学童保育の民間委託とは?【違い・運営主体・サービス・利用料】

放課後に小学生を預かる学童保育。共働き等の理由で放課後の時間に保護者が家にいない家庭にとっては、とても助かるサービスですよね。学童保育には自治体が運営するものと民間が運営するものがありますが、近年民間が主体となって運営する学童保育が増えてきています。今まで自治体が運営主体だったものを、民間に委託する動きもでてきているのです。そこで、今回は学童保育の民間委託について詳しく説明していきます。学童保育に関わる人はぜひ参考にしてみてください。

学童保育の種類

公設公営学童保育

まずは、学童保育の種類について紹介していきます。学童保育には、公設公営学童保育、公設民営学童保育、民設民営学童保育の3つの種類があります。順番に見ていきましょう。まず初めに説明するのが、公設公営学童保育についてです。公設公営学童保育は、公営施設を利用して運営も自治体が行う学童保育のことです。小学校の敷地内や、公民館などで子供を預かる施設が挙げられるでしょう。公営であるため、経営が安定し利用料金も抑えられているのが特徴です。

公設民営学童保育

公設民営学童保育とは、自治体から運営を任された民間団体が学童保育を行うことです。学童保育を行う施設は公営施設の場合がほとんどです。また、運営主体の民間団体は自治体から委託料を受け取っているため、公設公営学童保育と同様に経営は比較的安定します。そのため利用料も安く設定することができますよ。自治体の要望に沿って運営を行うことが多いため、保育内容は公設公営学童とあまり変わりません。

民設民営学童保育

民設民営学童保育は、民間団体が設立から運営まで全てを行う学童保育です。公設民営学童保育とは異なり、自治体からの委託金を受け取ることはありません。そのため、自治体の意向を問わず独自のサービスを提供することができます。公営施設ではない場所で行うことが多いので、土日も子どもを預かってくれる場合もありますよ。経営を安定させるためには一定の利益を出す必要があるため、利用料は高くなる傾向です。運営主体の企業や団体によってサービス内容が幅広く様々である点が、民設民営学童保育の特徴と言えるでしょう。

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公立学童保育と民間学童保育で異なること

利用料

ここからは、公立学童保育と民間学童保育で異なる点を紹介していきます。まず初めに紹介するのは利用料についてです。公立の学童保育は、自治体が運営主体で行っています。運営にかかる費用は公費で賄うことができるため、利用料は安く済むことがほとんどでしょう。場所によっては、毎日利用しても無料のところもあるようです。一方で、民間の学童保育だと、利用料が高く設定されていることが多いと言えます。数千円~1万円程の入会金が必要となる他、毎日通うとなると数万円の利用料がかかることも珍しくありません。

預かり時間

公立の学童保育と民間の学童保育では、預かり時間も異なります。公立の学童保育は、自治体の施設や小学校の敷地内で事業を行っていることが多い傾向です。そのため、預かり時間は長くても19:00頃までの施設が多いですよ。一方で、民間の学童保育では預かり時間は施設によって様々です。自治体の施設を使わずに民間施設を借りて事業を行っている場合がほとんどなので、公立学童保育よりは時間に余裕を持って預けることができるでしょう。施設によっては、21:00頃まで預かってもらえる学童保育もありますよ。

預かり条件

預かり条件も、公立学童保育と民間学童保育で異なる項目の1つです。一般的に、公立の学童保育では親が働いている小学生のみを預かりの対象としています。学童保育の本来の目的は、放課後に児童を見ることができない家庭のためのサービスなので、保護者が家にいる場合などは利用することができません。一方で、民間の学童保育は施設によって預かり条件が異なります。公立学童保育よりも預かり条件を幅広く設定している施設が多いため、保護者のどちらか一方が働いていなくても子供を預けることができますよ。

施設の数

公立学童保育と民間学童保育では、施設の数も異なります。公立公営学童保育と、公立民営学童保育を公立学童保育とすると、約7割の学童が公立学童保育となります。公立学童保育は小学校の近くに設置されていることがほとんどなので、希望すれば簡単に施設を見つけることができるでしょう。一方で、民間学童保育の施設数は少ないため、希望しても通いやすい場所に見つけられないことがあるかもしれません。最近は民間学童保育の数が増えてきていますが、まだまだ公立学童保育の方が多いのが現状です。

児童1人あたりの支援員の数

児童1人あたりの支援員の数も、公立学童保育と民間学童保育で異なります。公立学童保育では、施設で預かる子供の定員や配置する支援員の数が法律で決められています。その数は決して余裕のある数字ではありません。待機児童の問題が深刻化する中で、多くの子供たちを少ない支援員で見なければならないのが、公立学童保育の現状です。一方で、民間学童保育の方が子供1人当たりに対する支援員の数に余裕があると言えます。なぜなら民間学童保育は、独自に定員基準を設けている施設が多く、比較的余裕を持った支援員の配置が行われているからです。

サービスの種類

公立学童保育と民間学童保育では、サービスの種類も異なります。公立学童保育では、決められたスケジュールに従って時間を過ごします。例えば、外遊びの時間やおやつの時間、自由時間やお迎えを待つ時間など、時間割が決められていることが多いでしょう。自由時間では、友達と遊んだり読書をしたり、それぞれが好きなように時間を過ごすのが一般的です。一方で、民間学童保育では、宿題のサポートをしてくれたり、希望に合わせた習い事のようなプログラムを実施してくれることがあります。民間学童保育は、運営主体の企業や団体が自由に保育内容を決めることができるため、他社との差別化を図るためにも独自のサービスを展開している施設が多いですよ。

勉強のサポートの有無

勉強のサポートの有無も、公立学童保育と民間学童保育で異なる点の1つでしょう。公立学童保育では、あくまでも保護者がいない間に子供を預かることを第一の目的としているため、勉強のサポートなどは基本的に行いません。学校の宿題をする時間が決まっている場合もありますが、学年もクラスも違う子供たちを一緒に預かっていることが多いため、支援員が1人1人の勉強をサポートすることは難しいでしょう。一方で、民間学童保育では、勉強のサポートもサービスの一環として提供している施設が多いです。宿題を個別に見てもらったり授業で苦手なところを教えてもらったりなど、塾のような役割を担ってくれる民間学童保育もありますよ。

学童保育の運営主体における最近の動向

民間委託が全国的に進んでいる

ここからは、学童保育の運営主体における最近の動向について見ていきましょう。近年は、学童保育の民間委託が全国的に進んでいます。今まで自治体が主導で行ってきた学童保育の運営を民間に委託することで、学童保育の待機児童解消に向けた自治体の作業を効率化することが狙いです。全国的に共働きの世帯も増え、核家族も増加しているため学童保育の需要が高まっていますよね。一方で、支援員不足や施設数の現状などによって待機児童の問題も深刻化しています。学童保育の民間委託を進めることで、支援員不足を解消したり、様々な家庭のニーズに応えられるサービスを提供したりできることが期待されていますよ。

高松市は2024年度から公立学童保育の運営を民間委託にすると決定

例えば、香川県の高松市は2024年度から公立学童保育の運営業務の一部を民間に委託することを決定しました。自治体業務の効率化と、人材確保を図って待機児童の解消につなげることを目的としています。民間に委託する業務内容は、支援員の雇用や預かった子供の育成計画などに限り、学童保育の入会決定や利用料金の決定などは引き続き高松市が担います。学童保育の業務の一部を民間に委託することで、利用料金や入会条件などは変らないまま、サービスの利便性が向上していくことが期待できますね。

学童保育の民間委託が進んでいる理由

学童の待機児童の増加

ここからは、学童保育の民間委託が進んでいる理由を詳しく見ていきましょう。学童保育の民間委託が進んでいる理由はいくつか挙げられますが、そのうちの1つが学童の待機児童が増加しているということです。少子高齢化の時代と言われ、子供の数自体は減っているものの、待機児童は増加しているのが現状ですよ。その背景として、共働きの家庭が増えて放課後に子供を見ることができる家庭が少なくなったことと、地域や親戚とのつながりの希薄化により、親以外の大人が子供を見る環境が少なくなったことなどが挙げられるでしょう。民間委託を行うと、支援員の数を確保したり受け入れ人数を増やしたりすることが可能になります。そこで待機児童問題の解消につなげようというのが狙いです。

保護者からのニーズの多様化

学童保育の民間委託が進んでいる2つ目の理由として、保護者からのニーズが多様化している点も挙げられます。近年は、小学校低学年から塾に通わせて中学受験を見据えた勉強を始めたり、あるいは様々な習い事をさせたりと、小学生の放課後の過ごし方も多様化しています。近所の友達と集まって一緒に遊ぶ、というのが子供たちの放課後の過ごし方にあてはまらなくなってきているのが現状です。以前の学童保育は、自由に子供たちに遊んでもらう場所というイメージが一般的でした。しかし最近では、習い事や学習支援をしてくれる学童保育など、サービス内容が様々な施設も出てきています。保護者からの多様なニーズに応えるために、保育内容を自由に決められる民間学童の需要が高まってきていると言えるでしょう。

支援員不足

学童保育の民間委託が進んでいる3つ目の理由は、支援員不足の問題です。現状、子供の数は減っているのにも関わらず、学童保育の需要は高止まりしています。それは、支援員が不足しており、学童保育で受け入れることができる子供の人数が制限されてしまっているからです。学童保育の施設はあっても子供を見る支援員の人数が少なかったら、受け入れることができる子供の数も少なくなってしまいますよね。支援員不足の原因は、給料の低さや福利厚生の不十分さで辞めてしまう支援員が多いからです。学童保育の支援員の平均年収は全産業平均の年収よりも下回り、保育の準備のための残業時間も少なくありません。公立学童保育だと、一見安定した職に就いているように思えるかもしれませんが、実際は非正規雇用が多いのも事実です。学童保育を民間委託にすることで、経営方法を改善し、支援員を正社員として雇用することが可能になります。また、労働環境の改善により、支援員の人材流出を防ぐことも期待できるでしょう。

学童保育の民間委託によって期待されること

他の業務に時間を割けるようになる

学童保育の民間委託によって期待されることとしては、自治体が他の業務に時間を割けるようになるということが挙げられます。従来、自治体が行っている学童保育に関する業務としては、以下の業務が挙げられるでしょう。

・入会を希望する保護者からの問い合わせ
・入会手続き
・利用料金の支払いの管理
・保育内容の決定
・利用保護者からの問い合わせ
・学校との連携

こうして見てみると、一言に学童保育の業務と言っても様々なものがあることがわかりますよね。高松市のように、運営業務の一部だけでも民間委託にすることで、自治体に余力が生まれることになります。それらの時間を他の業務に使うことで、自治体業務の改善や効率化に繋げることができますよ。

支援員の待遇が改善される可能性がある

学童保育の民間委託を行うことで、支援員の待遇が改善される可能性もあります。学童保育の運営主体が自治体から民間企業に移った場合、そこで働く支援員は会社員として雇用されることになります。それによって十分な福利厚生がついたり、労働条件が整備されることが期待できます。また、民間主体での運営になる場合は、利用者が増えて売上が上がった場合、その分の利益を支援員の給与に充てることができますよね。低賃金が問題となっている支援員にとって、待遇の改善は民間委託の大きなメリットの1つだと言えるでしょう。

まとめ

学童保育を民間委託にすると様々な変化が生じる可能性がある

いかがでしたか。学童保育の民間委託について最近の動向やその背景を紹介しました。公立学童保育と民間学童保育の違いについて、理解は深まったでしょうか。学童保育の運営主体が異なると、利用料金やサービス内容など、利用者にとって様々な違いが出てきます。また、支援員にとっても経営方法や労働環境によって待遇に違いがありましたね。近年は学童保育の民間委託が進んでいますが、それによって様々な変化が生じる可能性があることを理解しておきましょう。

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