供たちの命を守れる保育士になりましょう!

保育士くらぶ

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保育士くらぶは保育士の転職キャリアサポートを行うアスカが運営しています。保育士くらぶ編集部のメンバーは元保育士や幼稚園教諭出身のメンバーを中心に「保育業界をもっと良くしたい!」という思いがあるメンバーが在籍し、日々執筆しています。保育士くらぶでは現役保育士さんが職場で活かすことが出来る、保育のノウハウやネタ、保育学生にとって必要な知識などを発信しています。 アスカは保育士の就職支援を行う会社です。1994年創業。全国で約10万名の保育士、幼稚園教諭の皆さまが登録しています。年間約1万名がアスカを通じて保育園や幼稚園、学童などの施設への就職を決めています。 保育士の求人情報は 【保育求人ガイド】 https://hoikukyuujin.com/ プロフィール入力で園からスカウトを受ける 【保育士スカウト】 https://www.hoikushiscout.com/